~一刀視点~
「さて、騎馬隊の将は誰なんだ?」
砂塵は確認できたが、まだ旗までは確認できない
そんな俺の呟きが聞こえたのか、
「報告します
将は呂布です
更にその後ろに第二の騎馬隊が向ってきています
その部隊の将は張遼と高順です」
明命が突如現れ、報告してくれた
「一刀さん、呂布隊の相手だけでもかなり厳しい戦いになります
なにしろ、あの飛将軍呂布の部隊ですから
その呂布隊の相手をしている最中に、時間差で張遼隊に攻撃されては我が軍は壊滅の危険すらあります」
静里が現状を分析する
その意見には俺も同感だった
「だから、呂布の部隊は躱して、袁紹軍に押し付けましょう
そして我が軍は張遼、高順部隊の相手をしましょう」
それが最善か
「よし、静里の策を実行する
星、凪 二人は袁紹の所へ向かえ
呂布が袁紹を討ち取ろうとしたなら、阻止するんだ
だが、呂布を討ち取る必要は無い
二人が無事帰還する事が第一の命、袁紹を討ち取られない事が第二の命だ」
「「御意!」」
あんなのでも総大将だから、袁紹を討ち取られれば連合軍の敗北だ
だから袁紹の守りを強化する為、星と凪を派遣する
「鞘姉には高順の相手をして欲しい
俺は張遼の相手をする
騎馬部隊から指揮官を引き離して、突破力を落とさせる
部隊指揮は静里と氷雨に任せる」
「任せて」
「「御意!」」
「明命は巴を頼む」
ふと、巴の方を見ると
「袁紹への守りをもっと強化する為には・・・」
何やらぶつぶつ言っている
すると
「伝令さん、今から私の言う事を一言一句違えずに曹操に伝えて!
その内容は・・・・」
伝令に伝えた内容を聞いて、思わず頭を抱えた
どこまで曹操を怒らす気なんだ
我が妹ながら問題児だ
呂布率いる部隊が接近して来る
「今です!開け!」
静里の号令で俺達の部隊は左右に別れる
モーゼの如く呂布部隊には袁紹軍への道が開く
呂布軍は道を開けた俺達に目もくれず、袁紹軍へと突撃する
袁紹”軍”には悪いが、袁紹には良い薬だ
袁紹軍は大混乱に陥るが、此方も構ってる暇は無い
呂布の部隊が完全に通過した後、左右に開いた部隊を元に戻す
張遼、高順の部隊の相手をしないとな
「おら、おら、どかんかい!」
威勢の良い掛け声とともに兵を蹴散らしてくるさらしの女性がいた
あれが張遼か
張遼に向かって行き、その攻撃を逸らして見せる
「へえ、なかなかやるや無いか
あんた、名は?」
「呉郡太守 北郷一刀」
「あんたが噂の『天の御遣い』か!」
「こんな時だが、一対一で貴女を討ち取らせてもらう」
張遼に宣言すると、張遼はニヤリと笑って
「やれるもんなら・・・」
その続きを言い終える前に、張遼へ鞘姉が飛び蹴りを繰り出す
張遼はその攻撃を間一髪槍で受け止めたが、威力に押されて馬から落ちる(身を翻して着地したが)
「まあ、戦やから汚いとは言わんが一対一と言っておきながらそれを初手から違えるとはな」
「いいや、これで本当の一対一だ」
張遼が怪訝そうな顔をする
「今まで其方が馬に乗っていたので馬と張遼で2だったろ
しかし、今は馬から降りたからこれで一対一だ」
「一君、私は高順を倒しに行くね」
「たのむよ」
鞘姉は走って行った
「くくく、おもろい奴等やな~」
張遼と一騎打ちが始まる
~曹操陣営にて~
「あんな莫迦でも討ち取られれば、連合軍の負けね」
呂布軍の突撃を受けて混乱している袁紹軍を見ながら華琳は呟く
「春蘭、秋蘭、不本意だけど麗羽を守りに行きなさい!」
「「御意!」」
春蘭、秋蘭が袁紹軍の方向へ向かうと、
「北郷軍から伝令が来ております」
華琳が伝令を通すと
「あ、あの北郷巴様からの伝令です
これは一言一句違えずに言うように厳命されておりまして・・」
伝令が言い辛そうにしているのを怪訝に思いながらも先を促すと
「『小百合ちゃん、暇そうだから袁紹の御守りしといてくれる?
ちんちくりんの州牧さんでもそれ位出来るよね』との事です」
伝え終わった伝令はトラウマになりそうな程怒りの形相をした”曹操”を目の当たりにする
伝令は大慌てで逃げるが、華琳は一呼吸おいて頭を冷やすと
「あの娘 巴って云ったかしら
戦略眼はありそうね・・・」
自身の考え同様、袁紹を討ち取られない様に伝令を出した巴の能力に興味を持った しかし
「いちいち私を莫迦にしないと、気が済まないのかしら あの娘は~!」
巴のいらぬ暴言にはまた怒りを燃やす事になった
~鞘華視点~
一君と別れて高順を探す
旗で位置は分かるがさて、どの人なんだか
すると、兵達に指揮をしている男性がいた
雰囲気からして一兵卒とは思えない 見つけた
「私は北郷鞘華 貴男が高順ね?」
「いかにも 私が高順だ」
そう言って、馬から降りて来た
「『天の御遣い』との風評を聞いてはいたが、とんだ食わせ物だった
『似非天の御遣い』であった以上、遠慮なく討たせてもらう!」
高順が槍で攻撃を仕掛けて来る 速いっ!
対応出来ない速さでは無いが、突きの速度はかなりの物だった
「ほう、少しはできるようだが、私の突きをいつまで躱しきれるかな
私の真名は”疾風(はやて)” 我が攻撃は真名の如く疾風(しっぷう)なり!」
連続しての突きに後退すると
「しぶとい」
苦々しげにつぶやく高順に
「ねえ、高順さん
貴男 独身?」
「はあ?」
間の抜けた声を上げるが直ぐに顔を引き締めると
「独身だが」
「彼女は?」
「居らん!それがどうした?!」
明らかに苛立っている高順に
「それなら知らなくても仕方ないか
だから教えてあげる!恋する乙女は強いんだよ!!」
従弟であり、幼い頃からずっと一緒に居た
私を鞘姉と呼んで姉代わりとして慕ってくれた 武術ではよき競い相手
良い所も悪い所も知っている 知ってくれている
そんな一君に私は・・・
そんな人に頼りにされたら、全力で応える!
それが私 北郷鞘華だ!
高順の連続攻撃を躱しながら、一歩間合いを詰める これで私の間合いだ
高順の首めがけて斬撃を放つ その斬撃は高順の槍で受け止められる
しかし、その刹那の後、斬撃と逆の方向から高順に上段回し蹴りを喰らわす
意識の外からの蹴りを喰らえば堪らないだろう
私が修得した古流武術「北天一心流」は剣術と体術の融合を特徴としている
だから私の蹴りは空手の有段者に匹敵する
その私の蹴りをまともに喰らって高順はふらつき、その高順に横薙ぎを峰打ちで当てる
これで高順は完全に失神した
こうして、高順を捕縛した
~一刀視点~
張遼と対峙しているが
「あ~、なんや期待外れや!」
張遼は明らかに苛立っていた
「何なんや、全然攻撃してこんなんて!
やる気、いや勝つ気あるんか?!」
そう、俺は全く攻撃して無い
張遼の攻撃に防御一辺倒だった
考え有っての事だが、思わず苦笑いが漏れる
「うん?なにがおかしいんや?
あっ、しもうた
時間稼ぎか!」
苦笑いを漏らしたせいで、気付かれてしまった
俺の目的は時間稼ぎ
呂布の部隊が袁紹軍を完全に突破すればそのまま華雄の部隊と合流して汜水関に入るだろう
だが、呂布の部隊が突破した後、素早く張遼の部隊も突破しないと袁紹軍に道を塞がれてしまう
突破しようにも俺達の軍を相手しながら袁紹軍を突破できるか
袁紹軍が疲弊した直後と言っても、それは無理だ
そうなれば張遼を捕える事も可能
だから、時間稼ぎに徹していたのだがばれてしまった
「勝負は預けるで!」
張遼は馬に素早くまたがる
「今度は時間稼ぎやなくて本気で な」
張遼はニヤリと笑ってそう告げると汜水関の方へ馬を走らせて行った
董卓軍が汜水関へ籠った時点で戦闘は終結した
呂布、張遼、更には混乱に乗じて汜水関から打って出た華雄に連合軍は大打撃を負った
連合軍の負けで汜水関の戦い初日が終わった
だが、朗報が一つだけ有った
鞘姉が高順を捕縛した
捕縛した敵将の処遇はは捕縛した軍に任せられる
つまり高順の処遇は俺達に委ねられた
俺達の目的”董卓の保護”の第一歩になるかもしれない
~あとがき~
呂布を袁紹に押し付ける
腹黒い策と言われそうですが、後続の張遼部隊の事も考えれば他に選択肢は無いかと
「袁紹”軍”には」は「袁紹軍の兵には」と云う意味です
どの道、犠牲は避けられないから自軍を優先したのが一刀達の方策です
華琳が巴の能力に興味を持ちました
しかし、まだ、もしかして・・・と云った程度です
ついでにおちょくられてまた激怒もしましたが
高順(疾風)登場
私の前々々作にも登場した男性武将の高順です
その時は鞘華と恋仲になりましたが、今作ではありえません
疾風は『天の御遣い』にも拘わらず善政を行っている董卓を討とうとしている一刀達に怒りを感じています
だからあの『似非天の御遣い』と云った台詞が出ています
真名を言ってますが、預けた訳ではありません
霞が時間稼ぎに気が付かなかったのは一騎打ちの楽しみに意識が行っていた所為です
迂闊ですが、霞はそう言った所も有るので
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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汜水関の戦い①