No.801892

真・恋姫無双 覇王伝 第二十八話

ZSANさん

対袁紹攻城戦

2015-09-12 23:30:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3142   閲覧ユーザー数:2714

 

~建業城内~

「本当にその人が城下に居るのね!?」

巴が報せてくれた侍女に声を荒げて確認する

「はい、噂では奇妙な掛け声を使う針医で・・・

 五斗米道とかなんとか云って・・・しかも発音に五月蠅いとか

 それで名は確かに華佗と」

未だに一刀の状態は一進一退の状態

この状態から救える医者はそうは居ない

しかし『三国志 演義』で名を後世に残した華佗ならば・・・

「私が直接お願いに行くわ 案内して」

巴は一縷の望みに賭けて華佗の所へ向かった

 

巴が華佗の所へ向かった時、既に高覧と名乗る左慈が率いる袁紹軍が視認できる位置にまでやって来ていた

だが時は既に夕暮れに差し掛かっていた

袁紹軍は明朝より城攻めを開始すると決め、夜営の準備に掛かっていた

 

「明らかに誘ってますね」

静里が袁紹軍を見て軍議の場でそう発言した

「確かに 野営をする場所が城に近すぎます

 此方にどうぞ夜襲を掛けて下さいと言わんばかりです」

氷雨が静里の意見を支補足する

「しかし、何の意味が有るのです?

 袁紹軍は圧倒的な兵力で攻めて来ているのです

 夜襲を誘う理由が無いのではないですか?」

「いえ、攻城戦は一朝一夕で終わらない場合が多いんです

 だから夜襲を誘って此方の兵力を少しでも削りたい

 夜襲を掛けられなくても圧倒的な兵力を誇示して、我等の兵の指揮を下げようとしているんです」

凪の疑問に氷雨が答える

「では、どうする?」

「折角のお誘いですから、お受けしましょう」

星の質問に静里が微笑みながら答えた

その夜も更けた頃、建業の城門が開き軍勢が出て来る

「ふん、莫迦め それを待っていたのだ」

左慈は目論見通りと言わんばかりで、迎撃の指示を出した

だが北郷軍は遠巻きに騒ぐだけで向かってこない

そして、さんざん騒いだら、そのまま引き下がって行った

左慈、及び袁紹軍は肩透かしを食らっただけで終わった

そして、その一刻(2時間)後、再び北郷軍が出て来た

袁紹軍は今度が本命か、と思い身構えたがまた騒ぐだけで引き返して行った

更に1刻後、また北郷軍が出て来た

「なんだ、一晩中こんな事をやるつもりか?」

流石に三度目となるとそう思う兵も出始めた

そして、また騒ぐだけで北郷軍は下がって行った

「一晩中やって俺達を寝不足にでもするつもりか?」

そんな軽口が袁紹軍内部で起こっていた

だが、夜の闇にまぎれて身を屈めながら袁紹軍に向かっている者達が居た

三度目の出撃で全軍は引き返さず、一部の部隊が残っていたのだ

その部隊の存在を気取られぬ様、三度も肩透かしを食わせ油断を誘った

その部隊は袁紹軍に充分に接近すると身に纏っていた黒い外套を放り捨て、その姿を袁紹軍の前に現した

 

「打ち合わせ通りに動けー!」

その号令と共に現れたのは恋、星、凪に率いられた僅か千程の部隊だった

だが率いる将の実力はこの大陸で屈指の人物達 更に兵も袁紹軍に比べ精鋭揃い

その実力で次々と袁紹軍を蹴散らしていく

「高覧様、如何すれば・・・」

左慈の元に指示を求めやって来た兵は狼狽していたが、左慈は落ち着いて

「もっと陣深くまで引き込んで、取り囲んで討ち取れ!」

数の暴力で飲み込むことを指示する

だが

「もう十分だろう

 全軍、撤退!」

その号令で北郷軍は撤退して行った

この夜襲で袁紹軍は千を超える兵を失った

だが数の上では総勢15万から見れば微々たる損害だった

そう数の上では・・・

「ご苦労様でした」

夜襲から戻った恋達を静里が出迎える

「だが静里よ 本当にこれで良かったのか?

 この程度では焼け石に水だろう」

星が尤もな疑問を呈すが

「はい、これで充分です

 この作戦の狙いは敵に厭戦気分を出させる事です

 この戦は袁紹軍から見れば完全に勝ち戦です

 だからこそ一般の兵達は命を大事にしたい 勝ち戦で死ねば何の利にもありつけません

 それならば皆さんの実力を見せつけ積極的に戦えば死を意味する そう思わせるんです

 そうすれば兵達は腰が引けた攻撃しかしてこなくなります」

静里が説明し

「ただし、この作戦が通用するのは数しか取り柄の無い袁紹軍だけです

 この軍勢も急遽無理やり集めた訓練の行き届いていない兵なのは明白

 だから厭戦気分を引き起こせるのです」

氷雨が補足した

 

静里と氷雨の狙い通り、翌日の袁紹軍の攻撃は腰の引けた勢いの無い物だった

「何をやっている!」

左慈は苛立って檄を飛ばすが兵達には響かない

そして夜になり、袁紹軍が攻撃を中止すると今度は北郷軍が夜襲の”ふり”を何度か仕掛けて来る

昨夜の事が有る為、”ふり”だけで袁紹軍は怯え、結果寝不足で疲労が蓄積される

 

翌日袁紹軍が城を攻めあぐねている所に

「大変です!

 敵の援軍が南から向かってきております その数凡そ3万!」

「西から敵の援軍です その数凡そ2万!」

袁紹軍にもこの報せで緊張が走る

丹陽の軍を雪蓮が纏め、寿春の軍を蓮華が率いてやって来たのだ

そして、その軍勢は袁紹軍にそのまま向かって行く

建業の軍も呼応して、袁紹軍に攻勢に転じた

~丹陽よりの援軍~

「間に合ったわね」

「当然だ その為に私が同行したのだからな」

雪蓮と冥琳が軍を率いている

「しかし、あの徐庶ちゃんも思い切った手を使うわね

 私達が裏切るとか考えないのかしら?」

「命の恩人を裏切る程の下衆では無い そう考えたのだろう」

「まあ、そうなんだけど・・・」

「それにこの策は今後の為にも効果的だ

 援軍の指揮官が雪蓮と蓮華様だからな

 孫家の跡取りである雪蓮と蓮華様が北郷の下に就いた そう喧伝できるからな

 これで揚州の豪族達で北郷に従わぬ者はいなくなるだろう

 この戦を乗り切ればな」

「それを聞くと恐ろしい知略ね あの徐庶ちゃんって

 冥琳とどっちが上かしら?」

「私が負けているとは思わんが・・・

 ただ私はお前を抑える為に余計な労力を必要とするからな

 余計な労力を使わない徐庶の方がその分上かもな」

「うう~、藪蛇だった」

そんな会話をしながら袁紹軍へ攻撃を仕掛ける

 

~左慈~

その頃左慈は軍から抜け出して建業の城下へ忍び込んでいた

「私はこの事態を恐れて、呉郡の内乱を起こしてから袁紹軍を攻めさせようとしたのですよ」

干吉が溜息をつきながら語り掛けるが

「五月蠅い!そもそもお前が失敗したのが問題だろうが!」

「それを言われると耳が痛いですね」

左慈が戦で混乱しているとは云え城内に潜入できたのは、干吉の気配を消す術のおかげである

だが、今回はそれが裏目に出る

 

~一刀視点~

「元気になあれ!」

虚ろな意識の中でそんな声を聞いた直後、全身にあった悪い何かが消え去る感じがした

そして意識が覚醒し、目を開ける

「一兄ー!」

巴が泣きながら抱き付いてくる

身体が重くて躱せないのでされるがままだったが

「巴、状況を説明してくれ」

 

巴からの説明を聞いて、華佗に礼を言う

「礼には及ばん

 病人を治すのが医者の役目だ」

そう言ってくれる華佗に

「華佗、無理を云うようだが短時間で構わないから俺を普段通り動けるようにしてくれ!

 妙な奴等が迫ってきている!」

華佗も何かを感じ取っていたらしく

「半刻が限界だ

 それにその後はじっくりと養生してもらうぞ!」

そう云って一時的に回復する鍼を打ってくれた

 

「やはりお前達か」

中庭で出会ったのは左慈と例の道士だった

「馬鹿な!何故私達を察知出来たのです?」

俺が待ち構えて居た事に道士が驚いている やはり此奴が何かの術を仕掛けていたんだな

そもそも毒矢の時、俺と鞘姉、孫策が矢を放った兵の気配を何故察知できなかったのか

そんな手練れにはとても感じられなかった

ならば答えは何かしらの術を使う奴が居て、その術で気配を隠していた そう考えた

そして今回この二人を察知できた理由 それは”不自然な気配の無さが移動していた”事

術で気配を消す事をこの道士は出来るのだろう

だが、その術の範囲内の全ての気配が無くなるのは気配の空白地が出来、不自然さを生む

それでも動かなけらば察知できなかったかもしれない

だが移動していた為、その不自然さが余計に際立った だから察知できた

 

「お前達を察知できた理由を教える義理はないだろう

 今回は時間が無いからさっさと決めさせてもらう!」

半刻が限界と華佗は言った ならばその前に決着をつける

俺は示現流の蜻蛉の構えに似た構えを取る

「ふん、望むところだ!」

左慈も俺の言葉に乗った そして

「はー!」

「甘い!」

俺の斬撃を防ごうと左慈が両腕を上げた瞬間、俺は左慈の顎を蹴り上げた

斬撃は虚、蹴りが実

蹴りは完全な不意打ちとなって左慈の顎を捕えた

左慈はふらふらと足がおぼつかなくなり、其処へ俺が止めの斬撃を放つ

ガキッ!

その斬撃を道士が腕で防いだ

この硬質の感触・・・ 何か腕に仕込んでいるのか?

「貴方達の世界で云う”義手”

 私達なら持っていても不思議は無いでしょう

 まさか北郷鞘華に腕を斬られた事が幸いするとは思いませんでしたよ」

道士の言葉を無視して俺は刀に力を込める

「うおー!」

そのまま道士の義手を叩き切る

「ぐわー!」

義手を切った刀が道士の顔を斬るが浅かった

額の横から目を通り頬迄の刀傷を道士に負わせた

「貴方といい、北郷鞘華といい どこまでも忌々しい一族ですね」

道士から凄まじい恨みの様な念を向けられるが

「そこまでです」

「北郷 病み上がりは下がっていろ」

明命と甘寧がやって来てくれた

「ち、退くぞ!」

「この恨み、必ず必ず晴らして見せます!」

そう云って二人は消えて行った

 

俺は華佗の鍼の効力が消えその場に蹲ったが、指揮官が突如消えた袁紹軍は撤退した

俺達は袁紹軍を撃退したのだった

 

~あとがき~

 

毒矢イベントにはやっぱり医者王 と言う訳で華佗が登場しました

毒の治療だけでなくご都合主義と言われそうな”一時回復の鍼”まで使いました

こうしてみるとかなり便利なキャラですね

便利だから余り使ってはダメですね 今回はご容赦を

 

雪蓮達は完全に一刀達に降りました

やはり命の恩人を裏切るのは人として出来ないでしょう

それを見越して静里は丹陽と将の居ない寿春の援軍の指揮を雪蓮と蓮華に任せました

 

一刀も干吉の恨みを買いました

段々、小物臭くなってきましたね 何とかしないと・・・

 

更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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