No.780353

艦隊 真・恋姫無双 58話目

いたさん

洛陽にある都城内の話です。 5/30マルキュウサンマル 幾つか訂正しました。

2015-05-29 17:47:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1342   閲覧ユーザー数:1172

【 前代未聞の大騒動 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 にて 〗

 

都城内では、現在……非常に慌ただしい!

 

ーーー

 

───バタバタバタバタッ!!

 

高官1「皇帝陛下が御崩御された! 次期の皇帝は、どなたに───ッ!?」

 

女官1「陳留太守『曹孟徳』さま──陛下のお見舞いに参内されました!」

 

ーー

 

────カッカッカッ!

 

宦官1「劉辯皇女か? 劉協皇女か? うむぅううう───ッ!!」

 

女官2「天水太守『董仲穎』さま──参内!!」

 

ーー

 

ドタドタドタドタッ!!

 

高官2「葬儀の準備を取り締まる者は……いずこぉおおお───ッ!!」

 

女官3「南陽太守『袁公路』さま──参内! 御案内をー!!」

 

ーーー

 

当然と言えば当然。

 

天の御遣いの来訪、十常侍の反逆、逃走、捕縛……そして劉宏の崩御!

 

漢王朝創立以来……こんなに重大事件が重なる時は無かったため、王朝内は──右往左往の大騒ぎ!

 

政治を真面(まとも)にした事が無い高官、金勘定だけが得意な宦官、派閥争いで忙しい文官たちが多数のため、余計に事態が混乱したのだった!

 

 

★ーー★ーー★ーー★

 

始めは……この重大事件に対して箝口令を出し……『正式に新皇帝を決定した後、触れを出して軍閥の参内を促し、新たな新体制を構築! その後、新体制で重要な案件を処理する』と……決めたのだ。

 

そうしないと……『国が混乱するから』と言う理由で。

 

しかし、裏を返せば……問題多数を先送りにして、自分たちの権力だけは盤石にしようとしたわけである。 

 

考えて頂ければ分かるが、『十常侍』と言う怪物が『現皇帝陛下』共々……居なくなった。 権力の中枢が空席になり、頭になるのは歳の若い新皇帝。 

 

これは、早く優秀な後釜を──急遽選出しなければならない! 

 

さすれば……皇帝を意のままに操る事も可能。 上手く行けば……他の派閥より数歩抜きん出た状態になり、漢王朝を牛耳る事も出来る!!

 

つまり……大陸を手に入れたも同時!! 

 

そのため、決めるだけに……派閥同士が足を引っ張り合い、かなりの時間と労力、金が掛かる予定だった!

 

★ーー★ーー★ーー★

 

しかし、時は───悠長に待ってはくれない!!

 

まるで……天の御遣いに導かれたように、各地の軍閥が洛陽に集結する!

 

そのため、箝口令が役に立たず……結局、全部纏めて仕事をするハメになった! 

 

そう……夏休みの宿題に追われる……8月最終日の学生のように!!

 

 

◆◇◆

 

【 春蘭の百面相 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 別室 一の部屋 にて 〗

 

華琳たちが、洛陽の門前に到着すると、焔耶より話が入っていたようで、丁重に迎えられた。 その後、洛陽の都城へと案内され、別室で待機中。

 

しかし、何時もは静かな城内が……蜂の巣をつついたような騒ぎを起こしている。 偶に訪れる場所だが……このような事態は……初めてだった。 

 

ーーー  ーーー

 

華琳『………外は、かなり騒がしいわね?』

 

秋蘭『華琳さま……これは恐らく………!』

 

華琳『………えぇ! まず……間違いないわ! しかし、今は推測の域を出ない! 確実な情報を得なければ……!!』

 

桂花『華琳さま……この都城内には、私の協力者が何人かいます。 その者に尋ねて情報を得たいと………』

 

華琳『情報は鮮度と正解さが大事……その者は、信用できる者もの?』 

 

桂花『はいっ!』

 

華琳『ならば……真桜、沙和! 貴女たちが、桂花の護衛として付きなさい! 必ず情報を得て……無事に戻るのよ!』

 

『─────はっ!』

 

ーーー  ーーー

 

こうして、外に居る女官に口実を付けて、部屋から抜け出して……桂花たちは、城内の協力者より、情報を引き出しに向かった!

 

今から……丁度半刻前(約一時間前)である!

 

ーーー

ーーーー

ーーー

 

部屋の中で華琳、秋蘭が静かに桂花たちの帰りを待っていると、春蘭が話掛けてきた。 後ろには季衣と流琉が……不安そうな顔で眺めている。

 

ーーー

 

春蘭「───華琳さま!」

 

華琳「どうしたの……春蘭?」

 

春蘭「華琳さまは、この騒ぎの原因を御存知なのですか? しかも、秋蘭や桂花まで、知っている様子! しかし、私たちには何も知らされていないのです! この原因が分かるのなら、是非、私たちにも教えて下さい!!」

 

季衣「華琳さま……」

 

流琉「わ、私も知りたいです!」

 

華琳「…………そうね。 今なら大丈夫と思うけど……もう少し近付いて頂戴。 扉の後ろで聞き耳を立てている女官から……隠したいのよ……」

 

春蘭「………は、はい! 季衣や流琉も……集まれ!」

 

季衣「行こう……流琉!」

 

流琉「うん!」

 

ーーー

 

華琳の命令により、部屋の中央に集まって、声を抑えつつ話を始めた。 

 

ーーー

 

華琳「………貴女たちは、あの騒ぎの後に洛陽へ向けて、兵の指揮をとっていたから、知らなくて当然。 本当は貴女たちにも、知らせるべき内容だったのだけど、内容が内容だけに秘密にしたかった!」 

 

春蘭「………それは……どういう?」

 

華琳「貴女たちに知らせるとね……顔と態度に出てくると思ったから。 この事は、絶対に他の者へ語る事は無いとは信用しているわ! だけど、三人とも隠し事が出来ない正直者! だから……時を待って話そうと考えたのよ!」

 

秋蘭「特に姉者は………」

 

春蘭「………………」

 

ーーー

 

季衣「流琉……ボクたち……貶されているの? 信用されているの?」

 

流琉「適所適材……って事なのかな?」

 

季衣「はにゃ?」

 

ーーー

 

華琳「そして、この機会を得たからには、貴女たちに知らせるわ! コホン! 貴女たちが指揮を取っている時、私たちは十常侍の持つ、情報を得るため、尋問を行った。 その結果……ある恐るべき企てを吐いたのよ!」

 

春蘭「く、企て……!?」

 

華琳「そう! 十常侍たちは……己の権勢を高めるためだけに、謀を仕掛けていたの! 大将軍何進の抹殺、その後に……天の御遣いたちを、自分らの陣営に引きずり込もうと……!」

 

秋蘭「だが、結果的に……自分たちの意のままに成らなかった。 逆に御遣いから自分たちの謀を追求され、大将軍何進共々……暗殺せんと実行したそうだ!! 十常侍が逃走したのは、これが原因だったのさ!」

 

その話を聞いて、三人の顔色が瞬時に変わった!

 

★☆☆

 

季衣「に、兄ちゃんが!?」

 

流琉「そんなぁ───ッ!」

 

春蘭「ほ、北郷を殺した……だと!? お、おのれぇ!! 手を下した奴らを全員───叩き斬ってやるぅうううッ!!!」

 

秋蘭「───待てッ! 冷静になれ! 姉者!!」

 

春蘭「これを聞いて──冷静になれるかぁ!! 北郷の仇、この夏侯元譲が討たねば、誰が討たん!!! どけぇ!! 秋蘭!!!」

 

季衣と流琉は、涙を流さんばかりに顔を歪め、春蘭は鬼のような形相になり、今から十常侍を斬り殺さんと吼え立てて、扉まで走り寄る!!

 

華琳「────いい加減になさい!!!!」

 

春蘭「─────ハッ!?」

 

華琳の一喝により止められた春蘭の背中に、続け様に言葉を投げかけた!

 

華琳「………捕縛した十常侍は、既に執金吾に身柄を渡して、王朝の管理下に置いているわ! だから、今の私たちの手から離れた状態よ! それなのに春蘭! その十常侍を、わざわざ斬りつけて、更なる問題を起こす気なの?」

 

春蘭「し、しかしッ!!?」

 

華琳「貴女が……その男を、どれだけ大切に思っているかは、その反応で分かるわ! だけどね、時と場所を弁え(わきまえ)なさい! それに、愛しの男は無事よ! あの十常侍が逃走した理由を推察すれば、すぐ分かる筈!!」

 

「「わぁ──ッ!!」」

 

『北郷は生きている!』………その話を聞いて喜ぶ季衣と流琉! 

 

しかし、春蘭だけは……先程の騒ぎを起こした事もあり、秋蘭に念を入れて聞いてみた。

 

春蘭「………そうなのか……秋蘭?」

 

秋蘭「………華琳さまの仰る通りだ。 それにしても……姉者の想い人が、天の御遣いとは! まったく……私が付いて居ながら、どこで接触を持ったのやら………」

 

春蘭「ち、違う! あ、アイツは───ッ/////!」

 

藪蛇をつついた状態の春蘭に、更なる追い打ちが合わさる!

 

華琳「さて……春蘭のノロケ話は、後で聞かせて貰うわ……。 ここまで騒ぎを起こしてくれたんだもの。 桂花たちと一緒にね?」

 

春蘭「────か、華琳さまッ!!」

 

秋蘭「姉者……静かにしてくれ!!」

 

春蘭「……………ぅぅぅぅぅ!」

 

顔を赤らめて悶え苦しむ春蘭。

 

秋蘭「姉者は可愛いな………」

 

華琳「それにしても……北郷……ね」

 

その様子を秋蘭が頬を緩めつつ眺め、華琳は『北郷』なる天の御遣いの名を思案する。 

 

季衣と流琉は『自分たちで無くて良かった~』と、胸をなで下ろしていた。

 

 

◆◇◆

 

【 ○錦馬超 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 別室 二の部屋 にて 〗

 

無事に洛陽へ到着した月たちは、門の衛兵に理由を説明。 

 

衛兵は重罪人『十常侍』を捕縛している事を手放しに喜び、上官らに伝えた!

 

上官も恭しく挨拶を交わした後、将たちに礼を述べて……都城へと案内。

 

都城に入ると……高官が飛び出して厚く礼を述べ……『悪逆十常侍を捕縛した事を、陛下に上申して頂きたい』と申し出る。

 

元々月や翠たちは、一刀に接触するために来たため二つ返事で承諾。 

 

他の将も皇帝陛下に拝謁する栄誉なら、是非にと賛同。

 

こうして、月と翠たちは、城内の別室で待機中であった。

 

ーーー

 

月「また……此処に来ちゃたね……詠ちゃん」

 

詠「えっ!? ボクは単独で洛陽に来る事はあっても、月と一緒に来たことなんて無いわよ?」

 

月「あっ………うん! そ、そうだったね! 私……勘違いしちゃた!!」

 

詠「もう……月ったら!!」

 

ーーー

 

ねね「月殿……お察し致しますぞ!」

 

恋「元気……出す……!」

 

ーーー

 

翠「しかし、まぁ……洛陽は『前の時』と全然変わらないよな~! 相変わらず十常侍が悪さしてやが『ガンッ!』いってぇーーー!! 何しやがる蒲公英!!」

 

蒲公英「ボソボソ(お姉様の馬鹿ぁ! まだ、記憶が無い霞や華雄が居るのに、前の世界の話をしてどうするのよ!) あーははははっ! 洛陽って……前に来たけど、賑やかさが全然変わらないねー!!」

 

霞「そやなぁ! だが……ちぃーと人情味が薄うて……うちぃ余り好きやないねん! まだ、離れた場所の方が、気楽で自由だしぃ!!」

 

華雄「私だってそうだ。 誰か強い者が居るなら別だが……暮らしを営むとなると便利過ぎて……自分が堕落してしまう恐れがある! これでは、修業にならないではないか!?」

 

蒲公英「そうかな~? 色々と楽しい事あるから、たんぽぽは居たいけど……。 あっ! お姉様は駄目だよ? 西涼に居てくれなきゃ!」

 

翠「どう意味………いや、分かったぞ! 名高い錦馬超が離れると、羌族たちが攻めてくる事を心配してるんだろう! 大丈夫だよ。 母さまが守ってるんだ! そう簡単に西涼は──抜けられないぜ!!」

 

蒲公英「違うよ! お姉様が洛陽に留まれるとね! 失禁癖がバレて噂が広まって……いつの間にか洛陽の全店より『出禁馬超』なんて言われたら……! たんぽぽ──恥ずかしくて洛陽に居られないよッ!!」

 

翠「バ、バカァアアア───ッ!!!!」

 

霞「ほうほう? 高貴な姫さまっちゅうのは、何でも下の者にやらすから、羞恥心が無いんと聞いてるが……アンタもそんなぁん?」

 

翠「自分で出来る事は、何でもやるよ! 母さまは大ざっぱだけど、躾には厳しかったんだ!! あたしは、羞恥心も誇りも立派にあるぞ!!!」

 

華雄「しかしだな……。 幾ら真名が無い身の上とはいえ……失禁などという武人にあるまじき行為……流石に真似ができん!」

 

蒲公英「でもでも……姉様って極度の恥ずかしがり屋だからね~! 狙ってやってるわけじゃないと思うよ? まぁ……本当のところは、どうかなって考えちゃうんだけど~」ニヤニヤ

 

翠「───いい加減ッ! そ、その話題から離れやがれぇえええッ!!」

 

 

◆◇◆

 

【 冥琳の心痛は如何に? の件 】

 

〖 洛陽 都城内 別室 三の部屋 にて 〗

 

袁術軍も洛陽に到着。

 

名高い袁家の到着、朱里たちの口添えもあり……素早い対応で都城内へ案内される。 美羽たちとは身分が違うため、他の別室に分けられて待機。

 

十常侍捕縛に功を挙げた孫仲謀たちには、陛下への拝謁があるとの事で、呼ばれるまで待機している状態である。

 

ーーー  

 

冥琳「蓮華さま、小蓮さま……お疲れは御座いませんか?」

 

蓮華「冥琳こそ……体調は大丈夫なの? 私は勿論、大丈夫!」

 

冥琳の労いの言葉に、無理やり笑顔を浮かべ、逆に冥琳の体調を心配する蓮華。 自分の体調より、まず臣下の疲れを心配する蓮華に、冥琳は柔らかく微笑み……『心配ありませんよ!』と応える。

 

冥琳「(御自分の不調を隠し、臣下の体調の安否を確認する。 このような配慮を受ければ、多くの臣が蓮華さまに忠を尽くそう! この若さで、人心掌握の要を無意識に使うとは……流石は雪蓮……お前の妹だ!!)」

 

冥琳が心密かに感嘆し、何時しか自分が必要とされない時期が、近いうちに訪れるだろう……考えていたのだが。 

 

月日とは残酷な物だと……改めて感じる。

 

雪蓮と幼き日に出会い……実の妹ように思っていた少女が、いつの間にか成長した。 自分が諭す事も無く、人の上に立つ王として起こした行動が……半分嬉しく、半分寂しく感じられる。

 

小蓮「ちょっと! シャオだって居るんだからぁ!!!」

 

ところが、そんな冥琳の思惑をよそに───横から蓮華へと、横槍を入れる小蓮の声が響き渡る!

 

ーーー

 

小蓮「シャオも平気だもん! なんたって、お姉ちゃんより若いしぃ~!」

 

蓮華「ほんの数年違うだけじゃない! 大体、シャオと違って……私は皆を指揮して行動していたの! 責任だって半端じゃないんだから!!」

 

小蓮「星や風から聞いてるよぉーだ! お姉ちゃんは、十常侍を一人背負って運んだだけじゃない! 大事な指揮は風や稟が自分たちで判断! 星に殿任せたりさせてぇ! それなら、シャオが居た方が、遥かに役立ったよぉ!!」

 

蓮華「シャオに──私の気持ちが解るワケ無いじゃない!!」

 

小蓮「ふ~んだ! シャオの事を見くびるから、そうなるんだよ! それに比べて、一刀の仲間の金剛さんなんかぁお姉ちゃんと違って大活躍じゃない!」

 

蓮華「くぅぅ─────ッ!!」

 

小蓮「残念だな~! 同じお姉ちゃんなら、金剛さんみたいなお姉ちゃんが、居てくれたら良かったのになぁ~ッ!!」

 

蓮華「シャオォオオオ───ッ!!」

 

冥琳「………蓮華さま!!」

 

蓮華「め、冥琳………!」

 

冥琳「此処が、どのような場所か……すでに御存知の筈ですが?」

 

蓮華「────ご、ごめんなさい! 冥琳!!」

 

小蓮「やーい! 怒られ『小蓮さま! 口が過ぎます!!』ブゥゥ~!」

 

冥琳「まったく………」

 

ーーー

 

二人を叱った後、冥琳は……思う。

 

『あの位の挑発に引っかかるとは……。 それとも……蓮華さまを上手く乗せた、小蓮さまの手腕を褒めるべきか。 どちらにしても……蓮華さまを見守るお役目、これでは当分の間……終わらないのだろうな………』と。

 

★☆☆

 

その後、冥琳は、扉の傍の椅子に腰を掛け、外の様子を探るため……目を閉じ耳を澄ます。 『曲の誤りあれば、周公瑾が振り向く』と噂されるほどの聴覚を誇る冥琳は、情報収集の為、その力を発揮させた!

 

ーーー

 

────バタバタッ!

 

『…………! ………………!』

 

冥琳「─────!」

 

バタバタ────ッ!!

 

ーーー

 

そんな冥琳の耳に入る言葉は……『天の御遣い』『十常侍』『捕縛』『皇帝……誰に』との断片的な物。

 

冥琳「城内が珍しく騒がしいと思えば、これは……どういう事だ!? しかも、皇帝陛下や北郷が関わる、何やら大事件が発生したとしか思えん! すぐに情報を集めなければ!!」

 

思春「───冥琳さま、私が参ります!!」

 

冥琳「思春、頼むッ! この騒ぎ……何かしらあるに違いない! 皇帝陛下と北郷が関わっているなら、十常侍を捕縛した私たちも無縁ではあるまい! 隠された真実を見つけだし、私に報告を! くれぐれも気を付けてくれ!!」

 

思春「御意! 明命………私だけだと、万が一の事があってはいかん! 一緒に来てもらうぞ!」シュッ!

 

明命「────はいっ!」シュッ!

 

ーーー  ーーー

 

思春と明命が動き、情報を得る為に向かう!

 

向かう場所は───天の御遣い『北郷一刀』の下へ!!

 

 

◆◇◆

 

【 ○○参陣する? の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 同部屋 にて 〗

 

星が……壁に寄りかかったまま、腕組みを組んで目を閉じる。

 

ーーー

 

星「…………………」

 

風「珍しく静かですねー? 何か考えているのですか~?」

 

稟「………もしかして……あの反乱軍の………」

 

風と稟は、思案する星の具合に心配になり、声を掛けていた。

 

星「うむっ……我が槍は手練の賜物により、最高の技量まで高めたと思っていた。 しかし、現実にはどうだ!? あの『残紅』とか男に、良いようにやられてしまった! 金剛殿の援護がなければ……私は………!!」

 

風「風たちの活躍も……お忘れなく~! また、来るのなら……風たちが策を張り巡らせて、やっつけちゃいますよー!」

 

稟「……あの者は……橋より落下して、死んでしまったのでは? 遺体も見つかったと、使者も言っていましたが……」

 

ーーー 

 

現に、あの後……隣国の太守により、反乱軍は鎮圧された。

 

正解には……稟と風の策、七乃の政治判断に寄って………

 

 

★☆☆

 

……………ここで日数が遡る。

 

───『残紅』との激闘の二日後。

 

隣国の太守が、袁術軍の行軍を遅滞させた事を聞き及び、美羽に謝罪の使者を送ってきたのだ。  

 

使者「袁術軍の行軍を遅滞させた事、誠に申し訳ない! 憎き反乱軍は、速やかに討伐するため、どうか……お許し願われたく……」

 

これを聞いて……七乃が問い掛ける。

 

ーーー

 

七乃「そうですね~? 10日以内にパッパと終わらさせて下さい! また、この道を帰りに利用したいんですよ~! だから、それくらいの誠意を見せて貰っても、いいんじゃないですかね~?」

 

使者「そ、そんな……我が軍の精兵は、殆ど反乱軍に身を任せ、あの砦に立て籠もっています! 我が兵士は四千が限度、しかも白兵戦が苦手な弓兵ばかり! 三千近い兵が籠もる要害を、どうやって落とせばいいのやら……!」

 

七乃「じゃあ………貸し一つですね? 策を授けますから、必ず滅ぼし……袁術軍の行軍に、その小汚い顔を、再び見せ付けないよう頼みますよー!!」

 

使者「はぁ、ははぁ───ッ!!」

 

ーーー

 

その後、七乃は手をヒラヒラさせて……

 

『孫権さんとこの軍師さんは、優秀な方が多いと聞いていますー! だからぁ、この……自分で考えようともしない間抜けな人に教えて上げて下さいねー!! 私は美羽さまに、蜂蜜水をお渡ししなければなりませんので~!』

 

と言い放ち……その場を去った!

 

蓮華たちは、唖然とするが……仕方なく策を伝授。

 

本来……孫権軍の軍師は、冥琳に任命されているため、冥琳が策を考える。

 

しかし、将来……対袁術戦で、策の傾向を知られたく無いので、稟と風たちが編み出す事になったのだ。

 

 

★ーー★ーー★ーー★

 

風『では……策の説明をしま~すぅ!

 

簡単に説明をすると………ぐぅーーーーっ………ペシィン!!

 

うぅ……痛いですよぉ稟ちゃん! 軽く和ませる為の演出なのに……

 

まずぅ……最初に兵糧攻めで弱らせます! 

 

お腹が空いては、何とやらといいますので~!

 

それから~時期を見て一斉に火矢を射ますぅ! 

 

重要なのは、建物の中心部を狙わない事ですねぇ。 退路を絶つと~やけっぱちになって、とんでもない行動に、出る可能性がありますからぁ~。

 

小規模な火災を起こして、消火活動で動き回らせ……更に弱らせますぅ! 

 

そしてですねー? 降伏を呼び掛けると……多分……多数の兵が投降してくれますよー! 助かる道があるなら、死にたくないでしょうからね~!』

 

ーーー

 

稟『では、更に細かく、私が説明します!! コホン! ………まず、状況説明ですね。

 

この砦の立地は、周りが切り立った空堀と崖のため、人の出入りは困難です。 

唯一の移動箇所の橋も、先の戦で落としましたから、外へ逃げ出すのは勿論、攻めてくる事さえ、難しいと思います。 

 

それに、食糧の備蓄も殆ど無い事も、明命殿の探索で分かっています。

 

そのため、兵糧攻めで攻めれば、1ヶ月あれば餓死する事も可能。 楽な戦いになるのですが、七乃殿の定めた期限は10日! 

 

これでは、力攻めを合わせて行かないと、到底無理な期限。 しかも、兵士も弓は得意だけど接近戦はダメ。 それに、籠もる兵士は、精兵が多数!

 

此処まで、事態が把握したら……今度は策を考えます。

 

まずは兵糧攻めで体力を奪う。 日が過ぎれば、お腹も空きますので、これはこのまま採用。 血を流さず敵を弱らせる良い方法です。

 

頃合いを見て、火矢で脅し命の危険性を高める! 

 

食糧不足中で死線をさ迷う兵士は、当然ながら死を決意するでしょうね。

 

生きたいけど……生存への道が無い。 

 

つまり……自暴自棄になるんですよ。

 

すると、団体行動から個人行動へ感情が移ります。 

 

えぇ……そこが狙いなんです。

 

その後に、縄梯子を準備して投降を促す。 

 

……命が助かると気が緩み……多数が逃げ出す事になるでしょう。

 

そして、何人か成功しましたら、投降した者の名前、自筆で書いた降伏書状(布製)を矢に括り付けて、砦に送って現状を知らせる。 

 

もしくは、対岸で豪華な食事を取らせ、見せつけるのもいいでしょう。 

 

これを繰り返せば、投降兵が多数になり……最後は降伏する事態に持ち込めれます!』

 

ーーー

ーーー

ーー★

 

七乃「はぁーい! 美羽さまぁ~蜂蜜水ですよ~!」

 

美羽「七乃……隣国の使者に、策を授けるように手配したのは、何故じゃ?』

 

七乃「簡単な事じゃないですか~! 袁家の策士は優秀である事の誇示、美羽さまを攻めると簡単に倒されちゃうぞ~って知らせてあげたんです! そして、強制的に借りを一つ作らせちゃた……と言う事ですね~!!」

 

美羽「その割には……何やら……何時もの七乃とは違う感じが……」

 

七乃「大丈夫ですよ、美羽さま! いつもの七乃と変わりありませんー!」

 

ーーー  ーーー

 

風「これが……風や稟ちゃんが、教えてあげた策なんですよ~! おやぁ……どうかしたんですかー? 稟ちゃん?」

 

稟「七乃殿の考えが……どうも腑に落ちません……。 何故、袁家を敵に回すような発言をしたのかと……」

 

風「あんまり悩むと……鼻血が止まらなくなりますよ~? え~と、以上が策の説明でした~! チャンチャン!!」

 

★ーー★ーー★ーー★

 

懇切丁寧に教えて貰った使者は、何度も礼を述べて立ち去る。

 

当然、結果は投降兵士多数の大勝利!

 

後に隣国の太守から、御礼の使者が訪れたのは……言うまでもない。

 

ただ、美羽には礼を記した竹簡、簡素な使者の口上のみが伝えられただけで、蓮華には、丁重な使者からの口上と……『何か助けが必要なときは、遠慮なく申し上げて頂きたい』と、秘密裏の約束が交わされたのだ。

 

七乃の知らないところで………

 

★★☆

 

風は風なりに励まし、稟は『残紅』の最後を思い浮かべ、使者から聞いた話を語った。 稟も……あの男に対して嫌悪感を持っていたからだ。

 

使者からの話では、吊り橋のあった掘割に、趙慈の死体があったそうだ。

 

手に巻き付けていた布、顔の形、服装から関して……間違いないとの事だった。 ただ……酷く驚いていた死に顔だったそうだ。

 

ーーー

 

稟「遺体と云う……最重要な証拠があるんですよ? 些か気苦労では……」

 

星「私には、どうも……そうは思えん! あの野獣のような執拗さ! そして、私を無視し後方の金剛殿を睨みつけた──狂気の視線!! ………あのくらいの事で死ぬなど……私には考えられんのだ!!」

 

そう力説する星たちの後ろに……白い影が形を取り───実態化した!

 

────スッ!

 

??「その通りですよ! 相手は生身の者では勝てぬ……巨大な敵です! 幾ら名高い趙子龍の槍を持ってしても……アノ者たちには……勝てません!」

 

星「誰だ───ッ!?」

 

于吉「私の名は于吉。 悠久とも言える時の流れを旅する管理者。 愛しの左慈と共に、この世界を管理する謎の男……とでも言っておきましょうか?」

 

『………………………』

 

于吉「フッ………私の余りにも高尚な自己紹介に、この部屋の者に居る者たちは、まったく声が出ないようですね? やはり、銀河○道の再録を見ておいて正解でした……!」

 

ーーー

 

星「あぁ……あの漢女の亜種か……」

 

風「…………ぐぅぅぅぅ」

 

稟「起こす気もありません……」

 

ーーー

 

小蓮「どっかへ行っちゃえッッッ!!」

 

蓮華「えっ!? う、于吉!?」

 

冥琳「于吉………か! 女の部屋に入る時は『ノック』が必要では無いのか? 北郷は、よく礼儀だと言って行っていたが……」

 

ーーー

 

于吉「大丈夫ですよ……私が興味があるのは、左慈だけですから! それに……趙子龍! あんな醜い筋肉たちと一緒にしないで下さい!! 非常に不愉快な言い方ですッ!!」

 

ーーー

 

于吉は、そう険しい顔で反論した後……真面目な顔で話だす!

 

于吉「この前の返事……決まりましたか? ここは、私を仲間に加えるのが……最善の策! そうでもしないと……孫呉の建国は、途中で崩壊するかも知れませんよ………?」

 

『ーーーーーーーー!?』

 

于吉の言葉に反応するまで、少し間が開いた!

 

その言葉の意味は、分かりたくないが……何となく予測が出来てしまうから!

 

星「やはり………アイツは生きているのか?」

 

星が……確信を込めて呟く!

 

于吉「死んだのは……抜け殻! 精神は、虎視眈々と獲物を狙っています! 因縁ある『あの者』を、自分の手で仕留めるために───!!」

 

于吉が当然として理由を述べてから、再度……蓮華たちへ問い直す!

 

于吉「私を───仲間に入れて頂きませんか?」

 

辺りの空気は、いつの間にか……張り詰めた空気へと変わっていたのだった。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

最近、話が長くなりすぎて……区切るとこが難しくて、悩む事か多くなりました。 なるべく、読みやすい小説にしますので、ご意見等ありましたら、お願いします!

 


 
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