【注意】
この作品には近親への恋愛感情の描写が含まれています。
また、ほんのりと病んだ表現もあります。
以上の事が大丈夫な方のみ閲覧してください。
「お父様!」
久しぶりに呼びかけた私の声は僅かに期待で震えていた。
必ず会えるといった確証はどこにもないが、私は会えると確信していたのだ。
呼びかけに応ずるようにすっと目の前に大好きな人の姿が現れた。
「お父様……、お久しぶりですね」
そう言うと、彼は昔と何一つ変わらない姿で微笑んでいた。
「シアスも元気そうで何よりだよ。また大きくなったかい?」
彼は私の頭へそっと手を伸ばすと優しくなでる。
その心地よさにたまらず目を細めた。
「あの、今日は父の日なのでどうしようか迷ったのですが、お酒とサイダーを持ってきたんです。一緒に飲みませんか?」
聞くと彼は少しだけ驚いた表情をしたけれど、すぐに笑顔に戻った。
「シアスはまだ未成年なんだから、飲んじゃいけないよ?」
「……、はい」
躊躇いながらうなずいた。
少なくとも、彼の前でだけは「いい子」のフリをしていたい。
例え嘘をついていると知られていても。
「うーん、あと少ししたらシアスとも一緒にお酒が飲めるのかぁ。楽しみだなぁ」
普段通りの、のんびりとした口調で彼は嬉しそうに言った。
グラスに氷と梅酒を入れ、最後にサイダーで割って彼に渡す。
「ありがとう」
にっこりと見る人々を和ませるような柔らかな笑顔を向けられ頬が熱くなった。
「……いえ」
彼は私のそっけない返事にも気を悪くする様子はなく、梅酒のサイダー割りを半透明のその体で飲み始める。
私も自分の分のサイダーを氷の入ったグラスに注いで一口飲んだ。
「あの……ごめんなさい」
「うん?」
私の言葉に彼は顔をあげた。
「ずっとここに、閉じ込めてしまって」
彼はなんだ、というような顔で笑った。
「そんな事、気にしなくていいよ。そのおかげで今、こうしてシアスの成長を見守ることが出来ているんだから」
再度私の頭を撫で、彼は言う。
「それに、君の気持ちに応えることが出来ないから、その償いみたいなものだよ」
……知ってます。貴方が私の気持ちを知っていることも応えることが出来ないことも、そのことに罪悪感を感じていることも、全部、全部、知っています。
「だから、これで妥協っていうわけじゃあないけど――」
「いいえ、十分ですよ」
私は彼に向ってほほ笑んだ。
「こうして貴方の傍に居られるだけで、十分なんです」
お父様。
「お父様。」
貴方が私の事で心を痛めているという事実が、何よりも私の至福なのだということを貴方は知らないでしょう。
「愛しています。何よりも、誰よりも、貴方の事を一番に。永久に」
私への罪の意識と心の痛みで貴方を縛りつけたまま、貴方の魂がいつか人間のモノから、悪魔のモノに変わるまで。もちろん、ずっとずっと、傍に居させて下さいますよね?
「ねぇ、お父様」
――――何処にもいかないでくださいね?
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小説を投稿する際どうなるのか実験的な意味で過去に書いた小説をUPしてみる試み('ω'*)
ぱって一話で読めてR指定の入らないものってこれくらいしか思いつかなかった……。それでも近親愛……。