No.803189 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルートsoranoさん 2015-09-20 00:39:23 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1110 閲覧ユーザー数:1009 |
~オーロックス峡谷~
「……完全に気絶しているな。」
「去り方もIBCの時と同じだね。」
「全くよ。色々な意味で全然進歩していないわね。」
地面に倒れているセレスタンの状態を確認したアルゼイド子爵は静かな表情で呟き、その様子を見て呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたレンは呆れた表情で頷いた。
「何とかこの場は凌げたけど、厄介な事になったわね……」
「ああ……貴族連合の残党がリベールに侵攻をすれば、例えどのような理由であれ、リベールからすればエレボニアによる侵略行為になるから、ユミルの時みたいに最悪はリベールと戦争状態に陥ってしまう……!それだけは何としても防がないと……!」
「せめて貴族連合の残党のリベール侵攻がエレボニアの総意ではない事をリベールが前もって知っていれば、戦争にまでは発展しないと思いますが……」
ヴァリマールから降りたセリーヌの言葉にリィンは真剣な表情で頷き、同じようにヴァイスリッターから降りたエリゼは真剣な表情で考え込んでいた。
「―――兄上!皆さん!」
「皆さん、ご無事ですか!?」
するとその時カレイジャスを近くに停泊させたセドリック皇太子がアルフィン皇女達と共にリィン達に近づいてきた。
「姫様!?」
「そ、それにトワ会長達やパント卿達も……!」
自分達に近づいてきたセドリック皇太子達を見たエリスとエリオットはそれぞれ驚いた。
「みんな、お疲れ様。」
「よかった……みんなが無事で……」
「フフッ、”Ⅶ組”のみんなもそうだけど、他のみんなも本当によく頑張ったよ。」
「私達の助力無しで貴族連合の残党を食い止める話を聞いた時は当初不安でしたが、杞憂に終わって何よりですわ。」
「ええ。さすがは”獅子心皇帝”の意思を継ぐ若き獅子達ですね。」
ジョルジュとトワ、アンゼリカはそれぞれリィン達を労い、シグルーンとルイーズは微笑んだ。
「デュバリィ達も彼らと共によくぞ耐え抜いてくれました。私の代わりに彼らと共に貴族連合の残党を喰い止めた事……本当にありがとうございました。貴女方は私の”誇り”です。」
「マ、マスター……!私達も私達の”主”がマスターである事が誇りですわ!」
「マスターにそう言って頂けるとは、光栄です!」
「フフ、それに私達はマスターにお仕える身として当然の事をしたまでです。」
リアンヌに労われたデュバリィは感激し、アイネスとエンネアはそれぞれ明るい表情で答えた。
「厳しい戦いに勝利してお疲れ様……と言いたい所だが、その様子では何かあったようだね?」
「え…………あ……エリス、一体何があったの?」
それぞれ重苦しい空気を纏っている事を指摘したパントの言葉に呆けたアルフィン皇女は不安そうな表情をした後エリスに尋ねた。
「そ、その……姫様、セドリック殿下。お二人ともお気を確かにして聞いて下さい――――」
そしてエリスはリィン達と共に事情を説明した。
「そ、そんな……ようやく内戦が終結し、メンフィル・クロスベル連合の侵攻を中止する事ができたのに、今度はリベール王国と戦争になるかもしれないなんて……」
「リベールのアリシア女王陛下は”不戦条約”を提唱した事からして恐らく他国との外交問題が発展した際”戦争”をできる限り避け、話し合いで外交問題を解決する傾向だと思われる為、幾ら貴族連合の残党がリベールに侵攻したとしてもすぐにはリベールと戦争状態に陥らないと思うのですが……」
「で、でも……”百日戦役”の件があるし、幾ら女王陛下が戦争に反対していても、周りの人達の反応を考えればわからないよ……?」
「”百日戦役”でエレボニアはリベールに多くの被害をもたらしたからね……」
事情を聞き終えた後悲痛そうな表情をしているアルフィン皇女にアンゼリカは自身の推測を答え、トワとジョルジュはそれぞれ不安そうな表情で考え込み
「―――例えリベールと戦争にならなかったとしても、謝罪は当然として賠償もする必要があるだろうね。」
「ただでさえメンフィルへの賠償やエレボニアの復興の為にエレボニアから多くの財産が失われる事になるんだから、これ以上の賠償は防がないと幾ら”救済条約”で多額の金を受け取っても、将来的に考えればエレボニアの財政は不味い事になるんじゃねぇのか?」
「それにリベールに賠償することになったとしても金銭だけで済めばまだいい方よね……」
「そうですね……ただでさえエレボニアは”百日戦役”の賠償もしていませんから、恐らく金銭だけで済ます事は難しいでしょうね。」
「……最悪はメンフィルの時のように半分以上も削り取られたエレボニアの領地の一部をリベールに贈与する事になるかもしれんな。」
「パント卿。何かいい案はないでしょうか……?」
オリヴァルト皇子とトヴァル、プリネとツーヤ、そしてユーシスのそれぞれの推測を聞いて辛そうな表情をしていたセドリック皇太子は懇願するかのような表情でパントを見つめた。
「………………まず一つは貴族連合の残党がリベールに侵攻する前にエレボニア皇族がアリシア女王陛下、あるいはクローディア王太女殿下に事情の説明をする必要があります。貴族連合の残党がリベールに侵攻する前に事情をリベールが知っていれば、少なくても戦争に発展する可能性を大きく減らせます。ただしヨアヒム・ギュンターの発言を考えれば今から約3時間以内に実行する必要がある上、リベールの王族の方達だけでなくリベール王国政府も納得させる為にもアリシア女王陛下やクローディア王太女殿下と個人的に親交のあるオリヴァルト殿下だけでなく、現エレボニア皇帝であるユーゲント陛下か皇位継承権を持つセドリック殿下やアルフィン殿下の説明も必要になるかと思われます。」
「という事は兄上だけでなく僕達か父上もリベールに向かう必要があるという事ですね。父上達はメンフィルに対する保証の為に現状バリアハートから動けない状況ですから、僕達が行くべきですね。」
「当然わたくしもエレボニアとリベールが戦争にならない為にもお父様達の代わりにリベールに向かいますわ!」
「問題は3時間以内に殿下達をリベールに送り届ける”手段”だが……」
「―――カレイジャスでリベールに向かうべきかと思いますわ。カレイジャスが出せる最高速度でしたら、3時間以内でリベール王国の王都グランセルの到着は容易に可能ですわ。」
「そうね……トリスタからルーレまで1時間くらいで行けるカレイジャスならリベールまでもすぐに行けるわね……!」
パントの説明を聞いたセドリック皇太子とアルフィン皇女がそれぞれ決意の表情で答えるとアルゼイド子爵は真剣な表情でカレイジャスを見つめ、アルゼイド子爵に続くように答えたシャロンの話を聞いたアリサは真剣な表情で呟き
「フム……他は何をすればいいのかな?」
オリヴァルト皇子は納得した様子で頷いた後続きを促した。
「二つ目はパルムに駐屯している正規軍に連絡して彼らをハーケン門方面に進軍させ、リベールに侵攻しようとする貴族連合の残党を貴族連合の残党を操る術者であるヨアヒムを討伐するまで喰い止める事です。勿論ハーケン門に駐屯しているリベール軍にも前もって連絡や説明をする必要はありますが。」
「……問題はパルムに駐屯している部隊だけで貴族連合の残党を喰い止められるかどうかですね。」
「それに肝心のヨアヒムを討たない限り、貴族連合の残党は例えどれだけ傷つこうとも戦闘を続けるでしょうね。」
パントの話を聞いたシグルーンとサラ教官はそれぞれ厳しい表情で考え込み
「ねぇねぇ、クレア~。ヨアヒムの居場所はまだ判明していないの~?」
ミリアムは真剣な表情でクレア大尉に尋ねた。
「―――いえ、ヨアヒム・ギュンターが潜伏していると思われる居場所は既に判明しています。」
「ほ、本当ですか!?」
「―――まさか僅か一日でかつては西ゼムリア大陸の国家が血眼になって探した”D∴G教団”の居場所を探り当てるなんて、さすがは”鉄血宰相”直属の”情報局”ね。」
「それでヨアヒムはどこにいるの?」
クレア大尉の口から語られた驚愕の事実にマキアスは驚き、クロチルダは情報局の手際に感心し、フィーは真剣な表情で尋ねた。
「―――ジュライ特区郊外にあるかつての”D∴G教団”の”ロッジ”――――”ジュライロッジ”の付近の森にカイエン公の専用艇が乗り捨てられてあった事や更に”ジュライロッジ”に大人数の人間達が入った痕跡を情報局が確認しました。以上のことからして恐らくヨアヒム・ギュンターは”ジュライロッジ”に潜伏していると思われます。ただ入口は巨大な門で堅く閉じられている為、潜入調査は断念したとの事ですが……」
「”ジュライ特区”という事は……!」
「……クロウの故郷か。」
「クロウ…………」
「………………」
「そ、それにカイエン公の専用艇も停泊していたという事はパトリックさん達もその”ジュライロッジ”という所にいる可能性は高いですわよね?」
「ええ……そして恐らくパトリックさん達同様幽閉の身になったカイエン公もそこにいるのでしょうね……」
クレア大尉の話を聞いたラウラは目を見開き、ガイウスとリィン、クロチルダは複雑そうな表情をし、セレーネとエマはそれぞれ不安そうな表情をしていた。
「―――リーヴェルト大尉。ジュライ特区の郊外にヨアヒムが潜伏していると言っていたが、ジュライ特区内に異常はないのか?」
「それが……現在のジュライ特区内は貴族連合の残党どころか、悪魔や魔獣達も徘徊しているとの事です。そのお蔭で早期にヨアヒムの居場所を判明できたとの事ですが……」
そしてレーヴェの質問に対し、クレア大尉は重々しい様子を纏って凶報をその場にいる全員に伝えた。
Tweet |
|
|
2
|
2
|
追加するフォルダを選択
第90話