No.791376

九番目の熾天使・外伝 ~短編⑱~

竜神丸さん

タカナシ家の休日 その4

2015-07-23 16:24:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1253   閲覧ユーザー数:781

「くそ、何処にいるんだ二人共…!!」

 

あれからロキ達は、行方が分からなくなったリリィとルイを探し出す為、いくつかのチームに分かれて街中のあちこちを駆け回っていた。建物から建物へ飛び移って行くという派手な捜索だが、そもそも一般人の目からは見えたところでほんの一瞬である為、結果的に一般人は誰も彼等の存在に気付いていない。

 

(仮に誘拐されてるとしたら、急いで居場所を特定しなきゃマズい事になる!! 二人が下種な輩の毒牙にかかるなんて事があったら、俺は、俺は、俺は…)

 

「犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す…」

 

「…お~い、聞こえてるか~い?」

 

「駄目ね、犯人を潰す以外何も考えちゃいないわ!」

 

「全く、犯人には同情したくなるよ本当に…」

 

「これが皆の言ってたシスコンの暴走って奴なのね! 動揺し過ぎじゃない、見ていて面白いわ!」

 

一緒に行動していたスノーズはむしろ二人を誘拐した犯人の方に同情し、葵はロキのシスコンの暴走ぷりを見てクスクス笑っているという状況が出来上がっていた。そんな彼等の言葉など聞こえてすらいないのか、ロキは未だに犯人殺害宣告を呟き続ける。

 

「犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺す犯人殺…」

 

「はぁ……さて、そろそろ落ち着きなよ」

 

「あだっ!?」

 

流石に見かねたスノーズがロキの後頭部にチョップをかまし、ロキもようやく正気に戻る。

 

「気持ちは分かるけど、こういう時こそ冷静にならなきゃ駄目よ? 私達の呼びかけも全然聞こえないんじゃ色々とマズいわよ? それにあなた、無闇やたらに二人を心配してるけれど、二人一緒に行方不明って事は少なくとも二人は一緒にいる訳で、あなただってリリィの実力は知ってる筈でしょう? そんな彼女達の事を信用出来ないでただ心配だけし続けるなんて、二人に対する冒涜よ? 今のあなたには心の余裕が無い、梅干しを食べなさい梅干しを!」

 

「…すまん、ちょっと冷静さを失ってた。ありがとな、葵さん」

 

「んま、ヤケに素直ね? あまりに素直過ぎて、その純粋さに付け込んでる私は罪悪感バリバリ!! この罪悪感を私は一体どうすれば良いかしら!! ねぇツンツンマフラー!?」

 

「そう言ってるけど君、本当に罪悪感なんて感じてるのかい? というかその呼び方は一体何なのさ」

 

「細かい事ばかり気にしちゃ駄目よ!! あなた髪の毛だけじゃなく、心まで無駄にツンツンなのね!? あぁ冷たい、本当に冷たいわ!!」

 

(…どう突っ込めば良いのかなコレ)

 

勝手に“ツンツンマフラー”という渾名で呼び始めた葵にスノーズが呆れたその時、スノーズは呆れていたような目付きが即座に戦う者の目付き(・・・・・・・)に変わり、ある方向を見据える。

 

「…二人共、向こう見なよ」

 

「「!」」

 

『……』

 

三人が振り向いた先に、蜘蛛の特性を持った下級ロイミュード(スパイダー型)が立っていた。下級ロイミュードは三人を誘うかのように人差し指を動かし、すぐに建物から降りて何処かへ去っていく。

 

「僕等三人、ご指名のようだ」

 

「よっぽど挑戦的なのね犯人さんは。嫌いじゃないわ、そのチャレンジ精神」

 

「何にせよ、まずは奴の後を追おう。その後は……二人を誘拐した事を後悔しても遅いくらいの公開処刑を繰り広げてやる…!!」

 

「やるのは良いけど、今度は冷静さを失わないようにね」

 

ロキは「フフフフフ腐…」と不気味な笑い声を上げながら、立ち去っていく下級ロイミュードの後を猛スピードで追いかけていき、スノーズと葵もそれに続くのだった。

 

ちなみに…

 

「…ところで君、何で僕の背中に乗ってるのかな」

 

「良いじゃない、あなた鍛えてるんでしょう? これぐらい余裕な筈よ?」

 

「はぁ、君も君で面倒臭い人だね…」

 

自分の足で移動する事を面倒臭がった葵が、さり気なくスノーズにおぶって貰っていたのはここだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、okakaはと言うと…

 

 

 

 

 

 

≪GUN≫

 

「うぉっと!?」

 

突如現れた戦士―――仮面ライダーティーチによるカトラスガンナーの射撃を回避しているところだった。飛んで来る銃弾を全て回避した後、okakaはファイズドライバーを装着してから街路樹を蹴り、ティーチの真上を大きく飛び上がる。

 

「変身!!」

 

≪Complete≫

 

『…フッ!!』

 

≪BREAK≫

 

okakaの変身したファイズを、ティーチはカトラスガンナーでひたすら狙撃。着地したファイズは素早くティーチに接近し、ティーチはカトラスガンナーを接近戦用のブレイクモードへと切り替え、殴りかかって来たファイズの拳をカトラスガンナーで防御し、取っ組み合いになる。

 

「お前さん、黒ひげって言ったな。ルイス・カトラー……大昔から多次元世界で活動する大海賊は、今じゃもうジジイの筈なんだが? お前もロイミュードで間違いないんだな」

 

『答える義理は無い。俺は貴様を処刑する、それだけだ』

 

「あぁそうですかい…っと!!」

 

-ドガガガガガガガ!!-

 

『ぬ…!?』

 

「サンキュー、バジン!!」

 

≪Ready≫

 

予め呼んでいたのか、ファイズが後退すると同時に飛来したオートバジン・バトルモードの連続射撃がティーチに襲い掛かる。ティーチが少しだけ怯む中、ファイズはオートバジンが投げたファイズエッジを右手でキャッチし、ミッションメモリーを差し込んで赤い刀身を出現させる。

 

『無駄な足掻きだ』

 

≪COPY≫

 

「!? おいおい、マジかよ…!!」

 

ティーチはカトラスガンナーから二発の銃弾を放つ。するとその銃弾に含まれていたデータから二体の下級ロイミュード(コブラ型、バット型)が形成され、ティーチはその二体を連れてファイズに襲い掛かる。ファイズは下級ロイミュード達のパンチを回避してファイズエッジを振るうも、カトラスガンナーの銃撃で刀身を弾かれる。

 

「チィ…!!」

 

『お前達を潰す事が、俺の使命…』

 

≪TUNE VIKING BLADE≫

 

ティーチは小さな刀身の付いた銅色の“バイキングブレードバイラルコア”を取り出し、それをカトラスガンナーに装填。するとバイキングブレードバイラルコアに付いた刀身が起き上がって長剣に変化し、カトラスガンナー・ブレードモードへのモード切り替えが完了する。

 

「ッ……ルパンと同じ武器を…!!」

 

『ヌンッ!!』

 

「おぁ!? くっ!!」

 

カトラスガンナーで斬りつけられたファイズは地面を転がりつつも、ファイズフォンを構えて下級ロイミュード達を狙撃し、ティーチにも銃撃を撃ち込む。しかしそれぐらいではティーチは怯まず、銃撃による火花が飛び散りながらもティーチはファイズに容赦なく回し蹴りを命中させる。倒れたファイズは受け身を取ってからすぐに起き上がり、ファイズフォンを構え直す。

 

「コイツ、イマイチやり辛ぇな…」

 

≪~♪≫

 

「ん?」

 

直後、ファイズフォンから着信メロディが流れ出した。ファイズは下級ロイミュード達の攻撃を避けながらファイズフォンを通常の携帯の形に戻してから電話に出る。

 

「こちらokaka、現在海鳴市にて交戦中。応答せよ」

 

≪お、okakaさんも海鳴市にいるのか!! 良かった、手伝ってくれ!!≫

 

「ん、ロキか? こっちは今、かなり面倒な状況なんだが…」

 

電話先はロキからだった。何事かと思ったokakaは下級ロイミュードを空いてる左手で殴り倒しつつもロキから用件を聞こうとする。

 

≪ルイとリリィが誘拐された!! ちょうど今、誘拐した犯人の手先を追いかけてる最中でな、何か変な機械のような奴だ!!≫

 

「!? …待ってろロキ、俺もすぐそっちに合流する」

 

『ムン!!』

 

『ハァッ!!』

 

「ぐっ!?」

 

ロキとの電話を終えた後、ファイズは飛びかかって来た下級ロイミュードを後方へと投げ飛ばすが、投げ飛ばしたのとは別の下級ロイミュードが放つ射撃で一時的に怯まされる。その間にティーチはカトラスガンナーの銃口を押し込み、その鋭利な刃にエネルギーを充填していた。

 

『喰らえ』

 

≪VIKING SLICER≫

 

「!? ヤバい…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ティーチに振るわれたカトラスガンナーが、ファイズのボディを斜めに斬りつけた。ファイズは街路樹をへし折りながら後方へと吹っ飛ばされ、ティーチはすかさず追撃を仕掛けようとする。

 

-ドガガガガガガガ!!-

 

『『ゴァアッ!?』』

 

『ッ!!』

 

「おぉ、ナイスだバジン!!」

 

≪Complete≫

 

そこにオートバジンが再び射撃を繰り出し、ティーチと下級ロイミュード達を足止めする。その間にファイズは立ち上がり、アクセルメモリーをファイズフォンに装填し、即座にアクセルフォームに変化する。

 

「悪いな黒ひげ。今さっき仲間から救援を頼まれた所為で、お前の相手をしてる暇はなくなった」

 

≪Beacle mode≫

 

≪Start up≫

 

『逃がさ…グゥッ!?』

 

ファイズはビークルモードとなったオートバジンに飛び乗った後、速過ぎるスピードでティーチを跳ね飛ばしてからその場を逃げ去って行く。立ち上がったティーチはファイズの姿が完全に見えなくなった事を確認し、変身を解いてルイス・カトラーの姿へと戻る。

 

「逃げたか。小癪なマネを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は戻り、okakaと連絡を取り終えたロキ達は…

 

 

 

 

「奴はこの建物に?」

 

「あぁ、間違いない。内部から生体反応も感知された」

 

「あらら、辿り着くのが早いわね」

 

下級ロイミュードの後を追い、誘拐された二人がいると思われる廃墟まで到着していた。下級ロイミュードは既に内部に入って行った為、三人は他の捜索メンバーにも連絡を入れる。

 

「こちらロキ。二人が誘拐されたと思われる建物まで到着した。座標送るから、急いで合流を頼む」

 

それだけ告げてから、ロキはスノーズと葵を連れて廃墟の中へと突入する。内部は入り口の時点で今にも崩れそうなくらいボロボロな状態で、とてもじゃないが人が住めるような環境ではない。

 

「場所は……上だな」

 

ロキ達は階段の上にあるダンボールなどの障害物をどかし、二階へと進んでいく。そして辿り着いた少し広めの部屋にて、部屋の隅で倒れているルイを発見した。

 

「ルイ!!」

 

『やっと来てくれたか、OTAKU旅団の諸君』

 

「「「!!」」」

 

直後、物陰から一体の怪人が姿を現した。目玉模様が複数存在する赤いボディ、白黒のカラーリングが施された髑髏のような顔、機関銃のような形状をした右腕などが特徴的なロイミュードの進化態“アーミーロイミュード”だった。アーミーロイミュードの胸部のプレートに“PRT”という言葉が浮かび上がり、彼はクククと不敵な笑い声を上げる。

 

「…その声、シュトルヒ・アークライトか。よくもまぁ、人の身内に手を出してくれたもんだ」

 

『君達が来てくれるのを待っていたのだよ。これでようやく、復讐を果たせるのだからね』

 

「復讐ねぇ……散々悪事を働いてたのをバラされたくらいで、そこまで逆恨み出来るアンタが凄ぇよ。こんな事までやらかしといて」

 

『これでもまだ人道的な方だよ? 君達OTAKU旅団が私にやった、非人道的な行為に比べればねぇ』

 

「非人道的か……ならアンタは、人の道を踏み外し過ぎて畜生の領域に達しちまってるな」

 

『黙れ!! この屈辱は絶対に晴らしてやる、まずは貴様の大事な者達を目の前で消す事でなぁ!!』

 

「させるかよ」

 

アーミーロイミュードが怒鳴り散らした瞬間、ロキは瞬時にとてつもない殺気を放ち、周囲を震撼させた。隣にいたスノーズは表情こそ変わらないものの目付きは非常に鋭くなっており、葵は相変わらず含みのあり気な笑みをニヤニヤと浮かべている。

 

「せっかくの休日を台無しにしてくれたんだ……その責任は、キッチリ取ってくれるんだよなぁ?」

 

『…クハハハハハハハ…!!』

 

すると、アーミーロイミュードは再び笑い声を上げ始めた。彼が笑い出した理由が分からないロキは、苛立ちのあまり右手をゴキンと鳴らす。

 

「…何がおかしい?」

 

『ハッハッハッハッハ……いや、失敬。君がまだ何も気付いていない事に思わず笑ってしまったよ』

 

「何?」

 

『おかしいと思わないのかね? 今この場にいなきゃならない筈の人数を、人質の人数を』

 

「…ッ!!」

 

そこでロキは気付いた。誘拐されたのはリリィとルイの二人。本来なら二人一緒に捕らわれている筈なのに、部屋には人質がルイしかいない。

 

リリィは何処に行った?

 

「…リリィを何処へやった」

 

『それを知りたければ、私を倒してみると良い……まぁ、無理だろうけどねぇ』

 

「言ってくれるな」

 

瞬間、ロキの膝蹴りがアーミーロイミュードの顔面に炸裂した。アーミーロイミュードは一たまりも無く吹っ飛んで壁に激突し、そこへロキが飛びかかり情け無用の連続パンチを繰り出す。

 

『ガ、ォゴ…ブッ…!?』

 

「ほらどうした? さっきまでの自信は何処へ行った? あ?」

 

ロキはアーミーロイミュードの頭を掴み、そのまま壁に叩きつけて減り込ませる。そして壁に減り込んだアーミーロイミュードを蹴りつけ、ユーズからデュランダルを取り出す。

 

しかし…

 

(…妙だ)

 

戦況を冷静に見ていたスノーズは、ある違和感を感じ取っていた。

 

(奴のさっきの台詞から、二人が一緒に捕まっている事は明白……しかし今、ここにいるのは妹さんだけ……もう一人の居場所が掴めないから奴は余裕の態度を? いや、それだけで判断は出来ない……問題は、奴が人質をどうしたいのかだ。やたら余裕なのも、その人質がいるからなのは間違いな―――)

 

そこで、スノーズは気付いた。

 

「待て、それ以上攻撃はするな!!」

 

「!?」

 

『…クハッハァ!!』

 

「どわっ!?」

 

「あん♪」

 

スノーズの言葉にロキは立ち止まり、その隙を突いたアーミーロイミュードがロキを殴り飛ばす。殴り飛ばされたロキを葵が巨乳で受け止める。

 

「く……何だよスノーズ!!」

 

「リリィ・マッケージの居場所が分かったよ……最も、非常に厄介な場所にいるけどね」

 

「?」

 

「…ふぅん、そういう事ね」

 

ロキは首を傾げるが、葵は理解したようだ。そこでアーミーロイミュードが、シャドーボクシングをしながら挑発的な態度で語り掛けてきた。

 

『ん~? もしかして、人質をお探しかな? まぁ、分かったところで助ける事は不可能だがね』

 

「何…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――助、け…て……キリ、ヤ…さ…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――!?」

 

ほんの僅かにだが、脳内に聞こえてきた念話。それを聞いて、ロキはようやく気付いた。

 

「まさか……お前の内部に(・・・・・・)…!?」

 

『…クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!』

 

アーミーロイミュードが高笑いし、ロキ達はそれが答えなのだと理解。ロキは舌打ちし、スノーズは目付きが更に鋭くなり、葵ですら表情から笑みが消え去っている。

 

『君達のお察しの通り、彼女は俺の中(・・・)で今もぐっすり眠って貰っているよ!! 私がロイミュードになった後、ネオバイラルコアを使った事でねぇ!!』

 

「どういう事だ!!」

 

『私はねぇ、バイラルコアを使ってロイミュードの身体を手に入れたのさ。ロイミュードはね、人間と融合する事で更なる強化態へと進化する事が可能だ。それが“融合進化態”…今のこの私がしている姿さ』

 

「…マズい事になったね。これじゃ僕達はまともに攻撃が出来ない。一歩間違えれば、奴の中にいる彼女も攻撃の巻き添えにしてしまいかねない」

 

「おまけに、奴の中にいるんじゃ私の高嶺舞でも守れないわね」

 

「クソッ!! 面倒なマネを…!!」

 

『そういう事だ……分かったら、大人しく私にその首を取られてくれたまえ!!』

 

「ッ……ユーズ!!」

 

≪イエス、バディ≫

 

アーミーロイミュードは右腕の機関銃を乱射し、ロキはユーズの能力で結界を張り、スノーズは自身の目の前に一瞬で氷の壁を作成し、葵は高嶺舞で飛んで来る弾丸を全て防御する。弾丸を防ぎ続ける中、スノーズはロキに問いかける。

 

「どうするんだい? このまま防いでばかりじゃ反撃は難しいよ」

 

「分かってる!! くそ、どうすれば良い……考えろ俺…!!」

 

『無駄だと言ってるだろう? 貴様等に人質を救う術などありは―――』

 

-ドゴォォォォォォォォォンッ!!-

 

『しなぁがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』

 

「「「!?」」」

 

最後まで語り終える前に、アーミーロイミュードは吹き飛ばされてしまった。廃墟の壁を破壊し、オートバジンに乗ったファイズ・アクセルフォームが猛スピードで彼を跳ね飛ばしてしまったからだ。アーミーロイミュードが頭から壁に突っ込む中、ファイズが乗るオートバジンは急ブレーキをかける。

 

≪3……2……1……Time out≫

 

「ありゃ、また誰か跳ねちゃったか?」

 

「!! その声、okakaか!?」

 

「お、ロキ。途中で何人か拾って来たぞ。まぁ…」

 

 

 

 

 

 

「「うっぷ……おぇぇぇぇぇ…」」

 

 

 

 

 

 

「…アクセルフォームの状態で飛ばした所為で、だいぶ酔っちまってるみたいだが」

 

「うん、何故その状態で飛ばして来たのか問い詰めて良いかな?」

 

ファイズはオートバジンから降りた直後、ちょうど時間切れになった事でアクセルフォームから通常フォームへと戻る。そんな彼のオートバジンにはハルトとユーマも捕まっていたのだが、アクセルフォームの状態で走った所為で散々振り回されたのか、二人揃って乗り物酔いに苦しめられており、その原因を作ったファイズにはスノーズから辛辣な突っ込みが入る始末である。

 

「まぁそんな事はともかく」

 

「「そんな事!?」」

 

「あ、復活した……今、俺が跳ね飛ばした奴が元凶ってところか? 早いところそいつを潰して、リリィちゃんとルイちゃんを助け出さないとな」

 

「そうしたいのは山々なんだけど……そういう訳にもいかなくなったよ」

 

「ん?」

 

「奴の姿、見てみなよ。たぶん君なら知ってるんじゃないかな」

 

乗り物酔いから復活した二人はさておき。スノーズの指差した方向では、砂煙が舞う中で瓦礫からひょっこり出て来るアーミーロイミュードの姿があった。その姿を見たファイズは「うげっ」と仮面の下で嫌そうな表情になる。

 

「よりによって融合進化態かよ、面倒臭ぇ」

 

「そう。そして今、奴の体内にはリリィちゃんが無理やり融合させられた状態で捕まってる」

 

「!? 何だと…!? 融合進化態は、悪人としか融合は出来ない筈だ!!」

 

『クククククク……そんな馬鹿な話が、ここにはあるのさ。これもマウザーの研究のおかげさ』

 

「マウザーだと…? 確か、miriが言ってた…」

 

跳ね飛ばされてもダメージは無かったのか、アーミーロイミュードは余裕そうな態度を崩さない。すると彼の右腕の機関銃が変異し、大型のアーミーナイフに変化する。

 

『いくら貴様等でも、この力に対応する事は出来まい!!』

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

アーミーロイミュードが左腕を突き出した瞬間、再び重加速が発生。アーミーロイミュード以外は例外なく動きが遅くなり、その間にアーミーロイミュードは右腕のアーミーナイフで彼等を次々と斬りつけていく。

 

『重加速を防ぐ術が無い以上、貴様等に勝ち目など無い!!』

 

「「がぁっ!?」」

 

「うぉわ!?」

 

「ぐっ!!」

 

「チィ…!!」

 

「まぁ」

 

重加速が収まり、斬られた一同は一斉に吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。しかし葵だけは、高嶺舞のおかげで唯一斬られずに済んでいた。

 

「あら、私には攻撃しないのね。チャレンジ精神が足りないんじゃなくって?」

 

『フン……元より、貴様に攻撃を仕掛ける必要は無い。何故なら…』

 

「? どういう事かし―――」

 

-ブゥンッ-

 

「!? 葵さん!!」

 

葵が不思議そうに首を傾げた瞬間、彼女の足元に魔法陣が出現。それを見たロキが手を伸ばすも、彼女は一瞬でその場から違う場所へと転移させられてしまった。

 

『旅団の一員の首は貴重なのだよ。一人か二人仕留めるだけで、幹部の座を簡単に取り返せるくらいにな。無理に全員を仕留めに行くほど私とて馬鹿ではない』

 

「へぇ、なら俺達は問題ないってか? 嘗められたもんだ」

 

『ほぉ? なら貴様等には何が出来る? 重加速が発動してしまえば、貴様等は一瞬で無力になるというのに』

 

その言葉にユーマがニヤリと笑う。

 

「じゃあ、これならどうよ?」

 

『何―――』

 

 

 

-ズドォンッ!!-

 

 

 

『ヌガァッ!?』

 

アーミーロイミュードの背中から、盛大に火花が飛び散った。何事かとアーミーロイミュードが振り返ると、先程ファイズが破壊した壁の外、その遠く先で…

 

「ふむ、一発だけじゃ効果は無さそうですわね」

 

木の枝の上に座ったまま、優雅にスナイパーライフルを構えているルナの姿があった。それを見たアーミーロイミュードは「チッ」と舌打ちする。

 

『ふん、地味に面倒な事をするものだな』

 

「人質取ってるアンタにゃ言われたかないな!!」

 

ユーマが接近し、アーミーロイミュードはアーミーナイフを再び機関銃に変えて乱射する。しかしそれを予測していたかのようにユーマは弾丸を回避し、アーミーロイミュードの両足を引っかけて転倒させる。

 

『チィ…!!』

 

「アンタの中にいるリリィちゃん、さっさと取り返させて貰うぜ!!」

 

『させん!!』

 

「ぬぉっと…!?」

 

アーミーロイミュードは左手を振るって再び重加速を発生させ、ユーマ達はまたしても動きがスローになる。それは廃墟の外から狙撃しようとしていたルナにも影響があったらしく、ルナは自分の身体の動きが遅くなった事に驚きを隠せない。

 

『いちいち面倒なマネをしてくれる。こうなれば、まずは貴様から始末してくれよう』

 

そう言って、アーミーロイミュードは機関銃の銃口をユーマの右肩に突きつけ…

 

 

 

-ドォン!!-

 

 

 

「ッ…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ユーマ!!」

 

『ハッハッハッハッハッハッ!!』

 

そのまま容赦なく撃ち抜いてみせる。重加速で動きが遅い中でも、ユーマは右肩の痛みに悲鳴を上げる。アーミーロイミュードは次にスノーズの方へと振り向き、機関銃をアーミーナイフに変えてから彼の両足を迷わず横に斬りつける。

 

「ぐぅ…!?」

 

『どうだ、痛かろう? このまま貴様等全員、一方的に苦しめてやろう』

 

「く、この真っ赤野郎…うごぁ!?」

 

「コイツ…!!」

 

アーミーロイミュードはハルトを蹴り飛ばした後、今度はロキの首元にアーミーナイフの刃を当てる。ロキは動きがスローな状態の中でもギロリとアーミーロイミュードを睨みつけるが、今の状況、反撃の術が無い事から内心ではかなり焦っていた。そしてそれは、ファイズも同じだった。

 

(あぁヤベぇ、これちょっとマズいかもな…)

 

(くそ、アクセルフォームで急いだのが仇となった!! せめてプロトディケイドを通じて、カブトに変身するべきだったか……!!)

 

『さぁ、まずはお前の首から頂くとしよう!!』

 

そのままアーミーロイミュードは、ロキの首を撥ねるべくアーミーナイフを振り下ろす…………筈だった。

 

「―――?」

 

アーミーナイフは、ロキの首ギリギリの所で停止していた。アーミーロイミュードは、動かない右腕に思わず疑問を抱く。

 

『何…!? 何故だ、何故動かん…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――させ、ま…せん……そんな、事……絶、対…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? リリィ…!!」

 

『ヌグ……まさかこの娘、まだ足掻こうというのか…グァアッ!?』

 

ロキは気付いた。アーミーロイミュードの内部に取り込まれていたリリィが、今も必死に足掻いている事に。それにはアーミーロイミュードも気付いたらしく、力ずくでも右腕を動かそうとする……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ギュィィィィィィン!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い炎に燃えたミニカーが一台、アーミーロイミュード目掛けて突っ込んで来たのは。

 

『!? 何だ……ごわぁっ!?』

 

「「「「「!?」」」」」

 

そのミニカーはアーミーロイミュードを何度も攻撃し、アーミーロイミュードはたまらず転倒。同時に重加速も解除され、ロキ達はまた普段通りのスピードで動けるようになる。

 

「ぐ……何だ、誰だ…?」

 

「今のは…」

 

-カツン……カツン……-

 

「!」

 

階段の上を上って来る音。一同が階段のある方向へ振り返ると、その先にはちょうど階段を上り終えた一人の人物が立っていた。その姿を見て、ファイズは仮面の下で驚きの表情になる。

 

「お前は…!?」

 

『チィィィ……何だ貴様はぁっ!!』

 

アーミーロイミュードが怒鳴る中、現れた人物…………否、黒いボディにベルトを装備した戦士は、手元に戻って来た一台のミニカー……シフトカー“マックスフレア”を掴み取り、低い声を部屋に響かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名乗るつもりは無い……少なくとも、今から倒される者などには」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に、ファイズはボソリと呟いた。

 

「プロトドライブ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重加速で誰かが恐怖に怯える時、重加速で誰かが苦しむ時、戦士は現れた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その戦士の名は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダープロトドライブ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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