【 三羽烏さま ご来店 の件 】
〖 司隷 洛陽内 にて 〗
………カラカラァ……カラカラァ……
??「し、失礼するッ!」
??「お邪魔します~なの?」
??「おじゃましまっせぇ!!」
鳳翔「はい、いらっしゃいませぇ~! 三名さまで宜しいです?」
凪「あ、あの……ここが隊長……い、いや、北郷さまから伺った『居酒屋 鳳翔』で……」
鳳翔「はい、そうですが。 あぁ……貴女が今度入られた、新しい子なんですね? 此方で……お店を任されています女将『鳳翔』と。 どうか、よろしくお願いします……」
凪「こ、此方こそ! 姓が楽、名が進、字が文謙と申す!」
沙和「もう~凪ちゃん! 表の看板に『居酒屋 鳳翔』って書いてあったの! お店の名前も確認せずに入るなんて──失礼なの!」
凪「うぅ………すまない」
真桜「まぁまぁ……凪やって洛陽来んの初めてやし、緊張すんの当然やからな? 折角……ウチらの御別れ会をしてくれるちゅうんや、責めるのも酷やろぉ~?」
凪「……真桜!」
真桜「せやからな? ここは凪に、ウ~ンと高いモン注文させて、奢らせて貰おうやないかぁ!?」
沙和「それぇ──大賛成なのぉ!!」
凪「オッ、オイッ!! 幾らなんでも……」
真桜「ウチらの友情より……男を取った凪に、これくらいしてもバチあたらぁせぇへん! 三人で……華琳さまの下で働けると思うていたのにぃ~!」
沙和「そうだぁ! そうだぁ!!」
凪「うぅぅぅぅ…………」
鳳翔「大丈夫ですよ、提督より話は伺ってますから。 奥の部屋で準備が出来ていますから……どうぞ。 今回は特別な催しだそうですから、腕によりをかけて作りましたので。 それから、御代は結構ですからね」ニコッ
凪「そ、そんな……代金は、必ずお支払いしますから……」
鳳翔「提督が……『自分のような者の為に、仲間と別れて付いて来てくれるとは申し訳ない。 盛大な宴で、三人を送り出させてくれないか?』と相談されましてね。 勿論、この事は……ナイショで……」
凪「たぁ……隊長ぅぅぅ!」
真桜「えぇとこ……入ったな……凪。 こんな人、他に捜しても居らへんよ? ウチらの華琳さま以外やけどな?」
沙和「…………沙和ぁ、大感激なのぉおおおッ!!」ウルウル!
鳳翔「……だめですよ? 三人の出立ちの時に涙なんて不吉です。 三人とも未来で笑顔で再会できるように、賑やかに楽しんで下さいね? 当店も、腕を振るって料理を並べさせて……貰いますから!」
凪「あ、ありがとうございます! 本当に……ありがとうございます!!」
鳳翔「ふふふっ……三名さま、お願いしまぁーす!!」
吹雪「りょ、了解しました! 今、御案内致しますッ!!」
◆◇◆
【 悪来さま 弟子入り の件 】
〖 司隷 洛陽内 にて 〗
??「し、失礼します! 曹孟徳配下の典韋 と申しますが、鳳翔さまの店舗は、此方で宜しいのでしょうか!?」
??「お邪魔しまぁーす!! うぅ~ん、いい匂いぃいいいッ! 流琉、早く注文しようよぉ~!! お腹が減り過ぎて……背中と貼り付いちゃうよぉおおおおお~~~!!」
流琉「ちょ、ちょっと季衣! 私たちは食べる事だけが、目的じゃないの! 華琳さまの御命令で、此方の方に料理を教えて頂く為に来たんじゃない! それに、季衣が邪魔しない約束でぇ………!!」
季衣「だ、だって……前々から入りたいと思ってたけど『完全予約制』『一見様お断り』『予約待ち一年』って噂を聞いて、入ろうにも入れないじゃないか! 今回、流琉の料理勉強って事で、入店できると聞いたからぁ!!!」
鳳翔「あらあら……曹孟徳さまより、お話は伺っていますよ? 私が女将『鳳翔』と申します。 以後お見知りおきを………」
流琉「は、はいっ! よ、よろしくお願いしますッ!! お、お噂は兼ね兼ね承っておりました! この洛陽でも、三本の指に入るほどの料理上手の方だと! 主、曹孟徳も……しっかり教えて貰いなさい……と/////」
鳳翔「まぁまぁ……私のような腕前の者を、そのように褒めて下さるなんて。とても……光栄ですわ。 あらっ? お連れの方が……何やら……お顔の色が悪いような……」
季衣「………お、お腹……すいたぁ………」
流琉「えっ!? ちょ、ちょっと──季衣ッ!? どうしたの!?」
季衣「こ、今回……此処で昼御飯……食べようと思って……朝御飯……少なめにしたんだぁ……………」
鳳翔「まぁ──大変ッ! それなら、直ぐに食事の支度を整えますね! お連れの方を奥の座敷に! すぐにお通しをお持ちしますから、それで場を繋いで待って下さいね! えーと典韋さま……」
流琉「───流琉、流琉って呼んで下さいッ! 友達の為にご迷惑お掛けして、先生になる方に『様付け』で呼ばれるなんて嫌です! 私の真名ですので、どうか預かって下さい!!」
鳳翔「────分かりました、それでは、流琉さんには、料理を手伝って頂きませんか? 私一人では、間に合わないかも知れませんので……」
流琉「い、良いんですかぁ!? 鳳翔さまの厨房には、認められし調理人しか入れないって────」
鳳翔「当然、衛生管理、道具の手入れ、食材の目利き、保存方法が分からない者を入れる事、お店を任せられている者としては、許すワケには参りません!」
流琉「わ、わかりますッ! 私も季衣に手を洗ってくるように何度も注意するんですが、言うこと聞いてくれなくて───ッ!! あっ、すいません!!」
鳳翔「ふふふっ……思った通り。 貴女の料理上手は、曹孟徳さまより、聞き及んでいましたからね。 その衛生観念は、大変立派ですよ!!」
流琉「──────!?」
鳳翔「───だから、貴女の腕前を見定めた上、私の持つ料理の技術──全て!! 流琉さんに教えて差し上げますわ!」
流琉「───ほ、鳳翔さまぁ………」
鳳翔「……私を先生と……呼んでくれた、生徒さんに対する最大の敬意です。 嫌なら嫌で……結構ですけ『い、嫌なんかありません!! 是非、お願いします! 鳳翔先生ッッ!!』───わ、私の教えは……厳しいですよ?」
流琉「はいッ! 覚悟の上ですッッ!!」
季衣「………ふ、ふふ、二人で盛り上がっている……とこ、悪いけど……ボク……限界……ぃ……」バタッ!
鳳翔「あぁ───ごめんなさいぃ! お二人様、奥座敷に御案内! お通しも数十個お持ちしてぇえええッ!!」
??「それじゃあ……あたしが案内するよ。 大井っちは、通しをお願いね? こんな任務、北上さまに掛かれば……ちょちょいのちょいさ~!」
吹雪「───お通し、用意できましたぁ!!」
??「こ、こんな数、北上さんに運ばせられるワケないじゃない! 私が全部運ぶわよ! ほ、ほらぁ! 全部お盆に置いてぇ! これぐらいなら持って行けるから! それより、は、早く行かないとぉ、北上さんがぁ~!!」
◆◇◆
【 不測の事態 の件 】
〖 司隷 洛陽内 にて 〗
《居酒屋 鳳翔》の入り口に、四名の客の姿が映る。
月「あ、あのぉ~~御免下さぁ~い!」
詠「月ぇ、もう少し大きい声で言わなきゃ、奥まで聞こえないわよ? 誰かぁああッ! 誰かぁあ居ないのぉおおおッ!!?」
恋「…………美味しいそう……グゥ~~」
ねね「れ、恋殿がお腹を空かしているのですぅ!! 店主、店主ぅううう!」
────シィ~ン!
何時も、客で満員になっている店内では、何故か……誰も居ない。
整理整頓された椅子の並び。
綺麗に清掃されたカウンターや卓の上。
店内に飾られた、色鮮やかな花の瑞々しさ。
どこを取っても、流石と賞賛せずにいられないほどの、完璧な内装なのだが……何故か、肝心要の店主の姿が見えない。
詠「おかしいわね? 『本日、おいで下さい』と招待されたのに……。 ねぇ~! 誰か居ないのよぉおおおッ!!」
月より聞いた話に寄ると、北郷一刀より申し出があったと云う。
『十常侍を捕縛してくれた御礼』と云う名分らしいが、天水から駆けつけてくれて、一刀の仕事を手伝ってくれる御礼も、含んでいるらしい。
ーーガタッ!
??「………おいおい。 前の看板が出ていなかった事、気付かなかったか? 午前中は『臨時休業中』だと、出ていた筈だが……」
店の奥より──人が現れる。 しかし、女将である鳳翔では無い!
圧倒的な殺気を放つ───武人が、そこに立っていた!!
ーーー
恋「────! 皆、下がるッ!!」ズィ!
ねね「───恋殿ぉおおおッ!?」
月「───詠ちゃん! 下がってぇ!!」グィ──!!
詠「ぐぇ────ッ!?」ドタッ!
ーーー
四人の警戒する様子に……さぞ面白いのかニヤニヤと笑い、左右に付けた巨大な艤装を見せ付けながら……近付く!!
──ズシィン!
───ズシィン!!
??「私は……ここの留守番を預かる『大和型 2番艦 戦艦 武蔵』と云う! この店に、何の用で───来店されたのだ!?」
恋「────理由! ご飯、食べる為!!」
武蔵「ふふっ……確かに。 だがな、今回……この店は貸切なのだ。 表の看板を見て居なかったのかい?」
ねね「そ、そんな物、どこにも無かったのですよぉ!!」
武蔵「何ぃ~ッ!?」ギロッ!
ねね「れ、恋殿ぉ──お助けて下さぁいいいいッ!!」サササッ!
武人──艦娘の一人『武蔵』の眼鏡が光り、その様子に戦慄して、素早く恋の背中側に隠れるねね。
武蔵「この店も、洛陽内でかなり有名になってな。 偶に難癖を言ってくる者が多いのだ。 本来なら叩きのめして外に出すが、今回は重要な客人が招待されている。 だから、荒事は此方としても避けたいのだ!」
詠「───だ、だから私たちはぁあ!!」
同じ眼鏡キャラなのに……エラい違いの詠が叫ぶが………二の次が言えない! 武蔵の眼光が、武人としての圧力が、詠の言葉を封じる!
別に──小さい娘が多くて……何時もより萌えている……とかでは無い!
……多分。
武蔵「まだ、何かほざく気か! やむを得ん、ひとまず捕らえて……鳳翔に相談しよう! 暴れるなよ……暴れると、私も手加減が難しい!」ワキワキワキ
詠「キャア────ッ!!」
詠を捕まえようと、手を伸ばす武蔵の前に───恋が立ち塞ぐ!!
恋「─────ダメッ!」バッ!
詠「れ、恋ッ!!」
武蔵「…ふっ! 仲間を見捨てず、楯になるか! なかなか気骨溢れる武人だな! 気に入ったぞ!! なら──貴様からだぁ!!!」
恋「───────負けないッ!!」
二人が、一触即発になる……間合いに入ろうとする刹那、新たに飛び込む少女が!?
月「────ま、待って下さいッ!! 私、私たちは、ご主人さま……『北郷一刀』さまより招待された者ですッ!!! こ、これが、渡された『ぱーてぃー券』ですから、どうかぁ確認して下さいーッ!!!」
武蔵「────ムッ!?」
………ガラガラァ……
引き戸が開く音が聞こえ、皆の視線が集まる!
そこには、買い物籃を持った店主『鳳翔』の姿が───!!
鳳翔「ただいま、戻りましたぁ~! 武蔵さん、表の看板が外れていましたけど、誰か来られましたか? えっ!? ──な、何があったんですぅ!?」
鳳翔は、今回来店する重要な客人の為に、調理をしていたのだが……調味料の一つが切れてしまった。 その為、今回の給仕役の武蔵に留守番を頼み、看板を立てて……買い物に行っていたのだ。
武蔵「うむ……侵入者が入ってな、事情を聞こうと尋問していたのだ。 しかし、納得する応えを持たないゆえ、捕縛をと。 ───そうだ、鳳翔よ! この券に見覚えがあるか? この娘が提督より預かったそうだが……」
鳳翔「これはぁ! ま、まさか……董仲穎さま?」
月「は、はいっ!!」
鳳翔「武蔵さん! この方ですよ!! 本日の重要なお客様はッ!!!」
武蔵「何だと───ォッ!」
今回のお客様は、天水太守──董仲穎さまである。
ーーー
ーーー
ーー★
武蔵「────知らぬ事はいえ、誠に申し訳ない!!」
鳳翔「普段は、このような事しないように、気を付けているのですが……本当に申し訳ありません!」
詠「まったく───この店員は、どういう教育されているのよ!」
ねね「困ったものです! ねね達を泥棒呼ばわりするなど……不届きですぞぉおおおッ!!?」
月「………ねねちゃん、詠ちゃん、私……怒ってないから」
恋「………お腹減ったぁ………」
鳳翔「お詫びの印に、これを…………」ソォッ
詠「何コレッ!? もしかして──賄賂ぉ!? そんな物、誰が受け取るワケ───ッ!!」
鳳翔「当店自慢の『間宮アイス』です! お口に合えば宜しいのですが……」
ーーー ーーー
鳳翔が差し出した物は『カップのアイス──間宮アイス』である。
鳳翔の店で、品書き最上位の位置するが、食べれた者は数人だけ。
民間で食せる場所は、此処だけと云う……地域、個数限定の貴重品である。
『かの覇王さまが……一口食べて虜になり、作り方を教えてくれるように頼んだが、材料が揃わないため、血の涙を流して断念した!』と……嘘か本当か不明の噂が流れるほどに。
ちなみに、アイスはこの時代にも出来る。
電気が通らなくても……だ。
別に冬山の氷を取るとか、氷室を用意するとかでは無く、『硝石』を利用すれば、真夏でも作れる。
ただ、材料を用意するのに金と時間が掛かる……それだけ。
ーーー ーーー
『………………………』
四人とも……それが『あの間宮アイス』と分かると……震える手で受け取り、奥座敷で黙って食べている。
ーーー
鳳翔「女の子は、甘い物を食べると……何故か無口になるのよね! さて、今のうちに、調理をお持ちしなきゃ! 武蔵さんも、お願いしますね!?」
武蔵「あぁ……承知した」
ーーー
こうして──《居酒屋 鳳翔》は、お客様に満足されながら、今日も営業を続けているのである。
ーーー ーーー ーーー
《 余談 》
後に判明するが……看板は店の評判を落とす為の策略だったらしい。
看板が掛かっていなければ、店が営業している事になる。
そして入って、店員とトラブルになればと……犯行に及んだ犯人の弁。
───どうして分かったのか?
鳳翔「私の諜報網を使うまでも無いですよ。『井戸端ネットワーク』を利用すれば、このくらい……すぐに分かりますから」
『ーーーーーーーー!?!?』
鳳翔は、犯人をにこやかに眺めつつ……そう答えた。
★ーー★ーー★
井戸端ネットワーク───
朝になると井戸端に集まり、挨拶を皮切りに始まる世間話である。 姑から嫁に口伝で手解きされ……慣れるのに数年掛かるシロモノだが、結構役に立つ情報は多い。
しかし──余人に話の内容は、日常生活の話題にしか聞こえないが、その中に高度なアルゴリズムが隠してある。 それを瞬時に解読、更に自分の情報を変換して、話し手に伝えるという情報伝達技術。
内容も『隣家の晩御飯の御菜』から『この世界の黒幕の正体』等も含むらしく、全部を解読すると……アカシックレコードに繋がるとも。
★ーー★ーー★
鳳翔が誰から、これを教わったのか?
それには、鳳翔も笑って答えず────永遠の謎である。
そして……犯人のその後も……また不明……であった。
◆◇◆
【 覇王さまとの賭け の件 】
〖 司隷 洛陽内 にて 〗
ガヤガヤ──ガヤガヤ──
今日も満員御礼の《居酒屋 鳳翔》……多数のお客様で賑わっている。
ーーー
客1「おぉ~い! お摘みぃ追加!」
流琉「はぁーい、女将さん! 『にんにく炒めの枝豆』追加です!」
ーーー
客2「…………この店は、いつ来ても賑やかだ……」
鳳翔「皆さんのお陰です。 勿論……お客様にも……」
客2「フッ…… ゴソゴソ( ▼_-)у-」
鳳翔「この店は禁煙ですよ? おタバコは……あっ!?」
客2「……やはり、この時代の人間では、無いようだな?」
鳳翔「────!?」
客2「心配するな。 馴染みの店が無くなるのは、俺も困る。 ただ、疑問を解消したかっただけだ……」
鳳翔「貴方は……」
客2「昔は『英雄』……今は『負け犬』さ。 この店の味が懐かしくて、寄らせて貰っているタダの常連客だ!」
鳳翔「………もし、宜しければ……仕事をお任せしたいのですが?」
客2「俺も……新たな道を探している途中だ……。 伝えなければならないんだ、俺たちの……愚かで、切ない歴史を。 それを実行する為に……雇われよう。 まぁ、美人の女将からの……願いでもあるしな……」
鳳翔「では……後ほど、仕事の内容を………」
★☆☆
流琉「一区切りつきましね──ッ! 閉業中の看板も、今度は間違いなく出したし、お客様も、おいでにならないと思います!!」
吹雪「いつも、いつもぉ賑やかくてぇ大変ですが……お客様も優しくて、親切な人ばかりで──楽しいです! 一休みしたら、まだまだ頑張ります!!」
ーーー
北上「ふぅ~! 休みは大井っちと一緒に居ると……疲れが癒やされるよ~」
大井「もぉ~北上さんったらぁ~♡」
ーーー
武蔵「私が給仕役とはな……。 早く戦場で活躍したいが……時期早々───誰だッ!?」
………カラカラァ………
秋蘭「ごめんッ! 失礼するッ!!」
吹雪「すいません! 今は店は閉店中で───!」
華琳「閉店中、お邪魔するわ! 久し振りね……流琉!」
流琉「あっ! か、華琳さま! 秋蘭さまもぉ!!」
秋蘭「元気そうで何よりだ! 修行は進んでいるか?」
流琉「はいッ! 鳳翔先生に教わって──色々調理方法を教えて頂きました! 御飯の炊き方とか、簡単で直ぐに出す事ができる料理とか!」
華琳「そう、良かったわ。 あらっ? また給仕役が変わった娘たちになっているわね! 私と気が合いそうな娘も……」
ーーー
武蔵「────隠れていろ、吹雪!!」
吹雪「────ひゃあッ!!」
ーーー
大井「な、何ぃ~!? あの女、私の北上さんに色目使ってぇえええッ!?」
北上「大井っちに触らるなら、まだ我慢できるけどさぁ~、知らない女に品定めされたくないなぁ………」
ーーー
華琳「それよりも……鳳翔は、今……どこに居るの? 話したい事があるのよ?」
流琉「鳳翔先生は……別のお客様と、打ち合わせをしているようで……」
華琳「そう。 それでは、流琉に伝えるけど……ごめんなさい、明後日には陳留に戻らなくては行かないの。 修行半端で悪いけど……仕事が溜まっていると思うから。 だから、明日で……此方に戻って来なさい!」
流琉「………はい、分かりました」
華琳「また、洛陽に来るときになれば、鳳翔にお願いして弟子入りをお願いするわ。 それまで、教わった事を練習し、自分の糧に変えなさい! そして、いつの日か──師を超えるのよ! それが、最大の恩返しになるから!!」
流琉「─────はいッ!!」
ーーー
鳳翔「………すいません! 今、戻りました──ッ! これは、曹孟徳さま! お出迎えもできず……申し訳ありません!!」
華琳「いいのよ! 私の都合で、閉店中の店に入った……寧ろ怒られるような事をした、私に非がある! ………許して貰えるかしら?」
鳳翔「許すも許さないも……あの曹孟徳さまが、連絡も無しに来られたのは、火急の件だと窺います! どのような御用件かと………」
華琳「──察するのが早くて助かるわ! 理由は二つ! 一つは、流琉を連れて国に戻る事になったの。 それで、暇乞いの連絡をするために寄った事!」
鳳翔「あと一つは………」
華琳「そして、もう一つは……鳳翔……私と賭けをしない? 貴女が勝てば……私にできることを一つ行ってあげる。 もし、負けたら……流琉の代わりに陳留へ……一月ほど来て貰いたいの! 勿論、給金も出すわ!」
鳳翔「──────!」
流琉「─────!?」
華琳「───貴女が、この店の独立権限を持っている事は、既に分かっているわ! 北郷に許可が無くても……この店の開閉は自由。 ただ、行き先だけが判明していれば、北郷が貴女を引き止める事は出来ない!」
秋蘭「それに……この店の予約の多さ、待っている客の数も調査済みだ。 だから、一月だけの限定。 客や店の保障は、我々が責任を持って対応する事を約束しよう!」
華琳「……通常営業は、流琉と他の娘たちの采配で保てる筈。 勿論、偶に私も来て手伝わせてもらうわ! そうすれば、最小限の損害で食い止められる筈よ? 一月経てば……流琉に帰ってきて貰い、仕事に復帰して貰うわ!」
流琉「そんなぁ───ッ!!」
鳳翔「いったい──何を其処まで───」
華琳「簡単な事。 貴女の料理を、私の国に広めたいのよ! この疲れが癒やされる懐かしき味わい、手間が掛からず、家事の負担が軽減される調理法! そうすれば、私の国は……心身ともに豊かな国になる!」
鳳翔「───なるほど。 富国強兵も見据えた国造りの考えですか? ならば、このお店の看板を背負う女将として、流琉ちゃんの先生として、負けられませんね! 料理とは何か……教えて差し上げましょう!!」
続く。
ーーーーーー
あとがき
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
本編がシリアス過ぎた?ので、息抜きに鳳翔さんの小説を書いたら、まさかの続編に!? 勿論、全部本編に絡んでくる先行作品なんですが。
どうなるかは、少しずつ……合わさっていきますので、生暖かい目で見守って下さい。
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鳳翔さんの続編です。