No.783923

病弱な御使いと逆行の恋姫:旅路

未奈兎さん

なんだか流れがシリアスでこの流れでいいのかとかなり悩んでしまいました・・・。

なんだかはっちゃけた文を書いてみようかな・・・。

2015-06-15 23:31:23 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3622   閲覧ユーザー数:3091

黄巾賊を撃退した後町を後にした一刀達、一刀達は思春の提案があり南へ向かうこととなった。

 

「折角旅にも出た、ここから離れる前に少し以前の拠点に寄ってみたい。」

 

思春は流琉に世話になる前に頭目をしていたが黄巾賊に敗れ全てを失った、一刀達はその意を汲み、思春が活動していた河に向かう。

 

馬を走らせ休憩を挟んで順調に旅を進める一刀達、道としては北から南に進んでいる。

 

元々鈴々と一刀が出会った箇所は平原と濮陽の河を過ぎた濮陽寄りな場所で、流琉達の居た町は地図で見れば濮陽の南東付近だった。

 

「それとこのまま南進していけば、私が義賊の頃世話になった豪族の人間が居る、懐が深くなかなか好感の持てるやつで信頼できる。」

 

「世話になったって・・・主に奪ったものを換金してもらったのか?」

 

「奪ったと言っても奴らが非合法に集めた金品しか手を出していないがな、商船の積み荷には手を出していない。」

 

「奴らですか?」

 

「言わなくともわかるだろう、私の仕事対象は同じ河賊と宦官や民を顧みない馬鹿な太守連中だ。」

 

「なるほどな、そういう怪しい類の金品なら奪われても申し出れもしないってわけか。」

 

「本当にふざけた連中だ、賊を囲っているものも居て人身売買までしている奴らも居た。」

 

「むむー!そういう悪い奴らは鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ!」

 

「だが表立って始末すればいずれ足がつく、なるべく人は殺さず荷を奪い囚われた人を救出していたが、まさかあんな終わりを迎えるとはな。」

 

その言葉をつぐんだ思春は目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

「これは・・・。」

 

「流石に、月日が経つと拠点も何もかもが荒らされているな。」

 

思春達が活動していた拠点は既に荒らされ、船もなく、切られ、血は固まり、腐食が進んだ決して少なくない死体が其処には居た。

 

「皆、あの後も此処で戦ってくれたのだな。」

 

中には黄巾賊と思われる死体もあり、そこで戦闘があったのを伺わせた。

 

「こんなの、酷いのだ・・・。」

 

「思春さん・・・。」

 

一刀や流琉達が案ずる中、思春は躊躇わずに仲間の一人なのであろうその骸に触れる。

 

「不思議なものだ、こいつらを討たれた怒りと悲しみも、そして私が流された後も此処に残り戦ってくれた嬉しさも、何故生きるために逃げなかったのかと言う憤りと、何故私は此処に戻ってこなかったと思う嘆き、あらゆる感情が混在している・・・。」

 

手を離し、その手は痛いほどに握りしめられ、その床に自らの血が流れた。

 

「私は、こいつらに何も出来ないのか?」

 

「そんなこと、無いと思うよ。」

 

「兄様?」

 

「陳腐な言い方だけど、死んだ人に生きている人ができることは一杯ある、感謝すること、忘れないこと、弔えることだってできる。」

 

「まずは、此処のみんなを埋葬しないと、このままじゃ可愛そうだ。」

 

「・・・ああ、そうだな、少し手伝ってくれるか?」

 

「はい、もちろんです!」

 

「鈴々も手伝うのだ!」

 

 

 

 

埋葬が終わり、日も暮れた、拠点の近くで野宿をすることになり、流琉の料理を食べながら一夜を過ごした。

 

やがて寝る時間になり思春と一刀、鈴々と流琉の二人に別れ交代で睡眠をとることにした。

 

「けほっ・・・ふぅ、流石に腕が疲れたな。」

 

手持ちに穴掘り道具がなかったため、拠点にあったやや錆びついた剣をスコップ代わりにして地面を掘ったが墓穴一つ掘るだけでもなかなかの運動量だった。

 

「これで、あいつらも安らかに眠れればいいが。」

 

「そうだね・・・ああ、そういえば思春、これ渡しておくね。」

 

一刀は小さい巾着袋を取り出して思春に渡す。

 

「・・・これはなんだ?」

 

「あの人達の遺髪を少し貰ってお守り・・・まあ小物入れに入れたんだ、これであの人達が身近に感じれるならって思ってね。」

 

思春は一刀からお守りを受け取ると大事そうに握る。

 

「そうか、ならば大切に持っておく・・・少し、いいか?」

 

「ん、どうしたんだい?」

 

「先ほどお前が言った死者にできることの一つ、忘れぬこととはどういう意味かと気になってな。」

 

「ああ、あれね、思春はさ、人間が本当の意味で死ぬってどういうことだと思う?」

 

「・・・それは、骸になった時ではないのか?」

 

思春の言葉を一刀はそれもあるけど、と言いながらもう一つ付け加えた。

 

「俺は、全ての存在から忘れられた時だと思うんだ。」

 

「忘れられた時・・・。」

 

「例えば、思春の部下の人達はあそこで死んだ、でも思春はあの人達が生きていた時を知っている。」

 

「あの人達はあそこで肉体的には死んだけれど、思春が覚えている限りあの人達は思春の記憶に生きているんだ。」

 

「・・・!」

 

「だから思春があの人達を忘れないまま、書に残してもいい、誰かに話してもいい、そうすれば思いは引き継がれる。」

 

「そうか、そういう考えもあるか。」

 

「なんだか、上から目線になっちゃってゴメンな。」

 

「気にするな、お前の話を聞いて、少しは前を向いて生きれそうだ。」

 

「そっか、はは、なら話した甲斐はあったかな?」

 

「そうだな・・・北郷、やはりお前は・・・。」

 

「ん?」

 

「いやなんでもない、今回の事、生涯忘れん。」

 

「そ、そんな大げさだよ、こんなの死んだ身内からの受け売りなんだから。」

 

「ふっ・・・。」

 

思春からの思わぬ賛辞を受け照れる一刀と、目を伏せ笑う思春だった。

 

「むにゃ・・・一刀、そろそろ変わるのだー。」

 

「あ、鈴々、眠そうだけど大丈夫かい?」

 

「んー・・・頑張るのだ。」

 

「大丈夫ですよ、私も鈴々さんと一緒に見張ってます。」

 

「そうか、ふたりとも頼む。」

 

旅には十分な睡眠は欠かせない、鈴々達二人と交代をして一刀達も眠りに落ちた。

 

 

 

 

それからも4人の旅は進んだが、一刀はある異変に気がついた。

 

(発作が・・・来ない?)

 

幼い頃から続いていた身体を襲う発作が突如として止んだのだ、不思議に思うが体調の悪さは相変わらずであった。

 

(環境もあるのかな、少なくとも此処は汚染ガスとかは無縁の場所だし。)

 

砂塵や疫病はあれどあちらとは比べるべくもないだろう。

 

「兄様、どうかしたんですか?」

 

「流琉、いや最近体の調子がいいなって思ったんだ。」

 

「おお、一刀の調子がいいのは鈴々も嬉しいのだ。」

 

「あはは、流琉の料理は美味しいし、鈴々からは元気を分けてもらっているのかもね。」

 

一刀は二人の頭を撫でると二人は目を細めて笑顔になる。

 

「えへへ、嬉しいです・・・。」

 

「鈴々のでよければいくらでも分けてあげるのだ!」

 

「ありがとうな。」

 

「話し込むのはいいが、そろそろ食材の調達に行くぞ。」

 

「あ、そうだね。」

 

「とりあえず二人に別れようと思う、ここらは森林だし私と鈴々が狩りで流琉と北郷は魚などを頼みたい。」

 

「わかったのだ!」

 

「了解、一応はぐれないようにそれぞれ目印を付けていこう。」

 

「ああ、木などに軽く傷をつければいいのだったな。」

 

「ではまたあとで!」

 

 

 

 

「どっせーい!」

 

「流石に、とてつもないな。」

 

狩りに出た鈴々達だったが鈴々一人でも事足りるほどだった。

 

「思春、この猪で大丈夫かな?」

 

「お前は大食いだが、それだけあれば足りるだろう。」

 

「流琉の料理は美味しいから楽しみなのだー♪」

 

「ああ、そうだな。」

 

(快活なことだ、北郷のやつが元気を分けてもらっているというのもまんざら・・・か。)

 

「よし、ならばそろそろ流琉達と合流するか、これだけあれば大丈夫だろう。」

 

猪を軽々と持ち上げてしまう鈴々にに苦笑いを禁じ得なかったが思春も軽く木の実などを収集して合流に向かうのだった。

 

 

 

 

一方一刀達も澄んだ深い川を見つけ釣り糸を垂らしながらゆったりとした時間を過ごしていた。

 

「そこそこ釣れたねぇ。」

 

「はい、後は泥を吐き出させて捌けば美味しく食べられそうです。」

 

「本当に流琉は料理上手だよな、やっぱり親から教えてもらったのかい?」

 

「はい!母様も父様も私に親身になって教えてくれました!」

 

「いい親御さんだね、一度会ってみたい。」

 

「いえ、私の両親は、数年前に亡くなりました・・・村を賊に襲われてしまい・・・。」

 

「・・・ごめん。」

 

「兄様は悪くありませんよ、その後親友の・・・許褚と一緒にあの町に避難したんです。」

 

「あの時もそれからも官軍は動いてくれませんでしたけど、思春さんが来てくれて本当に嬉しかったです。」

 

「官軍か・・・。」

 

「正直に言うと、あの時は本当に親を殺した人達や、村を見捨てた官軍が許せませんでした、でも私思ったんです、人を憎んで、その手で両親が言ってくれた人を笑顔にできる料理をつくれるのかって。」

 

「すごいな、流琉は。」

 

ただ言うのは誰だってできる、でも流琉は受け入れて、前に進もうとしている。

 

「あれ、兄様、竿引いてませんか?」

 

「お、ほんとだ・・・!?んっぐ、なんだこれ・・・!重・・・!」

 

「え、兄様、手伝います!って、ほんとにこれ重いです!?」

 

流琉とともに竿を引く一刀、さすがの流琉も驚いているようで力を振り絞って竿を引く。

 

「ん、んー!」

 

「く、くそ、折れない竿にもびっくりだよ・・・!」

 

しかし時間をかけるとさすがに魚が弱ってきたのか、徐々に此方に魚が寄ってくる。

 

「えーい!」

 

最後のひと押しと言わんばかりに竿を持ち上げると大量の水しぶきとともに水面から出てきた魚・・・。

 

「え・・・な・・・マ・・・。」

 

「わぁー!兄様すっごく大きな魚ですよ!これ食べられるんでしょうか!?」

 

興奮する流琉をよそに唖然とする一刀、なぜなら釣り上げた魚は・・・。

 

 

 

 

「なんで川にマグロが居るんだー!?」

 

 

 

 

ここに来てからあらゆる珍事件に一刀はもはや自分の世界での常識を逆に疑いたくなってきたのだった・・・。

 

余談だが釣れたマグロや猪は流琉が調理したり塩漬けにしたりで暫くの間食いっぱぐれなかったそうだ。

 

 

 

 

 

 

旅をしていれば野宿することもあれば宿を取るときもある。

 

その日はたまたま寄った邑で酒場に居たガラの悪いゴロツキを相手に思春が殴り倒し、鈴々が懲らしめたことで住民に感謝されて金をかけずに一件の家を借りることが出来て一夜を過ごすことが出来たのだ。

 

そしてその夜食事を取りながら今後のことを話していた。

 

「でも、ただで泊めてもらうってのは少し気がひけるよな・・・。」

 

「気にするな、もう少し行けば目的地はすぐだ。」

 

「思春、目的地に着いたらどうするのだ?」

 

「まずは以前言った豪族に会おうと思う、金銭的な援助も期待できるからな。」

 

「だったら、この鞄の中身を取引に使うといいかもな。」

 

一刀がそう言い鞄といったものからだしたのは紙が束になった物だった。

 

「なっ、北郷そんな紙の束どこで・・・?」

 

「此処では紙は貴重だけど、俺の国では結構量産されているんだ。」

 

「すごいです・・・。」

 

「俗にいう天の国とやらは随分と発達しているのだな。」

 

「・・・なあ、みんなに話しておきたいんだ、俺の住んでいる天の国の話のこと。」

 

「天の国の話なの?」

 

「それは興味が無いといえば嘘になるが。」

 

「わかった。」

 

それから一刀が話したのは天の国の話。

 

その国は今から千数百年も未来の話、鈴々たちにわかりやすく言えば、高祖劉邦や覇王項羽若しくは始皇帝などの時代に鈴々達が行くようなものというと納得はしてくれた。

 

「じゃあ兄様は場所で言えばここから海を超えた小さな島国の出身なんですか?」

 

「そうだね、今は日本、なんて国名じゃないとは思うけど。」

 

「ならば北郷はさながら先を知る予言者も真っ青な知識の持ち主なわけか。」

 

「そうなるかな、でも、俺の伝え聞く伝承とは全く違う流れになってるみたい、そんなの関係ないけどさ。」

 

「関係ないだと?」

 

「だってそうじゃないか、俺がここに居る時点で歴史に沿って進むなんてありえないし、ここに居る人達は紛れも無く生きてるんだ、その人がこの時こうしたから、だからそれと同じ人はこうしなくちゃいけないなんて誰が決めたのさ。」

 

「一刀・・・。」

 

「でも、大筋は同じかもしれない、現に俺の知る黄巾の乱の兆しがあるみたいだし。」

 

「黄巾の乱、か。」

 

「張角っていう人を筆頭にした民衆の武装蜂起だったんだけど、それに便乗した賊や奪われる側だったのが奪う側に回った民が味をしめて今に至るって感じかな。」

 

「なるほどな、しかし、どちらにせよ泣くのは弱い者か・・・。」

 

「なんだか、悲しいです。」

 

「むぅ・・・。」

 

鈴々にとっては黄巾の乱は以前の一刀が県令になって仕事に追われて、此方が不利な戦いこそあったが気が付いたら官軍によって鎮圧されて終わっていた程度の認識しかない。

 

「鈴々にも言ったけどなんで俺が此処に来たのか正直未だにわからない。」

 

「でも、鈴々と一緒に旅をして、この世界のことを知って、誰かの為になれるって知った時、俺の役目はこれなんじゃないかって思うんだ。」

 

「「・・・。」」

 

「身体も弱い、きっと一般兵にすら負けるくらい、俺に有るのはみんなの言う天の知識くらい。」

 

「でも、そんな兄様に、私達は助けてもらいました、兄様がどんな人でも、私は兄様の助けになりたいです。」

 

「そうだな、何も力が強ければいいわけではない、今更お前が何であろうと関係ないな。」

 

「もう一度言うけど鈴々は一刀と会えて嬉しい、この気持ちはずっと変わらないのだ!」

 

「みんな・・・ありがとう!」

 

「ねえねえ、鈴々もみんなに話したいことがあるのだ!」

 

「ん、鈴々も?」

 

「みんなでこれをやりたいのだ!」

 

鈴々が取り出したのは四の杯と一本の酒。

 

「みんなで一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、困ったときは助けあって、これからもずっと変わらない関係になりたいのだ。」

 

「なるほど、誓いの盃、というわけか。」

 

「うん!」

 

四人は互いに顔を合わせ微笑むと満月が照らす外へと出る。

 

盃の中に注がれた酒には満月が映りゆらゆらとゆれて。

 

四人が向かい合い盃を天に掲げ誓いの言葉を交わした。

 

「「「「我ら四人!生まれた時は違えど、平穏なる時も、窮する時も、互いを助け支え合う、血にも勝る絆を此処に誓わん!!」」」」

 

月に照らされた四人が盃の酒を飲み干し顔を見合わせる、その顔は酒のせいか、別の原因か顔がほんのり赤くなっていた。

 

「・・・えへへ、なんだか心が暖かいです。」

 

「ああ、悪い気はしない・・・いや、いい気分だ。」

 

「なんだか嬉しいや、俺も、此処にいていいってわかったら、うん、すごく嬉しい。」

 

「鈴々もなのだ!」

 

その夜、笑い合う四人の姿を月だけが見ていた。


 
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