【東二局】

北家：小鳥　２９０００

東家：美希　３００００

南家：春香　３００００

西家：律子　３００００ 　　　　　供託：１０００

　律子『小鳥さんの動向が読めないわね』

　律子『私なら、じっくり手を作って2回のあがりで逆転されないような点差まで引き離そうとするんだけど……』

　律子『もしかして、最初の親ではあがる気がなかった？』

　律子『あり得るわね。２回しかあがれないのだから、”残りの局数が多い序盤では消費しない”という戦略は、ある』

　律子『序盤についた点差なら、私は狙いを定めて打つことが出来る。でも、終盤ならチャンスは僅か。戦略も限定される』

　律子『だから、東一局の親では”２枚あるカードをあえて切らない”という選択をした？うん、これで理屈は通る』

　律子『でも……何かを見落としているような気がする。というか、的を外しているような』

　律子『正直、よくわからないわね。まあ今は意図を深く考えるよりも、この東二局を全力で打つことに集中しましょう』

――７巡目――

美希「……っ！うん……これかなっ。リャンマンさんバイバーイ！」

春香「私の番。えいっ！……あ。うーん……これ引いてきちゃったかあ。ちょっ、ちょっと待ってくださいね」

小鳥「いいわよー。よーく考えて、納得のいくものを切ってね」

春香「ありがとうございます。えっーと、うーん」

律子「気にしないでいいわ。でも、二人とも。麻雀はそれなりの速度で打つものだから、それなりには頑張ってね」

春香「うう、頑張ります。プロデューサーさんにも『むやみに止まっちゃいけないぞ』って言われてるのにー」

小鳥「いいのいいの。初心者のうちはみんなそんなものよ」

春香「えーい！じゃあもうリーチしますっ！！」

美希「あ～いいのかな～？ハニーも言ってたよ。『春香はもう少し”何を優先するのか”を考えてみような』って」

春香「だ、だって、じっくり考える前にこうして打つ機会が来ちゃったんだもん。もう混乱しっぱなしなんだよ～」

小鳥「わかるなあ。大事にしたいことがぶつかっちゃったんでしょう？」

春香「そうなんです！あっちも大事、こっちも大事。じゃあ何が本当に大事なの？って考えていると頭がぐるぐるしちゃって」

小鳥「そういう時はね、もっと先を考えるのよ」

春香「先？先ってどういうことですか？」

小鳥「この局をあがることだけじゃなくて……そうね。とりあえずオーラスを終えた時点でトップになりたいわよね？」

春香「もちろんです！そのためにやってますから」

小鳥「うふふ。本当はもうちょっと考えて欲しいんだけど。まあ今は置いといて」

春香「はあ」

小鳥「どうせだから、美希ちゃんにも聞こうかな。オーラス開始時点で、2着に何点差のトップになりたい？」

美希「ミキはトップを取るんだからカンケーなくない？もしトップじゃなかったら、どこからでもトップを目指すだけだよ」

春香「そうですねえ。2００００点くらいあると安心できそうです」

小鳥「なるほど。じゃあまずは美希ちゃん。美希ちゃんは、親の時に頑張る打ち方がいいと思うわ」

美希「そうなの？ミキ、いま親なんだけど、いま頑張った方がいいってこと？」

小鳥「そう。単純に考えても親は攻撃力が１.５倍、連荘すれば続けて１．５倍のチャンスなの。トップを取るためにはココよ」

美希「あ……」

小鳥「美希ちゃんの目指す打ち方は、攻撃力が必須なの。なら、親の機会できっちり仕事することが求められるわ」

美希「うん……そうだね。小鳥の言っていること、たぶん、全部はわかってないけど……でも、なんかわかった！」

小鳥「あら、食いつきがいいいわね。説明が合っていたのかしら？」

美希「じゃあ、コレやる気ないカンジの手なんだけど、ちょっとだけ頑張ってみるね」

小鳥「イマイチな時は、親の権利を維持するだけでもいいのよ。そうすれば、次がある。親を続ける限り、可能性は続いていく」

美希「あっ！連荘し続ければ、ずっとあがれちゃうから」

小鳥「そのうち、美希ちゃん好みの手も来るんじゃない？」

美希「親ってすごいの！！」

小鳥「そうよー。だから、美希ちゃんは誰よりも親を大事にするといいわ」

美希「はーい！」

小鳥「で、次は春香ちゃん。もう一つ質問していい？」

春香「はい」

小鳥「さっきとは逆に、トップに何点差までなら逆転を狙えそう？」

春香「……ハネ満、いえ。できれば満貫で逆転できるくらいの点差がいいです」

小鳥「意外と冷静な答えね。なら、不利な局面では抑える打ち方が合いそう。無理なリーチは事故が増えることも認識しておくべきよ」

春香「えっ？！あうう、リーチをした後にそんなことを言われてもー」

美希「もうすぐミキの親リーチだから、春香はちょーっと待っててね」

春香「や、やめてよー。リーチするんじゃなかったかなあ」

小鳥「うふふ。春香ちゃんには、守って粘って努力し続けて、最後まで決して諦めない打ち方をお勧めしておくわね」

　律子『ふーん……親が流れても麻雀の講義とは、小鳥さんも余裕を見せてくれるじゃない』

　律子『それにしても、７巡目で春香のリーチか。二局連続で早いリーチとか勘弁して欲しいわね』

　律子『さて。私もこの手だし、どうしたものか』

――７巡目・律子の手牌――

四四七八九２３４５（３４４５）　　ツモ六　　ドラ四

――春香の捨て牌――

北南１三２（９）

（１）【リーチ】

　律子『ちょっと手を広げすぎたかしら？でもいい手はどこまでも広げるべきよね』

　律子『一発を回避する手段が２ソウ切りしかないけれど、２ソウは手広く受けるなら必須の牌』

　律子『そもそも、ドラドラのこの手で降りを考える必要がある？』

　律子『有り得ないわね。降りる意義無し。悩み切ったリーチなんだから手役も無いはず』

　律子『敵の安いリーチは低リスク。ならばハイリターンを狙って、ここはタンヤオに不要な九切りで勝負！』

春香「あ、それ！ロンですっ！」

――春香の手牌――

六七八九九４５６（３３５６７）

春香「リーチ・一発……裏が一つなので、５２００点です、ですよね？」

小鳥「ええ、合ってるわよ」

美希「なんかショボいの」

小鳥「人のあがり批判はダメよ。ドラブルの元になるわ。美希ちゃん。これに関しては、本気で守って」

美希「わ、わかったの」

　律子『くっ。よりによってこんなのに一発で当たる？いくらでも手変わりしそうなのに、結果として即リー大正解とは』

　律子『でもまあ、この一手も無いわけじゃ無い。一手で４５６か５６７の三色が狙える形なら、役無しダマだけど』

　律子『手変わりしても安いなら、先手愚形リーチも悪くない。端や字牌にかかったシャボなら、少しはあがりやすいもの』

　律子『うん、やられたわ。これで私がラス目。小鳥さんにとって都合のいい状況になっちゃったわね……』

【東三局】

西家：小鳥　２９０００

北家：美希　３００００

東家：春香　３６２００

南家：律子　２４８００ 　　　　　

美希「親が流れちゃったの。イーシャンテンだったのにー」

律子「それはそれは。振っちゃってゴメンなさいね」

美希「もー嫌味じゃないよっ。ミキはただ、悔しいだけなの」

律子「えっ？あ……ご、ごめん」

美希「一番痛いのは律子なんだから、謝らないでほしいな。ミキにだって、それくらいはわかるよ」

律子「そう……うん。ごめんなさい。親が流れたのはお前のせいだって言われたような気がして」

美希「違うよ。ただ、ミキはまだまだだなあって思っただけ。上手い人ならなんとか出来たのかなーって」

小鳥「どういう手だったの？」

美希「えっ？うーんと、ドラがあって、頭がリャンマン？……んー」

小鳥「美希ちゃん、さっき『リャンマンさんバイバーイ！』って言いながら切ってたじゃない」

美希「えっホント？」

春香「これは覚えてないっぽいね」

小鳥「まあ、慣れたら覚えるようになるわ。洗牌の時に、前の局を振り返って話すのも面白いものよ」

春香「小鳥さんは覚えているんですか？」

小鳥「手牌と捨て牌だけじゃなくて、配牌とツモの順番も覚えているわよ。流石に今は、みんなの捨て牌までは覚えていないけれど」

春香「はあ～すっごいですね！」

美希「でもそれって意味あるの？」

小鳥「うーん。意味があるというか、そうでなきゃいけないというか。”それくらいわかってなきゃいけない”というか」

美希「じゃあ覚えていけば強くなれる？」

小鳥「あら、ずいぶん積極的ね。ちなみに答えは、そうね。逆ね」

美希「逆？」

小鳥「強くなっていく過程で、勝手に覚えちゃうようになるわ。そうでない人もいるけれど、大体の人はそうなるはずよ」

春香「プロデューサーさんもそうなんですか？」

小鳥「プロデューサーさんがどのくらい強いのかはよくわからないけれど、きっと今の私よりもたくさん覚えているでしょうね」

美希「ん～……そのへんって、どうにかなったりしないかな？」

小鳥「どうにか、って？」

美希「練習とか、訓練とか。そういうので鍛えられたらいいなーって」

小鳥「あら、やる気ね。そうねーいくつか思いつくわよ」

美希「ホントに！じゃあミキやるから後で教えてね」

春香「あっずるい。私もやります！やりますから、後でよろしくお願いしますね」

小鳥「うふふ。わかったわ。二人が熱心で、嬉しくなっちゃうわね」

　律子『なんの意味があるってのよ。私だってさっきの手牌くらいなら覚えているけれど、どう変化したかなんて忘れちゃったわよ』

　律子『でも、美希の感覚には何かがひっかかったみたいね。あの子、大事なことに関する嗅覚がすごいから』

　律子『もしかすると、上手くなる近道なのかもしれない。だけど……』

　律子『ふふっ、つまらない意地ね。ここで”私もお願いします”なんて言えやしない』

　律子『正直なところ、私の実力では小鳥さんに及ばないことくらいわかってる』

　律子『だけど、私の麻雀が間違っているとも思えない。だからもう、ぶつかってみるしかないってだけ』

　律子『勝ちたいなあ。このルールで負けたら、流石に何も言えなっちゃうもの』

　律子『勝ちたいなあ。勝って、私の麻雀の正しさを、少しでも認めてもらいたら……』

――９巡目・律子の手牌――

二三四五六６７８（２２２４５）　　ドラ七

律子『はぁ。どこを引いてもいいテンパイになるこの手が三巡も動かない。まるで気合だけが空回りをしているみたい』

春香「んー……ええーい！こんなものがあるから難しくなるんだあっ」

小鳥「ずいぶん悩んでドラを切ったわね」

美希「ミキ、『３～７のドラ切りは手がまとまってきた証拠かもしれない』って教わったよ」

小鳥「大丈夫よ美希ちゃん。みんなそう思ってるわ」

春香「や、やめてくださいよー。うう、だから切りたくなかったのに」

美希「えっと、律子の番だよ？」

律子「うん…………それ、チーするわ」

――９巡目・律子の手牌――

二三四６７８（２２２４５）　　鳴き：七‐五六　　　ドラ七

打（２）

春香「うわっ、ドラをチーされちゃった」

小鳥「ドラを切る時には、鳴かれる覚悟も必要よ。一ハンつくから鳴かれやすいの」

美希「ポンなら満貫になっちゃうもんね」

小鳥「ドラポンなら、かなり無理めなところからしかける人もいるわ。半ばブラフなんだけど、やられると厳しいわよね」

春香「うう、怖いなあ。これとか、あたっちゃいます？」

律子「いい読みね。ロンよ。でも２０００点だから」

春香「安くてよかったあ～」

律子「そうね。まあ私も少しだけ取り返せてよかったわ」

　律子『この鳴きは……どうなの？どう考えても面前で仕上がるはずだった手を、２０００点にしちゃってよかったの？』

　律子『親の危険サインに対処したと言えば聞こえはいいけれど、手牌だけを考えたら有り得ない鳴き』

　律子『トップ目で親の春香にあがられたら、トップを狙うのが厳しくなるのは確か。でも本当にこれで良かったの？』

　律子『私は、私の麻雀は、この鳴きを良しとするの？』

小鳥「……」

【東四局】

南家：小鳥　２９０００

西家：美希　３００００

北家：春香　３４２００

東家：律子　２６８００ 　　

　律子『……まあ、いいわ。あがって迎えた親には変わりない。ここで連荘できれば、勝てる確率は跳ね上がる』

　律子『勝負どころね。ラス目だし、少なくとも一度はあがっておかないと……」

――二巡目――

小鳥「ポン」

春香「あーまた鳴かれちゃったよー」

美希「西をポン？小鳥の役牌ってなんだっけ？」

小鳥「南よ。他には東場の東と三元牌は役牌ね」

美希「小鳥の役牌だよ？東とか三元牌とかいらないの」

小鳥「あ、そういう意味だったのね。なら、私の風牌って聞いてくれれば、南って答えられるわよ」

春香「風牌？えっと、東南西北をそう言うんでしたっけ」

小鳥「ええ。中でも、東場南場に関しては場風。東家とか北家みたいな自分だけの風を自風って言うの」

春香「だから小鳥さんの風を聞けばいいってわけですね」

小鳥「そう。役牌を聞かれちゃうと、全部答えるしかないと思うの。正確に答えようと思えばこそ、なのよ」

美希「むー。面倒くさいの」

小鳥「そうでもないわよ。美希ちゃんは親が大事、って言ったでしょ？それって他の人の親も気にしなきゃいけないってことだから」

美希「そうなの？」

小鳥「ええ。これは長くなるから説明はできないけれど、常に親を気にすることね。親がわかれば、みんなの風もわかるでしょ？」

美希「わかるけど……ねえ、小鳥。なんで今は教えてくれないの？」

小鳥「長くなっちゃうから。対局中に込み入ったお勉強をすると、ゲームに集中できないでしょう？面白くなくなっちゃうわよ」

美希「でも、でも……もー！なんか小鳥の話は気になることばっかりなの。絶対、後で教えてよ！」

小鳥「いいわよ。教えるのは好きだから。でもなんだか、教えなきゃいけない子がどんどん増えちゃうわねえ」

春香「あれ？他の子にも教える約束をしているんですか？」

小鳥「あっ……ええ。まあ、ちょっとね。今は言えないけれど、そのうち一緒に打てるようになるわ」

春香「はあ。まあ、打てる人が増えたら嬉しいですよ」

小鳥「でしょ？うふふ。期待していてちょうだい。いいライバルをご用意するわよ」

春香「うわあ。なんだかすっごく悪い顔してますよ、小鳥さん」

美希「どうせ、ロクでもないこと考えてるの」

小鳥「私の好きな漫画のキャラならこう言うわね。いい顔しながら、『みんなで幸せになろうよ』って」

――五巡目――

　律子『小鳥さんがオタ風の西を鳴いた。捨て牌は、かなり強めのホンイツ傾向』

――小鳥の捨て牌――

五七（４）北

　律子『北を手牌に置いていられない状態。つまり、ソウズや字牌がそれなりにまとまってきたということ』

　律子『ソウズが切り難くなっちゃったわね。１・２ソウのペンチャンを落としたかったんだけど……』

――律子の手牌――

三五七八１２５６（３４７８８）　　　ツモ４　　　ドラ７

　律子『ドラ色でホンイツをやられると、すぐに高くなるのよね。行きたいんだけど、むやみに鳴かせてしまうのは良くない』

　律子『それに、もう当たられるかもしれない。小鳥さんのあがり回数は2回。親で大きくあがってくると思っていたのだけれど……』

　律子『よく考えたら、子でも直撃すればいいのよね。８０００点でも直撃されたら１６０００点の差が出てしまう』

　律子『単に親の満貫をあがるよりもいい。ダマや鳴きでこっちを狙ってくる可能性を考えていなかった。危ないところだったわ』

　律子『こうなったら仕方ないわね。ソウズはなるべく押さえよう。３引きに期待しつつ、シャンテン数を落とさない三・五マン落としで』

小鳥「チー」

律子「えっ？」

春香「今度は三マンをチーかあ。小鳥さんって、思ったよりもよく鳴くんですね」

小鳥「そりゃあ鳴くわよ。小鳥が鳴かなくてどうするのよ」

美希「うわっ。上手いこと言ってやったーって顔してるの」

春香「音無の方はいいんですか？」

小鳥「うっ……何気ない会話でも容赦なく突っ込んでくるわね。春香ちゃん、恐るべし」

　律子『恐るべし、って。そりゃあなたのことでしょうが……』

　律子『いったいあなたは何をやっているんですか？初手で五を切っているのに、四・五の両面が手の内に残っているなんて』

　律子『それよりも、ソウズじゃないなら何なのよ？もう役牌か三四五の三色くらいしか考えられない』

　律子『でも、それじゃあ安い。ドラアンコの役牌？だとしたらなんでも有りじゃない！どうやってかわせばいいのよ……』

　律子『次に切る五マンは安牌だけど、その後は……ダメね。安全なプランは無いわ』

　律子『いつもいつも、状況が厳しすぎるのよ。なんで毎度のように追い込まれているの？確率的には有り得ないはずなのに』

春香「うーん。小鳥さん、そろそろテンパってるのかなあ」

美希「二つも鳴いたんだからテンパってるよ、きっと」

小鳥「だめよ、美希ちゃん。対局中の読みは自分だけのもの。他の人に教えたら、その人が迷っちゃうわ」

美希「それってダメなの？」

小鳥「ダメよー。それを許すとね、美希ちゃんの打牌一つ一つに対して、私の読みを言うこともできちゃうわ。それでもいいの？」

美希「べつにいいの。ミキ、そんなので惑わされたりしないよ？」

小鳥「ふーん。なら、美希ちゃんはイーシャンテンで、私の鳴きを見て『鳴いてみようかなー』って思ってることとか言っちゃうわよ？」

美希「えっ！なんで？なんで……えええっ？！」

春香「うわ、すっごい動揺してる」

美希「だって、だって……思ってることまで当てちゃうとか、そんなのって無いのっ！！」

小鳥「有るのよ。しかも、鳴きたい牌の候補はきっと……んーちょっと絞りにくいけれど、第一候補は東ね」

美希「わっ！わかったの。もう言わない。もう言わないから……」

小鳥「うふふ。聞き分けのいい美希ちゃんも可愛いわね。いいわよーわかってくれたならいくらでも許しちゃうわよー」

美希「じゃあ、もういっこだけ教えて……手がほとんどバレちゃった時って、どうしたらいいの？」

小鳥「あら、ちょっとやりすぎちゃったかしら。ごめんなさいね。でも、この局はもう終わるから、次で頑張りましょう」

美希「終わる？」

春香「えーい！いくら考えてもわかんないなら、自分に素直に！いらない牌を切るっ！！」

小鳥「ロン」

春香「ぐわー」

小鳥「２６００点ね」

律子「えっ？」

――小鳥の手牌――

７８（７７）発発発　　鳴き：三-四五　西西西　　ロン９

春香「二連続振込みーっ！安いけど、安いけど……辛いよー」

美希「トップが削れて、えっと。どっちが上になったのかな？」

小鳥「ちょっと待ってね。確か、こうなってこうなって……うん。３１６００点で同点だと思うわ」

春香「ほんとだ。私の点数３１６００点ですよ」

小鳥「あ、数えてくれたのね。うん、私も３１６００点で合ってるわ。いい感じに競ってるわね」

美希「でも……でも、そのうちミキがぶっちぎるから。楽しみにしててね」

小鳥「ええ。待ってるわよ」

　律子『……は？』

　律子『小鳥さんが、２６００点を……あがった？』

　律子『半荘に２回しか許されていないあがりを……なんで？』

　律子『一応トップに立ったらしいけど、私が満貫をあがればみんな抜いちゃうのよ？』

　律子『なんで？大事にしなきゃいけないあがり回数を、なんで２６００点で使っちゃうの？』

　律子『えっ？なんなのこれ。何がしたかったの？この２６００点に意味があるの？』

　律子『何？なにが起こってるの？小鳥さんはこれでいいの？吹けば飛ぶような暫定トップが欲しかったの？』

　律子『わからない。わかるわけない。こんなの、知らない。私の麻雀にこんな手は無い』

　律子『有るわけ無い。だって、だって小鳥さんはあと１回しかあがれないのよ？』

　律子『こんなやり方でどうやって勝つっていうのよ！小鳥さんっ！！』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　H27.5.8　細々とした表現や表記ブレを修正

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　H27.6.18　再読して、気になった点に手入れ

H29.8.4　和了形と状況を修正