◆CONTENT◆
小ネタ劇場 其の一
小ネタ劇場 其の二
小ネタ劇場 其の三
小ネタ劇場 其の四
小ネタ劇場 其の五
はじめての経験
王家の兄弟
義姉妹の会話
忘れられた男
力なき心強き者
小ネタ劇場 其の二
義兄の資格
「よお」
「じゅ、十七号!」
「久しぶりだな」
「元気だったか? 今はどうしてるんだ?」
「オレは適当に暮らしてるさ。自由に生きていければそれでいい」
「そうか。だけど、たまには遊びに来てくれ」
「……おまえ、十八号と結婚するらしいじゃないか?」
「あ、ああ」
「オレは、オレより弱い男を『義兄』にするつもりはないんだ」
「そりゃあ、オレは強さではおまえにも十八号にも敵わないけど、それでも…!」
「――――ジャンケン」
「へっ?」
反射的にパーを出すクリリン。
「なんだ、オレの負けか」
十七号はグーを出していた。
「仕方ない、認めてやるか。ただし返品不可だからな」
「ええと…十七号?」
「たまには来てやるから、尻に敷かれるなよ」
装飾性と実用性
「ねえ、ベジータ。これとそれ、どっちがいい?」
「……昼間から下着姿でうろつくな」
「別にいいじゃない。あんたしか見てないんだし」
「どっちでも変わらん」
「昔からそうよね、あんた。興味ないとか言っちゃって」
「フン」
「でも、今は違うでしょ」
「なにがだ?」
「興味ないなんて言わせない。好みの色やデザイン、あるわよね?」
「…ない」
「嘘つき。あたしの目はごまかせないわよ。下着によっては若干テンションに差があるの、知ってるんだから」
「――――――」
「だから、こうして訊いてるんじゃない。どんなものがいいかって」
「………訊かなくていい」
「今度、思いきり過激なの、試してみる?」
「いらん!」
「だって、どうせなら気分が盛り上がるものがいいでしょう?」
「結果的には無意味だろう」
「なんでよ?」
「どうせ短い時間しか役に立たない。実用的じゃないだろうが」
「まあ、それもそうかもね」
二人のベジータ
「な、なんでオレが目の前にいるんだ!」
「それはこっちの台詞だ」
「ごめんね、ベジータ。実験に失敗しちゃったみたいで」
「だから、おかしな実験に付き合わされるのは御免だと言っただろう!」
「どんな天才にも失敗はつきものだ。気にするな」
「こっちのベジータ、妙に優しい。ベジータの口からそんな言葉が聞けるなんて」
「おい、おまえ! オレのくせに気色悪いことを言うな!」
「なにを言う。オレはサイヤ人の王子らしく振る舞っているだけだ」
「つまり、人体実験の影響でツンとデレに分離しちゃったわけね」
「冗談じゃない。早く元に戻せ!」
「実験失敗でこうなっちゃったんだから、あたしにもよくわからないのよ」
「そのうちなんとかなるさ」
「ふざけるな! こんなオレらしくない野郎は、早く消してしまえ」
「案外面白いかも、ベジータが二人って。しばらくこのままでもいいんじゃない?」
半分以上本気のブルマに、二人のベジータの反応は分かれる。
「時間が経てば元に戻る可能性が」
「こんな異常な状況、一刻も早くなんとかしろ!」
「とりあえず対応は考えるけど、その前に訊きたいことがあるの」
「なんだ、さっさと言いやがれ」
「ちゃんと本心で答えて。あたしのこと好き?」
二人とも挙動を止めたあと、ツンのベジータがデレのベジータを見る。
「ブルマ。オレは――――」
「言わせねえぞ! てめえ、勝手になにを言う気だ!」
デレベジータの口をツンベジータが塞ぎ、ベジータ同士で揉み合いになってしまう。
「なにって、正直な気持ちを」
「オレに無断で勝手なことを言わせるか!」
「無断って、オレもおまえも『ベジータ』だろう」
「そうだけどそうじゃないというか、とにかく許さん!」
二人のベジータが本気で互いを殴りあうと、衝撃で一人に戻った。
「なんだ、もう元に戻っちゃったのか」
「どうして残念そうなんだ。あのまま二人に分裂してたら、面倒この上ないだろう」
「そうかな。あたしは結構いいなと思ったんだけど」
「……………」
「ねえ、もう一回実験しよう。また二人に分かれるかも」
「断る!」
はじめての経験
ベジータの弟、ターブル来訪から起こった事件は無事に解決した。
「兄さん、皆さん、本当にどうもありがとうございました」
ターブルは礼儀正しく頭を下げる。
「気にすんな。オラは毎日、畑仕事で身体がなまってたから、ちょうど――――」
「悟空さ!」
聞き捨てならない台詞に、チチが悟空の耳を引っ張る。
「チ、チチ。そんなに怒るなよ!」
「畑仕事のなにが不満だべ。悟空さは結婚してから一度も働いたことがなければ、お金を稼いだこともないくせに。せめて、自分の食べる分は自給自足してくれねえと。ただでさえ、悟空さは大飯食らいなんだから、畑仕事くらいしてくれたってバチは当たらないべ!」
「わ…わかったって。チチ」
悟空はそのまま強制連行されてしまった。
「………あ、あの」
「あのバカのことは気にするな。それより、おまえもサイヤ人王家の血を引いているのなら、今度こういう事態が起きたときは、自力でなんとかできるようになるんだな」
唖然と悟空を見送るターブルに、ベジータは腕組みをしたままで話す。
「はい。わかってます。生まれつき戦闘に向かないと言っても、ボクも誇り高き戦闘民族のサイヤ人ですから。大事なものを自分で守れるくらいには強くなりたいです」
ターブルは、妻のグレに視線を向けた。
「ねえ、それよりさ。二人ともすぐ帰ったりしないでしょう。せっかく遠くから地球まで来たんだし、ゆっくりしていきなさいよ」
そこへブルマがやってきて、地球滞在を提案する。
「えっ? でも…」
「遠慮しないで、あんたの兄さんが暮らしてる地球を観光すれば。あんたの住んでる星って、ここからすごく離れてるんでしょ。次はいつ会えるかわからないんだし。長い間、生き別れてた兄弟が会えたんだから、この機会を無駄にしないで絆を深めれば? ――――ベジータ。あんただって、ターブルくんともう少し一緒に過ごしたいでしょ?」
明るく笑うブルマに、ベジータは視線をそらす。
「…オレは」
「無理につっぱらない。意地を張らないで、素直になりなさいよ」
「あの、兄さん」
兄が困惑している様子を見て、ターブルもどうしたらいいか戸惑う。
「急ぐ必要がないのなら、しばらくいればいい」
「でも……」
不安そうに顔を見合わせるターブルとグレ。
「まだなにかあるのか」
「その…大丈夫ですか? この場所をあんなに壊してしまって。ボクたちがやってきたせいで、建物が滅茶苦茶に……」
申し訳なさそうに告げるターブルに、ブルマが一笑する。
「ああ、いいの。ミスター・サタンなら、こんなホテルの一軒や二軒、なんてことないから。余計な心配しなくていいわ。もし弁償しろって言われたら、ちゃんと払っておくから」
「は、はあ」
「それより西の都にいらっしゃい。家はすごく広いから平気よ。心置きなく滞在していって。いいでしょ、ベジータ」
「好きにしろ」
味気ない応諾は、どうやら照れ隠しらしいと理解するターブル。
「じゃあ、お世話になります。…義姉さん」
「義姉さん? あ、そうか。ベジータの弟だから、あたしは『義姉』になるわけね。初めての響き。結構いいものね。『義姉さん』だって」
初めての経験に、くすぐったい気分になったブルマは、隣にいるベジータの肩を叩いた。
「おい、人の肩を叩くな」
「だって。あんたって天涯孤独だと思ってたから、そう呼ばれるなんて初体験で嬉しいんだもん」
「――――……」
苦々しい表情を浮かべるベジータに、まったく動じないブルマ。
兄と義姉のやり取りを目の当たりにしたターブルは、兄の奥さんになれるだけのことはあると思わずにいられなかった。
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ベジブル中心オールキャラのショートストーリー集。
ダウンロード版同人誌のサンプル(単一作品・全文)です。
B6判 / 048P / \100
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