「追憶ノ風」(デバッカ視点)
気付けば周りに木々があった。
街外れの森で、キコキコという音が鳴っていた。
目の前にはハンドルをしっかりと握っている、子供の手があった。
ぎこちなく左右に揺れるハンドル、一生懸命に回す足……今見ているのは、ある子供のある日の出来事。
「デバッカー、そろそろお昼にしましょ」
それを聞いた子供は、乗っていた三輪車を乗り捨てて、大人の女性のもとへ駆け寄った。
跳びついて抱き付いた子供は上を見上げると、そこには優しく微笑む女性の顔があった。
「おいおい仲間外れにしないでくれよ~」
「あら、あなたはお仕事で忙しいんじゃないかしら~?呼んでも来なかったくせに」
「え、あ……あはは」
男性の声が聞こえる、子供が振り向いた先には、頭を掻いて申し訳なさそうに苦笑いをする男性の姿があった。
……俺はその二人を知っている。
男性は人神計画の中核に立つ研究員、女性は確か……幹部の補佐官だ。
記憶探しの途中でちょくちょく拠点に帰ってきてるし、すれ違い様に見たことがある。
その補佐官が俺の名前を……?まさか、この二人は……この二人が俺の……
「俺の……両親?」
そう呟いたと同時に、俺の意識は現実に引き戻された。
目を覚ますと俺は、砂埃と木々を巻き込んで渦を巻く暴風のドームの中にいた。
「ようやく起きたか……この時を待ち望んでいたぞ、戦士よ」
聞き覚えのある声がした、そいつは目の前にいた、けれどそいつは……人の姿をしていた。
けど発せられる威圧感も、身に纏うオーラも、あの時と同じ感じだった。
完全に竜人の物となっている右腕に持っているのは大き目の斧、両手で振り回す必要のありそうなソレを、そいつは軽々と担いでいた。
「今見た物が全てではないが、全てを思いだす暇はないぞ……思いだしたくば、夢の続きを見たくば、我を倒してからにするが良い」
担いだ戦斧を俺に向けて、そいつは俺にそう言った。
「クラトス……」
俺はソイツの名を呟いて、二本の剣を抜いて構えた。
「さあ、我からもくれてやろう……戦いの記憶と言う名の風をッ!!」
「……っ!?」
……その時、不思議な事が起こった。
ソイツが構え、踏み込み、今にも来ると思っていたその時……既にソイツは【俺の目の前で斧を振り下ろしていた】
ブォゥンッ!!
間一髪、俺は太刀筋に沿うように上体をやや斜めに反らし、重心をずらしてかわした。
直後、斧が通った所から突風が来て、俺の身体が浮いた。
「何っ……!?」
「そこォッ!!」
それを逃すまいとクラトスは斧を返して刃を俺に向けて横に払う……が、俺は当たる寸前に人神化をして後ろに大きく飛び退いてかわした
……かに思えた。
「ぎ……っ」
胴体を人神の装甲ごと斬られていた。斬り口からは血が流れ落ちるが、池が出来る程ではない。
今のは斧に纏わりついた風によって切り裂かれたからこの程度で済んだが……マトモに当たれば即死は確実。
さっき引き寄せられるように俺の身体が浮いたのも、アイツが空間ごと切り裂いたから起きたことだ。
つまりこいつにはパワーとスピード、更にそれに耐えうる金剛石並の強度に匹敵する強靭な肉体を持っていることになる。
その時俺は確信した、『コイツは俺よりも遥かに強くて速く、更に硬い』と。
いつの間にか増えた装甲と羽の事など気付かない程に、俺は目の前の敵に恐怖していた
【デバッカ(人神3段階目)VSクラトス(半竜人型)】
クラトス
人間(危険種狩り兼戦士)→偽神(竜型)→神獣(竜型)→
男
人間だった頃から自分はどこまで強くなれるかとふと思った事をきっかけに強さをただただ求めるようになり、それを見込まれ組織に捕まり偽神化
「毎日毎日同じような事を……施設内は真につまらんな」との理由で脱走(他の偽神たちもそれに便乗して出た)
外に出た事で抑圧された闘争心が解放した結果、調子に乗って強い者と闘いながら各地を転々としていた。
だが戦う事に夢中なあまり一食も取らずに連戦した為、疲労と空腹で極限状態となり人の心が(一時的にだが)あっさりなくなり神獣と化す
転生して疲労と空腹がリセットされたからかその直後、人としての心を取り戻し、強い相手が来るのを待つことにしようと洞窟内に身を潜める事に。
……その時既に女神を凌ぐ力を得ていたのは恐らく、神獣になるまでに戦い抜き、己を鍛えに鍛えた賜物かもしれない。
神獣だった時はすっかり忘れていたらしいが、実は記憶を失う前のデバッカと闘ったことがあるようだ。
森林の主となったその時になってようやく思いだした。
スパルタン達が自分の身体を復活させるその前にデバッカの記憶の残留を風として保管して待っていた
あの日のような血の滾る闘いを繰り広げる為、あくる日の
竜の鱗が混じって付いてる強靭な身体、大きな斧を片手で易々と振り回せる筋力、巨体には似つかわしくない素早さ、戦士として闘って来た中で培われた精神力、戦いの中で【技/業】と共に磨かれてきた精密性
何の代償もなく空間を斬ったり裂いたり出来るのは、それらがあって出来る事なのかもしれない。
適正属性は風であり、暴風で侵入者を吹っ飛ばす壁を作り、勝負の邪魔をさせなくする
しかしその本質は、風を肌で感じて読み取る事で、相手の動きを見切ったり感知したりする為のものである。
偽神も人の知恵の賜物である事から、彼の努力や鍛錬等が合わさった事で、ある意味人類の進歩の境地を体現するまでに至ったのかもしれない
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