No.78418

真・恋姫SS 【I'M...】7話

こんにちわ
昨日一晩かけて今更ですが車輪の国をクリアして号泣してた和兎です。
関係ないっすねwすみません(´・ω・`)
という事で、7話です。
すこし本題を進めます。

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2009-06-11 15:24:24 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:9760   閲覧ユーザー数:7779

 

 

 

 

 

暗い夢。

壊れたテレビのような視界のなかで、何も考えることが出来ず、ただ眺めていた。

現代から続くこの頭痛とそれに答えるように流れる夢。

最初は少女が1人、立ち尽くしていた。

次は、その少女が泣いていた。

その次は、なにも見えず、ただ声が聞こえた。

そして、この間森で見たものは…

 

ザザァ…

 

 

砂が流れるような音と共に、視界が回復する。

また、あの夢が始まる。

 

 

…………。

 

 

黒い雨の中

累々たる死体の川の上で、二人の人間が会話している。

 

『…すまぬな』

 

男は女に向かい、話しかける。

 

『あらあら、ずいぶんご丁寧な刺客さんですね』

 

『貴女を曹操の下へ行かせるわけにはいかんのだ』

 

『ふふ…戯言を並べる暇があるのなら早く仕事をしなさい?…でないと貴方の頸が飛ぶだけよ』

 

『……ならばその頸、わが主のために貰い受ける――ッ!!』

 

男が女に向かって跳ねる。

その右手には短剣と呼ぶには少し大きめの剣。

 

『娘に会うまでは死んでもあげるつもりはないわ』

 

それを迎え撃つべく、女はその鎌を両手に持ち、構える。

 

 

男が右から水平になぎ払う。

だが、女はそれを鎌の柄で受け、そのまま返し刃できりつける。

 

『くっ――!』

 

男は体をひねり、それをかわす。

 

『刺客のわりに案外たいしたことはないのね』

 

『はぁぁ!!』

 

こんどは先ほどよりも姿勢を低く、さらに早く駆け出す。

体を回転させ、ほぼ同時に3つの斬撃を繰り出す。

 

『くぅ!』

 

鎌を回転させ、体勢を入れ替えつつギリギリで受け止める。

女はそのまま回転する鎌の勢いを利用し、体をひねりながら逆手に持った鎌で反撃する。

 

男はそれを剣で受け止め、二人はまた距離を置く。

 

俺はただそれを眺めるしか出来ないでいる。

ほとんど互角に斬り合う二人。

しかし、俺はこの結末を知っている。

今まで見た夢がこの戦いの果てを教えてくれていた。

なのに俺は…なにも出来ない。

何も…出来ない。

 

『―――――っ!』

 

頸が”跳ねた”。

そして、視界が朱に染まった。

誰かの首から噴水のように溢れ出す液体。

黒い雨を紅く染め上げて、その場の空気を支配する。

そして、全てを出しつくし、体は地に伏した。

 

 

『………』

 

 

残った者はただ無言で立ち尽くしていた。

降り続ける雨が、その返り血を洗い流すのを待つかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀ぉーー!!」

 

「うわぁ!」

 

「いつまで寝てるつもり!早く起きて今日の分の仕事済ませなさい!」

 

「華琳……元気だな、お前」

 

「あなたがだらけすぎなのよ。慣れるのはいいことだけど、だれるようじゃだめよ」

 

なんでこの子はこうまで…

いい意味でしっかりしているんだろうが、もう少し子供っぽく出来ないものか…

あのかくれんぼの日から最近では毎日これだ…

朝はそんなに弱いわけじゃないけど、なんせここの人たちは朝が早すぎる。

ほとんど夜明けと同時に目を覚ますようなもんだ。

 

「はぁ…まぁ、行ってくるよ」

 

「あ、うん………怪我、しないようにね」

 

「え?」

 

「なんでもないわよ!さっさと行きなさい!」

 

「?…はいはい…ってわかったから!行くから、椅子はおろせ!」

 

ほんとに困った。

日が経つにつれてどんどん過激になる。

最初はただの拳骨だったのに最近はもうものを投げるようになってきた。

そのうち母親みたいに鎌でももちだすんだろうか…

……ありえそうだ。

 

 

 

 

 

 

「よう北郷、今日は嫁は一緒じゃないのか」

 

「嫁って…誰が嫁ですか…」

 

「なんだよ、もう全然そんなかんじだろ。曹操様をおとすなんざ玉の輿じゃねーか」

 

「だから、違うから!」

 

これも最近では定番になりつつある冷やかし。

朝は朝で華琳がああだし、働きに出てくればこれだ。

 

「お前、曹操様とくっつかないと許さんぞ。でないと俺の尻が浮かばれん」

 

『(まだ気にしてたんだな…)』

 

まぁ、ここまでなら可愛い冷やかしで済むんだが本当に困るのはここからだ。

 

 

「一刀ーーーーー!!貴様程度が華琳さまとなど許されるかーーー!!」

 

「またか…」

 

「これでもくらえーー!!」

 

「はぁ…」

 

毎日のことで慣れているとはいえ、春蘭が襲ってくるのが一番疲れる。

馬鹿正直に毎日くらうわけにも行かないので…

 

「うわぁーーー!!」

 

ズザザァァアァーーと音を立てて顔面から畑へ突っ込む春蘭。

 

「毎日同じパターンだと俺でもさすがになれるぞ」

 

「うるはい~ぃ~」

 

「ぱたーん?」

 

哀れな姉を心配してか面白がってか、妹が来た。

 

「同じことの繰り返しって意味。」

 

「なるほど」

 

この二人も、あの森での一日から雰囲気が柔らかくなった気がする。

俺のことを一刀と呼ぶようになったのが一番分かりやすいかもしれない。

 

「かーずーとーさん♪…ふぅ」

 

「うわぁぁ」

 

しまった、忘れてた。

前言撤回だ。一番は春蘭じゃなくてこっちだ。

 

「うふふ…最近ずいぶん華琳となかよくなったみたいですね~~」

 

「え、いや、そんな事は…」

 

「私も仲良くしたいなぁ~~」

 

そう言って体をくっつけてくる。

あの、当たってます…いろいろと。

 

「当ててるのよ♪」

 

「―――!!!」

 

耳元でささやかないで!あと息!

 

 

 

「なぁ…今ものすごくあいつを殴ってやりたいんだが、どうおもう?」

 

「後で、酒でも飲むか兄弟。」

 

『同志よ!!』

 

 

 

「こいつら、もうだめだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕刻。

空が茜色に染まりつつある時。

少し考えることがあった俺は1人で外にでていた。

夢のこと。

出来るだけ気にしないようにしていた。

でも、もう無理だ。

 

昨日見た夢は…確実に誰かの”死”を目の当たりにした。

そしてその誰かは…あまり考えたくない。

 

所詮夢なんだと思えばそれまで。

でも、この夢が俺をここへ導いたと今は思える。

最初に少女に言われた言葉。

『お前のせいだ』

俺が、何をしたんだろう。

何をするんだろう。

そして、それを告げた少女はおそらく、あのわがままで意地っ張りの寂しがりや。

あの子は俺に何を求めたんだろう。

それを確かめることも否定することもできない。ただ、何かが起きるのを待つだけだ。

何か…起きるんだろうか。

 

「一刀さん」

 

「………こんばんは」

 

曹嵩さん。

この人はどうして、ここにいるんだろう。俺の知っている歴史。

見た夢。

それらをつなげば答えは出る。

でも、それはしたくない。

 

「何をしてるんですか?」

 

「少し、考え事を」

 

「考え事?」

 

「はい………最近、夢をみるんです」

 

話すかどうか、迷ったけど…俺は話してみたかった。

 

「夢、ですか」

 

「親子がいるんです。それで、その親子は離れ離れになるんですが、親は子供の居場所を知りそこへ向かうんですが…。途中で刺客に狙われて」

 

「………」

 

「その先は分からないんです。ただ、子供の方は…いつも泣いていました」

 

「それは…もしかしたら、一刀さんが天の遣いだからかもしれませんね」

 

「え?…なんですか、それ」

 

「昔、洛陽にいたときに聞いたことがあるんです。流星と共に現れる者。それはこの先起こる乱世を鎮めるために天が遣わした者だと」

 

「………それは…でも、俺は流星なんて…それどころか、いきなり曹嵩さんに助けられて乱世を鎮めるなんてありえないですよ」

 

「そうですね…まだ微弱とはいえ漢の治世は続いています。一刀さんが天の遣いというのは無理があるかもしれませんが…それでも、私達にとっては貴方は天の遣いにも劣らないほど救いをもたらしてくれる。そんな気がします。」

 

「俺が…」

 

「その夢も、もしかしたら誰かを救うために天が見せているものかも知れませんね」

 

彼女はまた優しく微笑む。

俺がこちらに来た時に初めて見せてくれた顔。

 

 

「もし、その夢が…私達のことを現しているなら、華琳のことをお願いしますね」

 

「………はい」

 

そう言い残し、彼女は振り返りこの場を離れる。

 

「一刀さん」

 

「はい?」

 

「私の真名を…貴方に預けます」

 

「え…でも、…いいんですか?」

 

「はい。それが私なりの貴方への礼儀だと思っていますから…」

 

「…わかりました」

 

「ありがとうございます…では、あらためて。わが姓は曹、わが名は嵩、字を巨高。真名を…」

 

そうして、またこちらへ振り返り、

 

「琳音、と申します。」

 

「………大切に預からせてもらいますね。…琳音さん」

 

「はい♪………あ、そうだわ。一刀さん」

 

「え?」

 

「今夜、私の閨にいらしてくださいね?」

 

「え!?ええ!??」

 

「うふふ…お待ちしてますね」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

今度はこちらに振り返ることなく、琳音さんは行ってしまった。

彼女から預かったこの名前の意味。

それを考えるととても重く感じる。

しかし、受け止めなければいけない。

夢を実現させないためにも―――。

 

 

 

 

 

 

 

「………さ、さそわれてるんだから、行かないと失礼…だよな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

/華琳side

 

 

 

「………………馬鹿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<おまけ?>

 

 

 

―お前は、望むか?新たな外史を―

 

 

誰?…誰か、いるの?

 

 

―お前も、あの者たちも誰も、お前を覚えてはいない。それでも、望むか?―

 

 

私は………

 

 

―望むのなら、開こう。次なる外史を。お前の望むもうひとつの歴史を―

 

 

また、逢いたい…みんなに…

 

 

―ならば、行こう…そして見せてみろ。お前の望む終端を―

 

 

いいよ…私が望んだ未来…見せてあげる。

 

 

 

【???】「また…逢えるね、先生。…華琳」

 

 

 

 

 

新作予告:真・恋姫無双外史伝『薫る空、一閃の刀』

 

 

 

 

 


 
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