真っ白な夢の中。
無意識と呼べるほどの感覚の中で、また俺はあの少女を見た。
「………ひっ……っ」
真っ黒な世界の中で、彼女の髪は一際輝いていた。
「……っ」
また、彼女は泣いていた。
「お母…さん……」
少女は母親を求めていた。
だが、母親ならそこにいる。
少女はたしかにその手を握っている。
少女に寄り添うように、地に伏し、
赤黒く染まった、その手を。
「……っ………」
ポツ…ポツ…
また、雨だ。
ザァァ…
何があったかはわからない。
急に目の前に広がったのは、荒野の真ん中で打ち広げられた大量の死体。
そしてその中に先ほどの少女と、もう動くことの無くなった、彼女の母親だったモノ。
俺はただ、その景色に何も言えなくなっていた。
黒い空から流れる、黒い雨。
それをうけて、あふれ出す赤い河。
「………ひっ…っ……」
見ていられず、手を伸ばして彼女に触れようとした瞬間
「……何が…天の御遣いよ……」
え?
「………ぁ…あ……あはは……何が大陸を救うよ。現れないじゃない…そんなもの……」
突然、話し出す少女。
俺に向けて…というわけでもないようだ。
「あははは……」
ただ、絶望を吐き出すように。
「……もう…いい……」
泣いていた少女の瞳が、あのときの…
俺を見ていたあのときの瞳に変わる。
「……もう、こんなの……」
少女は天に向かって言う。
「貴方が私達を助けてくれないなら…私は貴方にさからってやる。」
黒い雫を降らし続けるこの空に向かって。
「私が…大陸の、覇王になって……大陸を―――…。」
そして少女は、また啼いた。
「………」
意識がはっきりと戻ると、そこは寮の前だった。
さっきのは夢だったのだろうか。
しかし、さっきといい今といい
今日は随分意識が飛ぶ。
疲れているのだろうか。
落とした袋を拾い上げようと手を下にやると一緒に学生証も落ちていた。
『聖フランチェスカ学園 1年 北郷一刀』
袋と学生証を拾い、部屋へ帰る。
本当にわけがわからない日だった。
午前中まではいつもどおりだったんだけどな。
――――夜。
さっき買った弁当を食べたあと、そのままベッドに転がっていた。
天井を見つめて、今日のことを思い出す。
「覇王…か…」
不意につぶやいたのはその言葉だった。
少女はそう言っていた。
よく、わからない感覚だ。
普通に考えて、ただの夢または妄想。
でも妙に現実味がある。
実際に経験したという実感がある。
だけど、少なくともあれは夢だろう。
でなければ、理解できない。
急に現れた死体の川、そこからあふれ出す赤い河。
そして、少女の涙と黒い雨。
これが現実だといえるだろうか。
あの子は…誰なんだろう。
本当に存在するんだろうか。
………やっぱり、考えてもわからない。
とりあえず頭を落ち着かせようと水を飲もうと、冷蔵庫へ向かう。
いくつかストックしてあるうちの1本を取り出して、飲み干す。
そして、再びベッドへ戻る。
もう、今日は寝よう。
疲れていたのだ。
自分を言い聞かせ、目を瞑る。
―突端は、まだ開かれていない―
「…………え?」
急に聞こえてきた声。
―だが…このままでは…開くことも……―
「誰……だ…?」
―ひととき…開こう……外史へと結ぶための、突端を…―
なんだ?誰だ?どこから?何を言っている?
いろんな疑問が一気にあふれてくる。
しかし、その声は答えることなく、言葉を続けた。
その言葉の中で、俺の意識は次第に眠りへと落ちていった。
―これは、始まるための外史…―
―彼女を…救ってあげてね……ご主人様―
あとがき
和兎です。
毎回短くてすみません(´・ω・`)
小出しにしていかないと、自分が把握できないものでorz
ある程度、話の流れが固定されてきたらまた長くしていこうと思います。
とりあえず、なんとか読んでもらえそうですね(’’;
そして、あらかじめ言っておきます。
ごめんなさい!
前回、原作ストーリーに沿うと言ってましたが、どう見てもオリジナルです。はい
そして、今回も話は比較的暗めです。
ていうか、僕ってどうしてもギャグとか書けないんですよねぇ…
書ける人を嫉妬しつつ尊敬してます。
それでまぁ…読んでもらえればわかると思うんですが、今回もどう見ても華琳メインです。
他のキャラが好きな人はすみませんorz
ボクの作品はこういうものだとあきらめてください(´・ω・`)
華琳大好きな人には、ちゃんと華琳を表現しきれているかで、それはそれでまたプレッシャーなんですが(’’;
とにかく、そんなこんなで続けようと思います。
覇王の願いから読んでくれている方も、これからの方もよろしくお願いしますm(__)m
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どうも、和兎です(`・ω・´)
とりあえず投稿しても読んでもらえそうなので、続きです。
しかし、今回はマジで展開に悩む(´・ω・`)
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