No.78320

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(壱九)

minazukiさん

赤壁編完結!
そしていよいよ雪蓮が一刀に愛の告白をしますが一刀が!!!

2009-06-10 22:00:08 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:31666   閲覧ユーザー数:20506

(壱九)

 

 その日、天下統一寸前まできてその野望が目の前で燃えさかる炎と共に崩れ去った。

 

 姓は曹、名は操、字は孟徳、そして真名は華琳。

 

 百万と称される自分の軍団が成す術なく崩壊していく光景を見て笑いがこみ上げてきた。

 

「やられたわ……」

 

 降伏してくるはずだった敵将にまんまと嵌められた。

 

 火達磨の軍船をぶつけられ、さらにその後方から孫呉の水軍が火矢を射掛けてきている。

 

 鎖で繋がれた船団は身動き一つできずに次々と夜空を紅く染める薪と化していた。

 

「まさかこの私が負けるなんてね」

 

 そんな華琳を笑うように東南の風が吹いている。

 

 彼女の耳には味方の悲鳴と敵の雄叫びが聞こえてくる。

 

 勝ち続けて勝ち続けて、最後の一戦で全てを失う。

 

 自分の覇道というものがなんてあっけなく終わるのだろうか。

 

「華琳様!」

 

 後ろからは荀彧、郭嘉、程昱が駆けつけてきた。

 

「早くお逃げください!」

 

 荀彧の悲痛な叫びに華琳は笑みを浮かべ彼女のトレードマークでもある猫耳頭巾を撫でてやった。

 

「逃げる?私が?」

 

 呉蜀の計略にかかり、無様な敗北を晒している自分に逃げろと言う彼女の第一の軍師。

 

「すでに蜀の軍勢が逃げ道を塞いでいるわ」

 

 目の前から攻め込んできているのは孫呉の水軍だけなのを見抜いていた華琳は逃げても無駄だと言う。

 

「桂花、稟、風、貴女達ならどうする?」

 

「残兵を集めて一点に包囲網を抜けるしかありません」

 

 それしか方法がないといった感じの荀彧こと桂花が言った。

 

「それでも無理ならばどうするの?」

 

「その時は華琳様お一人でも逃れられるように我らが盾になります」

 

 そう応えたのは郭嘉こと稟が覚悟を決めた表情で言った。

 

「風は何かあるかしら?」

 

 最後に残った軍師である程昱こと風だが炎が燃え盛る中でも見事に寝ていた。

 

「起きなさい、風!」

 

 華琳の声に目を半分開ける風。

 

「……おおっ。あまりにも熱いのでつい意識が飛びかけていました」

 

 絶対それはないなと風の除く三人は思った。

 

 そして僅かであったが絶望的なこの状況の中でも心が和んだ。

 

「それで貴女の策はどうなの?」

 改めて華琳が風に尋ねると、彼女は口で応える代わりに一通の文を差し出した。

 

 それを受け取り、開いていく華琳。

 

 そこに書かれていたものを見て彼女は驚いた。

 

「華琳様?」

 

 不審に思った桂花と稟。

 

 風は眠たそうな表情で華琳を見守る。

 

「風、一ついいかしら?」

 

「手短なら問題ないですよ~」

 

 いたってマイペースな風。

 

「どこの誰がこんなものを貴女に渡したの?」

 

「そうですね~。ここに来る前に出会った見たことのない白い衣服を着たお兄さんからですよ~」

 

「見たことのない白い衣服?」

 

 華琳はその言葉を何度も繰り返した。

 

 そして行き着いた。

 

「あの男ねぇ……」

 

 天の御遣いと称され世の中にその名を広めている男。

 

 だが彼は孫呉の軍師で自分達と敵対しているはずなのになぜ、風に文を渡したのか華琳はわからなかった。

 

「そのお兄さんが言っていましたよ~。自分を信じて欲しいと」

 

「信じる?」

 

 もう一度、文を見直す華琳。

 

 そうしている間にも火の手は迫ってきていた。

 

「華琳様!」

 

 身体のいたるところが汚れたまま飛び込んできたのは夏侯惇、真名を春蘭だった。

 

「そこまで敵が押し寄せてきています。今、秋蘭達が何とか耐えていますがもちません」

 

「……仕方ないわね。桂花、稟、風。すぐに残兵を集めなさい。春蘭は秋蘭達に引くように言ってきなさい」

 

「華琳様……」

 

「罠かもしれないけれど、これしか私達が生き残る方法もないことは確か。だからすぐに撤退の準備を始めなさい」

 

「「「「はい!」」」」

 

 それぞれに準備をするために散っていく桂花達。

 

 ただ一人、風だけは残った。

 

「風はその男の言った事を信じる?」

 

「そうですね~。嘘を言っているようには見えませんでしたよ~。風としてはなかなか良いお兄さんに見えましたし」

 

 普段から眠たそうな表情をしている風だが人を見る目はあった。

 

「なら、一度だけ乗ってみるのも悪くないわね」

 

 華琳はそう言って燃えさかる炎の中をゆっくりと整然と歩いていった。

 その頃、火攻めに成功した孫呉の水軍の先頭に立っていた祭は背中の痛みを感じながらも弓を引き絞っていた。

 

 もはや勝利は疑いなかったが自分の手でさらに完璧にしたいと思っていた祭は曹操を探していた。

 

「黄蓋将軍、火のまわりが早すぎます。一度後方にお戻りください」

 

「無用じゃ。それよりも曹操を探せ!」

 

 弓に矢をかけ放つまでの速さは尋常ならざるものだった。

 

 次々と曹魏軍の兵士達は射抜かれて長江に落ちていく。

 

 そこへ遠い昔に見た覚えのある少女が歩いていくのが見えた。

 

 祭はすぐに分かった。

 

「曹操殿!お覚悟!」

 

 言葉と同時に二本の矢を少女に向けて放つ。

 

 だがそれはあっさりと叩き落された。

 

 そして祭は自分の左肩に激痛が走るのを感じた。

 

「い、いつの間に……」

 

 一本の矢が祭の左肩を貫いていた。

 

「アンタの負けや」

 

 正面には飛龍堰月刀を肩にのせて不適な笑みを浮かべる張遼と左の燃えさかる軍船に立って餓狼爪に矢をかけて狙いを定めている夏侯淵。

 

「さて困ったの。儂は何が何でも曹操殿の頸を取らなければならぬだが」

 

「ならウチらを倒してからにしてや」

 

 飛龍堰月刀を構えて飛び上がる。

 

 それと同時に夏侯淵が矢を放つ。

 

 動こうにも背中の傷みと左肩の矢傷で一瞬、力が抜けてしまった。

 

(一刀……)

 

 生きて帰ると誓ったはずなのにこんなところで死んでしまうのかと祭は悔しかった。

 

 もう一度、一刀に会いたい。

 

 もう一度、一刀に抱きしめられたい。

 

 もう一度、一刀と愛し愛されたい。

 

 そう思った瞬間。彼女の横を何かが通り過ぎた。

 

 おかげで矢も張遼の飛龍堰月刀も祭には届かなかった。

 

「……恋か?」

 

 左手で矢を掴み、右手に握られている方天画戟で張遼の一撃を受けて立っている恋。

 

「「「「祭(様)!」」」」

 

 後ろから雪蓮、蓮華、思春、明命が駆けつけてきた。

 

 そしてその後ろから、

 

「祭さん!」

 

 一際大きな声で祭を呼びながら駆けてくる一刀。

「一刀……」

 

 ふらつく足取りで後ろに下がる祭。

 

 それを守るかのように雪蓮達は前に出てそれぞれの武器を構える。

 

「祭さん」

 

「一刀」

 

 一刀は祭の身体を抱きしめようとしたが彼女に止められた。

 

「くっ……」

 

 左肩に刺さったままの矢を力任せに引き抜いた祭はそのまま一刀に倒れこんだ。

 

「……無茶しすぎだよ」

 

「なあに……これぐらいかすり傷じゃ」

 

 満身創痍の祭は強がってみせる。

 

 そんな彼女を一刀は黙って抱きしめた。

 

「なんやなんや。ぎょうさん出てきたなぁ」

 

 距離を置いて張遼は雪連達を見下ろす。

 

 夏侯淵は次の矢をすでに用意していたが、放つ隙を恋の闘気が与えなかった。

 

「逃がしてあげるからさっさと逃げなさい」

 

 雪蓮は片手に南海覇王を握ったまま張遼達に言った。

 

「なんやて?逃がす?冗談やろう?」

 

「何が言いたい、呉の王よ」

 

 張遼も夏侯淵も困惑する。

 

 これから戦おうというのにいきなり逃げろと言われてはその真意を確かめないと納得できなかった。

 

「そのままの意味よ。ここにいても無駄死にするだけだからさっさと曹操と逃げなさいって言ったの」

 

「なんでそんなこというんや?」

 

「なんで?そうね……しいていえば天の意志かしら」

 

 雪蓮は後ろで祭を抱きしめている一刀を振り返る。

 

「曹操にも撤退方法を教えているわ。だから貴女達もさっさと逃げなさい」

 

「華琳様もご存知なのか?」

 

 これには驚きと同時に警戒心が僅かばかり緩んだ夏侯淵。

 

 張遼は黙って雪蓮達を見下ろしていたが、攻撃を仕掛けてくるようには見えなかった。

 

「ほんまにええんか?」

 

「くどいわね。いいって言っているんだからさっさと逃げなさいよ」

 

 いつまでもここにいては自分達も炎に巻き込まれてしまうという苛立ちを覚える雪蓮。

 

「わかった。それじゃあ退かせてもらうわ」

 

 二人はそれぞれの脱出経路を辿ってこの場から去っていった。

 

「さあ、私達も戻るわよ」

 

 祭を思春と一刀が支え、雪蓮達は自分達の乗ってきた船に戻って残敵の「保護」を始めた。

 船の中に用意された寝台に祭を寝かせ、その傍らには一刀と雪蓮達が立った。

 

「祭、よく頑張ったわね」

 

 百叩きで見せた冷たい表情ではなく優しさを感じさせる雪蓮。

 

「祭……大丈夫?」

 

 心配そうにする蓮華に明命。

 

「案ずるな。これぐらいどうともない」

 

 左肩を一刀が応急処置していく。

 

「一刀、私達はこれから予定通り、曹操を追いかけるわ。その間は祭の近くにいてあげなさい」

 

「いいのか?」

 

「ご褒美よ♪」

 

 そう言い残して恋や思春がいる船上に出て行く。

 

「一刀、祭をお願いね」

 

 蓮華も察したのか一刀にそう言って姉に続いて出て行く。

 

 思春も明命も一言ずつ声をかけて出て行った。

 

 二人っきりになると一刀はようやく肩の力を抜いて寝台で横になっている祭を見た。

 

「祭さん」

 

「何も言うな。今はただこうして傍にいてくれぬか?」

 

 まだ戦いが終わったわけではない。

 

 それなのにここで自分だけが甘えているのは雪蓮達に失礼だと祭は言った。

 

「一世一代の芝居もこれっきりにしてもらいたいものじゃ」

 

「そうだね。俺だって祭さんが傷つくのは嫌だよ」

 

「ほう~。その割にはずいぶんと激しく儂を痛めつけておったように見えたがの?」

 

 意地悪そうに言う祭に一刀は言い返せなかった。

 

「まぁよい。お主につけられた傷じゃ。儂としては嬉しいからの」

 

「そう言われると逆に困るんだけど」

 

 一刀の戸惑う姿に祭は笑みを浮かべる。

 

「まだまだ若いの。じゃがそんなお主だからこそ儂は覚悟を持てた」

 

 雪蓮達が信じるように祭もまた一刀を信じた。

 

 だからこそ命に関わるほどの危険な作戦に自分の身体を差し出した。

 

「のう、一刀」

 

「なに?」

 

「この戦いが終わったら儂にもお主の子を授けてもらえぬか?」

 

 種馬としてではなく一人の男として愛したい。

 

 祭の気持ちに一刀は頷いた。

 

「雪蓮に怒られるのが怖いけど、祭さんにも俺の子供を産んで欲しいよ」

 

 いつも自分を優しく、時には厳しく接してくれた祭に一刀は素直にそう応えた。

 

 祭も満足したのか笑みを浮かべながら眠りに落ちていった。

 

「お疲れ様、祭さん」

 

 一刀は眠る祭の唇に自分の唇を重ねた。

 華琳はなんとか船上から脱出して後方の陣に戻ったとき、彼女の家臣達も戻ってきた。

 

「どれぐらい残ったかしら?」

 

「半数以上は失いました」

 

 稟は唇をかみ締めながら報告をする。

 

「そう。それでも半数近くは残っているのね」

 

 それならば何とか国に戻れる。

 

 多くのものを失ってしまったが生き残ったものを故郷に戻すのも主君の務め。

 

「ではこれより華容道を通って撤退するわよ」

 

「お、お待ちください、華琳様。そこにはすでに蜀軍がいます」

 

 蜀軍だけならば数でまだ勝っているが、負傷者を多く抱えている自分達では突破できるかどうかわからない。

 

 そのことを懸念する稟だが、華琳は違った。

 

「この文には華容道に向かえと書いてあるわ」

 

「しかし、それは罠の可能性が」

 

「ええ、十分に考えられるわ。でも、他の道を通るほど今の私達には余裕がないわ」

 

 罠と分かっていても回避できないのなら、堂々とその罠に飛び込むしかない。

 

 そうすれば活路が見出せる。

 華琳はそう付け加えた。

 

「分かりました。華琳様がそうおっしゃるのであれば何も申しません」

 

「ではすぐに撤退をするわよ。春蘭、貴女は先鋒となり道を作りなさい」

 

「ハッ」

 

「殿は稟と凪、真桜、沙和に任せるわ」

 

「「「「はい(ハッ)!」」」」

 

 それぞれに撤退の準備を始めていく。

 

 華琳は手に持っている文をもう一度見た。

 

『華容道を通るべし』

 

 ただ一文字、そう書かれている。

 

 見え透いた罠だということは百も承知だったが、生き残るのためにはそうする他ない。

 

「何を考えているのかしら、天の御遣いという男は」

 

 興味が沸いてくる。

 

 もしかしたら華容道でいるかもしれない。

 

 その時にでも話をすればいいかと自分達の命の危機が迫っているのにもかかわらず、そんなことを思った。

 

「さあ、華容道に向かうわよ」

 

 馬に乗り華琳達は華容道に向けて撤退を始めた。

 曹魏軍が撤退を始めた。

 

 その報告を受けた雪蓮達も船を接岸し、上陸を果たしたばかりだった。

 

「追撃の準備をすぐに整えなさい」

 

 雪蓮の指示で慌しく動く孫呉軍。

 

 そこへ一刀がやってきた。

 

「無事に曹操は華容道に向かったわね」

 

「みたいだ。なんとか上手くいきそうだよ」

 

 一刀の安堵した表情に雪蓮も笑みを浮かべる。

 

「桃香達に話したときは驚いていたわよ」

 

「だろうね」

 

 二人で決めた『曹操を生かし、会談の席に座らせる』という作戦に桃香達は驚き、様々な意見が出てきた。

 

 真の平和を築くためにはどうしても曹操の力も必要だということを戦いが始まる前に一刀は桃香達に説いた。

 

 義と情を持つ桃香ならば分かってくれると信じていた一刀に、彼女も笑顔で賛同してくれた。

 

「負傷兵の手当てに食事、至れり尽せりだけど平和のためならば安いものだよ」

 

 火攻めをすれば多くの兵士が危険に晒される。

 

 それを最小限の被害にとどめるために一刀は無理を承知で呉と蜀の王に懇願した。

 

「それで曹操が話し合いに応じるかしら?」

 

「だからこそやりがいがあるんじゃないか」

 

 初めから無理だと決め付けては何も出来ない。

 

 少しでも可能性があるのであればそれに対して惜しみなく努力すれば報われるかもしれない。

 

「大丈夫。上手くいくさ」

 

 何の根拠もないのに自信満々に答える一刀に雪蓮は笑う。

 

「どうしようもない天の御遣い様ね。いいわ、最後まであなたの策を信じてあげる」

 

「ありがとう」

 

 一刀は心から感謝した。

 

「お姉様、一刀」

 

 そこへ蓮華が駆け寄ってきた。

 

「準備が出来ました」

 

「そう。じゃあ一刀、最後の大仕事よ」

 

「分かってる」

 

 馬に乗り三人は曹操の追撃を始めた。

 華容道。

 

 そこにやってきた華琳達はいきなり現れた桃香達から負傷兵の手当てと食事を提供された。

 

 何の冗談かと詰問すると、桃香はただ笑顔で、

 

「天の御遣い様の指示です」

 

 とだけ答えた。

 

 ここにきても天の御遣いの名が彼女達まで動かしていることに驚く華琳。

 

 初めから攻撃を仕掛ける様子も無い桃香達。

 

 苦しむ兵士達のことを思うと素直に厚意を受け入れた。

 

 華琳達、武将達も傷の手当てや食事を勧められて困惑していたが、罠にかけようという空気はそこにはなかった。

 

 それでも空腹には勝てなかったために毒見をしながら食べていく。

 

 そうしているうちに雪蓮達が到着した。

 

「無事に着いたみたいね」

 

 馬から下りて雪蓮は食事を済ませた華琳の前に立った。

 

 桃香もやってきたことで三国の君主がようやく揃ったことになった。

 

「まったく、貴女達には負けるわ」

 

 素直に負けを認めているかのように華琳は二人に言う。

 

「私達が凄いわけじゃあないわ。これもすべて天の御遣いがもたらした結果よ」

 

「天の御遣いねぇ……」

 

 華琳の視線が雪蓮の後ろにいる一刀に向けられた。

 

「一刀」

 

 雪蓮の呼びかけに一刀は三人に近寄っていく。

 

「あなたが天の御遣い?」

 

「北郷一刀。まぁ天の御遣いだなんても言われてるよ」

 

「そう。なら一刀って呼んでもいいかしら?」

 

 華琳の遠慮ない注文に一刀は頷いた。

 

 雪蓮は一瞬、表情を曇らせたが諦めたように息を吐く。

 

 桃香はニコニコとしてその様子を見ていた。

 

「まずは礼を言うわ。兵士達を助けてもらったことには感謝しているわ」

 

「どういたしまして」

 

 実際、ここで手当てをしなければ命の危うい者も多くいた。

 

 そういった意味で助けてもらったことには華琳は素直に礼を言った。

 

「でもどうして助けたわけ?」

 

 すぐに本題に入る華琳。

 

「う~ん。そのことについては場所を変えて話したいんだけどいいかな?負傷兵の手当てもきちんとしなければいけないから」

 

 すぐには話そうとしない一刀に華琳も周りを見て納得した。

 

「そうね。孫策、劉備、負傷兵と残りのものを戻してもいいかしら?」

 

 大軍がいつまでも一箇所にいることもよくないと判断した華琳は供廻りの者だけを残して帰国させることを提案してきたため、二人は同意した。

 それぞれの兵士を国元に戻して負傷兵に関しては治療を最優先させた。

 

 数日して落ち着きを取り戻した頃、ようやく三国の君主と一刀は一つの机に座った。

 

 場所も南郡の江陵城に移っていた。

 

 それぞれ軍師を一人ずつ後ろに立たせていた。

 

「さて、そろそろ私の質問に答えてもらえるかしら?」

 

 なぜ自分達を助けたか。

 

 そして何を話したいのか。

 

 余計なことを何一つ言わず、華琳は一刀に問う。

 

「こんなことを言ったら恩を盾にしていると思われるかもしれないけれど、三国共存を提案したいんだ」

 

「「三国共存?」」

 

 それには華琳だけではなく、桃香も聞き返した。

 

「何を馬鹿げたことを」

 

 華琳の後ろに立っていた桂花は一刀を馬鹿にするように言うが、一刀は真剣な表情を崩さなかった。

 

「そんな戯言をこの曹孟徳が受け入れると思っているの?」

 

 桂花と同意見の華琳。

 

「思っているから提案しているんだ」

 

 負けじと言い返す一刀。

 

 ここできちんと話し合わなければ平和な世の中など絶対に訪れない。

 

 それはつまり何の罪もない民をこれ以上、苦しませないためでもあった。

 

「大した自信ね。でも、あなたの言う三国共存とやらで本当に平和になるのかしら?」

 

 同じ大陸に違う勢力があれば大小問わず、必ず争いは起こるもの。

 

 たとえ、今が平和になっても子孫達までそうとは限らない。

 

 それならば一つの国によって統一される方が遥かの有益だと華琳は言った。

 

「確かに問題はある。あるけれど、それだって三国が協力すれば乗り越えられると思う」

 

 一つの国では何か起こっても全て自分達でしなければならない。

 

 だが、そこに別の国が協力してくれるのであればこれほど強い味方はいない。

 

 お互いを助け合える。

 

 そして国を豊かにして民が笑顔で過ごせる世の中を作る事だって可能だと必死になって一刀は華琳達に説く。

 

「甘すぎて話にならないわね」

 

 あくまでも一つの国による統一を主張する華琳。

 

「孫策、天の御遣いという者はくだらない理想論ばかりしか言えないものなの?」

 

 棘のある言い方に雪蓮は特に怒ることなく平然としていた。

 

「そうね。私も初めは戯言と思ったわ。そんな甘い理想なんてするだけ無駄だとね」

 

 華琳の意見に賛成するかのように雪蓮は言う。

 

「でも、そう悪いものでもないかなって思ってるわ」

「どういうこと?」

 

「だってそうじゃない。あなたの国には北と西からの異民族が、私の国には山越。桃香の国にも今は収まったけれども南蛮がそれぞれある。それを貴女は一人でかかえるつもりなの?」

 

 他国があるからこそそういった異民族対策を講じる必要もなくなる。

 

 それぞれの国がそれぞれの外敵に備えることが出来る。

 

 そしてお互いを助け合えばそれだけ犠牲も少なくすみ、万全の体制をとることが出来る。

 

 国としての負担も軽減されることを考えると華琳としては否定は出来なかった。

 

「私はね、曹操。正直なところ統一しようが三国に分かれようがどうでもいいのよ」

 

「な、なんですって?」

 

 雪蓮の言葉に驚いたのは華琳と桂花ばかりではなく冥琳や桃香、それに蜀軍の軍師、諸葛亮こと朱里も一斉に彼女を見た。

 

「ようは平和になって民が笑って暮らせる世の中になればそれでいいのよ」

 

 横目で一刀を見ながら雪蓮は答える。

 

「し、雪蓮、それは本当だったの?」

 

 冥琳にとって雪蓮の言ったことは軽い冗談と思っていた。

 

「本当よ。私は平和になればそれでいいと思っているわ」

 

 妥協をしても蜀との共存までなら納得していただけに、三国共存にはさすがに驚きを抑えることは出来なかった。

 

「かず……北郷殿もそのことは存じていたのか?」

 

「あ~……うん……ごめん、冥琳」

 

 両手を合わせて謝る一刀に冥琳は大きくため息をついた。

 

 まさか二人が自分の知らないところでそんなことを考えていたとは思いもしなかっただけに冥琳は寂しかった。

 

「どう?貴女にとっては本当に馬鹿らしいことかもしれないけれど、私にとって十分な理由なの」

 

 共に平和を願うのであればその気持ちはわかるはずだと一刀は雪蓮の言葉を聞いて考え込む華琳を見ていた。

 

「あ、あの……」

 

 静寂の中で桃香が手を上げてきた。

 

「わ、私も雪蓮さんの意見に賛成です」

 

「劉備?」

 

 意外なところからの雪蓮の味方に華琳は視線を向ける。

 

「確かに曹操さんが言うように国が分かれた状態であればいつかは争いがおこるかもしれません。でも、これ以上の戦いに何の意味があるのですか?」

 

 三国が定まり、お互いが攻め込まなければ戦は起こらない。

 

 不安定ながらも平和な世の中にはなる。

 

「曹操さんはそれでも戦うのですか?それが民の方達の平和に繋がるのですか?」

 

 桃香は誰もが苦しまず、平和で幸せな世の中になることを望んでいた。

 

 だからこそ雪蓮と同盟を結び共に華琳と戦った。

「北郷一刀」

 

 桃香の言葉を黙って聞いていた華琳は一刀をまっすぐ見据える。

 

「あなたにとっての平和とは何?」

 

 一刀の答えはすでに決まっていた。

 

 彼もまた視線を逸らすことなく華琳をまっすぐ見返す。

 

「誰もが笑顔で幸せに暮らせることかな。そりゃあ、喧嘩だってすることだってある。でも、戦で命を落とすよりかは遥かにマシだ。戦のない誰もが生きていることを実感できることが平和だと思っている」

 

「では北郷一刀にとっての平和とは何?」

 

「俺にとっての?」

 

 その質問の答えも決まっていた。

 

 決まっていたが照れくささを感じるものだった。

 

「俺にとっての平和は……そうだな。大切な人達と幸せに暮らせることかな」

 

「「一刀……」」

 

 雪蓮と冥琳は彼を見る。

 

 そしてお互いに気づいて笑みを浮かべる。

 

「本当に面白いわ。ねぇ私のところに来る気ない?」

 

「「ダメ!」」

 

 それには雪連と冥琳が同時に拒否した。

 

「あ、いや、その……」

 

 冥琳は慌てて咳払いをして誤魔化す。

 

「やっぱり冥琳、一刀のこと好きなんだ♪」

 

「うっ……」

 

 天才軍師は顔を真っ赤にして俯く。

 

 そんな孫呉の主従の姿に華琳と桃香は微笑んでいた。

 

「なるほど。こういうことならばあなたの言う三国共存も悪くはないわね」

 

「曹操?」

 

 用意されているお茶を丁寧に、そして優雅に飲む華琳。

 

「言ったでしょう。私は天の御遣いである北郷一刀の提案に賛同すると」

 

「「「曹操(さん)!」」」

 

 仕方ないわねといった感じで華琳は周りを見る。

 

 桂花は何か言いたそうな表情を浮かべたが華琳が振り向くと素直に頷いた。

 

「ありがとう、曹操」

 

 手を差し出す一刀。

 

「華琳でいいわ」

 

 真名を一刀に授け、そして差し出された手を握り返した。

 

 そこに雪蓮と桃香も手を重ねた。

 

 一刀が望んだ三国共存はこうして叶った。

 何かと忙しい日々が続いた。

 

 まずは国境の制定と荊州は三国のそれぞれの大使を派遣して意見を交換する場と定めた。

 

 またそれぞれが不可侵条約を結び異民族に関しては共同で対応することになり、それ以外の軍事行動は硬く禁止した。

 

 そんな中、漢の帝である献帝は自らの役目が終わったと帝位を退くことを明言した。

 

 何の力もなく傀儡に過ぎなかった献帝は自分がいれば折角、平和になった世の中を再び争いで穢してしまうと言った。

 

 それにはさすがに三国も驚き、対策を検討したが辞めるものを無理に押しとどめても禍根を残すだけだという一刀の意見に賛同し、帝位を退くことを認めた。

 

 献帝は一刀に感謝の文を送り、山陽公として気楽な余生を送ることになった。

 

 こうして漢帝国は事実上消滅し、新しく魏、蜀、呉の三国共存が確定した。

 

 それからしばらくして突如、五胡の大軍が攻め込んできた。

 

 すぐに三国は共同で当たり激しい戦いを繰り広げた結果、撃退することに成功をした。

 

 圧倒的な力を見せ付けられながらも三国の勇将、知将が力をあわせ必死になって戦った。

 

 初めての連合軍としての勝利に沸く三国はこれ以降も共同して異民族に対応していくことになった。

 

「しかし平和っていうのは意外と大変なものなのね」

 

「そうね。自分でも驚いているわ」

 

「でも、皆さんで協力出来るのは嬉しいことですよ♪」

 

 雪蓮と華琳、それに桃香は立ったまま用意されている料理や酒を楽しみながら話をしていた。

 半年に一度の立食パーティーなるものを提案したのはもちろん一刀だった。

 

 三国の主だった者が料理や酒をもって交流を図るには一番いい方法だと言ったため、三人も賛成した。

 

 事実、それは大いに盛り上がっていた。

 

 今まで敵対していただけに、酒が入るともはや無礼講だった。

 

 料理もそれぞれ、流琉、凪、祭、亞莎、月、朱里、雛里が腕を振い、それらの料理を大食い選手権のごとく、鈴々、翠、恋、華雄、季衣、春蘭が食べ尽くしていく。

 

「賑やかじゃの~」

 

 口の周りにタレを付けた美羽は七乃にそう言った。

 

「みんな、こうしているのが当たり前のように見えるよ」

 

 その隣で一刀が様子を伺っていた。

 

「一刀は満足なのか?」

 

「そうだな。誰も傷つかないなんてことは出来ないけれど、少なくすることは出来たと思うから一応、満足はしているよ」

 

 しゃがんで美羽の口の周りについているタレを綺麗に拭き取る一刀。

 

「ならそんな一刀に妾からの褒美じゃ」

 

「褒美?」

 

 そう答えると美羽は一刀の頬のキスをした。

 

「あ~~~~~~」

 

 唇を離した美羽は頬を紅く染めながらも満面の笑みを浮かべていたが、それを運悪く穏と祭に見られていた。

「一刀さん~~~~~♪穏からもご褒美ですよ~~~~~♪」

 

 そういって誰もが反則だと思っている豊かな胸に一刀の顔を押し付け、頬にキスを繰り返す穏。

 

 酒の香りをこれでもかというほど漂わせる穏は満足げだった。

 

「穏!次は儂の番じゃ。そこをどけ!」

 

 と言いつつも無理やりどかせて一刀を優しく抱きしめる祭。

 

「儂からも褒美じゃ」

 

 そう言って頬にすると思いきや思いっきり唇にした祭にそれを見ていた周りの者は唖然とした。

 

「……ん。やはりお主とこうしているのは心地よいの~」

 

 完全に酔っている祭はじゃれるように一刀の頬に自分の頬をこする。

 

 一刀も嬉しいような恥ずかしいような気持ちだったのだが、なぜか後ろから物凄く痛い視線を感じた。

 

「か~~~~~ず~~~~~と~~~~~!」

 

「まったく祭殿は……」

 

「べ、別に私もしたいわけではないぞ……」

 

 怒り全開の雪蓮に一見冷静に見えるが本当は羨ましがっている冥琳。

 

 そしてなぜか怒りつつも頬を隠している蓮華。

 

「え~~~~~っと」

 

 身の危険を感じた一刀。

 

「さあ、一刀。二人で呑みなおそうぞ」

 

 腕をつかまれ祭に連れ出されようとする一刀を三人は慌てて追いかける。

 

「ダメよ、祭!今日は私と一緒に寝るんだから!」

 

「雪蓮!貴女はこのところ一刀を独占しすぎよ」

 

「あれ~~~~~?一刀って呼んでるわよ、冥琳♪」

 

「あ……いや、その……」

 

 今更誤魔化しても仕方ないだろうにと一刀は思った。

 

「三人とも一刀が迷惑しています!」

 

「そんなこといって蓮華ちゃんも一刀と一緒にいたいんでしょう~?」

 

「なっ!?」

 

 こちらもバレバレな蓮華。

 

「一刀、いくぞ~」

 

「か~ず~と~」

 

「かず……北郷殿!」

 

「か、かずとがいいなら……」

 

 もはや別の意味で修羅場と化していく。

 

 そんな様子を離れたところから見ていた華琳と桃香。

「あれに負けたかと思うと自分を笑ってしまうわね」

 

「あはははっ……」

 

 とても国の王とは思えぬ子供っぽさを全開に一刀の腕を掴んでいる雪蓮。

 

 それを取られまいする祭。

 

 口では二人を仲裁しているように見えるが、しっかりと一刀の腕を雪蓮と一緒に掴んでいる冥琳。

 

 何よりも華琳と桃香が笑ったのは文句を言いながらもしっかりと手を伸ばして背中に触れている蓮華だった。

 

 当の本人は必死になって逃げようとしているがそれ無駄な努力だった。

 

 一刀がいるだけで場が盛り上がっている。

 

「でも、これが一刀さんのいっていた平和なのかもしれませんね」

 

 誰もが笑っている。

 

 少し前までなら見ることの出来なかった光景なだけに華琳も自然と笑みがこぼれる。

 

 民の暮らしも戦がなくなった分、活気が戻ってきていた。

 

「そうね。彼が言ったことは間違ってはいなかったわね」

 

 そしてその中に自分達がいる。

 

 敵同士だったものが今では仲良く酒を呑み交わしている。

 

「桃香」

 

「はい?」

 

「一刀が一番に誰を妃にするか予測してみない?」

 

「いいですね~♪」

 

 そう言って二人は杯を合わせ楽しげに会話を続けた。

 

「か~~~~~ず~~~~~と~~~~~」

 

「ち、ちょっと雪蓮、か、かずとが迷惑しているでしょう!」

 

「冥琳、どさくさにまぎれて一刀と呼んでいるぞ?」

 

「さ、三人とも離れなさい」

 

「シャオも一刀とする~~~~~~♪」

 

「穏もしたいです~~~~~♪」

 

 もはや収拾がつかなくなってきていた。

 

 別の場所から料理を運んできた亞莎はその光景を羨ましそうに見ていた。

 

「亞莎?もしかして混ざりたいの?」

 

「わ、わ、わたしはべつに……」

 

 顔を紅くする亞莎だが明命にはお見通しだった。

 

「か~~~~~ず~~~~~と~~~~~♪」

 

 雪蓮は一刀に飛びついてその場に押し倒した。

 

 一刀は酒が怖いと改めて思いながらも、平和になってよかったと感じていた。

 雪蓮達からなんとか逃れた一刀は一人、庭に出て月を眺めた。

 

 中では笑い声が聞こえてきて一刀も嬉しかった。

 

「綺麗な月ね」

 

 後ろから雪蓮の声が聞こえてきた。

 

 先ほどの馬鹿騒ぎとは打って変わっていつも雪蓮に戻っていた。

 

「一刀、少し歩かない?」

 

「うん」

 

 隣に並んで庭を歩く二人。

 

 宴席会場から影になる場所に着くと二人はそこにあった石の椅子に座った。

 

「一刀ったらみんなに優しいから大変だわ」

 

「でもそうしろっていったのは雪連だろう?」

 

「それを後悔しているわ」

 

 冗談ぽく言う雪蓮に一刀は自分から彼女を抱きしめた。

 

 遠くから聞こえてくる声を気にすることなく二人は抱きしめあう。

 

「一刀」

 

「なに?」

 

「私ね、蓮華に王の位を譲ろうと思うの」

 

「蓮華に?」

 

 頷く雪蓮。

 

 それは彼女がずっと前に決めていた事だった。

 

 戦のあるときは蓮華よりも自分が王でいればまず負ける事は無い。

 

 だが戦ばかりをしたところで許貢の残党のようなこともある。

 

 国を治めるのであれば自分よりも蓮華のほうが遥かに優れていると感じていた。

 

「あの子にとっては迷惑だと思うわね」

 

「きちんと話さないときっと怒るぞ?」

 

 雪蓮の髪を撫でる一刀。

 

「一刀」

 

「うん?」

 

「私と添い遂げてほしいって言ったらどうする?」

 

 王としてではなく一刀を愛する一人の女性として雪蓮は彼に聞く。

 

「雪蓮はどうなんだよ?」

 

「私?決まっているでしょう。私は一刀を愛しているわ。誰よりも」

 

 身体を離して雪蓮は立ち上がる。

 

 そして月を背に一刀を見下ろす。

 

「孫伯符は北郷一刀を愛しているわ」

 

 その姿は月の明かりを受けて銀色に輝くように見えた一刀。

 

 雪蓮から差し出された手に手を添えて立ち上がる。

「北郷一刀は孫伯符を……」

 

 愛していると言葉を口にしようとした瞬間だった。

 

 身体の中から何かが上に向かってのぼりって来る感覚を覚えたかと思うと、口から血を吐き出した。

 

 そして、雪蓮の目の前から崩れ落ちた。

 

 何が起こったのか理解できなかった雪蓮はゆっくりと崩れ落ちた一刀を見下ろした。

 

「一刀……?」

 

 膝を突いて彼を抱き起こす。

 

 何がどうなっているのか頭が混乱していく。

 

 一刀の顔を見ると口の周りを紅く染めて目を閉じていた。

 

「一刀……どうしたの?どうしたのよ!」

 

 身体を揺さぶるがまったく目覚めない一刀。

 

「起きなさいよ、一刀!」

 

 どんなに大声を出してもどんなに身体を揺さぶっても決して目覚めようとしない一刀。

 

「約束したじゃない。私を一人にしないって!一刀!」

 

 雪蓮の悲鳴を聞いたのは庭に出て涼をとっていた冥琳だった。

 

 すぐに駆けつけた冥琳は二人の姿を見て身体を振るわせた。

 

「雪蓮、どうしたの?」

 

「分からない……いきなり血を吐いて……」

 

 毒矢を一刀が受けた時のように雪蓮は弱々しく答える。

 

(まさか……)

 

 赤壁の戦いの時、一刀の変調に気づいていた冥琳は全身を引き裂かれる感覚に襲われた。

 

「とにかくすぐに部屋に戻るのよ。私が医者を連れてくるわ」

 

「……」

 

「雪蓮!大丈夫。一刀は大丈夫だから」

 

 自分に言い聞かせるように冥琳は言うと雪蓮も何とかか一刀を支えながら立ち上がる。

 

「絶対に助けるから。貴女の愛する人を私が助けてあげるから」

 

「……冥琳」

 

 苦しくても笑顔を見せて安心させようとする冥琳。

 

 二人で一刀を部屋に運んでから冥琳は一人、医者を呼びに行った。

 

 明かり灯さない部屋の中で雪蓮は水を持ってきて一刀の血を拭き取っていく。

 

「死んだら許さないから」

 

 彼が死ねば自分も死ぬ。

 

 そう思うほど雪蓮は一刀の存在が大きすぎていた。

 

「かずと……」

 

 寝台で横たわる一刀の手を握り必死に祈った。

 

 外ではさっきまで輝いていた月に雲がかかっていった。

(座談)

 

水無月:赤壁編最終話でした。

 

詠  :何とか終わったわね。

 

水無月:まさかここまで長くなるとは思いもしませんでした(;゜∀゜)

 

詠  :しかも戦いのシーン少ないし。

 

水無月:どうも戦いのシーンは難しくて読んでいる方々は満足できなかったと思います。物凄くすいません。(><)

 

詠  :まぁそういうのは回数と何か参考になるものを見ればいいのよ。

 

音々音:詠、こいつにそんなことを言っても無駄なのですよ。

 

水無月:ひどい(ノд`)

 

詠  :まぁ、それもそうね。

 

月  :詠ちゃん・・・・・・それは可哀想だよ。

 

水無月:ゆえ~~~~~~。いい子だよ(なでなで)

 

月  :・・・・・・へう(照)

 

詠  :ボクの月になにしてるのよ!?(顎にアッパー)

 

音々音:ちんきゅ~~~~~~き~~~~~っく!?(上空に上がったところをヒット!)

 

水無月:グベラバボ・・・・・・・・・・・・・・・・・・バタッ。

 

詠  :まったく。次回はいよいよ前半戦、最終回ね。

 

音々音:気合入れて書くのですよ、このバカ作者。

 

水無月:ふ、ふぁい・・・・・・。(ガクッ)

 

月  :それではまた次回もよろしくお願いします♪

 


 
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