No.77056 雑草という名の草はない(案)【01】dotさん 2009-06-03 17:54:39 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:502 閲覧ユーザー数:476 |
そう、すべてはあの“大災害”だ。あれが私とあの人の距離を、こんなにも遠くしまったのかもしれない。いまさら悔やんでもどうしようもないということなど、わかっていた。わかっていたのだ。でも、頭は理解していても、私の心はそうでなかった…。
私の心はいつもあなたを追っていた。あなたと始めて会ったあの日、私のために泣いてくれたあなた、一緒に笑った時のあなたの笑顔……。
もうすべてが過去の遺物となって、手を伸ばしても届かないところに行ってしまった。それでも私の心は、手を伸ばす。手を伸ばすことやめてしまえば苦しむ必要もなくなるというのに…。
###Piece【01】
「――――を中心に起こった災害は、震度7以上の地震とその日まで降り続いていた豪雨で被害は拡大しました。土砂崩れはもちろん、家屋の倒壊、洪水による―――の決壊、また前日の―――――により救助活動は困難を極め、死者―――人以上、行方不明者59人、負傷者53000人以上にも及ぶ、戦後最大規模の災害になったことから、“大災害”と呼ばれるようになった、といわれています。そして、今日は…………」
……どのチャンネルに変えても、やっているのはあの日のことばかり。それもそのはずだ。だって今日であの災害からちょうど6年が過ぎたのだ。やらない方がおかしいのかもしれない。
あの災害の日、私は葬式で親戚の家に行っていたのだ。その翌日、“大災害”が起こった。まだ、小さかった私は母に抱かれ、近くにあったテーブルの下で丸くなっていたのを覚えている。恐ろしい音を立てて揺れる家に私は、恐怖より驚きが勝ってしまい泣くことさえ出来ずにいた。
食器や小物から私が触れてもビクともしなかった。テレビや冷蔵庫までもが部屋の中を踊っている。そんな光景の中、ふと目の端のほうに何かが映った。
よく見るとそれは私が家から持ってきたペンギンのぬいぐるみだった。あっ……と思い、手を伸ばした瞬間、頭上の大きな音と共にガラスが降り注ぎ、びっくりして手を引っ込める。
母が「何してるの!」と大きな声を上げ、手が切れてないか指先を確認した。私がぬいぐるみに目を戻すと、そこには、割れたガラスが突き刺さり、中から真っ白な綿を出しているぬいぐるみがあった。それを見た私は急に怖くなった。私や母もいずれこうなるんじゃないか、と。
それからの記憶は曖昧で、あの家からどうやって出たのか、この町へ帰ってきたのか、覚えていない。
あれ以来、私は――――――
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友人に誘われて…