心の星
フェイトちゃんの様子がおかしい。
話しかけても何かぼ~っとしてるし、私とは目を合わせないようにするし、何だか避けられてる感じがする。
何か悩んでいるなら話してほしい、一緒になって解決してあげたい。
でも、フェイトちゃんは頑固者だから話してくれない。何度聞いても「何でもないよ」って言われるだけ・・・。
「私嫌われちゃったのかなぁ・・・」
新しいお友達も増えて楽しそうなフェイトちゃん。笑ってるのは嬉しいけど、隣にいられないのは寂しいよ。
私の心の中ではフェイトちゃんにみんなと笑っていて欲しい気持ちと、フェイトちゃんを誰にも取られたくない気持ちがある。
「ほぁ・・・」
私はどうすれば良いのかなぁ・・・。
◇
終礼のチャイムが鳴り、本日の授業が終った事を告げる。
「フェイトちゃん、一緒に帰ろうよ」
ここからは楽しい放課後。その時間を共に過ごそうと声をかけてみる。
「ご、ごめんね、なのは。私ちょっと用事があるから先に帰っててくれる?」
だけど、帰って来た答えは残念なもの。
「え?・・・うん分かった」
「ごめんね・・・」
今日もダメだったなぁ。教室を後にするフェイトちゃんを見送りながら、私はそっとため息をついた。
「何よアレ。最近、フェイト付き合い悪くない?」
「仕方ないよアリサちゃん、フェイトちゃん用事があるって言ってたし」
「にゃはは・・・今日もふられちゃったねぇ」
怒るアリサちゃんになだめるすずかちゃん、苦笑するしかない私。一緒に帰りたいけど、用事があるなら仕方がないよね・・・。
―――話し込んでいた私達は、はやてちゃんが笑っていたのに気付かなかった。
◇
夜、真っ暗な部屋の中で私は起きている。
寝ないと明日の学校が辛いと分かっていても、眠れない。
「フェイトちゃん・・・」
心に浮かぶのは金髪の彼女。いつも傍に居てくれた少女。
私は彼女の泣き顔も、笑顔も知っている。
私は彼女の恥ずかしがる顔も、照れている顔も知っている。
でも、もっと・・・もっと仲良くなりたいよ。
「もっと一緒にいたいよぉ」
溢れ零れる涙を私は止める事も出来ず、ただ泣いていた。
嫌われちゃったかもしれない。そう思うだけで胸が潰れそうなぐらい痛い。どうすれば良いのかな?
「フェイトちゃん・・・」
「なのは」
え?フェイトちゃん?
慌てて探すといるはずのない彼女が立っていた。
「ごめん。ごめんね、なのは」
泣きそうな顔で謝罪を繰り返す彼女。
どうして、何でなの?何でフェイトちゃんが謝っているの?
助けなきゃ・・・私がフェイトちゃんを助けなきゃ。
「フェイトちゃ・・・っ!」
体が動かない―――なぜ?
私が困惑している間にも彼女の謝罪は続いていく。
すぐに抱きしめてあげたいのに・・・。体が凄く重たい。それでも必死に腕を伸ばし彼女を求める。
涙をぬぐってあげたいのに・・・。体が凄く重たい。
それでも腕を止める事は出来ない。
彼女に届きそうになったところで、私は光に飲み込まれた・・・。
ドスンッ・・・。
「いたたた・・・。あれ?」
周りを見渡すとそこは私の部屋で、当然彼女の姿は無い。
夢だったんだ。でも・・・
「フェイトちゃん、寂しそうだった」
口に出してみて確信する。そう、彼女は何かに寂しさを感じている。そして、押しつぶされそうになって、泣いている。助けなきゃいけない・・・。
でも、どうやって?多分、私1人では彼女を助けられない。彼女の悲しみを消してあげる事は出来無い。
そう・・・私1人では無理。それなら、私1人でなければ良いんだ。私には沢山の友達がいる、相談に乗ってくれる友達がいる。
決意を固めた私は学校へ向かう準備を始めた。
「待っててね、フェイトちゃん」
まさか原因が自分だとは知りもぜずに―――
◇
「ふぅん、なるほどなぁ。話は分かったで」
そんな訳で私は、はやてちゃんに相談中だったりします。本当はアリサちゃんやすずかちゃんもいて欲かったんだけど塾だから仕方が無いよね。・・・フェイトちゃんは本局に呼び出されてこの場には居ない。
「つまりや。なのはちゃんは最近フェイトちゃんがおかしいのは、自分のせいかもしれへん思うとるんやな?」
1つずつ整理するように話してくれるはやてちゃん。
「更に、最近のフェイトちゃんの反応が素っ気無から、なのはちゃんとしてはもっと可愛い返事が欲しいと・・・」
か、可愛いって・・・無愛想でもフェイトちゃんはとっても可愛いもん。
「で、きわめつけは今日の昼のアレやな?まぁ、確かにアレはショックやわなぁ」
そう、今日またあったのだ。それはお昼休みの事、みんなでお弁当を食べた後だった。
◇
フェイトちゃんがこっちを見ているから、ドキドキしながら見つめ返していたら何だか顔が赤かった。
元気が無いし、体調を崩して熱でもあるのかもしれない。そう思った私は、自然にフェイトちゃんのおでこに触ろうとした。
きっとソレがいけなかったんだよね。
「フェイトちゃん、大丈夫?」
パンッ!
「え?」
今、何が起きたの?
熱があるかもしれないから触れようとした。そうしたら、突然フェイトちゃんに手を払われて・・・う、嘘だよね?。
何事かとクラス中の注目が集まっているのを感じたけど、私は動く事が出来無かった。
フェイトちゃんが何か言って、教室を出て行ったけど追う事も出来なかった。
だって、どんな顔をして会えばいいか分からなかったから・・・。
◇
「私、フェイトちゃんに嫌われちゃったのかな」
アレはきっと、フェイトちゃんが私を拒絶しただけなんだ。そう、私だからダメだったんだ。
悔しさや悲しみ、他の色々な感情が混じってどうして良いか分からなくなる。
「フェイトちゃん・・・ぐすっ・・・フェイトちゃん・・・」
もうダメだった。大好きな人に嫌われて拒絶されることは耐えれない。必死に耐えようとしたけど、涙は止まることは無い。
浮かんでは消えていく笑顔、いつまでも隣で見ていたかった微笑み。
でも、嫌われちゃったら、もう無理だよね。一緒に居られるわけ無いよね。
どんどんと沈んでいく気持ち、ここが図書館である事すら忘れて泣いてしまった。
辛かった、悲しかった・・・もう、全てがどうでも良かったのかもしれない。
「え?」
突然の事にまた身動きが取れなくなってしまう。
暖かくて柔らかい―――はやてちゃんだ。
「なのはちゃん、泣かんでもええよ。フェイトちゃんは、なのはちゃんが嫌いになったんと違うんよ」
え?私、フェイトちゃんに嫌われてないの?
「フェイトちゃんはな、なのはちゃんが嫌いであんな態度取ってる訳やない。恥ずかしいだけなんや」
フェイトちゃんが恥ずかしい?
抱きしめたまま、はやてちゃんはゆっくりと語りかける。
「フェイトちゃんは、どうしたらええかが分からないんや。だから、今日みたいな行動を取ってしまうんや」
その言葉の意味が分からなくて、答えを知りたくて私は次の言葉をじっと待つ。
「ん~、本当はな、私の口から言ってええことやないんやけど・・・多分、フェイトちゃんは、なのはちゃんが好きなんや」
一瞬、はやてちゃんが何を言ってるのか理解できなかった。フェイトちゃんが私の事を好き?
「フェイトちゃんには内緒やで?ちょうお節介やし、本人はまだ気づいてないみたいやからな・・・」
そう前置きをして、はやてちゃんはゆっくりと話してくれた。
あのな結構前からなんやけど、フェイトちゃんがなのはちゃんを見てる目がちょう変わってきててな、気にはなっとたんやけど。
授業中でもお弁当食べてる時でもいつも、なのはちゃんだけの事を追ってて、とっても幸せそうだったんや。なのはちゃんも少しは覚えが無いか?いつもフェイトちゃんは見とったんやで。
それで、更に目つきが変わりだしたのが最近や。丁度なのはちゃんを避けるようになった頃かな?フェイトちゃんがなのはちゃんを見る・・・いや、見つめる時の目の色は間違いなく恋する乙女やった。本人はあまり気づいてないようやったけど、文学少女を騙せる思ったら間違いやで。すずかちゃんも気づいていたようやし、あたしの目は誤魔化せんよ。
で、本題はここからや。なんでフェイトちゃんは、なのはちゃんを避けるようになってしもうたか?それはズバリ恥ずかしかったからや。まったくまだまだお子様やね。自分の気持ちが分からずに、どうしたらええか分からんとは・・・。それで、今日にいたっては恥ずかしさがピークに達してしもうて、あんな態度をとったんやな。
なのはちゃんが手叩かれた時、誰が1番驚いた顔をしとったと思う?叩いた本人・・・つまりはフェイトちゃんが1番驚いとったにゃで?なんで自分がなのはちゃんの手を叩いてしもうたんか、分からなかったんや。まぁ、教室を出て行くとき泣いとったし、間違いは無いと思うで・・・。
はやてちゃんの話を聞き終わり、私は驚いていた。確かに、ちょっと友達を超えたスキンシップはあったけどね。まさかフェイトちゃんが・・・フェイトちゃんが私を好きでいてくれたなんて。どうしよう、せっかく止まった涙がまた溢れてきちゃうよ。
「うぅ・・・ぐすん・・・」
口から漏れる嗚咽も、零れてくる涙も止めようとは思わなかった。
それから暫くたって私達は図書館を出る。入った時とは違い晴れやかな気持ちで・・・。
◇
あの後、はやてちゃんから厳重に口止めをされた。勘違いかもしれないし、最終的に決めるのはなのはちゃん自身やと。
私は今、幸せに暮らせていると思う。フェイトちゃんのちょっとした変化にも気付けるようになったし、私自身の気持ちにも整理がついた。
だから今日、本局から戻ったらフェイトちゃんに告白をする。もう夕方だけど夜には会える。そして、会って私の気持ちを伝えるんだ。
なのははフェイトちゃんが大好きです―――
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魔法少女リリカルなのはより
【なのフェイ】百合CPです
「優しき閃光」の続編になります