…時間は深夜だろうか、ロウソクの灯る部屋の中、一人の女性がいた。
そして、その傍らに男性が寝かされていた。
「ううっ……」
その時男が苦しそうに呻き声を上げ、女性…いや、少女は苦しそうにしている男に声を掛けてやる。
「大丈夫ですか?」
「うう、はっ。はあはあ、此処は?」
「動かないで下さい、貴方は酷い怪我をしていたんですよ?もう少し寝ていないと」
そう言って少女は男を寝かそうとすると、誰かが声を掛けて来た。
「あら?お目覚めになったようね」
男が声のする方に目を向けると扉の向こうに美しい女性が立っていた。
「はい先生、今しがた」
「なら薬とお水を持って来ましょうね」
その女性は軽く微笑むとその場を後に歩いて行った。
「あの、此処は、それに君は?」
「此処は水鏡先生の家です。そして私は諸葛亮といいます。それで貴方は?」
「自分は……、分からない。…うっ、ぐうう…、あ、頭が…」
男は自分の名を答えようとしたが解らず、そして激しい頭痛が襲って来た。
「だ、大丈夫ですか?あまり無理はされないで」
頭痛に苦しんでいるとその少女は心配そうに肩を抱いて来た。
そんな男は頭を抱えていた手を顔にやると其処にある物に驚き、両手で顔を触りまくった。
「な、何だこの仮面は………」
(駄目だ、何も思い出せない。だがこんな仮面を着けてはいなかったという事だけは解る)
「大丈夫ですか、何も思い出せないんですか?」
「ううう…、じ、自分は……自分は一体…、そうだ…自分の名は…」
「どうしたの?」
水鏡と呼ばれた女性が薬と水を持って駆け付けた。
「先生!この方記憶を失ってらっしゃるみたいです」
「記憶を?とりあえず薬を飲みましょう」
水鏡は男を抱き起しながら薬を与えた。
「すいません、ん、ゴクゴクッ」
「それで、記憶が無いというのは本当ですか?」
「はい、自分が誰で何をしていたのかまったく…ただ」
「ただ?」
「今、頭の中に一刀(かずと)という名だけがうっすらと……」
「一刀、おそらくそれが貴方の真名なのでしょうね」
「まな?」
「ええ、私達の持つ本当の名前、本人が許した者以外は決して汚してはならない聖なる名前」
水鏡は男を再び寝かしつけながら教えた。
「では彼女や貴女が名乗っているのは。」
「これも私達の名前ですよ」
「??」
「はわわっわ、わたしゅは、姓を諸葛、名を亮、字を孔明といいましゅ、あ、はわっ!」
(何だ、突然どもりだした)
「あらあら、緊張の糸が切れたみたいね、ふふふっ」
「いっいえっ、しょんなことはにゃいでしゅよ!はっ、はわわ…」
「緊張?」
「ええ、この三日間あなたの看病にかかりっきりでしたから」
「そうですか、ありがとうございます。自分の事は一刀と呼んで下さい」
「ええっ!? だ、だめでしゅよ、そんな簡単に真名を預けては」
彼女はあわてながら手をぶんぶん振りまわしている。
「いえ、貴女達は自分を助けてくれた。真名がそれほどまでに大事な物ならばその感謝を真名を預ける事で少しでも表したい」
一刀は微笑みながらそう言った。
(はわわ、な、なんて優しそうな笑顔)
「ふふふっ、そうですね。真名を預けると言っているのにそれを拒むのはかえって失礼になります。では私も貴方を信頼して真名を預けましょう。私の真名は翡翠(ひすい)です」
「わっわた、私の真名は朱里でしゅっ!これからは朱里と呼んでくだしゃりふっ……ううう、噛んじゃいました」
「朱里、今日はもう貴女もお休みなさい。一刀さんもゆっくり休んで下さい。これからの事は体調が戻ってからでもゆっくり話すことにしましょう」
「分かりました、では休ませてもらいます。翡翠さん、朱里さん、お休みなさい」
「あ、あのっ、さんはいりません。朱里と呼び捨てでいいです」
「ああ、分かった。お休み、朱里」
「うふふっ」
頬を赤らめている朱里を翡翠は優しげに見つめていた。
そして数日後、ようやく自分で動ける様になった一刀は翡翠と話をしていた。
「名前と字?」
「ええ、やはり真名しかないというのも不便ですからきちんとしないと」
「とはいってもどんな名がいいものか……」
「私は占いもたしなみますから調べてみました所」
「ええ」
「姓を北名を郷字を大和(やまと)とするのがいいと出ました」
「姓は北、名は郷、字を大和、そして真名が一刀」
「お気に召しましたか?」
「はい、何だかとてもしっくりきます」
「それからその仮面の事ですが、貴方の体にはかなりの傷が残っています。ですからその仮面も顔の傷を隠す為といえば不審がられることもないでしょう。」
「はい……(いったいこの仮面は何なんだ、記憶がない事と関係してるのか?)」
そんな時、朱里が三人の男女を連れてやって来た。
「先生、雛里ちゃんと鞘花(さやか)ちゃんが帰って来ました。そして禅(ぜん)さんも来てくれました」
「そうですか。無事でよかったわ」
「先生、ただいま帰りました。」
「せんせい、ただいまっ!」
挨拶をしながらやって来たのは朱里と似た様な服を着た紫色の長い髪を両側で結んだ少女と、その手を掴んでいる茶色の髪の幼い少女だった。
「お帰りなさい、大丈夫だった?」
「はい、鞘花ちゃんも大人しくいい子にしててくれました。」
「おうっ!さやちゃんはとてもいい子だったぜ!」
真名であろう、禅と呼ばれた男は鞘花の頭を撫でながらそう言い、鞘花も照れくさそうにしている。
「えへへ、さやはききわけのいい、いいこだってみんなほめてくれたよ」
「この子達は?」
「私の教え子の一人で鳳統といいます」
「よろしく、自分は姓は北、名は郷、字を大和といいます」
「あ、あわわっよ、よろしゅきゅっ!ほ、鳳統れしゅ、あ、あわわぁ~」
(この子も噛むのか)
「はははっアンちゃんが御遣い様かい?」
「御遣い様?」
「今村じゃ大騒ぎだぜ、天から流星とともに御遣い様がやって来たってな」
一刀は禅の言う事に首を傾げながら振り向いて翡翠を見ると、彼女は少し俯きながら語り出す。
「今世の中は乱れに乱れています。野盗達は街や村を荒らしまわり朝廷も己の利益ばかりを優先し、庶人達は苦しみに喘いでいます。そんな時、管輅という占い師が天から乱世を収める御遣いが現れるという予言をしたのです」
「そしたら四日ほど前近くの森に流星が降って来て……」
「そこに自分が倒れていたと」
「はい……それはもう酷い怪我で手持ちの薬や包帯などを使いはたして」
「私が村に買い出しに出てたんです」
「そうだったんですか、すみません、貴重な薬を」
頭を下げる一刀に翡翠は手をかざして止めた。
「いいんですよ、薬は怪我人や病人に使う為にあるんですから」
「そうだぜ、アンちゃん!怪我人は大人しく治療されてりゃいいんだよ」
その時一刀の服の袖をクイクイと誰かが引っ張った。
「ねえねえ、おにいちゃんがおほしさまに、のってきたの?」
「ああ、そうらしいけどキミは?」
「 ♪ じゃあ、やっぱりさやのととさまだ!」
「あわわっ?」
「はわわ!さやちゃんの…と、ととさまっ!?」
「うんっ、だってみんな、さやのととさまは、おほしさまになったっていうんだもん!だからととさまはきっとおほしさまにのってかえってきてくれたんだよ。…そうだよね?」
鞘花は一刀にしがみ付いて答えを待っていた。
(この子はたぶん気付いている、父親が死んでいる事を、それでもやはり認めたくないんだ、当然だ、こんなに小さくて、泣きたいのもきっと我慢してたんだろう、だったら父親になってやろう、そして………)
「ああ、そうだね、自分はきっとさやちゃんのととさまだ」
「 ♪ わあいっ、ととさまだ!ととさまだ!さやのととさまがかえってきたぁ~~!!」
抱きついて来た鞘花を一刀は優しく抱き上げた、その姿を四人は暖かな目で見つめていた。
「へへっ気に入ったぜアンちゃん!俺の真名は禅だ。気軽に親(おや)っさんとでも呼んでくれ!」
「わっわた、私の真名は雛里でしゅっ!これからは雛里と呼んでくだしゃりふっ……ううう…噛んじゃいました」
「翡翠さん、庶人達の心がそこまで落ち込んでいるのなら天の御遣いの名は役に立ちますか?」
「えっ?」
「おいおい、アンちゃん、まさか……」
「はい、それで人々に生きる希望が湧くのであれば御遣いの名、使ってみようと思います。たぶんそれが、自分の役目なのかもしれません」
「辛いかもしれませんよ?過剰な期待を寄せられたり、力が足りなかった時には非難を受けることだって」
「なあに、そんときゃ俺たちが助けてやりゃあいいだけじゃないか!」
「はわわ、そうです!私達がいましゅっ!」
「あわわ、が、がんばりましゅ!」
「さやもいるよ、ととさまがんばれ!!」
「そうですね、私も及ばずながら力になります」
「みんな……」
「「えへへ」」
朱里と雛里は一刀の服をつかんで微笑んだ。
「ありがとう、雛里、親っさん、鞘花、自分の真名は一刀だ、これからよろしく。」
「おうっ!よろしくされるぜ!」
「あ、あの、私達も……」
「ああ、頼りにするよ。」
ニコリ、(白い歯が)キラリッ
「!!はうあっ」
「!!あううっ」
(やはり一刀は一刀であった)
「ほう、へへへへ!」
「あらら、まあ。ほほほほほ。」
これからどんな闘いが待っているのか?
これからどんな出会いが待っているのか?
それはこの外史だけが知っている。………………
~了~
乱B「このアホがあぁぁぁぁぁーーーーーーーっ」
(ベルリンの赤い雨)
乱D「ぎゃああああああっ」
乱C「なに勝手にーーーーーっ」
(キン肉バスター)
乱D「ぐぼはあああああっ」
乱A「書いとるんじゃあぁぁぁぁーーーーーーっ」
(マッスルスパーク)
乱D「げびゃあああああっ」
乱A「これだけ痛めつけれだもう勝手な事はできんだろう。」
乱B「せめてもの救いは了で終わったことだな。」
乱C「了だからな、了!!終わりだからな!!」
A、B、C「「「それ、逃げろーーーーっ」」」
スタコラサッサッーーーッ
おわり
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乱D「あくまでも試し書きです、続きを書けと言われても責任は持てません」