【 流れの変化 の件 】
〖 洛陽 都城内 大広場 にて 〗
眼下の広場で、曹孟徳の弁舌が冴え渡った!
勿論……聞いていたのは、この将たちも!
ーーー
風「おぉー! これは鋭いところを突いて来ましたねー!」
稟「ふふっ……華琳さまは、執金吾達を『佞臣』という『悪』と断じ、自分たちを『忠臣』という『善』に位置付けました。 更に、大陸の伝統ある祖先崇拝を背後に定め、中立という名の逃げ道を封鎖をすれば……」
星「なるほど……後は、皆で叩きのめす道しかないな。 しかし、王朝自体は黙ってはおるまい。 臣下が上に背く……所謂『叛乱』を認めるとは思えん。 如何に主が味方とはいえ、我々には不味い状況ではないのか………?」
風「『のぉーぷれぶれむぅ』ですねー!」
稟「な、なんですか!? そのワケの分からない言葉は!?!?」
風「『問題ない』と言う意味ですー! 天の国の言葉ですよー!」
星「風よ、問題ないとは……どういう事だ?」
風「あぁ~! つまりですね……十常侍を始末した事が、裏目に出たのですよー。 王朝内で何皇后を支持していた者、誰だか分かりますかー?」
星「十常侍どもだな……。 しかし、奴ら既に処刑され───」
稟「えぇ……確かに処刑されましたが、実務の引き継ぎが当然あります。 すると、引き継ぐのは、同じ宦官の者がなる筈! しかし、十常侍さえも……あの有り様の中、誰が何皇后たちを支持しましょうか!?」
星「───! 漢王朝内で反皇后勢力が躍進! 華琳殿の論法を『大義名分』とすれば……お咎め無しになる可能性が!? そこまで見抜いて──!?」
風「ただ、ちょ~と気になるんですよー。 これを、華琳さまが自力で気付いたのかー? もしかすると………」
稟「………気付くように……導かれたのか……」
星「…………」
風「何にしてもぉ、これで『流れの起点』が変わりましたねー」
ーーー
美羽「………わらわには、よぉーわからん! 七乃、どういう意味かや?」
七乃「それはですね~? 『この《喜劇》の観客になるな! 主役になって、気高き姫(一刀)を救え!!』って言ってるんですよ~!」
美羽「な、なんとーッ! わらわが主人公か!? な、なら……わらわがお救いすれば……主様がわらわの下へ~!」
七乃「あははは~っ! さすがぁ美羽さま! 自分の都合の良いように話を憶えるなんて……可愛いぞ! 三国一の傾国幼女!!」
ーーー
華琳の論法により『大義名分』を得て、先の小競り合いで武器も行き渡る。 それに、周りを囲みは精鋭といえど兵士に過ぎぬ。 しかも……艦娘たちに蹂躙されたばかりの者たち。
勝機は充分にある!
────こうして諸侯たちは、反旗を明確に表し、何皇后勢力に抗する為、動き出したのだ!!
◆◇◆
【 何皇后側 内情 の件 】
〖 都城内 大広場 高台 にて 〗
広場より───曹孟徳の演説が聞こえる!
覇気を帯びた声が高低を変え、耳朶(じだ)に響き不快感を募らす!
楊奉は、眼下の騒ぎを見て、苦々しく思い睨みつける!
ーーー
楊奉「───往生際の悪い奴らめ!!」ギリッ!
何皇后「ど、どないな事! どないな事なんじゃ!? 楊奉ッッ!!」
ーーー
やかましく騒ぐ何皇后に、顔をしかめる楊奉。
しかし、彼女は今現在、国の最高権力者! 劉辯が皇帝に指名されただけで、即位はしていない。 だから、何皇后の言葉に……無視など出来ない!
ーー
楊奉「………どうか御心鎮め下さい。 この北郷の返事次第で、事態は直ぐに収束するでしょう! 暫し、御猶予の程を───」
何皇后「早よ……頼むぞぉ?」
楊奉「…………御意」
ーーー
恭しく頭を下げて、ひとまず何皇后を落ち着かせたが……何時、再度囀る(さえずる)か分からない。
楊奉『此方には人質がいるのだ! 北郷に関しては、どう足掻こうとしても無駄な事。 それに……あの諸侯の周りに居る兵は、《重装歩兵》で固めている! あの包囲を抜ける事など無駄だ!!』
重装歩兵──西に存在する大秦(ローマ帝国)より伝わりし、甲冑に身体を覆われた歩兵。 その装備は、持ち手の身体半分はある大きな楯、腰には剣を携え、手には槍を持った精兵である!
楊奉は、白波賊の情報網で大秦の兵士を知り、それを漢王朝内に取り入れた結果。 そのため、執金吾の職務としても大いに役立った実績もある!
ーーー
楊奉『貴様らは優秀だ、優秀過ぎるのだ! 民を幸せに笑顔にするだと──? はっ、馬鹿馬鹿しい! それが何の足しになる!?』
楊奉『民など家畜にしか過ぎぬ! 適度に喜ばせ、取れる物は残さず取る! この世を謳歌できるのは、一握りの高官と選ばれた者たちだけでいいのさ!』
楊奉『───改革すれば、民はつけあがる! そうなれば……皇帝も、王朝さえも………消えてしまうのに! いつの日かな!!』
ーーー
楊奉は、そのように考えつつ、自分に強い眼差しを向ける北郷へと……顔を向けた!
★☆☆
無様な失態を犯した十常侍を……ワザと洛陽より脱出させたのは、楊奉の考え。 何皇后を知らせを受けて、すぐさま楊奉が思いついた策である。
『洛陽内に潜伏させれば……何皇后との関係が露見されてしまう。 それなら……馬脚を現した十常侍に、責任を全て被せればいいのではないか?』
その策に更なる意味を与えたのは……何進配下『鬼灯』だった。
何皇后との相談中、何皇后の部屋へと……フラリと現れて助言をしたのだ。
初め、重大な過失を見られた何皇后は顔を青ざめ、楊奉は冷静に剣を構えて邪魔者を排除しようとするが、鬼灯は白い顔を微笑させて、唐突に言い出す。
ーーー
ーーー
『私も何進に恨みがありまして。 一枚噛ませて貰えませんか……?』
訝る楊奉に対して、何皇后は喜ぶ。 何進の側近とも知恵袋とも言われる『鬼灯』が配下に加わる。 これほど強い味方は居ないと。
楊奉『だが……我々に対して、約束を破らない事を証明しない限り、お前の言葉は信じられん! 証拠を見せて貰いたい!!』
鬼灯『言われて見れば確かに。 ならば……証拠よ!』ゴトン!
楊奉『───なっ!?』
そこには、黒光りする8inch三連装砲の砲身が一つ。
鬼灯『私には、まだ必要ないから……預けるわ。 でも、無くしたら……容赦なんかしてあげない。 洛陽ごと……灰燼にしてやるわ!』
ーーー
ーーー
これを機に、鬼灯も何皇后側へと入る。
これが……如何なる関わりになるか、誰も知らないままに。
ーーー
余談だが、楊奉も完全には何皇后に忠誠を誓っているわけではない。
彼には白波賊と言う帰る場所と首領と言う地位を持っている。 いざとなれば、いつでも職を辞して古巣に帰る事ができるのだ。
しかし、洛陽で『執金吾』の職を持つと非常に役立つのだ。 執金吾とは『洛陽内の治安維持を担当する長』である。 しかも、何皇后の覚えも良い。
洛陽付近に本拠地がある白波賊としては、都の動静を掴めなる事は有利。 しかも、捕まった場合でも『お目こぼし』と言う融通も効く。 それに、賄賂の収入も馬鹿にならない!
そんな彼だが、今回の皇帝選択で……ある野心が芽生えた。
『何皇后の娘《劉辯》が即位すれば、反対派だった何進は失脚! その空いた席に……白波賊の俺が、追われる側の王朝武官最高位に居座る! なんて痛快な快挙になるだろうか!? それに《俺達》にも……旨味はあるしな!!』
武官最高位『大将軍』の座を欲した!
白波賊の首領としても、一人の男としても。 その悪い意味での快挙を目指して、何皇后側へと仮の忠誠を誓っていたのだ!!
◆◇◆
【 別動を阻む者 の件 】
〖 都城内 大広場 にて 〗
諸侯の将たちも士気が上がり、この閉塞感を払わんばかりに意欲的になったのは、間違いなく曹孟徳……華琳の策である!
だが、他方の将たちも、この好機を待っていた!
──桃香や一刀たちを救うため、仲間に《一縷の望み》を託ながら──
ーー
春蘭「そこをのけぇ! 魏武の大剣が罷り通らせて貰うぞぉ!!」
兵「グハッ!」ドカッ!
ーー
明命「───邪魔です! 私の行く手を阻む者に、容赦などしませんッ!」
兵「ゴホッ!?」ベシッ!
ーー
恋「───羽虫は……消えろ……!」
兵「ギャア───ッ!!」ボコッ!
ーー
兵士が、天の御遣いからの攻撃が止まった合間に、華琳の演説が始まる! 今まで緊張していた精神が、攻撃が停止した事に緩み、第音声で再度緊張を強いられる! この2つの事で、精神の空白部分が出てきたのだ!
その間隙を突いて、三人が突撃し、瞬く間に数名を地面に這いつくばせた!
一応……三人の攻撃は、台詞からして凄まじい物に見えるが、気絶だけで命に別条は無い。 艦娘たちの攻撃で、死者が出ていない事を踏まえているからである。
ーー
ねね「れ、恋殿! 殺してはなりませぬ! 殺せば、ねねや恋殿だけではなく、月殿や皆に罪を被せる事に───ッ!?」
恋「大丈夫………」
ねね「さ、さすが……恋殿」
恋「………セキトたちで……証拠隠滅……」
ねね「れ、恋殿ぉおおおッッッッッ!!?」
恋「…………冗談……」クスッ
ねね「あのボンクラァ、恋殿に何を教えやがったのですかぁあああッ!!!」
ーー
しかし、提督諸兄の中に『明命は理解できるとして、恋は勘だろう? しかし、あの春蘭がかぁ?』と思われる方が少なからず……いらっしゃると思う。
そのワケを後日、他の者が聞いたそうだ。
★ーーー★
青葉「恐縮でーす! 司令官たち救出の件で、取材しに来ましたぁ!!」
春蘭「う、うむ……あの時か? 大変だった! 以上終わりだ!」
青葉「えぇ~!? それじゃ記事になりませんよ! 夏侯元譲さんのドアップの顔写真と『大変だった!』の記事しか載せれません!!」
春蘭「わ、分かった! 北郷の言っていた『かめら』とかで出来た絵が、お前の出す回覧竹簡へ載せるのだろう! 華琳さまや秋蘭に何と言われるか……」
青葉「じゃ……早く教えて下さい~!」
春蘭「け、桂花から言われたのだ。 一刀たちを不利な状況に持ち込むな……と。 か、華琳さま、そして……秋蘭や季衣、流琉達までだぞ? 同じ事を何回も何回も───ッッッ!!!」
青葉「ほうほうほぅ! それは、確かに大変でしたよね?」
春蘭「い、幾ら私が直情径行で、前しか見ていないからだと言われても!! わ、私だって……日々成長している! これくらい判断できるんだぞぉ!? ───な、なんだッ!? その意外そうな顔はぁ!!」
青葉「い、いや……あははははっ! 皆さんからの事前に聞いた話と違っていたもので……! さすが──曹操軍勢の中で、一番の成長株ですね! 青葉、尊敬しちゃいます! ──よっ! 未完の大器!!」
春蘭「ほ、褒めても何も出んぞぉ? そ、それに、あの桂花が……な。 泣きそうな顔で私に頼むのだ。 北郷に……迷惑かけるなと……。 まったく……そんな事、私がすると思ってるのかぁ? まったく……まったく!」
青葉「はいっ! ども、ありがとうございますぅ~! 以上、夏侯元譲さんからの──ノロケ話でしたぁ!! うん! いい記事が書けそうですね~!」
★ーーー★
……………こんな具合である。
だが、快進撃出来たのも此処まで!
天は無情にも……この者たちを阻む!
★☆☆
ーーーーザッザッザッ!!
重装歩兵「ここから先は……通すワケにはいかん!!」
重装備の歩兵たちが前を固め始める!
高台まで、僅かに三歩(約4㍍)! しかし、重装歩兵に装備し直した者が、隊列を組んで高台を囲む!
ーーー
ねね「あ、あれは……!!」
春蘭「くっ、くそぉおおおっ! 後少し、後少しでぇ!!」
明命「『ガキッ!』────あっ! か、固いですぅ! 私の得物なら気合いでいけるかも知れませんが、借り物では刃が立ちませんッ!」
恋「明命……上手い!」
明命「えへへへ……ありがとーござ──じゃなくてですねぇ!!」
恋「………わかってる。 焦りは……無駄!」
明命「は、はいっ!」
ーーー
見慣れぬ兵の様子に、4人が歯噛みする。
楊奉が準備した、重装備の歩兵に阻まれる結果になった!
◆◇◆
【 絶対絶命 の件 】
〖 都城内 大広場 高台 にて 〗
高台の下で繰り広げられる戦闘に、楊奉は……してやったりと軽く笑う。
重装歩兵の装備は鉄製。 しかも良質な益州の鉄を丹念に鍛錬した結果である。 並みの剣では、貫く事も傷付かせる事も出来ない!
しかし、これでも時間稼ぎに過ぎない!
楊奉は、一刀に向かい問い掛ける。 何皇后の下に来ないかと───!
ーーー
楊奉「北郷……此方側に来ないか? 貴様なら……漢王朝を、いや大陸全てを手に入れる事も可能! 世界の全てが、貴様に畏む(かしこむ)結果になるんだぞ? 俺らを除いててな………。 どうだ、何皇后さまに忠誠を──」
一刀「………愚かだよ……」
楊奉「何ぃ───!?」
一刀「そんなもの、この俺には───必要ない! 俺の望みは、貴様の望みとは違う! 貴様の提示する物は、喉の渇いた旅人に宝を見せびらかす不要な物。 そんなんじゃ……俺の心は満たされないんだ!!」
何皇后「ほな、なんじゃとしゃべるんじゃ! 権力、財……他に欲しいモンが、こん世におますんか?」
一刀「───俺の望みは、周りの人々が戦いに巻き込まれ、憎しみ殺し合う事を止めさせる事だ! 今居る皆が……笑って暮らせれば、それに越した事は無い! 平和こそ……一番の幸せなんだ!!」
楊奉「ふん! そんな事でか………」
一刀「そんな事だと? 上より──命じられ、強いられ、期待され……命を落とした者たちが幾ら居ると思う! 悠久の世から比べれば、黄河で流される砂粒よりも多いんだぞ! それを改善出来ず──何が、天の御遣いだ!!」
ーーー
それを聞いた桃香たちが涙を流し、艦娘たちは頷く。
必要だから生まれて(建造され)……命令一つで困難な任務を行い……散ったら散ったで……捨て置かれた『命』
いったい幾つ……生まれ故郷まで戻り、役目を終わる事が出来たのだろうか?
ーーー
桃香「う……うぅぅぅ……」
愛紗「くぅ────ッ!」
鈴々「…………グスッ」
ーー
金剛「やはりィ……私たちの提督デース!」
アリゾナ「………………」
ーー
翔鶴「一刀提督………」
サラ「主よ……提督に力を……」
ーーー
雷「さっすが、司令官ねッ!」
電「……………一刀さん」
ーーー
楊奉「………な、何を真面目に答えるかと……クッ、クククッ…思えば……クククッ……アーッハハハハハハハ!!」
楊奉は、顔を空に向けて笑い出す!
何皇后もまた、口を抑えながらコロコロと笑う。
楊奉「……下らん、全く取るに足らん……下らん話だ! 北郷!! どうやら、俺の眼鏡違いだったようだ! ───何皇后さま! コイツは此方に応じない様子! 私たちは、この場を引き上げたいと存じ上げます!!」
何皇后「仕方なかろう……。 されぞ……皇女のみは連れていかはったんほなぞ?(連れて行くのじゃぞ?) 皇帝の血筋が居なくては……また難儀な後継者争いが起こるわ!」
楊奉「はっ! ───誰かある! 皇女様方を此方にお連れしろ! 天の御遣いが大将軍何進と共謀して、漢王朝を乗っ取ろうと企てた! 俺は何皇后さまと皇女方をお連れして、避難をさせる。 皇女様に御足労願えぇ!!」
ーーー
兵「「──ハイッ!」」ダッ!
高台の付近に居た重装歩兵が二人近付き、皇女二人を拘束する!
劉辯「即中止! 懇願止!(止めなさい! 止めてぇ!!)」ガッ!
劉協「離せぇ! 無礼者、離せぇえええ!!」ガッ!
ーーー
楊奉「北郷! ならば人質の命など無い! このまま処刑する! だが、先に処刑するのは……お前からだ! 人質を殺せば、お前たちが自由になる! そうなる前に、北郷──貴様から処刑して後顧の憂いを取り除いてからだ!!」
「「「 ──────! 」」」
楊奉「俺の下で暴れている将達よ! 静かにしろ! 今から天の御遣いを処刑してやる! そこで大人しく見て居るがいい!!」
ーーー
春蘭「うぉおおおおッッ!! 貴様らぁどけぇえええッ!!」
ーー
桂花「いや……やっと逢えたのよ! やっと……逢えたのにぃぃぃ! そんなの嫌ぁあああッ!!」
季衣「に、兄ちゃん! 兄ちゃん!!」
流琉「兄さまぁぁぁぁッ!!」
ーー
明命「────まだですッ! 今からでも! 『ガキィ! ガキィ!』 くぅ~! 退きなさい! 早くぅ退きなさい!!」
ーー
蓮華「─────ッ!」
冥琳「北郷───ッ!!」
小蓮「一刀────ォ!!」
思春「─────!」
ーー
恋「ご主人さま……必ず……助けるッッ!!」
ねね「こらぁ!! 馬鹿主人! 恋殿が直ぐに助けに参るのです! 首を斬られても生きているのですぞぉ!!!」
ーー
月「詠ちゃん! 詠ちゃん! ご主人さまが! ご主人さまがっ!?」
詠「……………………」
ーー
蒲公英「姉様ぁ! ご主人様が! ご主人様がぁ!!」
翠「テメェラ──早くどきやがれぇ!! ご主人様ぁぁぁぁ!!」
ーーー
楊奉「………フッ!」チャッ!
楊奉が腰に帯刀している剣を抜き、一刀に刃を向けた! 剣を上から下ろせば事足りるが、相手は天の御遣い! 確実さを狙わなけならない!
刃を横に寝かせ、一刀の胸に標的を定め、突く準備姿勢を取る!
一刀「…………………」
楊奉「動くなよ? 動けば……アイツらの首は落とされる。 早いか遅いかどっちかだがな? クックックックッ……ハーッハッハッハッハッ!!」
何進「─────」ダッ!
楊奉「何進……鬼灯より最後の通告だ! 俺が北郷を殺害するのを邪魔すれば、お前を完全に敵と見なすそうだぞ? どういう理由か知らないが……あの女を敵に回すとはなぁ? そこで、静かに見ているがいいッ!!!」
何進「────!」グウッ!
ーーー
こうして、一刀に楊奉の凶刃が向けられ、楊奉の顔が醜く歪む!
楊奉「残念だ、北郷! 貴様の力は惜しいものだが、敵になるなら不要! 寧ろ厄介な代物だ! それに、中心人物の貴様が死ねば──この煩わしい(わずわらしい)攻撃も無くなる! 覚悟を決めて───地に倒れ伏せ!!!」
しかし……一刀の顔色は変わらない! 楊奉へ咎めるような視線を投げつけて、その行動を冷静に確認していた!
◆◇◆
【 反撃の符丁 の件 】
〖 都城内 大広場 高台 にて 〗
────ダッダッダッ!
『お、お待ち下さいー! ハァハァハァ………ッ!』
一人の兵士が、息を切らし都城の出入り口から、駆けて高台まで登ってくる!
兵士も甲冑を着用した重装歩兵──精兵の一人だから、無碍には対応できない。 舌打ちをして殺気を散らし、兵士の到着を待った。
つい先程まで……一刀を殺そうと、剣先に集中していた殺気を崩しため、不快な顔で兵士に対応する楊奉。 横でも、落ち着かない何皇后の姿が見える!
ーーー
楊奉「な、何だ! 何があったというのだ!!」
何皇后「どうしたのじゃ………!?」
兵士「はっ! 実は……とても大事な報告が! ハァハァ……ハァハァ……」
兵士が片膝を付き、両手で拱手抱拳礼(左手で右手を包む)を行い報告をする! 両肩が上下し、かなり急いで来たようだ!
楊奉「は、早く言え!」
兵士「はっ───ではッ!」キラッ
甲冑……鎧兜に身を固めた兵の……眼鏡がキラリと光る!
兵士「トォオオオオッッッ!!」
楊奉「────グォッ!?」
──────ガァキン!
楊奉「グォオオオオ───ッ!!」ガクガクガク!
兵士が拱手抱拳礼より、アッパー気味の拳打を右手で放つ! その手にはいつの間にか『マイク』が握られ、マイクの下部で楊奉の顎を狙い定めている!
しかし、楊奉も兵士の攻撃を素早く読み、打撃線上より後方に身体を反らして回避。 ただ、両手で持っていた剣に当たる!
かなりの衝撃が走るが……楊奉は耐えて剣を手放さなかった。
兵士「マイク……支障無い? 大丈夫? チェック、ワン、ツー……よし! では───トラ・トラ・トラ!(『ワレ、奇襲ニ成功セリ!』)」
楊奉「き、貴様は───!?」
兵士?「貴方、頭が悪いの? 司令を助ける為に来たんだから貴方の敵よ! あの娘のように、ガツンと頭を叩かないと分かんない?」
そう言って兜を脱ぎ捨てるのは……霧島=サン。
頭の艤装?も外した姿だが、あの智の象徴である眼鏡、片時も離さないマイク、並み外れた武力(火力?)を表現すれば、名前を出さなくたって誰だか分かる。 ……台詞みれば……分かるよね?
ーーー
楊奉「うくぅ! な、何をしている! 早く人質を───!!」
『処刑しろぉ!!』と叫ぼうと、桃香たちを視線を移すと………!
ーーー
ーー
拘束が解けて、手足を自由に動かす……桃香たち三人!
─────その将の足下には、転がる三人の楊奉配下の兵!
そして……闘志に満ち溢れ、武人の誇りを漂わせる……背を向けた者が一人。
重い重装歩兵の鎧を着用しつつも、霧島の攻撃で目を奪われている隙に、処刑担当の兵士を三人、一瞬で昏倒させて人質を救った!
ーー
ーーー
桃香「あ、ありがとうございます!」
愛紗「凪、すまん! 助かったぞ!」
鈴々「ありがとうなのだ!!」
ーー
白蓮「おいおいっ! 私だって……紛れ混んで助けに来たんじゃないか! まぁ……誰も気付いてくれちゃ居ないんだよな………」
桃香「白蓮ちゃん、ありがとう!!」
白蓮「うぅぅぅ……やはり桃香だな! 心の友よぉおおおッ!!」ガバッ!
桃香「きゃあぁ───!!」
ーーー
凪「────隊長! 桃香様たちを御救いしました!」
白蓮「いやぁ~上手く成功して良かったよ!」
一刀「ありがとう───! すぐに桃香、愛紗、鈴々を連れて──俺の後ろへ! 白蓮や『君』も……そのまま護衛を頼む!」
白蓮「了解だ!」
凪「────はっ!」
ーーー
ーーー
ーー★
将……いや楽文謙(真名 凪)は、少し寂しそうな顔をしたが、三人を一刀の背に導く! 一刀より真名を呼ばれないのは、顔合わせだけしかしておらず、真名を預ける暇もないまま、この作戦に参加したためだ。
ーーー
凪「………隊長。 私の事を真名で呼んでくれない………」
白蓮「凪、さっきは助かった! 変わらず……元気そうで良かったよ!」
凪「あっ! ……白蓮様! 先程はありがとうございます! 白蓮さまこそ、お元気そうで何よりですよ!」
白蓮「………凪……寂しいか?」
凪「───ビクッ!」
白蓮「凪の寂しそうな姿を見てな。 ───アイツには、私たちの記憶が無い。 唯一例外なのは……私らしいんだが……理由もわからん。 ただ、凪も話を聞いたか? 一刀の記憶は、理由があって今の一刀にないそうだ……」
凪「…………………」
白蓮「……凪」
凪「………はい」
白蓮「私はな、これは……天が与えてくれた良い機会じゃないか……と思っているんだ。 不謹慎だけど……な。 桃香たちに内緒だぞ……?」
凪「…………白蓮さま……」
白蓮「一刀は、前の世界の一刀は別人、記憶が無いのは当然なんだ。 それに……あの頃の私たちとの記憶が、一時とはいえ無いんだ。 これを好機だと思わないで、どうするんだ? 一刀と一緒に来た娘も居るんだぞ?」
凪「………………」
白蓮「今度は、皆が対等に近い状態だ。 自分を磨いて迫るのも良し。 新たな一刀の魅力を見付けて、そこから恋を始めるのもいい。 あの一刀が……こうして、もう一度会えた奇跡を喜ばないとな?」
凪「………白蓮さま……ありがとうございます……!」
白蓮「……お互い……頑張ろうな!」
凪「─────ハイッ!!」
ーーー
話は聞いていた。 記憶が無い、真名を呼ばれない……。 思っていた以上に……哀しかった!
だけど……白蓮さまは、別の意味合いを教えてくれたのだ!
────会えないと思っていた隊長が!
────この場に居る奇跡!
────その隊長が
────私を背中で庇い守ってくれている!
凪「…………隊長の背中が……見える……」
ーーー
一刀は、桃香たちと共に……凪も楊奉たちの魔の手より守ろうとしている。 いつも前線に立つだけで、自分の目の前は──いつも敵勢の姿!
それが、今回は愛しの隊長に背に守らる『女としての特権』を味わえれた。
凪は……自分の目から流れる涙を……そっと拭く。
『敵は健在、まだ油断は禁物! 今は、隊長の目的を遂行するまで、前進するのみ! 前の世界と同じように……お傍で!!』
今の思いを────胸に抱きながら。
◆◇◆
【 天の裁き の件 】
〖 都城内 大広場 高台 にて 〗
楊奉「な、ならば──皇女たちを!!」
楊奉は、皇女たちを連れて、逃げ出す態勢を作りだそうとする! そのため、皇女を拘束する兵士に命令を出した!
??「───ハッ! では、劉辯さま……儂の後ろへお隠れ下され!」
??「うむ──私の後ろにも。 大丈夫……私たちは提督の味方だ!」
しかし、二人の兵士は──笑いながら皇女の拘束を外し、自分たちの後ろへ庇った。 皇女二人は驚愕するが、楊奉のそばに行くより遥かにマシなため、その行動に従う。
楊奉「な、何をしている! 早く───皇女をこっちへ!!!」
??「ほう……今度は皇女様を人質か……。 化けの皮が剥がれてきたぞ?」
??「まったくだ……武人としての誇りも無いのか? いや、無いからこそだろう! 更に、提督まで手に掛けようとは卑劣な!! いいだろう! この私が『精神棒』替わりに、拳を食らわせて更正させてやる!!」
───カッポ! カッポ!
二人の兵士は、兜を取ると頭を振るい、束ねていた長髪を元に戻す!
劉辯「────!」
劉協「あ、貴女方は………!」
ーー
桔梗「新たな益州州牧『北郷一刀』の臣『厳顔 』と申します! 敵の策を破るため、偽兵として潜入しておりました! どうぞ、御安心下され!!」
長門「私は、同じく一刀提督の艦隊に所属する『長門型 1番艦 戦艦 長門』と。 武人ゆえ……礼儀に疎いかもしれませぬが、平に御容赦の程を!」
ーー
そこには、また別の一刀の仲間が助けに参陣していた!
霧島「司令! 我々は、これで自由に動けます! どうか、最後の命令を発して下さい!! 皆が……司令の命令を待っております!!」
一刀は深呼吸すると──皆に聞こえるように叫ぶ!
一刀「人質になっていた将は、私たちが解放しました! しかし、まだ首謀者の捕獲がなりません! この場に集まっている皆さん! 私に力を貸して下さい! 漢王朝が正しい政を行えるように! どうか……力を!!」
ーーー
ーーー
ーーー
華琳「皆、とくと聞いたかぁ! 天の御遣い直々の勅命である! 大義は既に超えた! これは、これこそ……天命ぞ! 天の御遣いからの勅命、即ち天からの命令である! 今こそ、王朝簒奪を図る痴れ者共を捕らえる好機!!」
蓮華「孫家の者は皆、この天命に従う! 目指せは──卑劣なる執金吾! 五倫の道に反す何皇后! 全力で天の御遣いに協力する事を誓おう!」
月「西涼の者は、漢に忠を尽くす者ばかり! その漢が迷走するのなら、道を正すの忠義の道! 西涼の董仲穎、馬孟起、そして配下の者たちも、天の御遣いさまに助勢致します!!」
美羽「わらわも──出来る限り手伝うのじゃ!」
七乃「もう~美羽さまったら~! ご自分の出来る事殆ど無いのにぃ~! この目立ちがり屋さん!!」
翠「当然! よしッ! 蒲公英! お前も手を貸せぇよ!?」
蒲公英「もっちろん!!」
華琳「言い出しの私たちが先陣を切るわよ! 桂花! あの二人の逃走されないように策を考えなさい! 秋蘭は、遊軍で真桜、沙和と残り……何かあれば教えなさい! 私は春蘭と合流して追い詰めるわ!!」
「「「「 ────はっ! 」」」」
★☆☆
一刀「司令官、北郷一刀より最終指令を命じる───『カワカワカワ』!!」
ーーー
榛名「金剛姉さま! 『カワカワカワ』の符丁が!!」
金剛「OK! 大丈夫ネ! 霧島も頑張ってくれましたァ! 私達も大活躍しマショウ! 第二次空砲撃……全艦、準備して下さいネ!」
比叡「金剛お姉様! いつでも準備……出来ています!」
アリゾナ「………一死以て大悪を誅す! それこそが、我が第一艦隊の意気と知れ! 破道の九十六───」
榛名「ちょ、ちょっと! それ『はどう』違い! そ、それに提督を殺す気ですか! そんな事! この榛名が! 許しません!!」
アリゾナ「そ、そんな事するわけないでしょう!? 台詞が格好いいから使っただけもん! 大事な提督を──そんな事するわけないでしょ!!」
金剛「………提督には、後で『Burning Love!!』デース!! Follow me! 皆さん、ついて来てクダサァイー! 第1艦隊 全砲門! ───Fire!!!」
ーーー
翔鶴「提督より指令が入りました! 第三艦隊! 発艦始め!!」
瑞鶴「第二次攻撃隊! 稼働機、全機発艦!!」
サラ「主よ………」
ビッグE「さてぇ~また Be Frightened(肝を冷やさせて)やるよ!!」
ーーー
暁「第四艦隊! 準備いい!? 霧島さんや長門さんが格好良~く決めたんだから、私達もレディとしての威厳を見せつけないと───」
電「そ、それが……ここに置いてあった手拭いが無いのですぅ~!」
雷「もうー! 誰よッ! 人の物を勝手に持ってくなんてぇ! 泥棒と一緒よねッ!?」
響「……なら仕方がない。 素手で対抗するか!」
暁「ちょ、ちょっと! そんなの危ないじゃ───!」
雷「いい考えじゃない! 素手なら何も言われないわよね! 電、また私を背負って突撃して! 雷電で行くわよ!?」
雷「………仕方ないのです!」
ーーー
響「暁もやれるだろう! こんな戦場だ、左腕の銃が疼かないか?」
暁「私の左手は普通よ! 何を考えているのよぉ!?」
響「いや……レディと日頃から言ってるから、左腕がサイコ○ン──」
暁「ば、馬鹿ぁ! それは別の世界の主人公の話じゃない! それに、あの『レディ』は主人公の相棒で、私と全然関係なぁぁいぃいいいッ!!!!」
響「……仕方ない。 フッ……私の実力を見せてやる!」コーホー
暁「あれ……響が笑った? 思いっきり口を開けて?」
響「響スマイル……これが出た時、対戦相手は………」
暁「貴女にそんな設定は無いわよぉ! 早く現実に戻りなさぁい!!」
ーーー
天龍「おらぁ! 第二艦隊 攻撃行くぞぉ!!」
龍田「天龍ちゃん……あの服……脱いじゃたんだ……」
天龍「アレ使えねぇ! スカートの丈が長すぎて、足で踏んで転びまくりで、小破しちまったんだぜぇ!?」
木曾「まぁ……気持ちは分かる。 気持ちは………な」
天龍「これで、真の天龍さまの力が発揮できるんだ! もう無双状態だぜ!」
龍田「あの天龍ちゃん……可愛かったのに~。 転んで涙を目に浮かばす天龍ちゃん……残念だったな……」
木曾「(俺んとこに、矛先来ないようにしねぇ~と!)」
ーーー
ーーー
何皇后「よ、楊奉───ッ!」
楊奉「何を呆けている! 何皇后を俺らを守れ! 天の御遣いが反旗を翻したのだ! 掛かれぇ! 掛かれぇえええッ!!!」
重装歩兵「ハ……ハッ!」バラバラッ!
ーーー
何皇后たちを守るため、楊奉配下の重装歩兵が前に集まる!
しかし、一刀の前にも……霧島が眼鏡を光らせ傍に居る。
ーーー
凪「隊長! 私も──お側に!!」
一刀「君は………」
凪「お願いします! 後ろには、白蓮さまがいらっしゃいますので! どうか、どうかぁ! 私を頼って下さい!!!」
一刀「………………」
長門「提督……心配なのも分かるが、乙女の心を無にするのは頂けないな?」
一刀「────長門!」
長門「皇女さまは桔梗に任せた。 やはり、このような相手なら私が適任だ! それに、艦娘が二人居れば、その娘を守れる事も出来る。 いい案だと思わないか?」
霧島「司令、私も良案だと思います!」
一刀「…………分かった! それじゃ頼む! え~と……」
凪「凪と……! 私の真名は凪です! 隊長にお預けしますので凪とお呼び下さい!!」
一刀「………それでは『凪』! 改めてお願いする! 長門と霧島と共に……俺の力になってくれ!」
凪「────はっ、はいっ!!」
ーーー
長門「……やれやれ、一刀提督は──」
霧島「………渡りに船………ですか?」
長門「………フンッ!」
霧島「ふふふっ」
ーーー
一刀の目の前に、霧島、長門、凪が控える!
これで策は全部! 後は……無い!!
一刀「楊奉、何皇后……貴方たちは許しておけない! 必ず捕らえ、万民の前で処罰を受けさせる! 行くぞ!!!」
そう言い放ち、眼前の敵を凝視するのであった!
ーーーーー
ーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
………………終わりが、次回に……延びてしまいました。
今回で終わらせるつもりだったのに。
いつもより話を長くしたのに、ダメでした。
(全体で一万二千文字ほど。 いつもは一万文字ぐらい)
そんなわけで……次回こそは終わらせます。
────ネタも無いから。
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はわわわッ! ご主人さま──お話が続いてしまいましたぁ! 7/18 イチイチゴマルに終わりを追加修正も行いましゅぅ! あぅ……噛んじゃっいましたぁ……