No.770419

武道伝 13話

やはからさん

李文達の義勇軍強化のお話です。自分は別に関羽嫌いじゃないですよ。
今は不遇でも将来勇将になる・・・と思います。
恋姫の新作はどうなんでしょうね?追加キャラに褐色いないとか不満なんですが。

2015-04-11 22:47:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1100   閲覧ユーザー数:1023

「無駄に跳ねるな。そんなに飛びたいならここから出ていけ」

 

「なぜ全力で躱さん。受けは悪手、その隙は死に直結すると思え」

 

「腰が高い。馬歩は基本中の基本。それが出来ぬうちに実践など百年早いわ」

 

朝から響く大声。それは李文に弟子入りを申し込んだ者達への怒号であった。先日楽進との一件の後、李文はそれまで拒んでいた星の弟子入りや、護身程度にしか教えていなかった風への指南、さらに義勇軍の希望の者への武術指南を積極的に行っていた。星などは李文が楽進へ

 

「一番弟子は星、二番弟子が風、三番弟子が楽進、お前だ」

 

と伝えたことを知り大歓喜。その日のうちに酒をもって李文の下へ突撃するほどだった。ちなみに楽進も関羽と同様、今回の討伐がうまくいったら真名を預けるということになっている。

 

「とはいえ、さすがに厳しすぎではないか?」

 

まさに死屍累々。先ほどまで馬歩をしていた者は膝が笑っているのかぐにゃりとへたり込んでいる。少し離れたところでは一対五で楽進とその部下達が組み手をしている。李文曰く

 

「戦場で一対一などあるものか。複数と戦うのを常としろ」

 

とのこと。さすがに楽進とも言えど複数相手は辛いようで、何回か倒されているようだ。そして当の李文はと言えば、先ほどから関羽と一対一での打ち合いをしている。打ち合いといっても、関羽に対し李文が先手一突きを入れるだけ、というような様子だ。そして一撃入れた後に、李文によるダメ出しが始まる。これが相当辛い。自分もこの後やられるわけだが、本当に辛い。何せこちらの初動の先んじて一手打たれ、そこで終わるのだ。自分の今までの武が全面的に否定されているような気持ちになる。もちろん李文にはそんなつもりはないのだろうが。

 

「一撃だけではわかりません!その次、さらに次の一打があるはずです。実戦形式と言うなら相手が降参するか倒れるまでやってもいいはずです」

 

そんなことを考えていると、関羽の叫びが聞こえてきた。李文のダメ出しに耐えきれなくなったようである。

 

「やれやれ、やめておけばよいものを」

 

先日の件で、関羽は李文に対し大分信を置き始めたようではあるが、それは頭としてであるようだ。現に、李文にダメ出しの洗礼を受けた夜、酒を持って私の部屋に愚痴りに来ることもあるくらいであった。その内容は『あえて受けての切り替えしもあるだろう』とか、『一撃で勝負が決まることなどほとんどないだろう。実戦を知らないのではないか』と言ったものが多かった。李文に直接挑み、完全に負けた自分としては少々複雑な心境である。関羽の言う『次が』というのは、私自身も同意してしまう。が、反面ただの甘えとも思う。事実、自分は最初の一打で終わってしまったわけであるからだ。

 

「文句があるなら一打入れてから言え。実戦で、など口にするなど百年早い」

 

関羽に対する返答は簡潔かつ取り付く島もない。だが関羽の様子からしても、一度実力差をはっきりさせた方がいいだろう。

 

「よいではないか」

 

「星!」

 

関羽が助けを得たとばかりに笑顔を見せる。すぐに凍りつくことになるのだが。

 

「人とは多少力を持てば天狗になるもの。それを地に落としてやるのも頭の仕事だろう」

 

「その愚をこの前咎めたつもりだったんだがな。まあいい、じゃあ次は降参するか倒れるまでだ。いいな」

 

関羽を見れば、自分が馬鹿にされたと思い顔を真っ赤にさせている。反面、表情に変化はなく、静かに頷くのみ。後が怖いかとも思ったが、自分は思ってことを口にしただけなので気にしない。

 

「難儀ですね」

 

声に振り向けば、いつの間にか楽進と風が立っていた。

 

「仕方ないさ。特にこんなかき集めの軍なのだからな。だからこそ頭は実力をはっきり見せておかねばな」

 

「それほどなのですか」

 

疑問符すらついていない疑問。何が、とも言われない。

 

「少なくとも私が三人いても勝てないだろうな」

 

李文が本気で戦ったのを見たのは、自分と稟と風の三人だけ。それ以外の者は軽く指導で突かれたりしているだけである。そしてそれは負けん気の強い者には反抗心を与えていた。その代表が関羽だったというわけである。

 

「李同臣、いざ」

 

「関雲長、参る」

 

名乗り上げに振り向けば、二人が互いに構え立ち合っていた。李文はいつもの無手、関羽は刃を潰した偃月刀を手にしている。楽進、風の二人も立ち合いに集中し始めたようだ。

 

「はぁ!」

 

先手を仕掛けたのは関羽。逆袈裟の切り上げ。唸りを上げるそれは関羽の剛力を表していた。しかしその一撃はただただ空を切るばかり。李文は半身になって躱すと、擦れ違い様に軽くぺちんと関羽の額を叩いた。強打でもなくただ打っただけ。そのまま距離を取ってしまう。

 

「馬鹿にしているのですか!」

 

この扱いに激情した関羽が再度切りかかる。切り上げ、薙ぎ払い、刺突。そのすべてを躱し、ぺちんぺちんと額を打つ。

 

「このっ」

 

苛立ちまぎれの一振り。先ほどまでに比べ、少しだけ手打ちになったそれを李文は見逃さなかった。先ほどまでと同様に、しかし確実に違う一打で関羽の額をぺちんと叩く。

 

「うぁ?」

 

それだけで関羽の膝が笑い、ふらふらと足取りがおぼつかなくなる。しかしそれでも偃月刀は手放さず、降参の声も上げない。溜息と共に首筋に手刀を振り下した。

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択