No.79967

東京タワー

ドリーム小説でしたが、蒼紫操で変換しています。

2009-06-19 22:19:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1180   閲覧ユーザー数:1143

『東京タワー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはある晴れた日の昼下がりの午後だった。

操がいつものように、裏長屋の引き戸をがらりと開けた。

「いらっしゃい。」

と、べしみがちょこちょこと走り出て、操のぽっくり下駄を土間の上にそろえて、

「さあさあさあ」と畳部屋の畳の上へと促した。

畳の大きさは四畳半ぐらいの小さな部屋。

そこは、操の遊び場で天国だ。

「今日はなんの遊びをしますかね?」

と、べしみが言うと、式尉が、

「やっぱりお手玉がいいでしょう。」

と、答えたので、「はい、まずはお手玉ですね」とまずべしみが見本を見せました。

「ばか、おまえがやるんじゃねぇよ。」と、

式尉はいつものことで、怖いです。

そこ般若がひらりと躍り出て、

「私と一緒にお手玉をやってみましょう。」

と、操の手をとってお手玉をやってみましたが、

後ろから「俺もお手玉やりたい~」と、

火男がのしかかってきたので、般若とのお手玉は阻止されました。

「やっぱりあの人、顔怖いよね。」

と、べしみは言います。

操もその通りだと思いますが、ちょっぴり寂しい気もしました。

さて、べしみはあやとりの糸を出してきました。

「んじゃ、あやとりやってみましょう。」

べしみは手先が器用なので、糸くりがうまいです。

「これできますか?」

と操に聞きます。それはほうきの形でした。

操はできそうにないので、「できないもん、そんなの・・・・。」

と、操は答えて、不機嫌な顔つきになります。

べしみはその顔を見るとあわててほかのやつに糸を渡して、

「川やって。あれならおまえでもできるだろ。」

と言いました。

火男は「なんで俺が」と思いつつ、

「はいはい、これが川ですよ。最初はこの形だね。」

と言います。

「うん、できた。」

と操は素直に答えましたが、なんだか物足りなくて悲しい気持ちがなくなりません。

黙って見ていた式尉が、

「私もこれぐらいしかできないんですが・・・。」

操の手からあやとりを取って、別の形に変えました。

「これ、簡単です。最初はこれからやってみましょう。」

で、般若と三人で?操はあやとりをはじめました。

べしみは不満そうです。

「またこの形ですか。」

「いいじゃねぇか。繰り返し繰り返し遊ぶんだよ。」

「でも最後それ、ばらけるから・・・。」

言ったとたんに、操のあやとりの糸が、はじめの糸の状態になりました。

みるみるうちに、操の顔が、泣き顔になりました。

「ほらやっぱり・・・・。」

火男と般若は数字に弱いので、こういうときどういえばいいのかわかりません。

2人の視線を感じたべしみはあわてて必死であやとりをくって、操に叫びました。

「こっ、これが東京タワーですっ。ほらすごい形ですね。すごい技なんですよ。」

操がようやく、か細い声で言いました。

「東京タワー?」

べしみはもはや、自分でも何を言っているかわかりません。

「あるんですよ。東京にはいつかタワーができるんです。」

「タワーって何?」

「だっ、だからっ、塔です。」

「お寺の上にあるの?」

「そっ、そんな形だといいですけどもねぇ・・・・。」

「操、変な形の塔やだな。」

「そっ、そうっすねぇ・・・・・。」

他の三人は、今度はべしみに助け舟を出してくれそうにありません。

あわててべしみは、後ろにある障子紙の引き戸の前にどんどん、そのあたりにあった、

木の台をつみあげていきました。べしみは言いました。

「の、登ってみてください。」

「え、操これのぼるの?」

「うんうんジャングルジムだな。」

「おまえは何も言うな。」

操の背後で、式尉と般若が今虎視眈々とにらみあっているようです。

操は一段ずつ登ってみました。

操の東京タワーはぐらぐらして、あぶないです。

最後の段にまでたどりついたとき、

突然障子紙の戸が開きました。

それは間近で見ると、とても綺麗な男の人の顔でしたが、操はよく覚えていません。

なぜならその瞬間、東京タワーが足元から崩壊してしまったからです。

「なんでこかすの?なんでこかすの?」

操が大声で泣いていると、その綺麗な男の人はなぐさめにやって来て、操の頭を優しくなでてくれました。

 

「なんで大声で『うるさい』って言うのかねぇ。」

「蒼紫様はああいうお人なんです。」

「ああいうお方っていうか・・・・」

今日も蒼紫の部下四人たちの恨み言は、続いているようでした。

 

 


 
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