No.799011

ゼロの使い魔 AOS 第20話 純情な・・・

koiwaitomatoさん

才人とルイズが魔法学院から逃げていた3日間。
そして、彼らを助けた救世主はいったい・・・誰かは前に書いたか?
Ahead of schedule 01の裏エピソードになります。
見所は純情です(カッ!)、男の魂をここに!!!

2015-08-29 05:52:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1376   閲覧ユーザー数:1363

「貴様ら!!!全員生きては帰さんぞ~~~~~~~~~~!!!!」

 

その男の声は、広い荒野に響き渡った・・・。

 

 

 

ここは、ラ・ヴァリエール領の大邸宅の一室。

 

ひとりの男が執務室に向かって、書類を書いている。

 

彼の名はラ・ヴァリエール公爵!

 

トリステイン王国でも屈指の大貴族であり、この地をおさめる領主である。

 

金髪に口髭、左目にモノクル!威厳に満ちた風貌!!

 

すでに五十を過ぎた年齢だが、体躯も良く迫力にあふれている。

 

早い話が、見た目が非常に怖いのである。

 

しかし、領地の住民からの評判は非常に良い。

 

彼は、自領の住民を無下に扱う事はせずに大切にしている。

 

領民に重税を強要したり、若い娘を差し出すように迫る横暴な領主は多い。

 

だが、ラ・ヴァリエール公爵はその様な振る舞いを一切しなかった。

 

そんなラ・ヴァリエール領の話を聞きつけ、入領を希望する平民も多いのだと言う。

 

 

 

彼には、三人の娘がいる。

 

そして、彼の末娘が何を隠そうルイズである。

 

彼は父として、非常に厳格に娘たちを育ててきた。

 

その甲斐があってか、彼女たちは優秀な貴族な育った・・・はずだったが。

 

末娘であるルイズは、残念ながら非常に出来が悪かった。

 

貴族としての立ち振る舞いや気品を順調に覚えたのだったが、ルイズは魔法を覚えられなかった。

 

自ら教えた事もあったし、高名な家庭教師を雇ってルイズに学ばせたこともあったのだが結果は全て失敗。

 

魔法が使えないとあっては、貴族の沽券にかかわる。

 

トリステイン魔法学院は、この国の貴族の間では一種のブランドだった。

 

後々の見栄えが少しでも良いようにと、魔法教育の最高機関にルイズを入学させた。

 

不出来ではあるが可愛い我が娘、彼女の将来を考えた親心である。

 

 

 

ある日の事、ラ・ヴァリエール公爵のもとに一通の手紙が届く。

 

末娘のルイズからの手紙だったが、彼は公務中ですぐに読む余裕が無い。

 

・・・が封筒に書いてある文字に気が付いた、早馬の便で来た速達の手紙のようだ。

 

公務中ではあるが速達で届いた手紙が気になり、すぐに手紙を読む事にした。

 

そこまで問題行為という訳では無いが、公務中に家族の手紙を読むのは公私混同という事になる。

 

厳格な性格で普段ならこんな事は絶対にしないのだが、彼は娘たちに・・・特にルイズに甘かった。

 

そして・・・。

 

手紙を読み終えた、ラ・ヴァリエール公爵は・・・。

 

屋敷を飛び出した!!!

 

 

 

ラ・ヴァリエール公爵は現在、上空を飛行している。

 

彼は飛竜に乗って、トリステイン魔法学院を目指していた。

 

焦る気持ちを押さえながら、飛竜の手綱を握る彼が思い返しているのはルイズからの手紙の内容だった。

 

 

━━ 突然のお手紙で申し訳ありません、お父様。━━

 

━━ 私は今、学院の先生方に追われています。━━

 

━━ 実は来年の進級の課題の使い魔召喚を先ほど済ませてしまいました。━━

 

━━ なぜ召喚できたのかは分かりません、気が付いたら私の使い魔が目の前にいました。━━

 

━━ 学院では、私が進級の課題を先に済ませたことが大問題になりました。━━

 

━━ 私の使い魔を殺そうとして先生方が追ってくるので、使い魔と一緒に逃げようと思います。━━

 

━━ 正直、逃げ切れるか分かりません・・・お父様、どうかルイズをお助けください。━━

 

━━ 愛するお父様へ。ルイズより━━

 

 

意味が分からない・・・なぜ、ルイズが死ぬような目にあわなければならないのか?

 

彼は、手紙が出されてから何日経っているのかを確認していない。

 

ルイズが今どこに居るのか検討も付かない、だが彼は血眼になって上空から探す。

 

そして・・・見つけた!

 

 

 

「サイト!しっかり走って!いつ襲ってくるか分からないんだから、とにかく私から離れないで!!」

 

「もういいよルイズ・・・俺の近くでずっと盾になってくれているんだろ、危ないから離れてくれよ!!」

 

才人とルイズは学院を脱出した後、王都トリステインと反対の方角へ逃げていた。

 

ミスターギトーが王都に続く道へ案内する様に指示していたので、逆の方に走っていった。

 

もちろんすぐにバレるとは思っていたが、少しでも時間が稼げるようにと。

 

「いやよ!サイトは私の使い魔なんだから!ご主人様は使い魔を見捨てたりしないものよ、私が絶対に守ってあげるんだから!!!」

 

「ルイズ・・・ありがとう、お前に会えて本当によかった」

 

あの後、何回も教師たちに遭遇した。

 

教師たちは才人に対して遠慮なしに魔法を放ってきたのだが、近くにルイズが居たので教師たちの狙いがギリギリで外れている。

 

才人を始末するのが優先事項なのは間違いないが、さすがに生徒であるルイズには攻撃が当たると立場上まずいのである。

 

何度も才人の前に出て魔法をそらすルイズだったが、その代償に体はボロボロで顔も服も薄汚れている。

 

それでも心が折れずに才人をかばい、守ってあげるんだからと宣言するルイズ。

 

ルイズの男っぷりに、ますます惚れる才人であった。

 

 

 

空が急に暗くなった、いや・・・空から何か大きな物体が落ちてきた。

 

空から吹いてくる風が落ちてくる物体の質量を想像させる、一体何が落ちてくるのか?

 

「ルイズゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

飛竜に跨った、ラ・ヴァリエール公爵だった・・・。

 

 

 

ラ・ヴァリエール公爵は上空からルイズを発見した、学院までの最短距離を飛んできていきなり見つけたのである。

 

奇跡が起きたのか?もしくは父の愛が成せる業なのか?詳細はともかく、彼は愛しい娘をピンポイントで探し当てた。

 

才人は教師たちが空から襲ってきたと勘違いをして、大きく距離を取ったがルイズは父親のもとに駆け寄った。

 

「ルイズゥ!!無事だったか!?」

 

「お父様!!本当に来てくれた・・・来てくれたんだ、・・・・・・うぅ」

 

「ばかもの!!私の小さなルイズが呼んでいるのだ、来ないはずがないだろうが」

 

「ぐすっ・・・、ありがとうございます・・・お父様」

 

学院から逃げ出してから、すでに三日が経っていた。

 

逃げ出す前にもしもの時を思って、実家の父に助けて欲しいという手紙を出していたルイズ。

 

何度も教師たちの襲撃を受けて、才人の目の前では気丈に振舞っていた彼女も父親の登場と頼もしさに思わず涙がでる。

 

「遅くなってすまなかった、おお・・・こんなにボロボロになって」

 

「いえ・・・私のせいでお父様にご迷惑を、ごめんなさい」

 

「ばかもの・・・子供が親に迷惑をかけるのは当然だ、それよりも泣くのはもう止めなさい!私の小さなルイズ」

 

「はい・・・お父様、あっ!それよりも聞いてください、使い魔を召喚できました!!」

 

「うむ、手紙に書いてあったな」

 

「進級試験の前に召喚してしまったので先生方が怒っていますが、とにかく召喚できました!!」

 

「そうか・・・それで、その使い魔はどこに?」

 

「はい!あれです!あそこにいるのが私の使い魔のサイトですよお父様、お父様にびっくりして隠れていますけど」

 

「ん・・・ルイズ、平民の少年しか見えないのだが・・・どこにいるのだ?」

 

「ですから、あそこに居る平民の少年が私の使い魔です!!」

 

「・・・」

 

ラ・ヴァリエール公爵は絶句した、人間の使い魔など彼は聞いた事がない。

 

さすがに悪い冗談だと思ったが、こんな時にルイズが嘘をつくとも思えない。

 

人間の使い魔というこの世界の非常識、ルイズが自分に嘘をつくという非常識。

 

どちらもありえないと悩んでいる彼とルイズに、強烈な風の刃が襲ってきた!

 

「えっ!?」

 

一歩も動けないルイズ、そしてラ・ヴァリエール公爵は一歩も動かずに杖を取り出し・・・。

 

「エア・シールド!」

 

強烈な風の刃を風の盾で砕いた!

 

 

 

強烈な風の刃は風の魔法「エア・カッター」、下手人はミスターギトーだ。

 

風の使い手は音に敏感だ、ルイズと二人で話していたラ・ヴァリエール公爵を才人だと思って攻撃したのだ。

 

ミスターギトーは焦った、才人だと思って攻撃したのは見覚えの無い貴族なのだ。

 

そして、ラ・ヴァリエール公爵は杖を構えたままルイズに告げる。

 

「ここは私が食い止めるから、お前たちは王都まで逃げるんだ」

 

「いざとなったら魔法研究所に居るエレオノールの所に行け、王都までの方向は分かるな?」

 

ルイズたちに先に逃げるように促す、ちなみにエレオノールとは彼の長女(26歳)でルイズの姉である。

 

「でも・・・先生たちは四人います、お父様だけ置いていくなんて!」

 

「先ほども言っただろうに、子供が親に迷惑をかけるのは当然だ・・・早く行きなさい」

 

「分かりました・・・ありがとうお父様、私はお父様の娘で良かったです」

 

死亡フラグが若干見え隠れするやり取りではあるが、父と娘の親子愛あふれる会話だった。

 

使い魔らしき平民の少年のもとに駆けていき、この場を離れようとするルイズ。

 

自らを盾にして、愛する娘の背中を守るラ・ヴァリエール公爵。

 

頭の中では、追ってらしき教師をどうやってルイズに近づけさせないようにするか必死に考えていた。

 

それと同時にお父様の娘で良かったという、愛する娘の言葉に喜びを隠せないお父様がいた・・・が。

 

「ほら、サイト行くわよ!」

 

「でも、あの厳ついおっさんはルイズの味方なんだよな?一人で置いていくのかよ!」

 

「いいから!大丈夫よ、すっごく強いんだから!!」

 

救援に来てくれた謎の厳ついおっさんを置いていくことを渋る才人に対して、無理やり手を引っ張って連れて行くルイズ。

 

「そうなのか?・・・わかった!」

 

「ありがとう~~~!ルイズは絶対に守るからおっさんも絶対に死ぬんじゃねぇぞ!!!」

 

ラ・ヴァリエール公爵の行動に当てられて思わずルイズを守ると大声で話しかける才人、実際は守られているのだが・・・。

 

 

 

他の教師たちもギトーに追いついて、現在は四対一の圧倒的に不利な状況になったラ・ヴァリエール公爵。

 

しかし、教師の中にルイズの父親であるラ・ヴァリエール公爵に気がついた者がいて攻撃は完全に止んでいる。

 

そして、等のラ・ヴァリエール公爵はと言うと・・・。

 

(なんだ、あの小僧は・・・ルイズを呼び捨てにして・・・手を握っていた・・・)

 

完全に教師など目に入っていなかった・・・。

 

(おい、小僧!だれに断ってルイズを呼び捨てにしている・・・だれが私の小さなルイズの手を握っていいと言った・・・)

 

完全に才人に嫉妬していたのだった。

 

ここで父親というものを説明しなければなるまい。

 

父親にとって自分の娘というのはある意味、妻よりも愛しい存在なのだ!!

 

もともと他人である妻とは違い、娘というものは自分の血を分けた家族であり女性なのだ!!

 

赤ん坊のころから自分のそばにいるのがあたりまえで、その成長を常に近くで見守ってきたのだ!!

 

笑っている顔も泣いている顔も最初から全て見てきたのである、その人生を最初から見ていない妻とは愛情が違う!!

 

女性が聞いたらさぞかし気持ち悪いと思われるだろうが、父親にとって娘とは愛すべき子であり・・・また愛すべき恋人なのだ!!

 

そしてルイズは彼の妻の若いころにうり二つなのだ、若き日の妻の姿を重ねて愛おしさが倍増する!!

 

また、一般的には歳が離れているとその可愛さを余計に感じると言われている。

 

ラ・ヴァリエール公爵は五十を超えている、そしてルイズは現在十五歳・・・三十歳以上も離れている。

 

ただ・・・いつかは自分のもとを離れてほかの男(ヤロー)のもとに行ってしまうのも理屈では分かっているのだ、くやしいが!!

 

自分だって妻の父親にそういう思いをさせてたはずなのに、自分の番になるとすごくいやだし・・・くやしいと思ってしまうのだ!!

 

幸いなことに彼の娘たちは現在誰も嫁いでいない、そして誰も男の影が無い・・・いや・・・無かった。

 

つまりは、これがすごくいやだし・・・くやしい思いの初体験なのだ。

 

過去から現在にまで続く繰り返しだ・・・そう、「約束された寝取られ」の繰り返しなのだ!!

 

彼は激怒した、こんなに激怒したのはいつ以来だろうか?

 

これは・・・愛すべき娘をボロボロにした目の前の教師たちに対してなのか?

 

それとも・・・愛すべき自分の恋人(むすめ)の手を取って走っていった、使い魔らしき平民の少年に対してなのか?

 

 

 

要するにだ、これは親子愛などと言う美しいものではなく・・・。

 

 

 

・・・男の純情。

 

 

 

・・・そして。

 

 

 

「貴様ら!!!全員生きては帰さんぞ~~~~~~~~~~!!!!」

 

 

 

ラ・ヴァリエール公爵の純情な感情が炸裂した!!!

 

 

 

その後は大変だった。

 

大激怒した、ラ・ヴァリエール公爵に対して教師たちは話し合いは無理と判断。

 

戦闘に突入した、その戦いは二日続いたらしい。

 

大規模な戦闘になったが、オスマン学院長が戦いに割り込んでなんとか終戦したそうだ。

 

全員でトリステイン魔法学院にもどると更に厄介な事になっていた。

 

ラ・ヴァリエール公爵夫人こと、カリーヌ・デジレ・ド・マイヤールが学院に来ていたのだ。

 

現在でこそ公爵夫人という地位についている彼女だが、数多くの武勲を立てた元軍人であり現在も軍部に強い影響力を持つ人物なのだ。

 

そして、その戦闘力は現役の軍人の中にも敵うものがいるのか怪しいぐらいに・・・すごく強い!!!

 

ヴァリエール家単体でも王族や王宮、多くの貴族たちに強い影響力がある家なのだ。

 

王族・王宮・軍部・貴族たち・・・実質的な力と言う意味では、王家とほぼ同等の力を持っているのである。

 

そんなヴァリエール家の娘をボロボロになるまで追い回したのだ、教師たちは皆、恐怖を隠しきれない!!

 

だが・・・話し合いになって、問題はすぐに解決した。

 

今回の件でヴァリエール家側がトリステイン魔法学院に対して出した和解案の要求は以下の通り。

 

使い魔召喚事件の事でルイズに対してお咎めなしにする事。

 

ルイズが召喚した使い魔をもって来年の進級試験を前倒しで合格とする事。

 

以上の二点だけだった。

 

もっと要求しても良かったのだが、進級試験を前倒しで合格が取れた事でそれ以上は要求はしなかった。

 

この学院では使い魔召喚の進級試験以外の試験は退学になりそうなものが無い、ここさえクリアすればルイズはほぼ卒業できるのである。

 

なぜかラ・ヴァリエール公爵が反対していたが、公爵夫人が一言で黙らせたそうだ。

 

学院側も他の生徒の手前、せめて来年の進級試験まではルイズの使い魔の存在は公にしないように頼み込んで一年間の出入り禁止で手を打った。

 

またもラ・ヴァリエール公爵が反対した、一生は入れないようにしろとか・・・そして公爵夫人に窓の外に放り投げられたらしい・・・。

 

 

 

場面は現在にもどる。

 

あの騒動から、二週間以上が過ぎようとしていた。

 

今日も、ラ・ヴァリエール公爵は執務室で仕事に勤しむ。

 

そして・・・また、ルイズからの手紙が彼の元に届く。

 

手紙を熟読した後、彼は屋敷を飛び出したのであった。

 

ラ・ヴァリエール公爵の純情な・・・何かを胸に彼は飛竜に跨った。

 

 

 

....第20話 純情な・・・

 

 

 

next第21話 ある日のお店の会話

 

 

 

執筆.小岩井トマト

 

 

 

 


 
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