No.789178

Another Cord:Nines 七夕特別篇

Blazさん

というわけで数日遅れの七夕篇です。
最後ら辺は少しぐだぐだ……(汗

というかいよいよBLAZBLUEの最新作が発表ですよ!!
いよいよ物語も大詰めって感じで盛り上がってきましたね!!

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2015-07-12 22:24:06 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:703   閲覧ユーザー数:673

EXTRA STORY 「Star Dust 星の河に願いを込めて」

 

 

 

 

七月七日。

織姫と彦星の伝説があるといわれる七夕の日。

伝説では、この日だけ二人は再開できるという言い伝えがあり、その日に人々は笹の葉に短冊を書き願いを乗せる。

 

 

 

 

 

 

 

= 無人世界某所 =

 

 

 

「と言うワケで。無事にこの無人世界も天気は晴れて絶世の七夕日和なんで、始めて生きたいとおもいまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

《 がしっ 》

 

 

 

 

 

「んじゃ最期にいう台詞はねぇか?」

 

「はっはっは。痛いよBlaz」

 

「よし。今すぐに闇に喰われろ」

 

「まーまーBlazさんッ!!ミィナさんだってまた慈悲の施しようはありますって!」

 

「………。」

 

と、アーチャーの説得を聞き入れたBlazは顔面クローをしていた右手を離し、ミィナを解放する。本人は舌打ちをして不服そうだったが、一応は怒りを納めた様子だった。

何故突然Blazが顔面クローを行ったのかと言うと、ここに来るまでの経緯が全てを物語っていた。

というのもこの企画(・・)の立案は全てミィナの独断。

それを無理矢理となると本人もいくら彼女であっても許せないものだ。

しかも彼に至っては強制的且つ強引なやり方でしかも彼が疲れて寝ていた時となれば不機嫌さはピークに達する。

 

「………ったく………」

 

「あははは、ゴメンねBlaz。絶対に嫌だって言いそうだったから…」

 

「ああ。全くその通りだ」

 

という事で、現在Blazは大変不機嫌でありさっさと彼女の企画を終えて寝たい一心だ。

が。

いかんせん彼の肩に眠たげであるが楽しそうなニューが居るのでどうにも直ぐに怒りを爆発ということは出来なかった。

 

 

 

 

 

七夕の夜。今回ミィナが企画したのは他愛のないプチイベント。

彼らBlaz一味だけで行う七夕祭りだ。

と言っても何か飲み食いして行うと言う訳ではなく、単に短冊を笹の葉につけるというだけのもの。

その代わりとして短冊は一人何枚でもと言うことらしい。

 

「で。その短冊書くだけに俺は寝ているところを偽・螺旋剣=肆(ミィナによる威力強化版)を叩き込まれたワケだ」

 

「だから穏便にしましょうって私は言ったんですがね………」

 

「穏便は穏便だった……ハズだよ。静穏だったし」

 

「その分、揺れは凄まじかったがな」

 

「お陰で死ぬトコだったっての……」

 

「ごめんごめん。次はもっと揺れを抑えるから」

 

「それって俺のことを考慮もクソもしてないって事だよな」

 

この瞬間Blazに再び怒りの炎が点火しかかったことは言うまでもない。

 

 

「で。本当にただ短冊に願い書くだけか?」

 

「うん。そうだけど?」

 

「しては……」

 

七夕の短冊、それをつける笹といえばと思い顔を向けるアルトとアーチャー。

そこには確かに笹の葉はあったのだが……

 

「少し小さくありません?」

 

「葉も少ないっつーか……マジで小さすぎだろ」

 

そこにあったのは葉が少なく、見た目も小ぶりな笹の木が一本。元気であるのは間違いないが、如何せん見劣りをするというものだ。

まるでパンダの餌にするはずだったが、葉が少ないからといって渡された物、とでもいうのだろうか。兎にも角にも、その笹を見せられた一同は本当にそれなのかと確認するためにミィナへと尋ねる。

が、彼女の申し訳ないという表情から自ずと答えは出ていたが。

 

「………本当にこれなのか?」

 

「ごめん、本当にコレ……」

 

「つけるにも可愛そうな見た目ですが」

 

「実は、ちゃんとした笹の葉は貰ったんだけど………」

 

「けど?」

 

 

 

 

 

「なんかkaitoが笹の葉で船作ってたらディアのところまで参加して……」

 

 

「「「「……………。」」」」

 

 

その先は言うまでもない。

本人も必死に守ったのだ、寧ろ同情するべきところだろう。

辛うじて目で数えるほどではない笹の葉が残っていることに。

 

「………なんつーか……その………」

 

「お疲れ様というか………」

「ありがとう御座いますっていうか………」

 

 

「分かってくれた?」

 

「ゴメンなさい、ミィナさん…」

 

「―――?」←イマイチ状況を理解していないニュー

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――さてと。改めて…笹の葉に願い事を書いていこっか」

 

気を取り直して、と話を替えたミィナはどこから取り出したのか人数分の短冊とペンを取り出すと、それを各自一本と一枚ずつ手渡していく。

短冊はそれぞれメンバーの色に合ったもので例としてBlazは青色の短冊。アルトは橙色の短冊を手渡された。

 

「一人何枚でも書いていいよ。ただし笹が折れるような数はやめてね」

 

「そんなに書かねぇっての」

 

「書くっつっても二枚がいいトコ…だよなぁ」

 

短冊とにらみ合い、何を書くかと考えるアルト。その隣ではBlazがもう既にペンを走らせており恐らく思っても居ない事を書いてるのだと彼の表情から分かった。

そして、その近くでは必死に考えるニューと何を書くのかと見ている鈴羽そしてアーチャーが居る。

 

「うにゅ……」

 

「時間はあるから、ゆっくり考えなよ」

 

「…一人はもう書き終えてるけどな」

 

ふとアルトの言葉に気づいたミィナは笹の葉のほうを見ると先んじて短冊を結ぶBlazの姿が目に映り、まさかと思ったミィナたちは短冊に書かれた彼の願い事を見た。

 

 

 

 

- 金運上昇。っていうか金  Blaz -

 

 

 

 

あまりのストレートな要求に絶句した彼女達は数秒の間言葉を失い、やがて思っているかさえも分からない事を搾り出した。

 

「………オーソドックス」

 

「神様とか織姫とかにお金頼むかな!?」

 

「しゃーねーだろ。願い事なんざ直ぐに浮かぶわけでもねぇし」

 

「いやだからってお金要求する!?」

 

「貯えあるとか言ってなかったか?」

 

「んなのミィナと竜神丸にかっぱらわれたから殆ど残ってねぇよ」

 

「………。」

 

曰く、いつの間にか引き落とされていたらしく二人はそれを湯水の如くアッサリと使いきったらしい。本人がそれを知ったのは落とされた三日後だったらしく、見た瞬間は彼も言葉を失い倒れたとか。

 

「竜神丸については団長にチクり済みだから、後はどっかの誰かだけなんだがなぁ…」

 

「ぶ、Blazさん…そこまでしつこく追い討ちをかけなくても……」

 

「―――わ、分かったよBlaz。ちゃんと払うから……」

 

「利子つけて倍にして返せよ。一週間以内に」

 

「………さ、三週間―――」

 

「その場合は利子を更に倍な」

 

「………。」

 

後が怖いと知ったミィナはその後。一週間で返すと約束し、地面に崩れ落ちていった。

流石に酷すぎなんでは、とアーチャーが慰めの一つでもと言うが本人は許す気はないらしくこれでもまだマシな方だと言い訳のようにぼやいた。

 

「ま、まぁ兎も角お金の事は置いといてもう少し非現実的な願い事にしましょうよ。折角の七夕なんですし」

 

「………非現実的、ね―――」

 

金運という余りに現実的過ぎる願いに、流石にそれはと異議を唱えた彼女達にBlazは頭を掻きつつめんどくさそうにもう一枚の短冊を持つと再び考えなしのように直ぐ様ペンを走らせた。

 

「まぁ願いっつったらなぁ……」

 

「あ。よかった、やっぱり願い事あったんだね」

 

「あるにはある。けど、これも非現実っつーよりも現実的っつーかー……」

 

「それでも無いよりもいいですよ。一体どんな願いを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

- あのヤローをぶっ○せますように Blaz -

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「…………。」」」」

 

 

いや、確かにそれは願い事だけど。

一斉に心の中で突っ込む彼女達は、彼の本心と本音丸出しの願い事に絶句以上に恐怖を感じていた。何より、彼の書いた字が何処と無くホラーのようにかすれ気味なのがよりアクセントになったのだろう。

余りにも私怨に満ちたその願い事に身震いを覚えた。

 

「私怨に満ちているっていうか、流石に織姫も彦星も青ざめますよ」

 

「ていうかどんだけ恨み込めてんだよ。流石に恐怖しか湧いてこねぇよ」

 

「仕方ねぇだろ。織姫も彦星も本心では自分たちカップルを引き離した織姫のオヤジを恨んでるはずだ。今すぐにでも斬脱したいはずだ」

 

「斬脱してるのはBlazの常識の方でしょうが!!もう少し明るいものにしてよ!!これじゃ怖くて付けられないって!!!」

 

「………つってもなぁあとあるってったら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- ウサギ(レイチェル)を見返せますように(出来れば物理的に) -

 

 

 

 

「うん分かってた!!分かってたよBlaz!!けどそれは私達も危ういからやめてよね!?」

 

「えーこれも駄目か?」

 

「駄目っていうよりも危ないって!?」

 

「……ったくしゃーねーな………」

 

 

結局。その後幾つかの彼の本音というよりも私怨に満ちた願い事があったが、どうにか落ち着き。最終的には「宝くじが当たるように」となった。

 

「Blazって……こんなダークなキャラしてたっけ……?」

 

「まぁ元が元ですし、今が現在ですら……」

 

その間、彼のボケと私怨が籠もりに籠もった短冊の願いを突っ込み続けた彼女達は、なにもしてないというのに肩で息をするほど体力を消費してしまい疲れ切った顔をしていた。

 

「って、Blaz宝くじ買ってたんだ」

 

「どっかの誰かが金を使いまくったからな」

 

「だから許して?!」

 

「だが断る。さっさと返済しろ」

 

「……私、借金持ちになっちゃった……」

 

「元々だろ?」

 

「ぐほぁ!?」←吐血

 

「ミィナさんが血を吐いたぁ!!!?」

 

 

その後。アルトの無慈悲な一言に打ち倒されたミィナは、しばらくしょげで座り込んでしまいぶつぶつと小言を言いながら指で地面をなぞっていた。

 

 

 

その間に他の面々も次々と書き終えていき、残るはミィナとニューの二人だけとなるが、ニューは慣れないペンを震えながら持ち、字を書き始めている。

対してミィナはなにを願うかと考えているので完全に出遅れていた。

 

「………で。肝心のお前が悩んでどうすんだよ」

 

「だってBlazたちと話してたら願い事忘れちゃって……」

 

「人の所為にするなっての」

 

「………なら―――」

 

 

 

 

 

 

- 金運上昇  ミィナ -

 

 

 

 

「いやそれ俺の書いた奴ッ!?」

 

「Blazよりかは欲望もないでしょ!!!」

 

「そっちの問題かよ!?」

 

「そっちの問題だよ!!Blazの場合今すぐにってワケじゃないでしょ!?」

 

「もう既に切迫してるっての!!」

 

 

「………人間、最後はお金なんですね」

 

「取りあえずフォローしようっか…」

 

 

 

 

で。

 

 

 

 

「むうっ……金運が駄目となるとどうしようかなぁ………」

 

「金以外にも身内の安全とか色々とあるだろ。第一お前だけ家族持ちなんだしよ」

 

「そりゃ妹や親のことも書くよ。けど自分自身のも書かないと……」

 

「それで行き着いたのが金運かよ」

 

「exactly!」

 

「その通りじゃねぇよ。アトゥム神でもねぇだろ」

 

金銭以外で自分が望む物。考えれば色々とあるものだが、ミィナ自身どれも書いていいものかと悩む物ばかりで、Blazたちが書いたものと被るというのも欲無しに見えてしまいどうしてもそうしたくはなかった。

そこで迷う彼女を見かねた鈴羽たちは客観的に彼女が求めそうな物を挙げていく。

 

「じゃあ欲しい本とかは?」

 

「本……は無いかな。基本手当たり次第だし……」

 

「……じゃあ物は」

 

「……特には。欲しいものがあったら自分で買うからね」

 

「んじゃ作業が捗ったり、新しいこと発見、とかどうなんだ」

 

「さすがにそれを神頼みするほど落ちぶれてもないって」

 

ならどうするんだ、と頭を掻きながら問いかけるBlazに言葉を返せないミィナだが、ふとあることを思い浮かべる。

 

「……そうだ」

 

自分の事。仕事の事が駄目なら、自分の身近なのでいいのではないか。

なにも自身に対しての願いだけではない。誰かに対して向けるのも願いではないのか。

それだ、と納得の声を上げるとミィナはペンを取り、水色の短冊に自分の願いを書き入れた。

 

「できたッ!」

 

「にゅーもだよー♪」

 

「随分といい願い事でも浮かんだのか?」

 

「ふふん、まぁね♪」

 

「ニューもちゃんと書けたんだね」

 

「かけたー♪」

 

「んじゃ。さっさとつけて来い。お前等がラストなんだからな」

 

「分かってますって。一緒にいこ、ニュー」

 

「にゅ!」

 

二人手を繋ぎ、短冊を笹の葉に付けにいく後姿に鈴羽たちは微笑ましく思っていたが、その隣に居るBlazはやっと終えれると思い欠伸をしていた。

 

「やっと終いか。マジでねむてぇ……」

 

「お前は、ホントによぉ……」

 

「仕方ねぇだろ。こちとら最近殆ど寝てねぇんだからよ……くあっ……」

 

それもそうかと彼の理由に納得した彼女達は揃ってため息を吐くが、それも已む無しと思い苦笑する。

旅団から一時離れて別行動をしているのだ。色々とやるべき事が山積みなのだろう。

だがそれでもミィナが息抜きにと思って立ててくれた事だ。期待ははずれたのかもしれないが、本当に嫌だという顔をするよりもマシだろう。

 

「Blaz。眠いの?」

 

「ん。戻ってきたのか。まぁな。後はゆっくりと寝るだけだ」

 

「ニューも一緒に寝るー!」

 

「……わったよ。けど蹴るのはナシだぞ。前に寝てたら腹蹴られたからな」

 

戻ってきたニューの笑顔に、苦もなく答えたBlazは面倒そうに言うと彼女の頭に手を置く。

やんわりとした髪の柔軟さに思わず軽く押してみると、雲を触れているかのようにやわらかい感触が感じられ、手を離すとバネの様に跳ね返っていく。

 

「にゅう?」

 

「………なんでもねぇよ」

 

「……にゅ♪」

 

アホ毛を揺らし嬉しそうな表情のニューはBlazの肩に乗ると、小動物のようにそこから動かずに彼の不安定な揺れにゆられている。

乗っているほうは楽しそうではあるが、乗せられているほうは突然子供一人が肩に乗ってきたのに驚き、今にも転びそうな歩き方でふらふらとしている。だが、やがてそれに慣れたのか姿勢は次第に安定し最後には何事も無かったかのようにニューを肩に、Blazはクロガネへと戻っていった。

 

「………さてと」

 

「アタシらも戻るとすっか」

 

「そうですね。笹の葉はどうします?」

 

「ついでに持ってかえろっか。いつ出発かも分からないし」

 

「だな。あとは艦内に飾るなり処分するなりやりゃいいんだしよ」

 

Blazたちの後を追うように自分たちも戻ろうとするアルトたちだが、ふと後ろでなにやら遠く心配そうな目で見るミィナが立っていたのに気づく。

 

「って、ミィナさん?」

 

「どうたんだ。そんなこの世の終わりみたいな顔してよ」

 

「………いや、ね。Blaz……大丈夫かなって………」

 

「は?」

 

「Blazさんがですか?」

 

「うん………」

 

「一体なにがあったの?」

 

「実は、ニューの願い事を見ちゃってさ………」

 

「ニューの?」

 

「うん。そこに、さ。実は……」

 

歯切れの悪い言い方に少し苛立ちを見せたアルトは、少し怒気が混じった声でハッキリと言えよ、とミィナに迫る。

それに怖気づいたのか、それともそれがいいと判断したのか。

ミィナは喉の奥から声を絞り出し、真実を語った。

 

「これなんだけど………」

 

「「「………?」」」

 

投影ディスプレイに映された画像にはニューの為の銀色の短冊が写されている。しかしミィナにとって重要なのはそこではない。問題はそこに写されている短冊の願い事。

つまり。ニューが何を願っているのかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- Blazとひとつに(・・・・)なれますように にゅー -

 

 

 

 

 

 

 

「「「……………。」」」

 

 

「Blaz。今夜にでもグサッと刺されそうで怖いっていうか……」

 

「これは………」

 

「ν-………13?」

 

「ひとつにって……一緒にじゃなくて…ですか?」

 

「誤字語弊間違いなく」

 

その無垢な銀色の短冊に書かれた願い事を数秒ほど眺めていた彼女達はBlazが歩き去ったほうに顔を向けると、声をそろえて呟いた。

 

 

「「「「――――Blaz。大丈夫かなぁ………」」」」

 

 

七夕の日。その日にその人物の意外な真実が分かる……のやもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

 

 

クロガネ艦内にあるサロンに飾られた笹の葉。

多くのクルーたちが寝静まった頃。その笹の葉に近づく二人の少女の姿があった。

 

 

「――あれ、鈴羽さん?」

 

「ん。アーチャー」

 

「どうしたんですか……って考えは同じですかね」

 

「……ってことはそっちも?」

 

「ええ。やっぱり人前に自分の願い事を書くのは恥ずかしくって……」

 

「出来るだけ後ろのほうにって事?」

 

「はい………」

 

恥ずかしそうな表情で笹の葉に近づいたアーチャーは見られることが少ないだろう後ろのほうに、先ほど出さなかったもう一枚の短冊をくくりつける。

それでも、それそがなにかの拍子に見られはしないかと心配ではあったが、短冊に書いて笹の葉につけずに放置というのもどこか寂しく思い、彼女も鈴羽と同様に後で誰も見られないように付けに来たのだ。

 

「―――よっと。これで良し」

 

「できた?」

 

「はい。鈴羽さんはもう?」

 

「うん。といってもさっきのとあんまり変わんないけどね」

 

寝付けないときによく飲んでいるドクターペッパーの缶を開けてソファに座り込む鈴羽の隣に変わらない肌の見える外套を着込むアーチャーも腰を下ろす。

缶のふたが開けられ、中に詰まっていた空気が噴出す音が聞こえると、鈴羽は見もせずに缶の中の飲料水を喉に流し込む。

 

「………平和ですか?」

 

「―――うん。みんなが平和で……ってね。そういうアーチャーは?」

 

「私は……まぁ、似たようなものです。平和であるために………」

 

「正義のヒーロー………?」

 

「………まぁ、そうですね」

 

誰もが無事であるように。知る者達が平和であるように。

彼女達の願いは、実の所ひとつだった。

その本当に願いが一つであるからこそ。彼らはここに居られる。

同じ意思を持つ者たちと集まれる。

 

《正義のヒーロー》っぽく言えば、「俺たちは何時までも一緒だ。強い絆で結ばれているんだ」というところだ。

勿論。そんな正義のヒーローっぽい考えをするほど彼らも馬鹿ではない。だが、結局究極的なことをいえばそこに行きつくのだ。

 

「………正義のヒーロー……かぁ……」

 

「馬鹿馬鹿しいとは思っています。けど―――」

 

「………。」

 

「憧れているんです。私は。それを体現した人に。その生き様を通した――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

- 正義の味方に追いつけますように アーチャー -

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「追いつく……ね。果たして貴方は彼に追いつけるかしら?理想の為に生き、そして死んでいった男の背に、貴方は追いつくことができるかしら?少なくとも……その先に、希望も、絶望もないと。知っているのかしらね―――無銘の英雄」

 

 

そう言って、何も無い世界にただ一人立つ少女は、どこから取ってきたのか一枚の短冊へと目を落とす。

そこには、彼の本当の願い事が書かれていた。

 

 

 

 

 

- ま。取りあえず全員元気で Blaz -

 

 

 

 

 

「………相変わらずの性格ね、何があっても。でも、急がないと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こっちもそろそろ大詰めよ。Blaz」

 

 


 
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