No.809210

定期決行海上護衛

Shanghai_Dさん

適当に

登録タグはありません

2015-10-21 01:55:16 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:117   閲覧ユーザー数:116

 
 

 自分たちの拠点の膝元で散発する輸送艦の撃沈案件に対し、対潜定期哨戒任務を実施。その為の出撃部隊の編成表と人員の招集を確認し、旗艦日向が号令する。

「正面海域の定期警戒だ。吹雪、千歳、五十鈴、行くぞ。」

 出撃用射出カタパルトが轟音を上げ4人の艦娘を海原へと送り出す。頭上には穏やかな青空が寝そべっていた。

 

 

 

 鎮守府のドックが水平に半分程沈んだところ。周辺の状況の定期報告が行われる。

「定期報告。」

「「異常なし!」です!」

 声を張り上げ二人が回答し、続いて千歳の報告。

「江草隊、村田隊、彩雲共に感なしです。」

 日向は報告を聞き遂げると艦隊へと次の指示を出す。

「了解。そろそろ折り返しだ、気を抜くなよ。」

「了解です!」

 3人の声が重なって水平線へと吸い込まれていき、再び波を裂く音だけの世界になった時だった。吹雪が炸裂音と共に悲鳴を上げる。

「きゃあっ!」

「五十鈴っ!」

「ソナーに感、潜水艦です!」

「位置は!」

「30…急速潜行したみたい、位置ロストです」

「30…そこかっ!」

 日向は敵影を喪失した周辺へ水上機を飛ばし絨毯爆撃を行う。

「吹雪、損傷状況は?」

「ち、中破…まだ動けます…」

 直後海面が盛り上がり敵撃沈が確認される。

「仕方がない、撤退だ。対潜警戒を厳とす…!」

「ああっ!?」

「千歳さきゃあ!?」

 帰港指示を出した矢先だった。千歳、五十鈴が相次いで損傷。

「ソナー!」

「て、敵影多数…感知しただけでも8隻…いえ、もっといます!」

「晴嵐!瑞雲!」

 顔を青くする五十鈴を後目に日向は全ての機を発艦させる。が、その直後魚雷が直撃する。

「くっ…!鎮守府聞こえるか!こちら対潜警戒班、敵潜水艦の攻撃を受けている!至急うわっ!」

 再び着雷。同時に五十鈴、千歳も再度被雷、航行不能に陥る。

 発艦に成功した水爆機がソナーに映った敵に喰らい付き撃沈していく。が、戦局は詰み。

「そ、そんな…!」

「吹雪、お前だけでも逃げろ、このままでは全滅する…!」

「で、でも」

「行けっ!」

 叫ぶと同時に吹雪を押す。刹那、吹雪を狙った魚雷が日向に突き刺さる。

「浸水…ここまでか…」

 複数箇所で海水が湧き上がる。

「吹雪ちゃん、逃げて!」

「敵はこっちで引き付けます!急いで!」

 千歳が手動で艦載機を発艦させ、五十鈴は爆雷を手あたり次第に沈めていく。

「わ、私…私だけ……逃げるわけにはいきません!」

 吹雪は叫ぶと鎮守府とは逆方向へ疾走する。

(包囲の外から…!)

 ソナーに映る包囲網を抜け、爆雷投射機に点火。探知機を頼りに眼下の船団へと降らせる。戦果を確認する間もなく時計回りに移動を再開。包囲網に沿って爆雷を投下、包囲を丸ごと殲滅する形で撃破していく。

 そして着雷。幾つもの海面の沸騰が発生すると同時に探知機の影が目減りしていく。

(あと…4…違う、6、7、10!?増えてる…でもまだやれる!)

 残った燃料と爆雷の全てを注ぎ込み、最後の攻撃を開始しようとした途端、急激に速度が低下する。

(えっ…さ、最初の被弾が…!)

 吹雪の困惑をよそにソナーは包囲の再構築を体現していた。

「日向さん!五十鈴さん!千歳さん!」

 吹雪の視界が滲み始める。叫びに乗せた必死の思いは届くことはなく。水面が炸裂し、吹雪は顔を伏せる。

「………!!」

 歯を食い縛り、目を伏せ、目前に迫った自分の死を覚悟した。

「……………!」

 辺りは静まり返る。死を告げる痛みも、仲間の断末魔の爆発音も聞こえてこない。吹雪は恐る恐る目を開ける。目の前には浸水しかけの日向をなんとか支える五十鈴と千歳の姿があった。周辺を見回すが、救援部隊が着た様子もなく、空模様すら我関せずと快晴の様相を示していた。手元のソナーに目を落とす。すると自分の後方から接近する6隻の分の影と無数の小さな影が映り込んでいた。小さな影は敵潜水艦の影を襲い、一つずつ消していく。ソナーの間隔毎に敵艦影は減っていき、瞬きをしている間に全滅した。

「イヒヒ、危なかったのね。」

 足元からした声に思わず小さな悲鳴を上げ後ずさる。体勢を立て直し、声のした場所を見ると、伊号潜水艦隊がいた。

「い、いくちゃん!みんな!どうしてここに…」

「カレー洋の帰りでち!」

「これは残業代が必要ね」

「はーい!しおい間宮さんのパフェがいいな!」

「ユーも…」

「たまにはいいわね…パフェ」

「早く帰るのね!」

 彼女たちは唖然とする吹雪のことなどお構いなし。足を引っ掴んで乱暴に引っ張っていく。

「ま、まってまって~!」

「他のみんなも引っ張っていきましょ」

 ふと視線を上げると、一箇所に集まっていた日向達も彼女たちに足を掴まれ乱暴に引っ張られていくところだった。

 
 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択