No.802533

IS ゲッターを継ぐ者

第十四話、今回で原作一巻は終了です。

2015-09-16 17:26:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:831   閲覧ユーザー数:819

 

〜光牙side〜

 

 

 はいドーモ、皆さん。光牙です。

 

 右腕の骨(主に間接と肩部分)がグキッとなり、絶賛サポーター装着中です。

 

 しかもメインの利き腕なんで日常生活送るのも大変ですよー動かしただけで痛いッスから。

 

 ワッハッハッハ。

 

 

「ハッハッ……はぁ」

 

 

 自分で言っといて何やってんだろ、僕。怪我は笑うもんじゃないし、自分が無茶したんだから自業自得。先生の? あれはノーカン、メンドイから。

 

 

「……しかし」

 

 

 やはり来たかメカザウルス。

 

予想以上の強さだった……。データでスペックを見るのと、実際に戦うのでは違いがよく分かる。

 なんとか倒したけど、このままじゃ不味いのがハッキリ分かった。ゲッターでも太刀打ちするのがやっとで、IS相手だともっとヤバイことになる。……最悪の場合だって嘘じゃない。

 

 まだメカザウルスは一体。これからも襲ってくるだろう。

 

 ベーオもボロボロだし、何か対策を練らねば。うむむ……。

 

 コンコンッ。

 

 

「ん?」

 

 

 悩んでいると、部屋のドアにノック。

 

 

「はいはい、今出ますよーっと」

 

 

 ガチャっとな。

 

 

「や、光牙君」

 

「体調はどうだ?」

 

「更識さんに織斑先生。更識さんはお久しぶりですね。何話ぶりですかね?」

 

 すると、ズルッと態勢を崩す更識さん。

 

 

「ちょ、挨拶で何話ぶりですかはないでしょ! 確かに最近出てなかったけど!」

 

「そりゃ失礼しました」

 

 

 作者も謝りなさい、一応この人生徒会長なのだから。

 

 ※申し訳ないです。

 

 

「私は出ているぞ」

 

「……あぁ、ダメだわこれ」

 

 

 顔を手で押さえ落ち込む更識さん。どうしたのよ、一体。織斑先生の? いやこれはいつものでは。

 

 

「もう麻痺してるのね……。とにかく上がらせて頂戴……」

 

「どうぞどうぞ」

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがと」

 

「すまんな」

 

 

 お盆にポカリの入ったコップを乗せて二人に渡し、お菓子はクッキーを出す。

 

 僕の分のポカリを取りにいって戻ると、更識さんのコップは空になっててテーブルに伏せてる。

 

 

「どうしたんすか更識さん。そんなに疲れて」

 

「君のせいでしょ!?」

 

「えっ、そうなの先生?」

 

「知らん。そんなのは私の管轄外だ」

 

 

 それは違う人のじゃないかな、うん。

 

 

「光牙君さ……今まで女の子の友達とかいなかったの?」

 

「な ん だ と」

 

「先生、リアル顔しなくていいです。でも友達ですか……。そんなもんいませんよ。学校で居た奴等なんざ、みーんな僕を避けてましたから。学校なんて所は、僕にとって嫌いで嫌いでしょうがない」

 

 

 脳裏にこびりついた風景が甦る。

 

 ボロボロにされた鞄、破かれた教科書、折られた鉛筆、汚された靴、降ってくる椅子と机……思い出したらキリがない。

 

 悪意のたまり場みたいな場所でしかなかった。

 

 先生と生徒会長の前? 知らんがな。それこそ僕の管轄外です。

 

 

「……だからですかね、友達とかよく分からないんです。ゲッターロボで戦ってる時は、そんなの考える暇すらありませんでしたし」

 

「人を好きになるとかは? 気になる人とか」

 

「……いませんよ」

 

 

 號さん達や竜馬さんらは仲間や師匠って感じで、敷島博士は……うん。ぶっちぎりなマッドサイエンティスト。

 

 女といえば“彼女達”だろうけど、あれは違うだろう。向こうから付きまとってたんだから。だから別の“アレ”もノーカンだ。うん。

 

 記憶ごと飲んでしまうみたいに、自分のコップにポカリをついで一気にあおる。

 

 コップはキッチンに置いてきて座り直す。

 

 

「……それより今は、メカザウルスです」

 

「あの怪獣ね」

 

 

 更識さんも見ていたのだろう。顎に手をあて思い出してるみたいだ。

 

 

「とんでもなかったわね。あの強さ。武器とかだけじゃなく、ハッキングまで仕掛けてくるなんて」

 

「えぇ。しかも一体に過ぎません。恐竜帝国が本腰を入れたら、アレより強いのがわんさか出てきます」

 

 

 過去の記録だと、早乙女研究所へ何十体ものメカザウルスが、ニューヨークには何万も侵攻したらしい。

 

 それを聞いた更識さんや織斑先生は、流石に固まっていた。今侵攻されたら、学園はひとたまりもない。

 今、ゲッターはベーオだけ。しかも本調子じゃない。

 

 ISや残る力を集めて、これから来るであろう恐竜帝国に、果たして立ち向かえるのか。

 

 皆を守れるのだろうか……。

 

 

「光牙君、考え過ぎよ。今考えても分からない事はいくらでもあるでしょ?」

 

「考え過ぎって、恐竜帝国を放っておく訳には……」

 

「更識のはそう言う意味でない。今考えても答えが出ないと言ってるんだ」

 

 

 それは、確かにそうだ。恐竜帝国が次にいつ来るか、どれだけの戦力なのか。どう考えて分からない。

 

 

「でも何も考えない訳にはいかないでしょう?」

 

「そうじゃないって」

 

「お前という奴は……」

 

 

 呆れてため息までつく二人。

 

 え、何故?

 

 

「変なところまで一夏そっくりだ」

 

「一夏さんに?」

 

「あぁ。一時期中学を出たら働く、などと言っていたのだぞ。千冬姉だけには世話をかけれんとな。全く、まだまだ青いガキが何を言うか」

 

 

 グッ、と拳を握る織斑先生。あ、これは多分鎮圧させられたんだろうな。

 

 

「お前もそうだ。そうやって一人で抱え込んで満足か」

 

「………………」

 

「光牙君。一人じゃ出来ない事や、分からない事は多い。そういう時に、頼るのが友達よ」

 

「……友達」

 

 

 一人では出来ない事。分からない事……。

 

 

「この学園に入ってまだ少しだけど、今までと違う事も経験出来たと思う。あるでしょ、そういうの?」

 

 

 この学園に来てからか……。

 

 

『お前は、似ているんだ。私の弟、織斑一夏に……』

 

『滝沢君、ここまで分からないことはありますか?』

 

 

『大丈夫、光牙君?』

 

『わ、私。谷本慶子っていいます。滝沢君の隣の席なんだけど……』

 

『……良いでしょう。ならば決闘ですわ!』

 

『構わない、よろしくな。……光牙』

『ふふん。そうでしょ? でも、勝つのは私だから』

 

『……ありがとう。本当に』

 

 

 IS学園での生活(まだ約二ヶ月)。その中で言われたこと、会話の内容が浮かび上がる。

 

 ……なんていうか、結論から言えば学校は嫌いだ年簡単に直るとは思えない。

 

 でもまあ、比較的マシ、かな。

 

 あいつらや、あんな場所に比べれば……。

 

 

「……今は悪くはないと思います」

 

「どんな風に?」

 

「苛める奴とか、差別する様な事は殆どありませんし、色んな人がいますし」

 

「それよ。世の中には色んな人がいる。自分で言うのもなんだけど、こう見えて今まで様々な人間を見てきた。世間一般的に言われる悪い人も。でもね、同時に良い人や、一生懸命な人もたくさん見てきた。私には、光牙君がどうして学校嫌いになったかは分からない。それでもこうとも言えるわ。光牙君は今まで、普通に人と付き合うことがなかった。ならこれからここで探してみない? 普通の友達を」

 

「普通の、友達?」

 

「そう。この学園には友達になれる人はたくさんいる。生徒会長である私が保証するわよ」

 

 

 そういう更識さんの表情は、いつの間にか和らいでいた。

 

 さっきは無意識にバカにしてしまったけど、そう言えるのは更識さんが言った通り生徒会長だからなんだろう。

 

 

 システムはよく分からないけど生徒会長になるには、大変な努力が必要な筈だ。それをしたから、更識さんは生徒会長でいる。

 

 ……凄いこと、なんだろうな。

 

 自分が恥ずかしくなり、思わず俯く。

 

 すると頭に、ポン、と柔らかいものが乗せられる感触。 顔を上げると、いつの間にか僕の隣にまで来ていた更識さんの右手が、頭に乗せられていた。

 

 

「大丈夫、いつでも周りの人を頼っていいの。私で良ければ、出来る限り相談位は乗ってあげれるから」

 

「私もだぞ。光牙」

 

 

 織斑先生も優しく言ってくれて、二人で頭を撫でてくれる。 ……こんなこと、本当に久しぶりだ。

 

 

『――大丈夫か、光牙』

 

 

 思い浮かんだのは、最後まで味方だったヒト。よくこうして、僕を励ましてくれたっけな……。

 

 偶然とはいえ、この手でくるなんて。

 

 卑怯ですよ……。

 

 

「……すみません」

 

「そこで謝らないの。はい、なんて言う?」

 

「ありがとう、ございます……」

 

「よし、OK!」

 

 

 まるで子供……いや子供だけど、言い直しをさせられた。

 

 それで満足したのか、更識さんの表情がいつもの明るいものに変わった。

 

 

 テンションがよく分からない人だな……。

 

 

「じゃあ夕飯時だし、ご飯食べに行きましょ。これは生徒会長命令ね♪」

 

「ついでに私もついていこう。担任命令でな」

 

「ドワォッ!? ほんのちょい前にシリアス言った人らがそれ言いますか!?」

 

「細かい事は気にしなーい♪ それじゃあ、レッツらゴー!」

 

「ちょ、僕怪我……」

 

「さっきのお返しよー!」

 

「ひ、引っ張ら――うおおおぉわあああぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 更識さんは僕の左手を掴むなり、部屋を飛び出すと全速力でバレないように、食堂まで走っていった。

 途中で浮いてたよ!? それでいて周りにバレず辿り着くとかなに!? ニンジャもビックリだよ!

 

 いや織斑先生はシュタタタターッとニンジャランで駆け抜けてたけどさ……。

 

 ……でも、ま。

 

 

(今は楽しいから……いい、のかな?)

 

 

 食堂には例の如くというか、箒さんやセシリアさん、一組の人もいて、僕が手を繋いでた所を見られたからそりゃあ騒がれたもんだ。

 

 

 

「……まあ、いっか」

 

「おい、光牙。何をボーッとしている!」

 

「光牙さん、座るなら私の隣に!」

 

「ちょっと、座るなら私の隣に座りなさい!」

 

「ぬっ! 抜け駆けか、許さんぞ貴様らー!」

 

「いや先生、カノン砲はダメですって! シャレになりませんから!」

 

「あ、アハハハ……」

 

 

 半分、カオス(現実)から目を逸らしつつ、現実を見る。

 

 こんなことは、向こうにいたら絶対になかっただろうな。

 

 大変で騒がしい、けどなんか、楽しく感じる。

 

 

「大変だけど頑張ろうな、ベーオ」

 

 

 相棒にそう言い、心配事はあるけど今日はちょっとだけ忘れ、僕は“日常”の中へ歩いていった。


 
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