No.789316

リリカルST 第1話

桐生キラさん

Sサイド
サブタイトル:喫茶店の日常

2015-07-13 21:00:01 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1859   閲覧ユーザー数:1743

 

 

 

 

 

ここはミッドチルダの海の見えるお店、喫茶店【晋】

 

ここに来るお客様は子ども達や奥様方のような一般人から、次元世界の平和を守る管理局員の方々、さらには怪しい犯罪者チックな人まで来ます。

 

そして今、目の前にいるのは…

 

「しきー、サンドウィッチー」

 

管理局員の二等陸佐、八神はやてだ。

ちなみに、はやてと俺は…

 

「はやて、仕事が大変なのはわかるが、ダラっとし過ぎだ」

 

「えーやーん。恋人の前でまで気ぃ張りたくない」

 

そう、俺とはやては高校の頃からの付き合いで恋人関係にある。

俺が最も大切にしている女性だ

 

「せめて家で気ぃ抜いてくれ。一応ここは外なんだから」

 

「つっても、ここも家みたいなもんやでなぁ」

 

実はこの喫茶店【晋】、裏手は八神家となっている。

ちなみに俺もそこに住んでいるので、言ってしまえば同棲のようなものだ。

まぁ、家族は多いがな

 

「士希さーん、コーヒー豆持って来ましたよー。あ、はやてさん、来てたんですねー」

 

「おー、レーゲン、士希が冷たいー」

 

家族その1、ユニゾンデバイス・天空剣・ゼウスことレーゲンだ。

見た目は十代半ば、ショートの銀髪で中性的な顔立ち、身長はフルサイズで170cmだ

 

「そりゃ、はやてが店でダラっとするからだろ。オーナーは悪くねぇ」

 

「アギトまでー…」

 

家族その2、ユニゾンデバイス・烈火の剣精・アギトだ。

普段は30cmくらいの大きさだが、俺が魔力提供していることもあり、今は140cm程の大きさになっている。

2年前、研究施設で保護した子だ

 

「ええやーん、今この店、身内しかおらんのやでー」

 

「ふふ、八神家がこうも揃うのも、珍しいですけどね」

 

「ま、あたしらが忙しくなんのは、明日からだからな」

 

「というか、主はやてはここにいて良いのだろうか?」

 

「先ほど、リインフォースが涙目で探していたな」

 

家族その3、夜天の守護騎士、ヴォルケンリッターの面々だ。

烈火の将・シグナム、紅の鉄騎・ヴィータちゃん、風の癒し手・シャマルさん、そして盾の守護獣・ザフィーラだ

 

「あー!やっぱりここにいました!」

 

突如、店の扉が勢いよく開かれ、小さな子が入ってくる。

家族その4、ユニゾンデバイス・祝福の風・リインフォースちゃんだ

 

「おー、これで八神一家勢ぞろいやなー」

 

「呑気に言ってる場合ですか!?明日は新部隊の初日なんですよ!やることいっぱいなんですよ!」

 

「そんな慌ててもしゃあないてー。とりあえず、士希のサンドウィッチくらい食べてもええやろー。お昼なんやでさー」

 

「もう!食べたらしっかり働いて下さいですよ?あ、士希さん、リィンにも昼食をお願いするです!」

 

あ、リインちゃんも食べるのね。まぁいいけど

 

 

 

 

 

「それにしても、この古代遺物管理部機動六課、よく申請通ったよな。はやてを筆頭に、なのはやフェイト、守護騎士も全員いる他、スタッフ全員が若いながらも将来有望なやつばかりじゃねぇか」

 

俺ははやてが新設した機動六課の名簿を見ながら話す。

正直、化け物しかいない異質な部隊だ。主になのはとかフェイトの話なのだが。

 

「もちろん、出力制限かけられるけどなぁ。それでも立ち上げれたんは、クロノ君とカリム、それに士希のおかげやな」

 

この機動六課、立ち上げの後ろ盾にはクロノさんとリンディさん、それに騎士カリムが関係している。

さらにはあの三提督も貢献していたな。

かくいう俺も、この部隊の活動資金を提供していたりする。

きっと、はやての人望あっての結果なのだろう

 

「ほんま、ありがとうな士希」

 

ふと、はやてが静かにそう言った。

そう言ったはやての表情は、少し誇らしげだった

 

「何言ってる。これもお前の努力の賜物だろ。よくここまで頑張ったな、はやて。どんな結末になるかはわからんが、ここからが、お前の夢の始まりってわけだ」

 

「うん、ありがとう。私らの部隊で、より多くの人々を救えるように頑張る。応援しててな」

 

「当たり前だろ」

 

俺ははやての頭を撫でてあげる。

こうしてる間は、ただの女の子だな

 

「ていうか、士希さんも明日の挨拶に参加してくれたいいですのに」

 

リィンちゃんがオレンジジュースをストローでブクブクさせながら言い出した

 

「あ、せやん。士希もスポンサーなんやで、全然来てもええで?エリキャロもおるし、会ってったんなよ」

 

「む、エリキャロには会いたいが、一応明日も営業だしなぁ」

 

「休んだらええやん」

 

「簡単に言うなよ…」

 

それにしてもこの面子、若くて有能な子が多いな。

間違いなく他の部隊、引いては上の連中に目をつけられているだろうな。

ただでさえ、はやては過去の事件が原因でよく思われていないというのに

 

「はやて、気をつけろよ」

 

「ん?突然どないしたん?」

 

「はぁ…わかってんだろ?」

 

「……あー、うん」

 

今の管理局は、正直信用ならない。

特に陸の人間…いや、本局すらもか?

 

「何かあったら、いつでも俺を呼べよ」

 

「わぁっとるよ。頼りにしとんでな?私の旦那さま!」

 

あぁ、はやては俺が守ってやるさ

 

 

 

 

 

「……ん?この子…」

 

俺は六課の名簿を見て、とある名前を見つける。

こんな偶然もあるのか…

 

「はやて、このティアナ・ランスターって子、どんな奴なんだ?」

 

「お、流石士希やなぁ。六課のフォワードメンバーでは、私が一番期待してる子やで。魔法は射撃と幻術がメイン。今は中距離型やけど、今後は遠距離も対応できる素質も十分。そして何より、ティアナの真価は指揮能力。彼女の観察眼と状況判断能力は秀逸の一言やで」

 

ずいぶんと高評価だな。

はやては優しいが、能力を冷静に評価できる一面もしっかり備わっている。

そのはやてがここまで褒めるのだ、きっと上手く育ってくれたのだろう

 

「へぇ、なるほどなぁ。そう言えばこの話、はやてにしてなかったな。俺がミッドの子ども達に生活金の援助をしていたのは知ってるよな?」

 

俺が言うと、はやては少し考え込み、パッと思い出した様だ

 

「そういや、ルネちゃん以外にもしてるて言ってたなぁ。え?まさかそれが…」

 

「あぁ、ティアナ・ランスターだ。俺は直接会ったことないが、俺の姉、咲希はティアナを気にしていた。彼女の為に武術も仕込んでいたはずだ」

 

「なるほどなぁ、やからか」

 

そう言うはやては、何かを思い出す様に、ティアナ・ランスターの経歴書を見始めた

 

「ん?何がだ?」

 

「ティアナの素の身体能力、ちょっとおかしかったんさ。見てて咲希思い出す程にな」

 

 

 

 

 

数日前 はやて視点

 

 

 

その日の私はフェイトちゃんと一緒に新部隊の勧誘に出掛けてたんや。

そんな時、私が少し前から目ぇ付けてた子の陸戦魔導師の昇格試験がある言うからチラッと覗きに行ったんやけど…

 

「な、なんやあの二人…」

 

「これで、Cランク…?」

 

私もフェイトちゃんもヘリから様子を見てたんやけど、とある二人組の動きが明らかに異常やった

 

徹底されたコンビネーション、圧倒的なまでの突破力、そしてその動きのほとんどに魔力が感じられらなかった事

 

特に、あのオレンジの髪の子、私が目を付けていた魔導師、ティアナ・ランスターの異常性が際立った

 

魔力が全くない訳やない。攻撃手段は魔力でのものだけや。じゃないと測定出来へんてのもあるけど。

それでも、その魔力を極限まで抑えて、低出力で最大限の攻撃力を発揮している。

魔弾の魔力密度が半端ない。極限まで固めに固めた弾丸や。

あれをC…いやBランク相当の子がするなんて、なかなかの努力家やな

 

せやけど、そこまでならまぁ許容範囲内やった。ここからが許容範囲外や

 

ティアナはビルからビルへと飛び移り、壁を走って登り、さらには素手でコンクリを砕いて道を作っていた。

全て魔力無しの、純粋な身体能力のみでやってのけた芸当やった。

 

それだけの事をやっても息一つ切らさない。

それどころか、ティアナは満面の笑みでこの試験を愉しんでいる様にも見えた。

 

彼女の身体能力が、その顔が、その歪んだ笑みが、1人の女性を彷彿とさせる

 

あの子は…もしかして…

 

「あの子…ティアナ・ランスターって子、凄いね。もう1人のスバル・ナカジマって子も十分凄いけど…」

 

フェイトちゃんもティアナを見て驚いて…いや、ドン引いていた。

フェイトちゃんの苦笑いなんて、久しぶりに見たで

 

「あー、あの二人、陸士学校時代から私が目ぇ付けてたんさ。二人揃って成績はトップの首席。なんや、度重なる不幸で今までCランクやったらしいけど、これで実力は文句無しやな」

 

今、二人は揃ってゴールインし、ハイタッチを交わした。

目標タイムは余裕でクリア。最後にあったCランク泣かせの大型オートスフィアもきっちり突破しとる。

ほんま、十分過ぎるほどの結果や

 

てか、ぶっちゃけ能力だけで見たら、二人共Aはあってもおかしない。

飛び級でA試験受けてもクリア出来てたんとちゃうかな

 

「そう言えばナカジマって、あの空港火災の…」

 

フェイトちゃんがスバルのデータを見ながら呟いた。

私も録画してあるスバルサイドの映像見つつ、会話に乗る事にした

 

「せや。ゲンヤさんの娘さんで、ギンガの妹。それに四年前、なのはちゃんが助けた子やな。なんやあれ以来、なのはちゃんの事目標にしてるらしいで」

 

スバルの超短距離ディバインバスターを見て、私は思わず微笑んでしまう。

 

なんとなく、スバルとなのはちゃんは似てるのかもしれへんな

 

それに、ティアナとあいつも…

 

 

 

 

現在 士希視点

 

 

 

「てな事があったんや」

 

俺ははやての話を聞いては頷いていた

 

ほー、さすが咲希仕込みってところか?

てか、なのはを師事するたぁ、そのスバルって子、大丈夫なのか?

砲撃魔になったりしねぇよな?

 

「ふーん…一度、会ってみたいな」

 

とは言え、ティアナには興味がある。

咲希はどういう訳か、俺には会わせたくなかったみたいだからな

 

「浮気は許さんで?」

 

はやてがジト目で睨んできた。

俺はそんなはやてに呆れつつ、あとちょっとだけ冷や汗をかいて微笑んだ

 

「バーカ。俺は一人しか愛せねぇよ」

 

「ふふ、ならよし!」

 

つか、浮気なんてしてみろ、俺の体が木っ端微塵に吹き飛んじまう…

 

それにしても、まさかこんな形で会える機会を得るとは思っていなかったな。

 

ティアナ・ランスター…

 

咲希のお気に入り…

 

あの咲希のお気に入りなんだ、きっと魅力があったんだろうな。

能力的にも、人間的にも…

 

 

 

 

「さて、ほなそろそろ行こうかな。じゃないとリィンがうるさいでなー」

 

「リィンのせいですか!?」

 

はやてが立ち上がり、大きく伸びをして言った。

 

現在は午後の2時。

昼前から居たから、結構長い間話し込んでいた様だ。

 

「さぁて行くかー。あんがとな、士希!また来るぜ!」

 

「私もー、休みの日はここに来ますね」

 

「ではな、士希。近い内に、またスパーの相手を頼む」

 

ヴィータちゃん、シャマルさん、ザフィーラがいい笑顔で帰って行った。この三人がしっかり休めたようで何よりだ

 

「ではなレーゲン、アギト。仕事頑張るのだぞ。士希は死ね」

 

シグナムは最後にぺっと唾を吐いて行ってしまった。あいつと俺の溝は三年経った今でも埋まるものではないようだ

 

「うー…なんや途轍もなくやる気が…なぁリィン、もうちょい休んでても…」

 

「ダメです!」

 

「ちぇー」

 

小さい体なのに、どこか大きく見えるリィンちゃんに引っ張られるはやてを見て、俺は思わず笑みが溢れてしまう。見ればレーゲンやアギトも同じ思いだったらしく、優しい微笑みを浮かべていた。

 

平和だ。そう思えるくらい、この光景がとても平和で、とても優しくて、とても温かかった。

 

「じゃあ行ってくるな。休みになったら顔出すわ」

 

「おう、行ってらっしゃい、はやて」

 

「行ってきます!」

 

笑顔で出て行くはやてを、笑顔で送り出す俺。そして店には俺とレーゲンとアギトの三人だけとなり、先ほどまで賑わっていた店内を静けさが充していた。

 

「それにしても、あの予言は本当なんですかね?」

 

レーゲンがはやて達の背を眺めるかのように、店の入り口に視線を向けて呟いた。

 

「管理局が崩壊するってやつだっけか?にわかには信じらんねぇけど…」

 

アギトが応える。俺もその意見には同意したいところだった。だが、予言者が予言者なだけに、そうは思わせてくれない。

 

 

 

世界は平和そのものだった

 

 

 

誰もが笑い、大切な人と時間を過ごし、平穏に暮らしている

 

 

 

それが例え…

 

 

 

「念の為、いつでも動けるようにしておかないとな」

 

 

 

仮初めの平和だったとしても…

 

 

 


 
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