No.772183 ダンまち 例の紐anotherまたはモンスターフィリア(ケダモノ祭)2015-04-19 10:28:48 投稿 / 全4ページ 総閲覧数:1319 閲覧ユーザー数:1293 |
ダンまち 例の紐anotherまたはモンスターフィリア(ケダモノ祭)
「だから約束して欲しい。もう無理はしないって。お願いだから、もうボクを独りにしないでおくれ」
ベルくんの成長速度の早さには驚かされてばかりいる。戦闘民族サイヤ人もビックリだ。でも、それは必ずしも良いことばかりじゃない。
成長が早いことに味を占めてしまうと、もっともっと強くなりたくなって無茶を重ねるようになる。加減を間違えて大怪我、下手をすれば死んじゃうなんて事態になりかねない。早過ぎる成長もまた儚い命しか持たない人間にとっては毒になり得るのだ。
「はい。無茶しません。強くなれるように頑張りますけど、絶対神様を独りにはしません」
ベルくんは曇りのない瞳で答えてくれた。とても気持ちのいい返答だった。そして、彼の返答はボクに一つの結論を抱かせた。
「ボクを絶対独りにはしない。うん。ボクとずっと一緒にいたいって言うベルくんのプロポーズ。謹んでお受けするね♡」
三指ついて頭を下げる。若い男女がずっと一緒にいる。これはもう、ベルくんからのプロポーズに他ならない。ううん、ボクはそう受け取ることにした。
「あの、神様。僕は別にプロポーズしたわけではないのですが……」
さすがは草食系男子。女の子がこんなにも盛り上がっているのに無情にもサラリと交わそうとする。でも、ボクにこの好機を逃すつもりはない。
何しろ、今のボクにはヴァレン某という強敵がいる。ベルくんはヴァレン某への想いを糧に急激な成長を遂げている。この想いが続くのはボクにとって不都合極まりなかった。
だから、今日こそベルくんの想いのベクトルをボクへと向けさせてみせるっ!
「ベルくぅ~~~~ん♡」
彼の名を呼びながら正面から抱きついて自慢の胸を押し付ける。
「かっ、神様っ!?」
ベルくんの顔が赤く染まった。ボクを意識してる意識してる。でも、本当の勝負はこれからだった。
「そう言えばベルくんはこの紐が何なのか不思議がっていたよねぇ♡」
ベルくんから少し体を離し、彼の視線にボクの胸が大きく入るようにする。そして青い紐を指でなぞってみせる。胸が揺れてベルくんの体がビクッと震えた。
ベルくんったらボクのおっぱいを見て反応してる反応してる♡ 可愛いなあ♡
「ベルくんは、このボクのチャームポイントをどうしたいのかなあ?」
両腕と胸を通している紐をわざとらしく強く引っ張ってみる。ボクの手の動きに合わせて紐で抑えている胸が大きく揺れるエッチな光景がベルくんの目に映っているはず。
ボクは今、自分でも驚くぐらいすっごくエッチな誘惑をベルくんに仕掛けている。はしたないとは思う。でも、これもベルくんが最近ボクにつれないせい。ヴァレン某、許すまじっ!
ベルくんが構ってくれないから、ボクはこうしてダイレクトお色気アタックに打って出ることにしたのだ。もう後がないのだ。
「ダメ、ダメですってば。神様ぁ……」
ボクに押し倒される態勢となっているベルくんから小さな艶かしい声が漏れ出る。ほんと、女の子みたいで可愛いんだから♡
「ベルくんが正直に答えてくれれば。この紐、ベルくんが好きにして……いいんだよ♡」
紐だけじゃなくボク自身もね♡
ベルくんの眼前で更に紐を揺すってみせる。ボクの胸、ベルくんに見られちゃってる♡
ベルくんのエッチぃ~~♡
「かっ、神さまぁっ!!」
ベルくんがボクの両腕を掴みながら上半身を起こした。草食系なベルくんもついに野獣に!?
やった。ヴァレン某に大勝利ぃ~~~~~~っ!!
「はっ、初めて、だから。優しく、してね」
いざ、その瞬間を迎えるとやはり緊張してしまう。でも、後悔はない。
ボクが、望んだことだから。こうなりたいって思ったことだから。
ボクの全部、ベルくんにあげるっ!
最初の子どもは女の子がいいなあ。
「そっ、そうじゃなくて、ですね。その、違うんです」
ベルくんはボクの腕を掴んだまま顔を逸らして体を小刻みに震わせている。
「何が違うの?」
男の子はね、両想いの女の子の前では欲望に素直になっていいんだよ♡
「実は僕、身長が145cm以下の女の子とは付き合えないんです」
ベルくんの言葉を聞いてボクの目は点になった。
「何、その、遊園地のジェットコースターの身長制限みたいなの……」
「その、ですね。僕は昔からその、女の子に惚れっぽい体質で……それでよく注意されていて。ジェットコースターにも乗れない低身長の幼い女の子とは付き合うなってよく言われまして。それがいつの間にか僕の心に深く刻まれて掟になったんです……」
こんなファンタジーな世界でジェットコースターって何だよとか無粋なツッコミは要らない。今大事なのは、ベルくんが交際相手の基準にボクの身長140cmでは要件を満たさないとしていること。これは一大事だった。
「たっ、確かにボクはほんの少し身長が足りないかもしんないけどさ。ほらっ、おっぱいこんなに大きいんだよ。紐を使えばこんなに揺れるんだよ」
紐を使って胸を揺らしてみる。縦に足りない分はこの胸の出っ張りでオマケして欲しい。10cm、ううん20cm縦にコンバートしてもまだ無乳のロキより大きいんだから。
でも、ベルくんはこの問題に限って非情だった。
「神様のプロポーションが素晴らしいのは僕もよく理解しています。でも、僕がお付き合いする子はやっぱり身長145cm以上じゃないと……」
知ってはいたけど、この子、すごく頑固だ。そしてベルくんが頑固なのはボクにとってとても厄介なことだった。
ボクは人間界で力を使えなくなっているとはいえ、れっきとした女神さま。人間と違って成長して背が伸びるなんてない。つまり、身長が5cm足りないとは永遠に5cm足りないことを意味している。
「う~う~う~~っ! ベルくんの馬鹿馬鹿、巨人フェチの大馬鹿ぁ~~っ!!」
身長145cmはボクにとってはダンジョンのどんなクエストよりもクリアが困難だった。通常のやり方では。
だからボクは、ひとつの大きな決断をしなければならなかった。ボクとベルくんが幸せになるために。
そう、大切なのは1歩を進み出す勇気。ボクは、自分の背中を自分で押すことにした。
「というわけでベルくん。今夜から2、3日留守にするけど構わないかな?」
ベッドの上に立ち上がりながらベルくんに尋ねる。
「はい?」
「にゅふっふっふっふ」
ボクに秘策ありだった。
ベッドを飛び降りる。裸足の足が床の石に触れてひんやりする。それからサンダルを引っ掛けて外に出ていく。目指すはガネーシャ主催の神々の宴だった。
人間界で毎年開かれている神々の宴。その席に参加するのはボクにとって面白いことじゃなかった。
言うなればアレは神々の同窓会。同窓会ってのは、ある程度社会的に成功した者だけが参加することを許される。上手くいっていない者は格差を痛感させられ、なおかつ持てる者に弄られ馬鹿にされるという二重の苦痛を味わわされるから。
そんな理由があってボクはこの宴の席をできる限りパスしてきた。のだけど、今回はどうしても参加する理由があった。
ロキやフレイヤに直接、間接的に弄られようともだ。
「またやってたの、アンタたち」
ロキの貧乳と争っていると背後から呆れた声が掛かった。その声こそ、ボクが待ち望んでいたものだった。
「ヘファイストスっ!!」
振り返れば眼帯を付けた赤い髪の中性的な顔立ちの美人がグラスを片手に立っていた。
「君に会いたかったんだよ」
ボクがここに来たのはヘファイストスにお願いがあったからだった。
ヘファイストスには昔散々お世話になった。しかもその恩をボクはまだ返していない。そんな彼女に更にお願いするのは心苦しい。
けれど、ベルくんのためにお願いしないわけにはいかなかった。
「実はぁ~、ベルくんのためにブーツを作って欲しいんだっ!」
ボクはタケミカヅチに習った土下座をしながら彼女に用件を願い出た。
当然、文無しのボクの願いは彼女に簡単には聞き入れてもらえない。でも、それで諦めるわけにはいかなかった。
「今じゃなきゃ駄目なんだ」
今、頼まなきゃベルくんは遠くに行ってしまう。そんな予感がヒシヒシとしていた。だからボクは恥も外聞もなく彼女に頼み込んでいた。
ボクは彼女が工房に戻ってからも土下座を続けた。
「ヘスティア。教えて頂戴。どうしてそこまでするのか?」
その質問に答えるのは簡単だった。
「ベルくんの力になりたいんだ。あの子は変わろうとしている。一つの目標をみつけて高く険しい道程を走りだそうとしている。危険な道だ。だから欲しい。あの子を手助けしてやれる力がっ! あの子の道を切り開ける武器がっ!」
ヘファイストスは何も言わずにボクを見ている。
「ボクはあの子に助けられてばっかりだ。ひたすら養ってもらってるだけだ。ボクはあの子の神なのに、神らしいことは何一つしてやれない。何もしてやれないのは、嫌なんだよ」
「変わろうとしてる、か」
ヘファイストスは顔を上げた。
「わかったわ。武器、作ってあげる。アンタの子にね」
遂に、ヘファイストスはボクのお願いを了承してくれた。
「ありがとう。ヘファイストスっ」
足が痺れて上手く抱きつけなかったけど、土下座して良かった。
「それで、アンタの子が使う武器(えもの)は?」
ヘファイストスの質問にボクは首を横に振った。
「ボクが作って欲しいのは、ベルくんの武器じゃなくてボクのブーツだよ」
「へっ?」
ヘファイストスの目が点になった。
「ベルくんが神であるボクとの恋愛という辛く険しく危険な道を突き進めために身長が5cm高くなるブーツがどうしても必要なの。草食系の少年を野獣へと変えるための武器が、このボクにっ!!」
ベルくんと幸せな家庭を築く。そのためには145cmという強大な壁を何としても打ち破らなきゃいけなかった。
ヘファイストスの肩が震え、そして彼女は叫んだ。
「何じゃそりゃぁ~~~~~~~~っ!!!」
彼女は色々とご不満のようだった。
だけど、一度了承してくれたことは守ってくれる義理堅い女神だった。
ヘファイストスが自ら鍛えてくれたハ・イヒールというブーツを手に入れたボクは早速オラリオの街へと帰った。
真っ赤なブーツのおかげで普段の3倍の速さで動くことができる。早い早い。
そしてボクは街中で途方に暮れた表情で佇んでいたベルくんの姿をみつけた。
「ベルくんっ!!」
「神さま? どうしてここに?」
予定より早く戻ってきたボクにベルくんは驚いていた。
そして、ボクが何故オラリオに早く戻ってきたのかと言われれば決まっている。
「それは、君に会いたかったから、かな」
ベルくんにアピールアピール♡
「ああっ。僕も、会いたかったですけど」
……つれない表情。でも、負けない。
「素晴らしいね。やっぱりボクたちはただならぬ絆で結ばれてるよ」
やはりボクたちは相思相愛。夫婦になるべくして出会った存在。それを確信できた。
ボクはベルくんを片手で持ち上げると小脇に抱えて走り出す。
「あの、神様……一体?」
「デートしようぜ、ベルくん♡」
お金がないので自宅デートと洒落込むことにする♡
「まっ、待ってください、神様。僕、人探しを頼まれてるんです」
「じゃあ、デートして明日以降に探せばいいよ。さあ、行こう♡」
ボクは縮地を駆使してベルくんを小脇に抱えたまま教会へと急いで戻っていった。
ベルくんをベッドの手前に下ろして向かい合って立つ。
「あの、僕、人探しの約束が……」
「そんなことよりベルく~ん。ボクに何か変わったことはない、かなあ?」
右手を頭の後ろに回し腰をくねらせてセクシーポーズを取る。
「そう言えば……少し背が高くなったような……」
「おおっ。さっすが、ベルくん。ちゃんと気付いてくれたんだねぇ~♡」
さすがはボクのベルくん。鈍感だけが取り柄のラノベの主人公とは違う♡
「そうだよぉ。ボクはねぇ、頑張って身長が145cmになったんだよっ」
土下座して頼み込んで頑張った。その結果、ハ・イヒールを手に入れて身長が5cm伸びた。
「あ、あの、それは……身長が伸びたわけでは……でも……」
何かを察したらしいベルくんの体が小刻みに震え始めた。女の子みたいな怯えた方。そんな可愛い怯えた方をされたら……ボクはちはやふる荒ぶる神になるしかないじゃないか。
神を誘惑するなんて悪いベルくん♡
「ボクの身長は145cm。ベルくんが付き合うのに何も困らない巨人属性を手に入れたんだよぉ」
腕を左右に広げる感じで青い紐を張らせる。紐がボクの胸へと食い込んでいく。とってもエッチな光景がベルくんの視界に広がっているはず。
さあ、ベルくん。野獣になっちゃっていいんだよ。ボクはもうとっくに野獣だよ♡
「でっ、ですから、僕は神様のことをずっと大切にしたくて……」
「うん。だからベルくんからのプロポーズは受けるってば♡ 一生大切にしてね♡」
ベルくんににじり寄る。シャイな彼は逃げようとするんだけど高速機動を実現したこのブーツの前に回り込まれてしまう。
「ぼ、僕は、いつまでも尊敬し得る対象として神様を見たいのであってそんな……」
「うんうん♡ いつまでもお互いを尊敬し合える仲良し夫婦でいようね♡」
「だ、だから、そうじゃなくて……」
「愛してるよ……ベルく~~~~ん♡」
ボクはベルくんに抱きついてそのままベッドに押し倒した。そのままベルくんの衣服を乱暴にはいでいく。
「かっ、かっ、神様の……ケダモノぉおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!」
ベルくんの悲鳴が誰かの耳に届くことはなかった。だってここは廃墟と化した教会の中なのだから。そして街はモンスターフィリア(怪物祭)の真っ最中。ケダモノと叫んだって誰も反応なんてしやしない♡
「幸せになろうね……ベルくん♡」
ボクはヘスティア・ファミリアの新メンバー補充のための第一歩をベルくんと共に踏み出したのだった。
「いらっしゃいませぇ~」
小さなお店とはいえ、昼時の食堂は忙しい。常連客のおじさんから注文を受けて厨房に伝える。
「あなたぁ~。日替わり1オーダー」
「わかった。日替わり1ですね」
夫の元気な声が返ってきた。世界で一番の美声だと思う。でもボクはその声に聞き惚れている暇はない。
他のお客さんのオーダーを聞いたり、食べ終えたものを下げたり、皿を洗ったり会計したりとやることは幾らでもある。
ボクと夫の2人きりで切り盛りしているお店だからボクが動かないことには全く回らないのだ。
「いらっしゃいませぇ~」
新しくやってきたお客さんに笑顔を振り撒きながら接客に務める。
ボクは今、働くことに充実感を覚えていた。
午後2時を過ぎるとお客さんも落ち着いてくる。夕方になるまでしばしの休憩。お酒を出すタイプのお店じゃないけれど、午後8時まで毎日営業している。
「お疲れさま、ヘスティア」
夫がボクたちの分の昼食と飲み物を持ってテーブルへとやってきてくれた。
「ありがとう、ベルくん」
ねぎらってくれるベルくんに笑顔で返す。ベルくんもまたボクに笑顔をくれた。
「それじゃあ、いただこうかな」
「ええ、どうぞ。僕の自信作ですから」
「ボクの舌をうならせることができるかなあ? いっただきま~す♪」
ベルくんの作ったご飯を2人向き合って食べる。とっても幸せな時間が流れている。
ベルくんはボクを養うために店長として、料理長として奮闘してくれている。
彼は冒険者として名を馳せるよりもボクとの堅実な幸せの道を選んでくれた。そんな彼の優しさと愛情にボクも精一杯応えたいと思う。
「ご飯が終わったら、子どもたちの顔を見に行こっか」
「そうしよう」
ボクたちは昼時の忙しい間、産まれて半年の双子の男女の赤ちゃんを『豊饒の女主人』亭で預かってもらっている。
ボクも今では2児のママになっている。子どものために頑張っているのだ。
「でもまさか、僕がこんなに早く父親になるなんて思いもしませんでした」
まだまだ少年の面影が顔に残っているベルくんが照れくさそうに言う。
「ボクとベルくんの相性がそれだけ良かったってことだよ♡」
夫にウィンクして返す。ボクのお腹にベルくんの赤ちゃんが宿った。それを知ったのは、ボクがベルくんのプロポーズを受けてからそこまで日が経っていない時のことだった。
そんな事情があって、ベルくんは稼ぎの安定しない冒険者ではなく、料理人として生きる道を決断してくれた。想いに比例して急成長できるリアリス・フレーゼが料理スキルの習得でも有効だったのは驚いたけど、ボクたちにとっては幸運だった。おかげで小さいとはいえ自分たちのお店を持てるほどベルくんの料理の腕前は上達したのだから。
「さっ、子どもたちの顔を見に行こうよぉ」
「そうだね」
2人で手を繋いで『豊饒の女主人』に向かって歩いて行く。
「ベルくん。また背が伸びたよね」
「そうですかね。自分じゃわからないですが」
「うん。去年よりも見上げてるもん」
ベルくんの肩の位置は去年よりもまた少し高くなっている。せっかくハ・イヒールのおかげで少しだけ近くなったベルくんまでの顔の距離がまた戻ってしまった感じだ。
ハ・イヒールを鍛え直してまた身長を伸ばそうか。そんなことを考えてやっぱりその考えを打ち消すことにする。
このブーツはボクに幸せをくれた大切な物。変な見栄で改造とかするべきじゃない。
「ベルくん……大ぃ好き~~~~~~っ♡」
代わりに大声でボクの想いを夫に伝える。
「どうしたんですか、突然?」
「大好きな人に大好きって言える日常って幸せだなあって思っただけだよ♡」
ボクは今を生きる幸せを胸いっぱいに感じ取っていた。
めでたしめでたし
ダンまち 別に神様の準備したものが短剣でなくても出会いはあったエンド
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