No.772760

IS ゲッターを継ぐ者

第十話です。

2015-04-22 11:41:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1017   閲覧ユーザー数:997

 

 

~光牙side~

 

 

「では、一組のクラス代表は滝沢君に決まりました。おめでとうございます!」

 

 

 オルコットさんとの決闘の翌日。

 

 SHRにて山田先生が言うと、拍手が上がった。

 

 

「頑張ってね、滝沢君!」

 

「昨日の戦い、凄かったよ!」

 

「はあ。ど、どうも」

 

 

 クラスメイトからかけられる言葉に頭を下げておく。……そうなのだ。勝った以上、僕がクラス代表なのだ。

 

 戦いの後、ゲッターロボで大丈夫かな? と思ったりしたが、織斑先生が「まあその時はその時でなんとかなるだろう」と肩に手をやりながら言ってくれた。大丈夫なのかぁ?

 

 

 めっちゃ不安なんですけど先生。その時はその時って、貴女が言う言葉じゃないでしょうに。

 

 今だってそれが気になり織斑先生に目をやるが……。

 

 

「……(グッ)」

 

 

 何故か返されたのはグッと親指を立てた右手。クウガですかアンタは?

 

 しかもドヤ顔。いや、意味が分からんですよ。

 

 見てよ。隣の山田先生とかそれ見てビックリして眼鏡落としちゃってますから。

 

 

「め、眼鏡……」

 

 

 パキッ!「あ」

 

 

「あぁ! 先生の本体が!!」

 

「本体じゃありませんよ~!」

 

 

 あぁ。やっぱなるのねこんなんに。眼鏡キャラの宿命か……。

 

 ※山田先生の眼鏡は無事でした。

 

 

「光牙さん、私からも一言よろしいですか?」

 

「え、あ、はい。どうぞ」

 

 

 はいはい、今度は誰だ……って、ん? 光牙さん?

 

 変な言われ様に僕は振り返る。そこには腰に手を当てたポーズのオルコットさん。

 

 そのポーズはいるのか?

 

 

「その、申し訳ありません!」

 

 

 腰当てポーズからいきなり頭を下げての謝罪。

 

 ……おいどうした、大丈夫か?

 

 クラスの皆もついていけず混乱してるぞ。

 

 顔を上げ、オルコットさんは口を開く。

 

 

「約束です。私が負けたら、暴言を撤回すると」

 

「あぁ。あれですか」

 

「男が強くないなどと数々の暴言、誠に申し訳ありません! これからは代表候補生としての自覚を持ち、適切な対応をしていきないと思っています」

 

「わ、分かりました。分かったんならいいです、ハイ」

 

 

 なんか長くなりそうだったので、思わず立ち上がり両手を出しながらそう言ってオルコットさんを納得させる。ぶっちゃけ忘れてたとは言えまい……。

 

 ヤバいわ。『あれ』の影響か記憶力にまで影響出てきてるかもしんない。

 

 でもオルコットさんがちゃんと謝ったし僕もヒートアップしたからこれで一件落着としよう。うん。

 

 代表候補生云々の理由は知らんけど。

 

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「いや、セシリアも中々分かってるね」

 

「貴重な男の子だもん。やっぱ持ち上げないと!」

 

「貴重な経験に、他の子への情報。一粒で二度美味しいとはこの事だね!」

 

 

 ……ちょーっち待ちなさいな。なんだ、僕はものが何かか? 商売道具ですか?

 

 

「おいちょっと待てやコラ。まーさーか、俺を売る様な真似なんかしてねえよな? 男だからって」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

 持ち上げだの一粒で二度美味しいだの言ってた女子達――クラスの窓側、縦に前から四番目、横には窓側から数えて四番目で仕切ったエリア内の女子らにガンを飛ばす。

 

 

「酷くねーかなーそれ。俺ぁ確かに珍しいかもしんねえが人間だぜ、君らと同じ。それを売ったりとか商売に扱いのは……どうなのかなぁ?」

 

 

 ボキ、ボキと指を鳴らし俺は言う。え? 笑顔だから大丈夫ダヨ。タブン。

 

 けど何故か震え上がる女子ら。アレー? ナンデカナー。

 

 

「と言うか、まさかと思うけどオルコットも関与してたとは……」

 

「そ、それはありません! このセシリア・オルコット、天に誓って、クラスメイトを売るなどという愚行は、お、犯しませんわ!」

 

 

 ンー、どもってるけどこれは本音だろーナー。

 

 

「よし許す。座ってよし」「ホッ……」

 

 

で、残りは……。

 

 

「いーかなー。俺も人間で人権や意思がある事。これは忘れてないでよねー。……Are you ok?」

 

「「「い、イエッサー!!」」」

 

 

 そう言って女子達は納得してくれた。

 

 うん、これでよし。人をもの扱いだなんて。それは人が人にやっちゃいけない事なのですよ、全く。

 

 俺……僕はそう感じながら、席につく。

 

 

「あ、すみません。先生、授業をどうぞ」

 

「は、はい」

 

「Yes my lord!」

 

 

 ……織斑先生、アンタ何やってんですか。

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

 

「昼休みじゃー!」

 

 

 学校で好きな時間の一つ、昼休みがやってきた!

 

 購買にダッシュで向かい鶏肉卵サンドとコーヒー牛乳を購入。教室で昼食とする。

 

 

「うん、美味い!」

 

 

 やっぱ購買の食べ物美味いわぁ。いや食堂のおばちゃんの料理も好きだけどね。

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

 

 手を合わせごちそうさま。自らの血肉となってくれる命に感謝だ。

 

 同じ教室のみんなが目を丸くしてるけどこれといただきますは重要だよ? 人間って生き物なら大事なことだ。人間なら大事なことだ!

 

 大事なことだから二回言ったぜ。

 

 さて腹も膨れたし散歩でも……。

 

 

「……ちょっと良いか」

 

「ん?」

 

 

 教室から出ると四時の方向より見知らぬ声。左足を軸にし方向転換であります。

 

 

「はいはい。何かご用で?」

 

「お、おう……」

 

 

 おっと、これは奇行でしたな。反省反省。相手の人もビビってらっしゃる。

 

 その相手は、黒髪でポニーテールの女の人。

 

 この人は……!?

 

 

「……誰ですか?」

 

「だっ! そ、そのフリでその質問か!」

 

「ごめんなすって」

 

 

 僕のお惚けにずっこけながら突っ込むとは。ほほう、なかなかやりますね。

 

 とりあえず挨拶を。

 

 

「どうも、滝沢光牙です」

 

「知っている。同じクラスだからな。私は篠ノ之箒だ」

 

 

 ポニーテールの女の人もとい篠ノ之さん。同じクラスだったのか。

 

 

「僕に何かご用で?」

 

「あぁ。ちょっと聞きたい事があってな」

 

 

 そう言い、篠ノ之さんは小声で告げた。

 

 

「……お前は、織斑一夏という人物を知らないか?」

 

「っ!」

 

 

 ……思いがけない質問。僕は反応せざるを得なかった。

 

 どうやら何かあるようですね。

 

 精神をさっきまでの『おちゃらけなペルソナ』から『お前にも恐怖を味あわせてやる本気(マジ)モード』にし、表情を引き締め僕は篠ノ之さんに言った。

 

 

「……それが知りたいなら、こちらの指示に従ってくれませんか?」

 

「何?」

 

「放課後、一緒に職員室へ来て下さい。……織斑先生も交えて話します」

 

「……分かった」

 

 

 篠ノ之さんはそれで納得してくれて、踵を返し去っていく。

 

 ……ふう、ビックリした。まさか一夏さんの名前が出るなんて。

 

 一夏さんの知り合いか何かかな?

 

 

「(……でも、なんで織斑先生の名前が出たんだろ)」

 

 

 一夏さんが関係してるから……だよな。

 

 とりあえず放課後だ。

 

 僕は放課後の話へ向け、心の準備をしておく事にした。

 

 

 

 

~放課後~

 

 

「「失礼します」」

 

 

 放課後。授業が終わり、僕と篠ノ之さんは職員室を訪れる。

 

 

「一年一組、篠ノ之箒です」

 

「同じく、滝沢光牙です。織斑先生に話があって来ました」

 

 

 所属と用件を入り口で述べ、僕と篠ノ之さんは織斑先生の元へ。

 

 

「篠ノ之、滝沢。どうした?」

 

「突然すみません、織斑先生。話がありまして」

 

「話?」

 

「……一夏さんについてです」

 

「……分かった」

 

 

 小声でかつ怪しまれない様に用件を伝えると、織斑先生は理解したのか頷いて立ち上がった。

 

 

「山田君。少し席を外す。隣の部屋を借りるぞ」

 

「分かりました」

 

「二人共、来い」

 

 

 織斑先生は後処理を山田先生に任せ、篠ノ之さんと共についていく。

 

 案内されたのは職員室の奥の扉から入った隣の部屋。

 

 室内には机と椅子が四つに窓が一つ。簡易的で、殺風景な部屋だった。……少し埃っぽいなぁ。なんだか肩を赤く塗りたくなっちゃうよ。

 

 

「……むせる。ハッ!?」

 

 

 その時僕は見た! 部屋の片隅にある木箱……そこに緑色のアーマーと着ぐるみらしきものがあり、赤い肩アーマーがあったのを!

 

 

「(み、見なかったことにしよう……)」

 

 

 スルーだ。うん。あれに触れちゃいけない気がする。平静を装い、織斑先生が扉に鍵をかけると部屋の奥側の椅子の片方に座る。

 

 

「座れ」

 

「はい」「失礼します」

 

 

 僕、篠ノ之さんは向かいの椅子に座って、織斑先生と机を挟み向き合う形になる。

 

 

「さて……この部屋は防音もしてあるからナニを話シテも大丈夫だ」

 

「は、はい」

 

 

 ……なんか変な言葉が聞こえた様な? 気のせい?

 

 どもりながらも、隣の篠ノ之さんが話し出した。

 

 

「織斑先生、話というのは一夏の事です」

 

「……やはりそうか。言っておくが、一夏の件は滝沢も知っている。それにコイツは一夏ではないぞ?」

 

「それは……分かっています。でも、滝沢を見た時、私は一夏だと思いました。今でもです。それが気になって……」

 

「まあ、そうだろうな。私でさえ間違えた」

 

 

 抱き着いてきましたからねー。

 

 質問した篠ノ之さんは悲しげな表情で、織斑先生は遠い目で虚空を見ながら呟く。

 

 ……そんなに、なのだろうか。失礼を承知で聞いてみる。

 

 

「あの、篠ノ之さん。一夏さんとはどういう関係だったんですか?」

 

「か、関係!?」

 

 

 何故か甲高く声を上げる篠ノ之さん。頬も赤くなってる。何故?

 

 

「滝沢、もう少し言い様があるだろう」

 

「?」

 

「わ、私と一夏は、その……」

 

「幼馴染みだ、只のな。同じ剣道道場に通っていた同門同士。そうだな、篠ノ之?」

 

「……は、はい」

 

 

 人指し指をツンツンさせる乙女な篠ノ之さんに変わり織斑先生が説明。

 

 そういう事ね。

 

 

「そんで、似てる僕が現れたから気になったと」

 

「……あぁ。そうだ」

 

「ん~……でも残念ながら、僕は滝沢光牙で、織斑一夏さんではないんです。申し訳ありません」

 

 

 立って九十度に体を曲げ謝罪する。

 

 

「い、いや。元はと言えば私の勘違いだ。気にするな」

 

 そうは言ってくれるが……でも僕は、篠ノ之さんが一瞬、悲しげな表情になったのを見逃さなかった。

 

 本当は一夏さんに会いたいのだろう。だから似てる僕に話しかけ、一夏さんではないかと賭けた。違っていても何か知っているかもしれないと思ったことだろう。

 

 何だか腑に落ちない。

 

 僕は滝沢光牙だ。織斑一夏じゃない。それでも、何かできないか。

 

 

「あの、篠ノ之さん。僕に何か出来る事はありませんか?」

 

「え?」「(な、なんだと!?)」

 

「僕は、その一夏さんではありません。……けど、もし。もしですよ? 一夏さんに似てる僕に出来る事があるなら、何でも言って下さい」

 

「滝沢……」「(な、何でも……)」

 

 

 篠ノ之さんに提案してみる。

 

 ……って、何言ってるんだ僕は。こんなの似てるとしたら、篠ノ之さんにとっちゃ余計に辛いだけじゃないか。

 

 失言だったと頭を掻く。

 

「す、すみません。馬鹿なこと言っちゃって」

 

「……何でも、いいのか?」

 

「……えっ」

 

 

  はい?

 

 

「本当に、何でも頼んでいいのか?」

 

「ま、まあ。出来る範囲でですけど……」

 

 

 思わぬ返答が来た。マジですか?

 

 言っといてあれだけど何を要求されるんだろうか……。

 

 

「……名前で、呼んでほしい」

 

「名前?」

 

「あぁ。一夏と私は名前で呼び合っていた。……それだけでいい」

 

 

 と思いきや予想外な答えがきた。名前で呼び合うか。

 

 そん位なら大丈夫だろう。

 

 

「分かりました。でも、いきなり呼び捨ては失礼なので、まずは箒さん、で良いですか?」

 

「構わない、よろしくな。……光牙」

 

「よろしくです、箒さん」

 

 

 互いを名前で呼びあい、僕らは笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

「あ、そう言えば織斑先生は……」

 

「そういや途中から声が……先せ――ドワォッ!?」

 

 

 

 話に夢中で気が付かなかった。見ると……先生は鼻血を出し気を失っていた。

 

 て言うか血の量がハンパない! 椅子の下とか血の海でサスペンスになってるよ!?

 

 

「た、大変だ! 早く運ばないと!」

 

「メディック! メディック~!!」

 

「わ、私も……名前で……ゴハッ」

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 

 広がり飛び散る血の海に恐怖しながら……僕らはお決まりの台詞を叫び、衛生兵……もとい保険の先生を呼びに行くしかできなかった。

 

 何故にあんな風になったんだ!?

 

 ※ある意味光牙のせいです。


 
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