雪天港フェリーターミナル。

そこにはいつもの三人組、唯・和美・雪歩の姿があった。

「それにしてもいろんな船があるわね唯ちゃん」

「そうねー。一度でいいからのんびりとフェリーに揺られて北海道とか行ってみたいわね和美ちゃん」

フェリーターミナルにやってくるのは、主に北海道・小樽港に向かう航路や福井県・敦賀港に向かう航路など。

その白い巨体を悠々と港に横たえるフェリーたち。

「ところで雪歩は…あー」

「雪歩ちゃんってばあいかわらずねｗカモメとかフェリーを写してるｗｗ」

「まぁ写真家にしてみれば格好の題材だもんねｗ」

雪歩はカメラを構え、次々に写真を撮影していく。

「…うし！こんなもんかな？」

「いいの撮れた雪歩ちゃん？」

「モチのロンだぜ！こんだけ被写体に恵まれてるなら、写真家冥利に尽きるってもんよ」

「…ねぇ、ところでひとつ思ったんだけど」

そういって唯が指差したのは一隻のフェリー。

「あれって確かギリシャ神話の神様の名前よね？」

見ると、その船体の船首部分には『とりとん(TRITON)』の文字。

「ホントだ、『とりとん』って書いてあるわね。まぁ船の名前ってことで海の神様の名前を付けたんじゃないの唯ちゃん？」

「それはそうなんだけど和美ちゃん」

「ん？」

「なんで平仮名なのかしら」

「あたしに訊かれてもわからないわよ唯ちゃん…」

フェリーターミナルの一日はのどかであった。