オッス! 俺、聖フランチェスカ学園生徒の北郷一刀ッ!
休みの日に街を目的も無くぶらぶらしていた俺は、街角で筋骨隆々な大男達の怪しげな会話現場を目撃した。
思わずオエッとなってしまい、その場を急いで立ち去ろうとした俺は背後から迫る大男達に気付かなかった。
俺はその男達に眠らされ、目が覚めたら――
「怪しげな組織に入れられてしまっていた!!」
「北郷うるさい」
「あっ、すいません」注意された青年が、おずおずと椅子に座った。
「全く、いくら忙しいからといって現実逃避は困りますよ。さっきのは何処の名探偵ですか?」
「あのなぁ、俺はまだここに来て日が浅いの! なのにこの山のような書類の量! どんなブラック企業だ!」
効果音があればムキーッ! といった様子で青年――北郷一刀は不満顔で言った。
そんな彼の様子を眼鏡を掛けた青年――于吉がやれやれといった様子で見ている。
「まあ、副長官がこいつを連れてきた過程はほぼ間違ってなかったな」
二人の会話に我関せずと、気だるそうな青年――左慈が言った。
「貴重なご意見ありがとう左慈。ところで悩める新米を手伝ったりは……」
「俺はスパルタなんだ」バッサリと左慈が一刀のSOSを斬った。
「ですよね~」ほぼ分かりきっていた答えに一刀が書類の山に埋もれた。
「はあ、私も手伝いますから少しでも終わらせましょう。捜査依頼は何時来るか分からないですから」
「ありがと于吉ッ!!」書類の山から一刀生還。
「頭下げるたび、友達増えるね……」ボソッと呟く左慈。
「ポポポ~ン……ってブッ飛ばしますよあんた等」
すぐさま高速土下座を済ませた一刀は、書類の山半分を于吉のデスクに移動させた。
甘えんじぇねえ――と、于吉によって半分の半分が戻された。一刀涙目である。
その時、この部屋の一角にある銅鏡が光り輝いたかと思うと、一人の男が現れた。
「みんなお元気ぃ~ん♪ お仕事は順調かしらん?」
「この光景を見て順調に見えますか? 副長官」
副長官と呼ばれたその男は、マッチョな肉体にピンクのビキニパンツを着用したオカマであった。
くねくねとした不気味な動きで、初めて彼を見る人間は卒倒しても仕方がないだろう。
「あらん于吉ちゃん。不機嫌な顔もまた一段と可愛いわん♪」
「それはどうも……」
「左慈ちゃんはいつも通りっと……一刀ちゃんは?」
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「元気みたいねん♪ とまあ、無駄話はここまで。三人とも、長官から召集よん」
副長官――貂蝉の言葉に三人の顔付きが変わる。
彼らは同時に立ち上がり、彼へと視線を移した。
「G係、行くわよ!」
【Prologue 外史捜査一課G係です】
ここは外史捜査一課G係――名前だけでは、首を傾げる方々が多いだろう。
簡単に言ってしまえば、ここは“外史”と呼ばれる別世界を管理する組織の本部(の一部)なのだ。
“外史”とは、人々の想いによって作られる世界のこと。俗な言葉で言えば妄想である。
想いによって創られる外史は時に脆く、時に頑丈で、時に不可思議なことが起きる。
この外史捜査一課は、外史で起きた不可解な事件の解決、又は運悪く外史へ流れてしまった物や人物の救出・回収が主な仕事である。
しかし誰にでも出来る仕事ではない。世界の流れや時空の波の影響を受けない“特異点”と呼ばれる貴重な人材のみが働けると言う。
冒頭で一刀が愚痴っていたが、彼もまた特異点なのだ。
無数に存在する外史のように、この外史捜査一課も無数にあるとのこと(貂蝉談)。
――ちなみにG係のGは“ゲイ”の意味である。
閑話休題。
会議室に集められたG係のメンバーは、中央の巨大な銅鏡に視線を集中させる。
数秒後、その鏡に白髭を蓄えた――貂蝉と同じく――マッチョなオカマが映し出された。
彼こそ、このG係を指揮する長官その人である。
『よう集まってくれた。皆、今日も良い漢っぷりじゃ』
【長官・卑弥呼 好みのタイプは良いお尻の男】
「ええ長官。この子達の顔が見れるだけで滾るわん♪」
【副長官兼情報分析官・貂蝉 好みのタイプはセクシーな男】
「おい。だれかあのクソ上司を黙らせろ」
【捜査員・左慈 至ってノーマル。断じてノーマル】
「まあまあ、いつものことじゃないですか」
【捜査員・于吉 好みのタイプは左慈】
「そうだぞ左慈。あまりイライラすると血圧が上がるぞ」
【監察医・華佗 医療が恋人】
「華佗はいつも平常運転だなぁ」
【新米捜査員・北郷一刀 同じくノーマル】
外史捜査一課G係――彼ら六人の目的は。
『それでは諸君、本日の任務だが――』
外史の平和のみである。
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とある男達による、恋姫外史でのドタバタラブコメディシリアスサスペンス。