No.770011

ごちゆり!5(ココア誕生日SS 2015)

初音軍さん

ココアと千夜のお話。原作でも千夜はココアに対して普通の友達とは違うくらい気合入ってるときありますよね、気が合うからだけではなかなかあそこまではいかないでしょうっていうところから広がった今回のお話でしたw
イラストはこちら→http://www.tinami.com/view/770012

2015-04-10 00:09:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:720   閲覧ユーザー数:719

ごちゆり!5

 

【ココア】

 

 4月が始まって気持ちも新たに授業を受ける私と千夜ちゃん。

休み時間や昼休みにクラスのみんなと談笑をしながら過ごしていて

あっという間にこの日の終わりが近づいていた。

 

 最後の授業を終えて前の席にいた千夜ちゃんと帰宅する準備を始めようとすると

千夜ちゃんが覗き込むようにして私にだけ聞こえるような声で囁いてきた。

 

「ココアちゃん。今日、甘兎庵に来てくれる? ご馳走するから」

「え、ほんと!?」

 

 驚くように言う私も千夜ちゃんにつられて声を抑え気味にして言うと

千夜ちゃんは満足そうにして頷いていた。

 

「えぇ」

「そうだ、チノちゃんに確認しないと~」

 

 学校から出て歩きながら携帯を取り出してチノちゃんと連絡を取る。

普段通りの話し方で特に忙しくないからと了承をもらえた。

だけどチノちゃんの声の中にどこか戸惑いの色を感じたような気がした。

 

「行けるようになったよ、千夜ちゃん」

「じゃあせっかくだからそのままウチに来る?」

 

「いくいく~♪」

 

 少し気になったけれど千夜ちゃんの誘いが魅力的だったから仕事に差し支えなければ

今回は千夜ちゃんのとこに行くことにした。

 

 嬉しそうな表情で世間話に花を咲かせながら歩いていると、

いつの間にか甘兎庵に着いていた。

 

「じゃあ、準備するから中で座って待っててね」

 

 そう言ってお店の中に入っていく千夜ちゃんの後から彼女の甘い匂いが少し残っていて

それが私の鼻をくすぐっていた。何だかこういうの・・・いいなぁって。

 

 ガラッ

 

 千夜ちゃんに言われた通りにお店に入った私は厨房側に近い奥の席に座った。

入り口から最も遠くて見えにくい場所、特に何も意識しないでそこに座ったけど。

後々そこに座ったおかげで色々できて良かったと思えることが起きちゃって。

 

「はい、お待たせ。ココアちゃんに特製のを作ってきたわ。名前はまだない!」

「あはは、何だかどこかの猫ちゃんみたいな感じだね」

 

「私即興で作るの好きだから。今日はココアちゃんの誕生日よね、だから・・・」

「あっそうか~」

 

 でもそれならみんなと一緒にお祝いも賑やかで楽しかったかもと口に出そうとした

けれど、特製のあんみつパフェを目の前に置いて私の向かい側に座った千夜ちゃんの

表情を見てたらすっかりそのことを忘れて見入っていた。

 

 今日の千夜ちゃんはちょっと赤らめて色っぽい雰囲気を醸し出していたから。

思わずゴクッと生唾を飲み込む音が出てしまった。

 

「本当はみんなでお祝いしたほうがいいとは思っていたの。でも不思議ね、

今はココアちゃんと一緒が良くて…。同じ学校通ってるからかしら?」

 

 いつもより饒舌に喋る千夜ちゃん、だけどその言葉にはまとまりを感じられなくて

私はパフェの上に乗ってるアイスが溶けないうちに一口いただいて千夜ちゃんに

声をかけた。

 

「んふ~、冷たくて美味しい。アイスとあんこってけっこう合うもんだね」

「ココアちゃん…」

 

「私も千夜ちゃんと二人きりで楽しいよ」

「ありがとう」

 

 少しテンパり気味に見えた千夜ちゃんも私の行動で少し笑ってくれて落ち着いたみたい。

そんな後に私もびっくりするようなことを彼女の口から出てくる。

 

「あのね・・・これからも仲良くしようねっていう気持ちがあって」

「勿論、私もだよ~」

 

「それとね、私・・・ココアちゃんが好きで・・・」

「えっ?」

 

「あ、あの・・・好きって言ってもそういう変な意味じゃなくて・・・!」

 

 あぁ・・・そういうことだったのかぁ。私はパフェを半分くらいまで食べてから

その話を聞くとスプーンをテーブルに置いて千夜ちゃんの頭に手を置いた。

撫でるでもなくそっと乗せてから滑るようにゆっくりと頬へ移動する。

 

「変ってどういうの?」

「し、親友って意味で」

 

「もう私達親友じゃない」

 

 私は笑顔を浮かべながら千夜ちゃんに言うとちょっと表現し辛そうに苦笑いを

浮かべていた。

 

 多分この表情は伝えたいことがあるけれど直接言えない、意を決して言おうとしても

途中から別のことを話し始めたり別の意味合いのことを告げちゃう、そんな複雑そうな

顔に見えた。

 

 別に経験したり、そういうことを知っているわけでもないけれど私の直感が

私にそう告げていた。言いたいことが言えなくて苦しそうにしている千夜ちゃんを

見ていられなくて私の本心を素直に優しく伝えた。

 

「私も千夜ちゃんが好きだよ。それはもう親友を超えちゃいそうな勢いで」

「ココアちゃん・・・?」

 

 ジッと千夜ちゃんの目を見て話すと千夜ちゃんはみるみる内に顔を真っ赤にして

言葉に詰まっているのを見るとあまりの可愛さに私は少し俯いていた千夜ちゃんの

顎に指を移してくいっと軽く持ち上げる。

 

 お互い熱があるような赤みがかった顔を見ながら少しずつゆっくりと顔を近づけて

優しく口付けをした。

 

 さっき食べたパフェのせいかキスをし続けているとクリームやあんこの風味が

ふわっと鼻から抜けて甘い香りがした。

 

 柔らかい唇を離すと千夜ちゃんの目がうるうると涙目っぽくなっていてびっくりした。

 

「もしかして嫌だった!?ごめんね、千夜ちゃん!」

「ううん・・・全然嫌じゃなかった。嬉しかったの・・・」

 

 そんな千夜ちゃんの表情を見て、胸を打たれるような衝撃を感じていた。

その後に目の前にいる一生懸命に想ってくれている子を見ているとこみ上げるように

愛おしい気持ちが私の中であふれ出てきた。

 

「千夜ちゃん・・・!」

「ココアちゃん・・・!」

 

 今日はお客さんの入りがほとんどなくて、私達の姿が目に入る位置には誰も座って

なかったから。私と千夜ちゃんは想いが通じ合った今、誰にも遠慮することなく

抱きしめていた。その間、千夜ちゃんは嬉しそうに。

 

「ココアちゃん、キスとても甘かったわ。まるでココアちゃんの味のようだった」

 

 そんなこと言うから私も千夜ちゃんの味みたいだったよって返して二人して

微笑んでいた。

 

 それからしばらくの間、二人の時間を味わった。

時々お客さんの注文や会計に席を立つことはあったけど、何だか特別な時間を過ごせたよ。

その後にみんなでも誕生日パーティーをして楽しかったけれど。

 

 今日という日が全て終わって・・・夜、ベッドに入って目を瞑った時に浮かんだのは

赤らめながらも嬉しそうに微笑む千夜ちゃんの表情だけだった。

あの柔らかくて優しい笑顔をずっと見ていたくて、悲しい顔をさせたくないと思った。

 

 お互いの気持ちがわかっただけでこれから劇的にお互いのすることは変わらないと

思うけど、今までよりも強く支えあっていきたいなと感じていた。

 

 月明かりに部屋が照らされ、私は千夜ちゃんと触れた唇に人差し指で触れて

端から端になぞっていってその指を目の前まで持ってきて、ジッと見つめながら

口を重ねたことを思い出しながらゆっくりと瞼を閉じて眠りに就いた。

 

 これからも愛しい日々が送れるよう願いを込めて。

 

お終い

 


 
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