No.774833 【オリジナル】「炎の香り」【Twitter300字ss4月分参加作品】2015-05-02 20:54:08 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:509 閲覧ユーザー数:509 |
男は瞳を閉じている。
耳に入るのは、薪が燃える音だけだ。
そこにはパチパチと言うほのかな音と、独特の香りが広がる。
薪の香り……火の臭い。
男にとってそれは、優しさと狂気の象徴だった。
優しい香り。
そこには暖炉があり、家族があり、家庭があった。
温かい食卓を囲むのに、火は欠かせない存在だった。
狂気の臭い。
それは、それらを全て焼き払った戦の記憶。
男の故郷には既に何も残っていない。
燃え盛る炎が、全てを焼き払った。
全てが奪い去られてしまったのだ。
優しい香り、狂気の臭い。
相反する二つの記憶。
そして今、男はゆっくりと瞳を開く。
男の前にある炎は、香りと臭い、一体どちらなのだろう?
どちらに誘おうとしているのだろう?
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今回のテーマは「匂い」でした。