No.778818

「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第3話

もうしばらくは「改訂版」というよりは修正版な感じで話が進みます。

では第3話どうぞ。

2015-05-22 06:00:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6586   閲覧ユーザー数:5127

翌朝、朝日が昇り、部屋に光が射しこみはじめる時間になった頃

 

「う~~~ん。よく寝た、さあ顔でも洗おうかな……へっ?」

 

北郷璃々は深い眠りから覚め、布団から出て身体を伸ばし、顔を洗いに行こうとしたが、よく見ると自分の部屋では無く、全く身覚えのない部屋にいた。

 

「ここ……何処?何で私、お父さんとお母さんと一緒に寝ているの!」

 

そして何故か別室で寝ていたはずの一刀と紫苑が同じ部屋に寝ており、まだ二人は夢の中であった。

 

「お父さん!お母さん起きて!大変な事になっているよ!!」

 

異変に気付いた璃々は、取り敢えず二人を起さないといけないと思い璃々は、大声を出しながら起きる様に二人を強く揺さぶる。

 

「ファァァ……璃々、おはよう……」

 

「よく寝たわ……」

 

昨日夜の生活を頑張った二人は漸く目覚めるが、布団から出た二人の姿を見て、

 

「嘘でしょう……お父さん、お母さん、何で若返っているの!」

 

璃々は驚きの表情を隠せず、思わず衝撃の発言をした。

 

それを聞いた二人の反応は

 

「ハァ!?」

 

「えっ本当のことなの?璃々、鏡どこにあるの♪」

 

一刀が驚いているのに対して、紫苑も驚いてはいるが何処か嬉しそうな表情を浮かべている。

 

一刀の見た目の年齢が20歳くらいになっており、そして紫苑の見た目は20歳代前半と言ってもいい位に若返り、紫苑は部屋にあった鏡で自分の姿を何度も見直し、そして蘇った肌の張りを指でなぞったりしてその感触を確かめていた。

 

そして何故か璃々だけは年齢が変わっていない状態であった。

 

紫苑は若返った嬉しさを隠しきれずに何度も鏡を見ているので、痺れを切らした璃々が注意をする。

 

「ちょっとお母さん!何時まで鏡見ているのよ!」

 

「あら、ごめんなさい、璃々。もう二度と戻らないと思ったこのお肌の張りが戻って本当に嬉しいのよ、もうこれで貴女に馬鹿にされないわ」

 

「そ、そう良かったね、お母さん。でも、まだ私の方が若くて勝っているよ」

 

紫苑は注意されたものの何度も若返った自分の身体を見つめ直し、今まで璃々に歳の事で散々言われてきたので少し勝ち誇った表情をする。璃々はまだ自分の方が若いから有利と強調するが、流石に歳の差が大きく縮まったので動揺は隠しきれないが。

 

「さて…取り敢えず現状を把握しようか」

 

流石に紫苑に歳の話をすると話が止まらないので、一刀は話を中断させる。

 

そして部屋の周りを見て、ある事に気付き二人に確認する。

 

「紫苑、璃々、この部屋の雰囲気、何処かで見た事がないか?」

 

「この部屋の雰囲気ですか?」

 

一刀から言われると紫苑も漸く真剣な表情となり、部屋の周りを見る。

 

部屋に取り立てて特別な物がある訳ではないが、よく部屋の調度品等を見れば、何処かの城内の一室若しくは身分が高い者の屋敷と思われ、自分が嘗て楽成城の城主として過ごした過去が蘇る。

 

「う~ん私は、見た事がある様な無いような…」

 

璃々は記憶が曖昧であったがこれは仕方が無かった。まだその時の記憶が幼児の時の物だったのだから。

 

そして紫苑は落ち着いた声で

 

「ご主人様…これは私たちが出会った世界と似ていますが…」

 

「えっ!若しかして私たち元の世界に帰ってきちゃったの!?」

 

紫苑が出した答えに璃々が驚きの声を上げる。

 

「それは分からないが、ただ部屋の雰囲気や調度品を見たら、俺たちが出会った世界の物と似ているんだ。だけど紫苑の答えは間違ってはいない様な気がする」

 

だが何故今になってこの世界に戻ってきたのか。

 

それにここが以前の外史と同じなのか、若しくは全く別の世界なのかもしれないが、今の一刀と紫苑、璃々には全く見当が付かない状態であった。

 

「それでだ。ここで寝かされていた俺たちは誰かに保護若しくは軟禁されている状態と見ていいだろう」

 

「恐らくご主人様の言うとおりでしょう。そうでなければ私たちは、まだ放置されているか寝ている間に何処かの賊に追剥ぎに遭っていますわ」

 

「そういう意味で助かったけど、これからどうするの?」

 

「まだ分からない。何せ今、何処にいるのかすら分からない状態だからな。それでだ、まず先に決めておく事がある。紫苑と璃々の関係だが、紫苑が若返った今、流石に璃々と親子関係というのは見た目無理がある。だから、今から二人には姉妹になって貰う」

 

「ちょ、ちょっと待って!お父さん!」

 

「それにお父さんと言い方も無しだ。今の璃々の立場は紫苑の妹だ。今まで通り、お父さん、お母さんと呼ぶわけにはいかない。だから俺たちの呼ぶ時の言い方を変えてもらうぞ」

 

「え~そんなの無理だよ」

 

一刀から行き成り紫苑と姉妹関係になれ、そして呼び方を変えろと突然と言われ璃々は無理だと文句を言う。

 

「仕方ないだろう、璃々。二人の今の姿を見て親子ですと言ったら、紫苑が璃々を産んだのが、小学生低学年の時に産んだ計算になる。いくら昔が早婚だからってこれは無理だろうし、俺がどれだけ鬼畜な人間と思われるから、頼むから承知して欲しい」

 

一刀から尤もな理由を聞くと璃々も承諾しかなかった、大好きな一刀に迷惑を掛ける訳にはいかなかったからだ。だが璃々の頭の中では悪戯心がむくむくと浮んで、ある結論を出す。

 

「うん、分かった。だからこれから、私、お母さんの事をお姉さん、そしてお父さんの事をご主人様と呼ぶから!」

 

「ハァ!?」

 

「あら♪」

 

璃々が出した答えに一刀は素っ頓狂な声を上げ、紫苑は笑みを浮かべる。

 

「ちょ、ちょっと待て、璃々!」

 

「え~私、昔、ご主人様と呼んでいたし、それにご主人様のお願いを聞いたのだから、それ位いいでしょう~」

 

愛する璃々から正論を言われると一刀は沈黙しか無く、以後璃々は一刀を呼ぶ時は「ご主人様」と呼ぶ様になり、これ以後呼び名が変わる事は無かった。

 

「それと紫苑…名前どうする?」

 

一刀が懸念していた事がもう一つあった。この世界が以前と別の外史の場合、紫苑とは別の黄忠がいるかもしれない。もし居た場合、話がややこしくなる可能性が高いと思い、敢えて聞いてみた。

 

「ご主人様、その様な心配していただいてありがとうございます……ですが私は昔、この身も心も必要であれば屍も思うがまま、どうぞ自由に使って下さいとご主人様の前で誓いを立て、そしてご主人様と結婚して同じ姓まで戴きました。だから私は死ぬまで、ご主人様に女として愛を誓い、そして忠を誓い、そしてご主人様と共にあり続けたい覚悟です。その証として北郷紫苑という名をこのまま使いたいと思います」

 

「お母さん……」

 

「紫苑……ありがとう」

 

璃々は紫苑の誓いを初めて聞いて驚き、思わず「お母さん」と言ってしまったが、二人は敢えて指摘せず、そして一刀は紫苑の覚悟を聞いて感謝の言葉と共に頭を下げていた。

 

そして璃々についても、「北郷璃々」をそのまま使うことに決めたのであった。

三人があれこれ話をしていると

 

「失礼します……あっ?三人とも起きてますね。気分はどうですか?」

 

そう言いながら女性は部屋に入ってきて一刀たちの方に近づいてくる。

 

(一体この子は誰なんだ?少なくとも以前の外史では見たこと無いな(わ、ね))

 

一刀たちは内心そう思っていた。

 

「あっ…申し訳ないけど、今、ここは何処で、君の名前を教えて欲しいんだけど」

 

一刀は部屋に入ってきた人物に質問をする。

 

「ここはですね。西涼の城内で、私の名前は馬休と言います」

 

「「「えっ!」」」

 

三人は驚きを隠せず、一刀は小声で紫苑に

 

(「確か、馬休は翠の妹で、昔、翠を助けた時には死んだはずだよな」)

 

(「ええ、翠ちゃんがご主人様に助けられた時は、ほとんどの一族は曹操軍に殺されたと言っていましたわ」)

 

「あの~どうかしましたか?」

 

一刀と紫苑が話を中断したので、心配になった鶸が声を掛ける。

 

「あっ、ごめんね。馬休さん」

 

「まず俺から紹介するよ。俺は、姓は『北郷』、名は『一刀』。字は無いんだ」

 

「こっちが妻の北郷紫苑、それと妻の妹にあたる北郷璃々で、同じく二人も字は無いよ」

 

一刀が紫苑と璃々を紹介すると、二人は黙って頭を下げる。

 

「それで質問なんですけど…三人は何処から来たのですか?」

 

「日本……ここではこの大陸の東にある蓬莱から来たと言ったらいいのかな」

 

「へっ!?ほ、蓬莱ですか!?ちょ、ちょっと待って下さいね!お母様を呼んできますので!!」

 

一刀の回答を聞いて鶸は、自分の理解を超えたのか慌てて部屋を出て行った。

 

そして鶸が再び部屋に戻ってきた時には、人数が増えており、その中に翠の姿があった。

 

三人は翠の姿を認めたものの、思い出を懐かしんでいる余裕が無かった。集団の一番前に居た女性が

 

「初めまして私は、姓は馬、名は騰、字を寿成と言う。西涼の太守をやっている。娘から話は聞いたが、三人には正直に答えて貰いたい事がある」

 

「単刀直入に聞くよ。あんた達は『天の御遣い』か?」

 

馬騰の鋭い質問に一刀は

 

「正直に言うと自分たちが『天の御遣い』かどうかは判断できないよ。他人からそう見えると言えば見えるかもしれないし、傍から見たら胡散臭い者に見えるかもしれない。ただ一つ言える事は、自分たちはこことは違う別の世界から来たとしか言い様がない。それを信じるか信じないは貴女たちの自由だ」

 

「訳の分からない事を言って、お母様に取り入れようという魂胆だろう!」

 

「少し黙ってな、翠!」

 

初めから一刀たちに懐疑的な翠は、自分たちが未知な者として母である馬騰を気に入れようと発言したものと思い、反発する姿勢を見せたが碧は直ぐにそれを止める。

 

「何で止めるんだよ、お母様!」

 

「ハァ…翠。アンタ、仮にも私の後継者になるんだ、もう少し人を見る目を覚えな。この三人の目を見て嘘を言っている様に見えるか?」

 

「碧様。確かにこの者たちは、嘘を言っている様には見えませんが…翠様や私自身正直まだ信じられないというのが本音です」

 

渚(龐徳)の意見ももっともであった。今までの一刀の言葉だけではそれを証明する物がないからだ。

 

「この身体一つだけじゃ証明できないもんな…それじゃ遊びで、俺がここにいる者の名前を当てるというのはどうかな」

 

「ほう…面白そうだな。私と馬休の事は既に分かっているからな、それじゃ後の四人の名前を当ててみな」

 

一刀の提案で碧は承諾する。

 

「それじゃ君だけど、君の名前は馬超、字は孟起、間違いないだろう?」

 

「ああ…正解だ」

 

翠はあっさり正解した一刀に驚きを隠せなかったが、これは予め答えを知っている一刀は内心申し訳ないと思っていた。

 

そして翠や馬休に顔を似ている二人を見て

 

「君たちはお姉さんたちと顔が似ているから…どちらかが馬鉄さんで、もう一人は馬岱さんだと思うけどどうかな?」

 

「おーお兄様、凄い」

 

「へぇ~お兄さん。やるじゃん♪」

 

「最後に…馬騰さんと馬超さんに仕え、この見た目の強さ…龐徳さんで間違いないかな?」

 

「そ、その通りです」

 

「初対面なのに、翠お姉様や蒼、蒲公英、それに渚の名前を知っているなんて……」

 

最後の龐徳まで的中させると鶸は驚きを隠せなかった。

 

(「この三人を絶対他に渡したらいけない!もし誰かに渡してしまったら、私たちは全てを失ってしまう予感がするわ…」)

 

碧は内心ではそう考え、何とか一刀たちを引き留めようとする。

 

「それであなたたち、これから行くところある?」

 

「ないですね。」

 

「正直、来たばかりですので……」

 

「知り合いいないもんね…」

 

碧の質問に一刀、紫苑それに璃々も困惑な表情を浮かべる。

 

「それじゃここに住んでみない?」

 

「えっ?」

 

「いいのですか?」

 

「助けてくれるの?」

 

「それで条件があるの。あなた達の持っている知識を私達に貸してほしいのよ」

 

「なるほど…」

 

これは一刀たちも想定の範囲だった。一刀や紫苑、それに璃々の持っている知識は、この時代ではかなり進んでいる。

 

それに実際、以前の外史でもこれを使って国を発展させた事もあるし、更に今回は人生経験を重ね、更に向こうの世界を経験した紫苑や俺たちより柔軟な考えを持った璃々もいる。

 

絶対に成功するとは言わないが、何とかなる自信はある。それに今、他に行く当ても無い状態では世話になった方が得策だと、そう結論付けた一刀は

 

「分かりました。ここでお世話になります」

 

碧の話を受け入れた。

「それで奥方に一つ聞きたいのがあるのよ?」

 

「あら奥方なんて、私の事を紫苑と呼んで下さい」

 

「分かったわ。私の真名、『碧』をあなたたちに預けるわ」

 

「いいのですか?」

 

「いいわよ。あなた達はもう私達の仲間なんだし、私なりの信頼の証だから」

 

碧は朗らかな笑みを浮かべながらそう言った。

 

「それじゃ紫苑。貴方の妹がいるけど、それは側室なの?」

 

碧の質問に紫苑は一瞬戸惑いの表情を浮かべ、璃々の顔を見る。

 

だが璃々は笑顔で黙って頷き、紫苑に全てを任せる。

 

「まだ璃々は向こうの世界ではまだ学問を学ぶ身分でしたので、側室ではありませんでしたが、ですがそれを卒業できたらその予定でしたわ」

 

紫苑の答えに一刀は驚き、璃々の方を見るが璃々は既に覚悟を決めており、逆に一刀の方を真剣に見ていた。逆に一刀は璃々の目を本気だと悟り、何れ覚悟を決めないといけないと感じ取っていた。

 

「そうなの…もし仮の話だけど、第一夫人は貴女でいいけど、第二夫人に私の娘を入れる事は可能かしら?」

 

「はぁ!?」

 

「えっ!?」

 

「へぇ!?」

 

碧の話に一刀と紫苑、璃々は驚きの声を上げる。

 

「ななななな、何言ってんだよ!お母様!何で私がこいつと結婚なんてしなければならないんだよ!」

 

碧の突拍子な発言に慌てる翠。

 

「アンタ、この間見合い断られて、もうこの辺じゃ相手がいないよ。それに何れアンタも私の後を継ぐんだ。いい加減身を固めないとね」

 

「だからと言って、そんな急にそんな事言われてもハイ言える訳ないだろう!そうだろう、鶸!!」

 

翠は妹の鶸に助けを求めるが、

 

「や、やっぱりこう言ったことは何と言いますか、お互いの気持ちの高まりがあれば問題ないかと…」

 

「る、鶸!お、お前何言っているんだよ!!

 

「あああ、ごめんなさい!!」

 

急に話を振られた鶸は動揺して、思わず碧の意見に賛成の発言をしてしまう。

 

「おや鶸は賛成か、そうなったら鶸が馬家を継ぐかもしれないな」

 

碧は面白げにこの様子を見る。

 

「ねぇ、お母様」

 

「何だ、蒼?」

 

「これって命令なの?」

 

「いいえ、命令じゃないわよ。嫌がっている娘を無理やり嫁がせるほど私は鬼じゃないわ」

 

「そうなの」

 

蒼は碧の説明を聞いて納得したのか一刀のところに行き

 

「蒼、お兄様の第二夫人希望します~♪」

 

「お兄さんの第二夫人希望する者、もう一人ここにいるぞ~♪」

 

蒼と蒲公英の二人が自ら一刀の嫁に立候補したのであった。

 

「おおお、お前ら何してるんだよ!」

 

「アンタ達ね、もう少し考えなさいよ!」

 

翠や漸く動揺を取り戻した鶸が安易な発言をした蒼や蒲公英に注意するが

 

「え~蒼、真剣だよ。何れ私たちも何処かに嫁いだりするけど、見たことない人を夫にするよりも私が良いと思った人が嫁いだ方がいいもん。それに私、お兄さん見てこれだと思ったの~」

 

「そうだそうだ!私たちだって遊びでお兄さんを選んだ訳じゃないんだ!」

 

馬姉妹たちの遣り取りに一刀は、訳の分からない状態になっているのを傍観するしか無かった。

 

当然、こんな話が纏まる訳が無く、取り敢えず検討する事で話を先送りする事し、お互いに真名を交換してこの場を終え、こうして一刀たちの馬家での初日はこうして終わったのであった。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
30
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択