No.774783 Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 第5話 ミクの事情enarinさん 2015-05-02 16:55:00 投稿 / 全10ページ 総閲覧数:463 閲覧ユーザー数:463 |
ゴォオォォォォォオオ!!!!!
真っ黒の飛行型ボカロット“イノシカチョウ”と、ネギ色の飛行型ボカロット“ネギロイド02”は、ちょうどネオトウキョウタワーの横を通り過ぎていた。
ホヘト:捕まってたまるか!
アペンド:やっとおびき出したんだ! 絶対追いつく!
しかし、ホヘトのイノシカチョウは、アペンド刑事がネギロイド02のワインディング飛行で牽制をかけても、後方をぴったりマークしても、全く動じず、依然として追いつけない状態だった。
アペンド:くっ、なんて性能がいいボカロットなんだ!
その時、ミクオからの無線が入った。
ミクオの無線:ねーちゃ・・・アペンド刑事、どうですか?
アペンド:今、ネオトウキョウタワーの横です。ホヘトのボカロット、なかなか速くて追いつけない
ミクオの無線:レースみたいに競技用の武器を使って足止めしたらどうですか?
アペンド:使いたいのは山々だが、今、この下は商業施設が立ち並んでいる。やたらに武器を使って墜落させたらまずい。確実に空中で“捕捉”するべきだ
ミクオの無線:ノーマル装備で追いつけないのなら、“拡張装備”を使わないとだめだな
アペンド:拡張装備? 私が作っている時はそんな装備なかったが…
ミクオの無線:昨日、僕が付けて置いたんだ。コントロールキーボードで、“NITRO”って打ってみて
アペンド:解った
アペンド刑事は横に折り畳まれていたPCのキーボードの様な物を引き出して、“NITRO”と打ってみた。
ボカロット02のCOMP:READY. START THE NITRO BOOST.
ガゴン! ギュイーーーーーーーーーーーーーン!
アペンド:す、凄い加速!
ミクオの無線:そ。ニトロ加速装置だよ。これなら楽勝で追いつけるよ
アペンド:しかし、レースならレギュレーション違反で取り外される装置なのに…
ミクオの無線:だってそのボカロット、“レース用じゃない”じゃん。無問題、無問題
アペンド:…君、世界一のメカニックだよ
ミクオの無線:ありがと
ニトロ加速したネギロイド02は、相対速度的にジリジリとイノシカチョウに近づいていき、遂に横に並び、アームでイノシカチョウを横から羽交い締めにした!
アペンド:ようやっと捕まえたぞ!
ホヘト:な、なんだこのボカロット! 放せ!
イノシカチョウは無理に機体をローリングして、ネギロイド02を引き剥がしに行ったが、ネギロイド02はアームの裏側に装備していた“サブアーム”をイノシカチョウの装甲に食い込ませていたので、そんなことでは引き剥がせるわけもなかった。
ホヘト:くっ!!!!
アペンド:この先に多目的グラウンドがある。ソコにお前と私を不時着させる。2つの機体はそのまま、お前は手を挙げてコクピットから降りろ。こちらも“携帯武器”くらいはもっている。下手なマネはするなよ
ホヘト:…わ、わかった。指示に従う…
こうして、密着した状態の2機は、ネギロイド02のニトロを切り、そのまま速度を落として、次にホバリングして、アペンド刑事が指示した“多目的グラウンド”に不時着したのだった。
(多目的グラウンド)
ホヘトは携帯武器をコクピットに置き、手を挙げてイノシカチョウのコクピットから出てきたのだった。アペンド刑事は開いたネギロイド02のコクピットから、携帯銃をホヘトに向けながら、ゆっくりと地面に降り立ったのだった。
ホヘト:武器は置いてきた。抵抗はしない。だからせめて銃くらいは降ろしてくれ
アペンド:そうはいかない。“拘束ロープ”でお縄について貰う
そういうと、アペンド刑事はホヘトに近づいて、自動拘束機能が付いた“拘束ロープ”でホヘトを縛り上げた。
アペンド:…さて、この状態で色々“教えて”貰う事にする
ホヘト:署の部屋まで連れていかないのかい?
アペンド:本物のミクさんの所でミクさんを保護するまでが、私の仕事だ
ホヘト:なるほど。しかし、口を割らなかったら、どうする?
アペンド:口を割る割らないは関係ない。ミクさんを一人にして、お前だけがレース場に来ているのは、安全上おかしい。あれからまだ捕まっていない、私も知らない別の仲間にでも、ミクさんの場所を守らせていると考えるのがセオリー。お前が飛んでいった先は、おそらくその場所だったのだろうな
ホヘト:なら、ボカロットを尾行していけば、その場所までたどり着けたんではないか?
アペンド:飛行ルートを微妙に変えて、巻かれるのがオチだ。こうやってお前を捕捉してから、私のボカロットに乗せて“誘導させる”のが一番だ
ホヘト:嘘のルートで巻く事も考えられるが?
アペンド:…あまりこういう装置は使いたくないのだが、そのロープ、お前の記憶にダイレクトにコネクトできる。教えて貰わなくても、ネギロイド02のCOMPに出てきた“解析結果”に従って飛行すればいいだけなんだよね
ホヘト:イマドキの刑事は外道なんだな
アペンド:何とでも言え。さぁ、私のボカロットの複座席に座って貰う
アペンド刑事は銃をホヘトにつきつけ、ネギロイド02の複座席にホヘトを座らせ、自分もメイン席に座り、コクピットを閉じた
アペンド:さて、ミクさんの所まで直行するか。あ、その前に
アペンド刑事はコーシー刑事に、携帯電話から電話をかけたのだった。
ピピピ…ピーピー…ガチャ
コーシー:コーシーだ。アペンド刑事、どうでしたか?
アペンド:今、ネオヒビヤ公園に不時着してます。ホシを拘束しましたので、誘導装置を使って今からミクさんの所に移動します。ホシのボカロットを停止状態でここに置いていきます。コーシー刑事、すみませんが近くの署から援軍をだして、このボカロットを受け取って下さい。COMPを解析すれば、ミクさんが巻き込まれた今回の事件の事が、色々わかると思います
コーシー:了解だ。ミクさんの事が頼みますぞ
アペンド:有り難うございます。では
ガチャ
ホヘト:ミクさんの事件の事…ねぇ。わかるといいがな
アペンド:警察をなめるな。では、向かうとしよう
ギューーーーーーーン!!!!
アペンド刑事はイノシカチョウとネギロイド02を切り離し、ネギロイド02をテイクオフさせて、拘束ロープから航行ルートを割り出して、COMPによる自動航行システムを作動させ、ミクさんの所に移動することにした。
(静岡 ネオフジエリアの裏側)
ギューーーーーーーーン ガチャ
ミクさんがいるホヘト達のアジトは、静岡に存在する“ネオフジエリア”のちょうど裏側、密林の中央にあった。
ギギギ・・・・・ガシャーーーン!
ロープから入手した侵入コードを使って、そのアジトの隠し扉を開き、ネギロイド02を着陸させた。
アペンド:しかし…“誘拐事件”の割には、装置は派手だし…。一体どうなっているんだ?
ホヘト:…
アペンド:まぁ、だんまりだよな。まぁいい。ちゃんと中に入れたし、捜査させてもらう。勿論、お前も連れていくがな
ホヘト:…
(アジト内 通路)
カツカツカツ…
アペンド:なんなんだ、これは? 地下に巨大な施設だと?
ホヘト:…終着点にたどり着いても、驚くなよ?
アペンド:何!?
(アジト最深部 制御室)
二人は長く複雑な通路を歩いていき、そして遂に終着点の『制御室』にたどり着いた。
アペンド:ガイダンスのルートはここで終点か。ミクさん、ようやっと見つけたよ…
ギギギ…
扉は特にホヘトが言わなくても、自動で開いたのだった。
アペンド刑事がそこで見た物は、椅子に座っている“緑のツインテールの女の子の後ろ姿”と、2,3人のホヘトの仲間だと思われる男達だった。
アペンド:ふぅ、ミクさん無事でしたか。特に外傷もないようですし、良かったです
ホヘト:…ミク、ドジ踏んだ俺も、消されるってわけか?
アペンド:? ドジ踏んだ?
後ろ向きのミク:いいえ、別に。どういう形でもアペンド刑事とは対面しないといけないと思ってましたから
アペンド:ミクさん、何を言っているんだ? さっさとこんな所から出て、自宅に帰りましょう!
ミクは椅子を回して、アペンド刑事の方へ向き直った。そこにはアペンド刑事が変装していた姿、そのままの姿のミクさんが座っていたのだった。
ミク:アナタの姿を見かけなくなり、私と同じ姿の“ミク”が出てきたから、おかしいと思っていたけど、やはりアナタでしたか
アペンド:???? 何をいっていr
ミク:私に探りを入れたとか、私関連の情報を不用意に入手した、サクーシャとかVY二人は運が無かったというか…。まぁその親玉であるアナタがこうやって出てきてくれたから、ある意味、私は運がいいな
アペンド:さっきから何を言っているんだ!! 君は“誘拐”されていたんだぞ!!
ミク:・・・私はこの方々の“協力者”。今は、『被害者』ではなく、『加害者側』だ
アペンド:????
ミク:確かに一番最初は“誘拐された”。それは間違いないけど、この人達は私にだけは、一切危害を加えなかったし、むしろ、切実な事情を見せてくれたし、教えてくれた。そして、私にだけは、協力を求めてきた
アペンド:犯罪者の言い分なんか聞く必要はない! こいつらは“お縄に付く”人間なんだぞ! さぁ、もう帰ろう! 私と偽ミクさんの事はコーシー刑事から伝わっているだろう。君のご家族も心配している!
ミク:・・・帰らない・・・
アペンド:!?
ミク:あんな所には、もう帰らない。父が待っているのは“優秀なパイロットでいるミク”であって、“私”じゃない。ミクオも同じ、“明朗快活でいる優秀なパイロットの姉”
アペンド:お父さんはともかく、ミクオ君は本気で心配していたぞ!?
ミク:そうよね、“パイロットがいないとメカニックは困る”ものね
アペンド:もう、君の家族にどういう経緯があったかわからんし、こいつらに何を吹き込まれたか知らないが、これは立派な“誘拐事件”だったんだ! こいつらを拘束し、君を保護し、事件を完全解決しなければいけない。帰りますよ!
ミク:…なんで、ホヘトをAHSのチームのメカニックとして送り込み、私の事を知ろうとした人たちの口封じをしたか、わかる?
アペンド:ちょっと待て、“送り込み”? あれは君がやったことなのか? 誘拐されて何かを吹き込まれた“キミ”が!
ミク:・・・・・・・私は『メカニック志望』だったのよ。『裏方』の・・・
アペンド:!?
ミク:でも、私はここを動くわけには行かない。だからホヘトにAHSに潜り込んで貰って、ボカロットの最新技術情報を持ってきて貰った。ここで『究極のボカロット』を研究している私のために
アペンド:『ここで』、『研究』???
ミク:この人達やあなた方警察に捕まってしまった人たちは、全員、『天才メカニックだった人』なの。最高のウデを持っていたのに、企業に捨てられた、可哀想なメカニック。私と同じ…。メカニック志望だったのに、パイロットに無理矢理させられた私と同じ…
アペンド:メカニック志望だったなら、そのまま押し通せば良かったではないか!
ミク:お父さんやミクオは、一切聞き入れなかった。それに天才メカニックのミクオがいるから、私はパイロットになることを命令された。そして養成された…
アペンド:…途中で嫌になった。だから、誘拐されたのをチャンスとして、ここで好きなメカニックの研究をしていた…と
ミク:悪い?
アペンド:…私がキミに変装して家族の心配を解いていたのもチャンスとしていた… 確かに家族は心配してない…
ミク:結果、オーライじゃないの
アペンド:ふざけるな!!!!!!!!!
ミク:!
アペンド:キミという“本物が家族の元にいる”事だけが、“オーライ”な事だ! それだけが“事件解決”なんだ!! これは“おままごと”ではないんだぞ!! ふざけるのもいい加減にしろ!! さっさと帰るぞ!!!!!!
ミク:やだ!!
アペンド:だめだ!
ミク:・・・・・・・・どうしても連れていくっていうなら、ボカロットレースで勝ってよ
アペンド:!?
ミク:私がここで研究して作り上げた、レギュレーション無しの“究極”ボカロット、『ネギロイド∞(インフィニット)』。これにあなたの『ネギロイド02』が勝てたら、ちゃんと帰るし、この人達もあなた方警察に全員投降させるし、事件の全てを話すわ
アペンド:やれやれ、困ったお嬢ちゃんだ・・・・・・わかったよ、レースしますよ。でも約束は守れよ?
ミク:メカニックに二言はないし、ちゃんとさっきの発言は動画に撮ってあるから、安心して
アペンド:わかった。で、コースは?
ミク:この研究所で、作ったボカロットを試験するために使っている特別コースがある。そこを特定周回してもらう
アペンド:で、その“∞”のパイロットは? お前さん、“パイロット”、いやなんだろ?
ミク:いえ。私が作ったボカロットだから、私が乗る
アペンド:いいのか?
ミク:パイロットとして養成されていたからウデは一流よ。それに自分で作った機体だから、全てを熟知している。この条件でも、あなた、本当に受ける?
アペンド:それしか道がないのなら、やるしかないだろ。刑事をなめるなよ?
ミク:わかった。ピットとかも用意されているから勝手に使っていいわ。じゃあ、案内するわ
アペンド:やれやれ・・・
こうして、困ったお嬢さん“ミク”と、理不尽なボカロットレースをする事になったアペンド刑事。さて、どうなるのでしょうか?
(続く)
CAST
メカニックのミクオ:ミクオ
パイロットの初音ミク(アペンド刑事):初音ミクAppend
誘拐された初音ミク:初音ミク
コードネーム「ホヘト」:ホヘト
フナ・コーシー:とある刑事役の役者さん
その他:エキストラの皆さん
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☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。
○第14作目の第4話です。
○今回もミクさんを軸に、今まで書いてなかった“レース物”、“サスペンス”、“ちょっと良い話”で作ってみました。
☆あっと驚く真実です!
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