No.779175

恋姫英雄譚 Neptune Spear

目を覚ました1人の男。そこで彼は自らの置かれた状況を把握する。

2015-05-23 22:02:13 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:612   閲覧ユーザー数:577

 

Mission02:Lian Stewart

 

 

目を覚ますと、そこは見知らぬ天井が広がっていた。

 

 

「何だ…これ?」

 

 

おかしい……いくら何でもおかしすぎる。確か俺はフィリピンで発生した人質救出作戦に従事していて、テロ組織‘‘アブ・サヤフ”の残党が仕掛けた建物を吹き飛ばせる位のIEDを発見し、部下を退避させてから解体しようとした直後に爆発に巻き込まれて死んだ筈だ。

 

それなのになんで民家………しかも造りから判断して中国みたいな造りだがそれにしては作りが古風すぎる。

そう考えていると扉が開き、そこから紫の髪をした女性が入って来た。

 

 

「邪魔すんで〜♪おっ‼︎ようやく目ぇ覚ましよったか♪気分大丈夫か?」

 

 

入ってきた女性は俺よりは小柄で袴に下駄。更には羽織りを被って巨乳をサラシで巻いた日本の関西弁で喋る明るい女性だ。

しかし明るさの中に強さと惹きつけられる何かを感じ取れるがひとまずは尋ねてみることにした。

 

 

「少しだけ怠さが見られるがじき直る……君が運んで来てくれたのか?」

 

「せや♪せやけどウチだけやないで。一緒におった連れも手伝ってくれよったんや」

 

「助かった……借りが出来たな」

 

「へへっ♪照れるやんか〜♪」

 

 

そんなことを話していると今度は緑色の髪をした眼鏡をしている少女と銀髪の目力が強い女性が入って来た。

 

 

「起きたようね?」

 

「……何とか……」

 

「うむ……何処か身体に異常はないようだな?」

 

「あぁ………」

 

「起きていきなりだけど、あなたの名前は分かる?」

 

「俺は………リアン……リアン・スチュアート」

 

「り……りぁ……聞いたことも無い名前だな……生まれは?」

 

「アメリカだ。星条旗を見れば判るだろ?」

 

 

そういいながら俺は左腕に付けている星条旗ワッペンを見せるが、彼女達は頭を傾けた。

 

 

 

 

「あ……あめりか?」

 

「何処にあるんだ?ここからは遠いのか?」

 

「えっ?………それでここは何処なんだ?」

 

「ここは天水。我が主董卓の収める地よ」

 

「天水…董卓…と……董卓⁉︎」

 

 

名前を聞いて驚いた。何しろ中国の歴史上で彼以上の悪逆非道をなし得た人物はいないとされる名前だ。

 

何だか嫌な予感がしてきた………。いきなり大声を出したので眼鏡の少女が抗議してくる。

 

 

「ちょ⁉︎…急にびっくりするじゃない!」

 

「す……すまない……それで君達の名前はなんだ?」

 

「…良いわ。ボクは賈 文和。こっちは華雄であんたの隣にいるのが張 文遠よ」

 

「賈 文和…華雄…………まさか……」

 

「どうしたのよ?」

 

「賈詡 分和と華雄と張遼 文遠か?」

 

「ちょっと待って……何故ボク達の名前を知っているのよ⁉︎ボクは今、賈 文和と名乗って賈詡とは名乗らなかった筈よ⁉︎」

 

「………兄ちゃん……ナニモンや?」

 

 

いきなり自分達の名を言われて隣にいる張遼と前にいる華雄はそれぞれ偃月刀と大斧の鋒を向けてきた。

 

いきなり向けられてしまったので俺は反射的にベッドから飛び出して逃げ道を確保しつつ、なぜかそのまま寝かされていたのでそのままの状態であるホルスターからP226 MK25を構えて銃口を向けていた。

 

 

「………なんのつもりや?」

 

「それはこちらの台詞だ……いきなり武器を向けられたら誰だってこうなる。ひとまずは眉唾ものだが仮説を交えながら説明してやる。だから武器をゆっくりさげるんだ」

 

 

そういうと張遼と華雄は警戒しながら武器の鋒をゆっくりと下ろし、俺もMK25をホルスターに戻した。

 

そして俺も警戒しつつ仮説と経緯を話す。俺の勘が正しかったらここは古代中国で三国志序盤辺りの年代だ。

そうでなければ反董卓連合で戦死する華雄と後の曹操軍きっての奇策士と武人とされる賈詡と張遼がいる訳がない。

 

 

 

 

なんで3人とも女性なのかは一先ずは置いといて、内容を聞いた3人は唖然としていた。

 

 

「………信じられないわね……」

 

「俺だってまだ全部を信じちゃないが辻褄が合うとしたらこれしかない……そこで確認したいんだが賈詡の生まれは涼州武威郡姑臧県だよな?因みにあんたらの主の董卓は涼州隴西郡臨洮県」

 

「ちょっ⁉︎なんで月の故郷も知ってるのよ⁉︎」

 

「………誰だって?」

 

「月ってんは董卓はんの真名や」

 

「真名?」

 

「なんやあんさん。真名知らんかいな?」

 

「あぁ……俺の国に真名なんてものはない。姓名とミドルネーム………中間の名前がある位だ」

 

「真名はその人物の本質を表す神聖な呼び名だ。本人の許しなく口にしたら命を取られても文句が言えない大事なものとなる」

 

 

口にしなくてよかった………。

 

 

 

 

「………まぁいいわ。一先ずはあんたに聞きたいことが山のようにあるから隠さず正直に答えてくれる?」

 

「……答えられる範囲ならば答えよう」

 

「だけど流石にこっちも準備がいるわ。だから尋問は明日になるけど、それまではこの部屋から出ないで頂戴。厠に行きたくなったりお腹が空いたら鈴を鳴らして呼んでね?」

 

「何から何まですまないな。それまで考えを纏めておくとしよう」

 

 

それだけ伝えると賈詡は張遼と華雄を引き連れて部屋を後にした。それを見送ると一先ず現状の装備を確認する。

 

メインアームとナイフは全て押収されているようであり、アーマーやヘルメットも然り。

だが外し方が分からなかったようでMk25はそのままだ。再びホルスターから取り出してサプレッサーやX400シュアファイアフラッシュライトの状態も良好。

 

9×19mmパラベラム弾もあり、最低限は戦える状態だ。賈詡から今の段階で警戒されているようであり、入り口には2名、窓の外にも2名ほど衛兵らしき人の気配が感じられるし、恐らくは詰所にも何人かいるだろう。

 

確認し終わったらMk25を枕の下に隠し、ベッドに横たわった。

 

 

「しかし……三国志の世界とはな……しかも主要人物が女性のパラレルワールドとは………」

 

 

本音をいえば心が弾む。

 

なにせ俺は1,800年間も語り継がれて来た三国志のファンであり、特に最強の武人である呂布にある種のあこがれがあった。

もしかしたら呂布にも会えるかも知れない。そう考えながら俺は明日に備えて眠りにつくことにした……………。

 

 


 
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