No.815661

リリカルST 第9話

桐生キラさん

お久しぶりでございます。
Sサイド サブタイトル:ユーノ君

2015-11-25 16:02:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1913   閲覧ユーザー数:1827

 

 

 

 

 

ここは海の見えるカフェ、喫茶店【晋】。ここには暇を持て余した若妻や萎びたスーツを着たくたびれたビジネスマン等、様々なお客様がいます。

 

本日は…

 

「こんにちはー」

 

「お、ユーノ君!いらっしゃい、久しぶりだね」

 

眼鏡をかけた好青年、ユーノ・スクライア君がいらっしゃいました。

 

ユーノ・スクライア

 

はやて逹の幼馴染みにして、あの高町なのはに魔法を与えるキッカケを作り、尚且つ当時の師匠でもある人物。

数年前までメチャクチャだった無限書庫を整理するという偉業を成し遂げ、そのまま司書長となる。魔導師としても優秀な彼は管理局でも密かに人気があり、結構な数の局員が彼を慕っているんだとか。

 

そんな凄いユーノ君ですが…

 

「士希…とりあえず何か、甘いもの…」

 

基本的に過労でぶっ倒れる寸前です。

 

「飲み物はココアとかにしとくか?」

 

「うん、お願い…」

 

ユーノ君は来るなり、カウンターに突っ伏してしまった。かなり疲れているらしい。

 

「おぉ?この突っ伏し方、司書長か?」

 

アギトが裏からひょっこり表れる。そんなアギトも、ユーノ君を見て苦笑いになっていた。

 

「アギト、ココアの準備お願い」

 

「もうしてるよー」

 

アギトは言われる前に、既にココアを作る準備をしていた。この辺り、よく分かってきたよな。

 

「ほらユーノ君、フルーツサンドだ。これ食ってくれ」

 

「ありがとう…」

 

ユーノ君は何とか起き上がり、震える手でサンドウィッチを取り、食べ始めた。

 

さて、何故ユーノ君がここまでボロボロなのか、それはひとえに無限書庫のスタッフ不足によるものが大きい。もともと広大な、それこそ無限の名に相応しい書庫に対して、その重要性を理解しながらも管理局は人員を割けずにいた。そしてスタッフも、客観的に見れば優秀ではあるが、そこのトップであるユーノ君が優秀過ぎるが故に、彼について行く事が出来ず、途中でドロップアウトする事が多い。ユーノ君自身、スタッフが自分についてこれない事を理解しつつも、優しさ故にそれを指摘出来ず、指摘出来なかった分負担が増えていった。

 

そして出来上がったのが…

 

「っ!?し、司書長ォォ!?ヤベェ!司書長息してねぇぞ!?」

 

この死にかけのユーノ君だ

 

「大丈夫だアギト。それはユーノ君なりの休息術なんだ。確かに息はしてないが、魂はまだしっかりと、肉体に定着している」

 

「なんだそれ!?」

 

確か、スクライア一族に伝わる秘術だったかな。肉体の全ての活動を休止して疲労を一気に抜くという荒技。どういう原理かは知らないが、これで体に蓄積された疲労は抜けるらしい。難点は、しばらくの間仮死状態になり、無防備になる事だ。

 

「仕方ない。アギト、裏からブランケット持ってきて。俺はユーノ君をソファに寝かせるよ」

 

「わ、わかった!」

 

アギトは慌てながら裏へと走っていった。この状態のユーノ君を見るのは初めてだったんだな。俺やはやて達の間では、割と普通なんだけどな。

 

 

 

 

「う~ん…良く寝た…」

 

数時間後、ユーノ君がようやく目を覚ました。幾分か顔色が良くなっており、目元にあったクマも無くなっていた

 

「おはよう、大丈夫かユーノ君?いったい何連勤してたんだよ」

 

「えっと………あれ?何時だったかな?士希の店が立ち上がった日は休みだったけど…」

 

おいおい、そりゃ三ヶ月以上前の話だぞ…

 

「いや、大丈夫大丈夫!ちゃんと半休とかあったから!あったはず……あったよね?」

 

半休すらまともに取れねぇのかよ…

 

「あれ、どうしたんだあたし?なんか目の前がボヤけて…」

 

アギトも、あまりの不憫さに涙を流し始めてしまった

 

「ユーノ君…それ、訴えたら勝てるよ」

 

「あ、あはは…大丈夫だよ、好きでやってる事なんだから」

 

そういうユーノ君の表情は確かに笑顔だったが、目だけは虚だった。ほんと、管理局はそろそろユーノ君を休ませてあげるべきだろ…

 

「あ、ブランケットありがとうね。スクライアの秘術は士希やなのはが居ないと使えないのが悩みだよー」

 

いやいや、もっと他に悩まねぇといけねぇ事があるだろ!主に労働基準法的なアレで!

 

「そ、そうか…まぁ、うちはいつでもいいから、ゆっくりしてってくれ」

 

「うん、申し訳ないけど、お言葉に甘えるよ」

 

ユーノ君はソファから立ち上がり、カウンター席へとやって来た。その足取りはしっかりしており、本当に先程までの死にそうだった顔がスッキリしていた。スクライアの秘術、恐るべし。

 

「今日はオフなのか?」

 

「うん。明日が学会で、少し出張しなくちゃいけなくてね。今日は準備も兼ねて休みをもらったんだ」

 

もうユーノ君の中の休みの定義がわからない。果たしてそれは本当に休みと呼んでいいのだろうか。あれ?休みってなんだっけ?自由な時間の事だよな?自由な時間なら、仕事の準備とかしてもいいのか?それってもはや働いて…

 

「とは言え、もう準備もほとんど終わってるから、空いた時間でここに来たんだ」

 

流石はユーノ君であった。管理局は優秀な彼に賞与を支給してもいいはずだ

 

「あ、そうそう、その学会に君を誘う為に今日は来たんだ」

 

そう言ってユーノ君は一枚のチケットを手渡してくれた。そのチケットには、開催地やイベントの詳細が記されていた

 

「ホテル・アグスタ…って、ロストロギアのオークションだと?いいのかよこれ?ロストロギアっつたら…」

 

「あはは、まぁそう思うのも無理ないよね。でも、そのオークションに出るものは安心安全な無害のロストロギアばかりだよ。基本的には何の役にも立たない、骨董品の様なもの。だけど、富裕層の方々からしてみれば、古代の希少な遺物。手に入れる事に価値があるんだよ」

 

あぁ、そういう事か。確かにロストロギアは、使い方次第で危険なものになり易いものの方が多いが、中にはどう頑張っても役に立たないものだってある。一度だけ、俺もそれを見た事がある。確かあれは、魔法で作られたマジックペンで、使用者の意志に合わせて色が変わり、尚且つインク切れを起こさないというものだった。ただ問題なのは、望み通りの色が出ない事。微妙に使い辛いものである。

 

「なるほどね。それで、ユーノ君はそのオークションでロストロギアの解説ってか?」

 

「ご名答。士希も時間があったらどうかな?ああいう所には、思わぬ掘り出し物があったりするからさ」

 

ふむ、確かに少し面白そうだ。何か仕事で使える便利アイテムも見つかるかもしれないし。

 

チケットには…この一枚で五人までは同行可能なのか。なら、俺とレーゲンとアギトと、後2人は行けるな

 

「わかった、その日は休みにして行ってみるよ。演説、楽しみにしてるぜ」

 

「ふふ、ならしっかりと、資料をまとめてこないとね」

 

そう言ってユーノ君は冷めてしまったココアを口に含んだ。彼の事なのだ、もう既に十分過ぎるほどの資料があるに違いない。これで自分はまだまだなんて言うんだから、今後も成長し続けるんだろうな。

 

 

 

 

 

「あぁそうだ、あの件、どうなってる?」

 

俺は一通り落ち着いた所で、ユーノ君に尋ねてみる。忙しいとわかっているし、俺自身もそこまで急ぎじゃないから、あまり期待はしていないんだが…

 

「ん、あの件だね。今日はその報告もしないとなって思ってたんだ。とは言え、まだまだ確証はなくてね。一応二ヶ所まで候補は絞り込めたけど」

 

おいおい嘘だろ?もうそんな所まで調べたのかよ…

 

「オーナー…司書長の寝不足、多分オーナーのせいでもあるんじゃ…」

 

「ごめんなさい!!」

 

アギトに指摘され、俺はすぐ様頭を下げた。それを見たユーノ君は苦笑いだった

 

「あぁいや、大丈夫だよ。士希の頼みとは言え、結構片手間でやってた事だったし。それに、ブレア捜査官とマグナス捜査官が手伝ってくれたから、ほとんどあの2人のおかげかな」

 

あの2人が?だったらいいけど…

 

「それで、その候補ってのは?」

 

「うん。一つは山岳地帯の何処かにある遺跡。ただ、ここに関してはまだ場所が特定出来てないんだよね。もう一つは海底にある遺跡。ここに関しては場所は特定出来てるんだけど、少し問題があってね」

 

「問題?」

 

「実は、その海底遺跡の付近で、何でもリゾート施設を建築予定らしいんだ」

 

おいおい、だとしたら、もしその海底遺跡がビンゴだった場合…

 

「了解。なら、まずは海底遺跡からだな」

 

「ごめん。僕ももう少し調べられたら良かったんだけど…」

 

「いやいや、良くやってくれたよ。ほんと、助かった」

 

というかユーノ君はもっと休んでください、切実に。

 

「さて、なら明日にでも行くかな」

 

「え!?そんな急に決めて大丈夫なのかい?」

 

俺の発言に、ユーノ君は少し驚いた様子だった。確かに急だが、それだけの価値がある。

 

「あぁ、まぁなんとかなるよ。うちにはレーゲンにアギトだっているからな」

 

「へっ!ベルカの融合騎の名にかけて、オーナーを全力で守ってやるぜ!」

 

ニッと笑ったアギトのなんて頼もしい事なのだろう。ほんと、俺は恵まれてるよな。

 

「そっか。なら、資料を後でメールで送っておくよ。でも、十分気をつけるんだよ。内容が内容だけに、かなり危険だと思うから」

 

ユーノ君は心の底から心配してそうな目で俺を見て言った。ほんと、友人にも恵まれてるよ

 

「あぁ、ありがとう、十分に気をつけるよ。そうだな、学会に連れて行くメンツを1人、しっかり確保しておくよ」

 

それからしばらくして、ユーノ君は店を出て行った。なんでも、学会の最終準備があるんだとか。その準備もあるはずなのに、店を出た数十分後にはデータが送られて来るのだから、本当に優秀過ぎるぜ。

 

「ただいま帰りましたー。いやぁ、首都は歩いてるだけでも楽しいですよねー」

 

さらにしばらくして、本日オフで出歩いていたレーゲンが帰って来た。その手の袋には色んな食べ物が詰まっている辺り、食べ歩きしていた様だ。

 

「おかえりレーゲン。早速だけど、明日は臨時休業だ」

 

「え?何かあったんですか?」

 

「あぁ、イクスヴェリアが見つかった」

 

その言葉に、レーゲンは先程までの明るさを失い、一気に真剣な顔付きとなった

 

 


 
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