No.815233

司馬日記外伝 必殺!?八門禁鎖!!

hujisaiさん

その後の、とある華雄さんの受難(?)です。
いや、この世界の方々だったら八門禁鎖(仮)くらい平気で編み出しそうですけどね・・・
御笑覧頂けましたら幸いです。

2015-11-23 13:41:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9624   閲覧ユーザー数:6606

思い出せば、きっかけは華雄とのやりとりだった。それも至極まじめな。

 

「珍しいね、華雄が読書なんて」

「何を言う、私だって軍略書くらい読むぞ」

壁に凭れ掛かって書を披いている彼女を見かけて声をかけたら、顔を上げてさも心外だと言う表情を見せた。

「そっかごめん、華雄ってどっちかっていうと自身で斧を振って鍛錬してる凛々しいイメージがあったからさ」

「統一的に『組織と装備で戦え』と指示したのはお前だろう」

「まあそうなんだけどさ、俺の為にありがとう」

「…月の為でもある…おい、こんなところで馴れ馴れしいぞ」

「まあまあ、俺と華雄の仲じゃない」

失礼な事を言ってしまったのでちょっとリップサービスもしながら横に並んで肩を抱くと、口とは裏腹に照れながらもされるがままなお姉さんマジでチョロ可愛いです。

 

「ところでどんなの読んでるの?」

「用兵だ、戦略というよりは個別の戦術だな。この陣についてだが、お前は経験あるんじゃないか?」

「…あーこれかぁ、うん知ってる、っていうかちょっとだけ覚えてる」

「お前ならどう攻める?」

えーっと、これ演習で汐里(徐庶)さんが説明してたよな。その時の記憶をなんとか呼び起こす。

 

「まず、こっちの二つの門(生門、景門)を同時に攻める」

「軽く当てる程度か?」

「いや、奥深くまで突き刺す感じで。ここが一番の弱点だから」

「こちら(生門)は分かるが、こっち(景門)はそれほどの弱点には思えないが…」

「そうでもない、実際突いてみるとあっという間に乱れる。急所って言ってもいい」

「そうなのか」

「で、体勢が崩れたところを今度はこっち(開門)から突き入る」

「成る程。これは(軍勢の)喉を突かれた形だな」

「あとは全門から攻め立てて、一方的な蹂躙だね」

「既に雁字搦めで成す術無いということか」

「うん」

「そうか…知ると試したくなるな。午後は時間があるだろう、(演習)相手をしてくれないか?」

「えー!?いや、華雄相手じゃ…」

「お前が攻め手なら良いだろう、受ける側で体感してみたい。全力で頼む」

「うーん…それならまぁ、俺なりの全力で」

 

 

そんなやりとりをしたことさえ忘れた頃、事件は起こった。

 

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「あーいたいた!一刀様おっはよーございまーっす!」

「おっはー一刀様ー!」

「…あーうん、おはよう」

詠が『元気があるのとへこたれないとこだけは評価するわ』と呆れ半分で評する玲紗(関平)と藤香(劉封)。

ちょっと色々カッ飛んでるのと常識が色々アレで欲求に正直過ぎるのを除けばいい子達なんだけど、今日は生憎忙しい。

 

「ねえねえ一刀様!」

「うん、悪いんだけど今日は結構忙しいからあんまり遊んでられないよ」

「またそんなこと言ってー!どうせ女の子といちゃいちゃするんでしょ?」

「マジメな会議だよ!来年度予算の」

「いーじゃんそんなのお義母様とかに任せちゃえば。それよりさぁ、私達と!」

「だぁーめだって」

「「『八門禁鎖』しましょーっ!!」」

 

「…は?」

この娘達は二人してポーズつけて一体何を言ってるんだ?

 

「またまたぁ、とぼけちゃって♪華雄さんと話してたの聞いちゃってんですよ?」

「もうとっくに華雄さんが月さんにゲロっちゃって、ウラも取れてんですよ?うーりうり」

「スカートめくるの止めなさいはしたない、兎に角俺もう会議行かなきゃいけないから。詠」

「そうね。ほら、あんた達も巣に帰った帰った」

「あーもー!今度絶対しようね!?」

「はいはい」

なんだか分からないままぷんすことむくれる二人を残して、詠と会議室へ向かう。

道すがら、『八門金鎖』ってナニ?と詠に聞こうとしたら、機先を制され

「あんたそんなことしたの?」

と聞かれた。

 

「そうらしい」

「覚えてないの?流石種馬ね。さ、会議始まるわよ」

そこ種馬関係あるの?と聞き返そうと思ったが既に会議室についてしまった為とりあえず着席し、会議の進行と共に他愛ないやりとりは忘れてしまった。

 

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明らかな異変を感じたのは午後からだった。

「一刀様」

見るからに不機嫌な桐花(荀攸)が執務室にやってきたからだ。

 

ヤバイ。

何がヤバイって既に右手に首輪と縄持参な所がヤバイ。

仕事中は口では色々言ってても意外と常識人で、実力行使には及ぼうとしない桐花がこういう行動に出ている時点でヤバイ。

 

「どうしたの、桐花」

努めて動揺を隠して答えた声は上ずった気がする。

「近親☆上等姉妹から聞きましたよ…」

「?なにを…?」

「なにをですって!?」

髪形こそ違え、伯母とそっくりな顔でくわっと激高する桐花に思わずたじろぐ。

「華雄と『八門禁鎖』したって言うじゃありませんか、私という雌奴隷がありながら!私の編み出した『連環の計』だってあんなに強請って強請って拘束具だってこんなに安全ですからって説明して漸く一回してもらったとこだって言うのに、あんなムッツリスケベ大女にいきなりそんなプレイを許すなんて!これは由々しき不公平、不平等ですっ、明後日の私の番は必ず!必ず!!私の鶴翼の陣を一刀様の鋒矢の陣で滅茶苦茶に突き崩して、『八門禁鎖』で責め抜いたあげくに『鴻門の会』で止めを刺して下さいましねっ!」

 

約束ですよっ、と涙目で突きつけられた首輪と鎖を何故か流れで受け取らされると、ふーっと息をついて彼女は出て行った。

 

知らない言葉が増えたんだけど、と傍らの詠に呟くと、そんな会ボクだって知らないわよと顔も上げずに返された。

とりあえずこの首輪と鎖はどうしよう。

 

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その後もどうにも庁内の雰囲気がおかしい。

 

何か慌しく、俺に隠し事をしているかのようなひそひそ話を方々で見かけた。一言で言うなら、『不穏』だ。

今日は結構会議続きで余り気にしている余裕が無く、廊下を歩いていたら桃香に部屋の外からちょいちょいと手招きされた。何かと思って廊下に出ると、

「あのね?私、ご主人さまとすることならなんでも楽しいなぁって思うんだけどね、でも『八門禁鎖』とか、そういうのはちょっと怖いかなぁって思うんだ?うん、愛紗ちゃんは喜ぶかもしれないよ?でも焔耶ちゃんとか翠ちゃんとか朱里ちゃんとか、そういうのちょっと苦手な娘もいると思うのね。だから人を選んでそういうことはしてね?ご主人さまならそこらへんよく分かってて大丈夫とは思ってるんだけど、一応念のためね?」

と謎の諭され方をした。しかしおかげでここでようやく、俺は誰かに聞くことが出来た。

 

「ごめん桃香、『八門禁鎖』って説明してくれる?」

「え、えーっ…もぉご主人さまぁ、こんなところで恥ずかしいよそんなことっ、それじゃあね!」

「あ、桃香…!」

顔を赤らめて背中を叩かれ、行ってしまった。

 

しかし話の方向性だけは大分掴めてきた、すごく嬉しくないが。って言うかこの流れは。

「愛紗と思春が来る気がする」

「…学校(三国塾)行けば?あそこなら来ないでしょ、仕事は夜こなしてよね」

ちらりと見ながら呟くと、例によって顔も上げずに答えをくれた詠の言うとおりにすることにした。

 

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どうしてこんなことになってしまっているのか。

ぼんやり考えながら校舎内を歩いていると、知っている女の子が歩いてきた。

「一刀さま!」

「やあ、幼達ちゃん。どうしたの?」

守りたい、この笑顔。

「一刀さま!ようたつにも、『八もんきんさ』していただけませんか?」

 

……守りたい、この笑顔。マジで。てかどうなってんだ一体。

 

「…幼達ちゃん、『八門禁鎖』の意味分かる?」

恐る恐る聞くと、笑顔のままふるふると首を横に振った。良かった、まだ汚されてない。

 

流石にここで無垢な幼達ちゃんにありのままの説明をするわけにはいかない、って言うか正しい意味知らないし。

ここは大人の知恵ってやつだ。

「いいよ幼達ちゃん、『八門禁鎖』してあげる」

「ほんとうですか!?」

「それっ、『いちもんきんさー』!」

「きゃー!」

抱っこしてぐるぐると回ってそっと降ろし、再び抱っこ。

「そーれ『にもんきんさー』!」

「きゃー!!」

いかん、降ろして抱っこのスクワット意外にきつい。

 

「ああ~ぐるぐるします~。でもたのしくてきもちよかったです、ありがとうございました!」

「うん、じゃーねー!」

流石に八回もぐるぐるすると俺も少し目が回ったけれど、ぶんぶんと手を振る幼達ちゃんに手を振り返して校舎を後にする。

 

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まだ執務室に戻るには早過ぎる。庁内を(こそこそっと)ぶらぶらしていたけれど生協が近くにあることを思い出し、暇つぶしに行ってみることにした。

そういえば杏(逢紀)さんが今日は生協勤務日なんですよー、と言ってたなと思って生協のレジの辺りを見回したけれど姿が見えない。

と、いう事はあっち(アダルトショップ)の方か。そちらも勤めてると聞いた日に『もー恥ずかしいから一刀さん来ないで下さいねー』と言われていたけれど、会わずに帰るのも何かさみしいからこっそり見てみようと近づいたところで物凄く聞き覚えのある声を聞いて店の外に慌てて隠れた。

「売れないとはどういうことだ!」

「ですからぁ、そこに張り紙してますけど売り切れなんですって…」

「まだ発売して三日だろう!?」

「そ、そうなんですけどぉ、なんだかわかんないんですが昨日から物凄い勢いで売れて売れて、予約ももう十件待ちなんですよぅ」

「判った、では予約者目録を見せろ。呉の女ならこちらで交渉(物理)してくる」

「私も見せてもらおう、蜀の女が居れば私も相談(偃月刀)してみたい」

「えぇー…これ個人情報で見せられない決まりなんですけど…」

「そうかまず貴様と話し合いが必要か、貴様は鈴の音を聞きたいか?」

「まあ待て思春、刃物はいかん。ほら逢紀とやら私は『素手』だ、素手同士でちょっと給湯室で話し合おう」

「ひ!?わわわ判りましたっ、これ『八門禁鎖プレイセット』予約者目録ですから!私巻き込まないでください!」

 

マジで一体何が起こっているんだ…とりあえず杏さんは後で慰めておこう。

 

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室内に怪しい人影がないのを確認してから、忍び込むように執務室に滑り込んで扉を閉める。

部屋には相変わらず顔も上げずに書類に何事かを書き込んでいる詠だけだ。

 

「はー…やっと帰ってこれた…」

「…」

溜息を吐きながら自分の机に座ると、詠が無言でこちらをみていた。

「…?」

「…ちょっと来なさいよ」

「…どしたの」

真顔で抑揚もない声に、理由のない悪い予感を感じて胃の辺りが重くなるが詠の前に座る。

「あんたさ」

「うん」

 

 

 

 

 

「幼達ちゃんとまで『八門禁鎖』したって本当?」

「」

 

 

 

 

……………これアカンやつや。

今思えば当たり前すぎる、やっちゃいけない誤魔化し方を幼達ちゃんにしてしまった事に今やっと気づいた。

言葉が出ず、視線を落とす。

「幼達ちゃんがしてもらったって言ってたって聞いたんだけど。気持ちよかったって言ってたのが救えない救いだけど。…………したのね?」

「…いや、したっちゃしたけど、それは」

「もういいわよ」

拒絶の言葉に顔を上げると、詠の目尻に小さく涙が浮かんでいた。

「あ、あんな小さな子にまでそんな事するの?」

「ちょっと待て、」

光の粒は見る見る盛り上がっていく。

「そこまで見境無しなの?女だったら本当に何でもよかったの?」

「違う、それは誤解で!」

真珠の粒は拭われもせず、詠の頬を筋になって伝い落ちる。

「ボ、ボクじゃだめなの?ううん、ボクだけじゃないのは判ってるつもり、で、でも小さい娘がいいんなら月だって桂花だって、お願いすれば風も朱里も雛里もあんたがしたいったらしてくれるわよ?ボクもここんとこ仕事の為にってあんたに酷い事言ったかもしれない、でもここまであんたが女だったら何でもよくていくらでも変態になっていって、な、なんかボク淋しくなっちゃったっ…」

「聞け!頼む聞いてくれ!」

 

 

すんません、神様。俺今日何悪い事しました?謝るんで教えて下さいマジで。

 

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執務室の長椅子で、抱きかかえた詠がずー、と鼻をすする。

「…日頃の行いが悪いのよ」

「御尤もで」

涙目で漸く話を聞いてくれた詠の悪態に、ひたすら下手に出る。

「ところで聞きたいんだけど」

「何よ」

「皆の理解してる『八門禁鎖』って」

「だいたいあんたの想像してる通りよ」

「つまり鎖で縛って後ろと前、あたっ」

「言うな変態!」

腕の中の詠から顎にヘッドバッドを食らった。

 

『八門禁鎖』、そんなもんは無くって皆さんの想像の産物です(御丁寧にアダルトグッズまで)。そう皆に理解してもらうのにどれくらいかかるだろうと想像して少し憂鬱な溜息を吐くと、詠が再び胸元に頭をぶつけてきた。

「ん?」

「…で、したいの?」

「は?」

「だから、したいのかって聞いてんの!」

こちらを見ずにうなじを赤く染めた詠にようやく察した。

「いや、詠とはこうしたい」

「…ん。…ばーか」

健気さにちょっとじーんとしながら、胸元に収めた彼女を抱き上げるようにして頭を撫でながら唇を重ねると、目の前の大きな瞳が蕩けていく。

いつもイライラさせてごめんな、詠。

 

-------------------------

 

「(月様ー…一刀さんと賈詡さんの夕飯お持ちしましたー)」

「(あ、はーい。杏さん有難う御座います…そーっと、ここに置いてって下さい)」

「(はーい…月様の分はまだいいいんですか?)」

「(私は後で食べますので…)」

 

今回は私が詠ちゃんを泣かしちゃったようなものだ。もう少し、この前室で門番をしてないと。

…それにしても今回は余計な事を言ってしまった。

長いお付き合いなので少し寝過ごして出勤された華雄さんを辺りも確かめずにちょっとからかってしまったのが良くなかった。

 

『…おはよう、遅れて申し訳ない』

『お早う御座います、華雄さん。…うふふ、夕べ御主人様と鍛錬をちょっと頑張り過ぎちゃいました?』

『えっ…あ、あ、いやっ、その、じ、陣形の研究を!ああ、新しく覚えた八門禁鎖を二人で研究していてな!』

『ふふっ、お二人とも体を壊さない程度にして下さいね』

『わ、分かっている!』

 

最近めっきり女性らしくなられた華雄さんが照れる様が可愛らしくて、近くを通り過ぎた近親☆上等姉妹が闇夜の猫のように目を見開いて何事かひそひそと呟いて駆け去っていったのを見逃した私が悪いんです。

 

…まあ、尤もそこから余計な妄想を広げてあちこちに吹聴して廻った彼女達が一番悪いんじゃないかと思うんですけれど。うふふ。

「(ひ!?ゆ、月様髪が!髪が逆立ってます!?)」

「(はっ?…いえ、見間違いですよ。杏さんも夕飯戻って下さい)」

「(あ、あれ…確かにさっき…?)」

「(あとすみません、汐里(徐庶)さんに、玲紗(関平)さんと藤香(劉封)さんをメイド控え室に呼んでおいてもらえるようにお伝えしてもらえませんか?)」

「(了解でーす、じゃあそれではー…)」

扉越しに時折漏れ聞こえる詠ちゃんの声を背に、静かに小走りで去っていく杏さんを見送りながらこの後の事に頭を巡らす。

やっぱりちょっと、やんちゃ過ぎる娘達にはちゃんと指導してあげないとね。

 

 

 

 

うふ。うふふふふふふふふ。

 

 

 

 

 

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(おまけ)

 

「おー・・・華雄、やっと見つけたで」

「なんだ霞。・・・おい、お前酔ってるな」

「ええやんか、うち非番やし夜やし・・・ところでうちな、あんたに忠告したい事があんねん」

「構わんが、手短にな。余り部下の前で酔った姿は教育上宜しくないぞ」

「わーっとるわーっとる・・・それよか言いたい事言うんはな」

「ああ」

「あんま、人の性癖に口出しする気も無かってんけどな」

「?」

「目隠しに猿轡まではまあええとして、鎖で縛られてその先端を〇〇〇に引っ掛けて後ろから責めさせるゆうんはちょっと行き過ぎや思うねん」

「ななななななな何を言ってるんだお前は!?」

「いや隠したいのも分かるけどな、もう皆知っとる事やろ?それよかうちが言いたいんはな、あんま変態じみた事やるんはあんたの為にも一刀の為にもならんて話や」

「し、してないぞそんな変態じみた事は!?」

「わーっとる!わーっとるって!ホンマは八門のはずやったのに鼻フックは一刀がするの嫌がって結局前と後ろと口の三門しか突っ込まれへんかったんが不満やったんやろ?けど眼と鼻はよした方がええで、ヘタしたら失明もんやで」

「だからしてないって言っているだろうが!?お、お前らもそんな眼で見るなっ、聞いてるか李傕!?郭汜、樊稠っ!?」

「そや、こんなんでも御前等の上官や。自分らも女ならわかるやろ、普段むすーっと斧振るっとっても夜になれば一人の女や、ちょっとぐらいハメ外してたりハメたりして変態だったかて大目にみたり?けどな、あんま業の深いのは一刀も大変やからほどほどにな?」

「いいからお前は人の話を聞け!そして御前等もこんな話に真面目な顔で敬礼するなぁーっ!?」

 


 
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