第四章-参話 『 温泉会談 ~
「では、団体様一組ご案内で~す」
若女将こと楓に促されるまま、曹操軍一行は一際大きな旅館へと案内される。
その玄関を潜った時だった。
「「「いらっしゃいませ~☆」」」
三人の仲居さんによる出迎え、だが一刀には見覚えがある顔だった。
「太白と白妙と…白雪、か?」
「あー!一刀さんに霞さん久しぶりっス!」
「ああ、久しいなあ!」
出迎えたのは仲居姿だが、間違いなく波才、管亥、黄竜の三人だった。ひとつだけ、違和感を感じる意外は。
「白雪、お前そんな事出来たんだ」
一刀の感じた違和感はずばり白雪だった。一刀の知る白雪といえば、どことなくやる気を感じられない喋り方にめんどくさそうな表情で何かと変態扱いしてくるといった感じだったが、今目の前にいる白雪は元気いっぱいに満面の笑顔で出迎えてきたのだ。
と、その白雪が表情はそのままにワナワナと震えだした。そして…
「…この変態を殺して無かった事にするし!」
「どぅわあー!」
どこから取り出したのかいきなり剣の様な物で一刀に斬りかかってくる。『様な』と称したのはあまりにも薄くそして長い…どちらかと言えばベルトに近い形状だった。
「ちょ、ちょっと待てって、俺一人殺しても他にも大勢見てただろ!?」
「…大丈夫だし。変態一人で雪的には無かった事になるし」
「無茶苦茶だろその理屈!」
「…あの子が使っているの、『腰帯剣』ね?」
「ああ、何を思ったのか最近使い始めたな。」
「そう。それにしては随分扱い慣れてる様に見えるわね」
曹操の言うとおり、白雪は薄い刀身で時に斬り、時に薙ぎ、さらには突きまで繰り出している。
「元々蛇腹剣使ってたからな。白雪、その辺にしとけ」
「…ちっ」
「和樹!助けるんならもうちょい早く助けてくんない!?」
「知るか、とりあえず風呂だな」
「あなたねぇ、わざわざこんな所まで連れて来て何がしたいのよ?」
「話は後だ」
「はーい、じゃあ、『特別大浴場』へご案な~い」
相変わらず和樹は曹操を意に介さない、というかどうしても風呂に入れたいらしい。
「一刀、お前ぇはこっちだ」
「ああ…」
先程、白雪に追いかけられた一刀としては風呂に入れるのは嬉しいが…
「『特別大浴場』ってなんだ?」
そんな疑問を頭に浮かべていた。
~『特別大浴場・
「…何だ、これ」
何故か水着に着替えさせられた一刀の目の前に広がるのは馬鹿でかいプールに休憩所と売店、奥のほうにはスライダーまで見える。おまけに屋根付き脱衣所完備。だが、屋根自体に硝子窓が付いているのか、十分に明るく湯気も篭っていない。
「最近完成したんでな、一般開放する前にモニターになって貰おうと思ってな」
「それはいいけど、水着なんてよくあったな」
「お前ぇのは楓が
後ろから着替え終えた和樹が説明する。というか楓ちゃんパネェ…
「というか、そこは注意した方がいいんじゃない!?」
「いいじゃねぇか、あと色々着替えも持ってきてたな、後で持って帰れよ」
そう言いながら脱衣所から出てきた和樹は褌だった。しかも妙にしっくりくるぐらい似合っている。
と、そうこうしている間に別の扉が開ききゃーきゃー言いながらぞろぞろと人影が出てくる。どうやら向こうは女子側の脱衣所らしく曹操達と+αが出てきたところだった。
「これは・・・」
「圧巻ね・・・」
「あっはっは、またえらいもん造ったな~、戦じゃ全然役立たんけど」
各々感想を言いながら出てくる曹操達。
「でしょ~、源泉と川の水を繋げて温めにしてるからのぼせる事もないと思うよ」
「冬でも水遊びが出来るんさー」
「…そういう問題じゃないと思うし」
というか、こうしてみると改めて男女比率差が酷い。
「そうねぇん。でも、天然の温泉なんて贅沢よぉん」
「ちょおおぉぉぉっとと待てーーー!お前今どこから出てきた!?」
一刀の指摘は貂蝉が女性側の脱衣所から出てきた事だろうが、しかし、これには一応の理由があるというのも…
「あいつはあれで下手な女より衣装選びやら上手いんだよ」
「そう…なのか…?」
「うっふぅん。惚れ直したっていいのよ、ご主人さまぁん」
「うるせえ!元々惚れてすらいねえよ!」
とはいえ、和輝の言うとおり、妙に全員しっくりくる。春蘭と秋蘭は赤と青の色違いのビキニで…あれ?
「あれ?」
なんかやけにフリフリした水着が多い気がする。これはあれか?全体的に体系が寸d
「一刀?」
「何も考えていません!」
頭の中で言い終わる前に曹操の射殺すような視線を向けられ萎縮してしまう。
「子供っぽいのは簡便してくれ。何分こっちじゃ水着用の材料が手に入らなかったからな。その内改善はする予定だ」
「ふん、それで?わざわざこんな格好までさせてまだはぐらかすつもりじゃないでしょうね?」
そうこうしている内に好奇心旺盛な面々はすっかり泳ぎ始めている中、曹操がきりだす。
「そうだなとりあえず会わせたい奴が居るんだ。こっちに来てくれ」
和輝が案内した場所はちょうど売店の前、フードコートとも言うべき場所だろうか。そこに一人の少女とその傍には山吹もいる。場所のせいかどちらも水着姿だが。
「紹介しよう。こいつが袁紹、ひいては張譲を討つ為の秘策だ」
「この少女が?」
曹操の懸念も理解できる。まあこの世界では見た目だけで判断出来ない部分もあるが、仮に武に秀でていてもこの子一人でどう変わるというのか、という事だ。しかし、誰かに似ている気もする。
「初めまして『天の御遣い』北郷様、曹操様。私は現帝の姉、劉弁です」
「なっ!?」
「そうか、確かに劉協そっくりだ」
少女、劉弁の名乗りに曹操は目を丸くし、一刀はどこか納得した様子で和輝に顔を向ける。
「どういうこと?」
「俺が劉協を助けた時、劉協は柊と共に殺されかけてた。それがどうも腑に落ちなくてな。その後色々探って見つかったのが劉弁だったって訳だ。これは推測だが劉協が自分に都合の悪くなった時の為の保険にするつもりだったんだろう。現に見つけた時はほぼ軟禁状態だったらしい」
「それで?私達はどうすればいいのかしら?」
「特別何かする必要は無ぇよ。強いて言えば、袁紹、文醜、顔良は殺さずにいてくれればそれでいい」
「別に此方は構わないけど何か理由があるの?」
「顔良と取引してな、情報を貰う条件がそれだ」
「そう…、それでそんな大事な話をよりによって温泉でする意味はあったのかしら?」
「ああ、まず、劉弁をあまり人目につかす訳にいかなかったってのと、お互い丸腰なら腹割って話ができるだろ。ついででこの浴場の使い心地を聞きてぇ。」
「はぁ…それで?何時袁紹の処へ攻め込むのかしら?」
「そう焦んな。お前んとこ以外に劉備と孫策のとこにも使いを出してる。といってもそっちの二人には手紙で二択を迫る内容になってるけどな。二人の反応次第ってのもあるが、おおよその時期は袁紹と公孫讃の戦の後だな」
「そう。なら此方はそのつもりで準備を進めておくわ」
そう言って立ち上がる。
「それと、『素羽蘭土』だったかしら?とりあえず景観は及第点よ」
「そいつはどうも」
・
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・
・曹操軍同盟成立
あとがき
狐燐「なんちゅうもん作ってるんだ」
ツナ「若い衆が張りきった結果ですね」
狐燐「限度があるだろ!」
ツナ「まぁ、人手だけは腐るほどありますからね」
狐燐「…それよりお知らせがあるとかないとか?」
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久々の更新です。
『Re:道』と書いて『リロードということで
注:オリキャラがでます
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