No.769247

九番目の熾天使・外伝 ~vsショッカー残党編~

竜神丸さん

パーフェクトハーモニー

2015-04-06 01:26:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1794   閲覧ユーザー数:956

「剣崎……剣崎なのか…?」

 

人造ファントム研究所での戦い。そこに突如参戦したブレイドジョーカーを見て、驚いているカリスがその名前を呟いた。ブレイドジョーカーの仮名だろうか。マンティスアンデッドの例もある事から、少なくともアンデッドに日本語の真名は持たない筈。そんな事を考えつつも、ヒートはオールオーバーを構えているブレイドジョーカーの全身を隅々まで観察する。

 

「えぇい、何をしてる!? メイジ、そのジョーカーも一緒に仕留めろ!!」

 

「ッ……了、解…!!」

 

「ウェイッ!!」

 

「うぁ!?」

 

ケプリの指示でブレイドジョーカーに立ち向かうメイジだったが、振り下ろしたスクラッチネイルはオールオーバーで弾かれ、逆にオールオーバーの柄で殴り返される。横から割って入って来たカーバンクルやシオマネキングの妨害を物ともせず、ブレイドジョーカーは一人で多くの相手を圧倒してみせる。

 

「青いジョーカー…!」

 

そんなブレイドジョーカーを見たウォーロックは、すかさずブレイドジョーカーと掴み合いになっていたシオマネキングを斬り裂き…

 

「―――すいませんでしたぁっ!!!」

 

「ウェ!?」

 

「…は?」

 

ブレイドジョーカーの前で、華麗な土下座を披露する。突然の土下座にブレイドジョーカーが驚き、それを見ていたヒートが思わず呆けた声を出す。

 

「さっき、敵と勘違いしてあなたを倒そうとした事!! 本当にすいませんでした!!」

 

「ウェ……あ…え…?」

 

仮面ライダーが土下座して謝罪している。そんなシュールな光景を目の前にしたブレイドジョーカーも流石に呆気に取られるが、そんな二人に隙ありと言わんばかりにバケネコが飛びかかるも…

 

「そぉい!!」

 

「フシャアッ!?」

 

「アンタ、どうでも良いところで器用よね!!」

 

土下座の姿勢から放った後ろ蹴りで、ウォーロックに蹴り飛ばされる。蹴り飛ばされたバケネコはマンドレイクレジェンドルガに激突し、その近くではヒートがガルドミラージュに往復ビンタをかまし続けており、そんな光景にブレイドジョーカーは少しばかり呆けて硬直する。

 

「剣崎!!」

 

「…!」

 

そんなブレイドジョーカーの横に、ショッカー戦闘員を斬り倒してからジャンプして来たカリスが着地する。

 

「やはり、お前は剣崎なんだな…?」

 

「…始」

 

「感動の再会のところ悪いけど、状況を忘れないで欲しいわね!!」

 

「「!!」」

 

モグラロイドを殴り倒すヒートの言葉に、二人はすぐさま飛びかかって来た毒トカゲ男とシオマネキングを蹴り倒す。

 

「剣崎…」

 

「…ごめん、始。話はまた後になる」

 

≪アロー・ナウ≫

 

「はぁっ!!」

 

ブレイドジョーカーはそれだけカリスに告げてから、メイジの放つ魔力エネルギーの矢をオールオーバーではたき落とし、メイジに向かって行く。カリスも襲い掛かって来たマンドレイクレジェンドルガに応戦し、伸ばしてきた植物をカリスアローで根元から斬り落としてから二枚のラウズカードを取り出す。

 

「邪魔だ……消えろ!!」

 

≪DRILL≫

 

≪TORNADO≫

 

≪SPINNING ATTACK≫

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「ギシャァァァァァァァッ!?」

 

ラウズカードをカリスラウザーにラウズし、風を纏った状態のまま空中で錐揉み回転するカリス。竜巻のように回転しながらマンドレイクレジェンドルガに向かって突撃し、その身を粉々に粉砕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁっ!!」

 

「く…!?」

 

一方でウォーロックは、ウォーロックソードでメイジのスクラッチネイルを受け止めているところだった。互いの武器を掴んだまま二人は壁まで走り、ウォーロックがメイジに壁に押さえつけられる形になる。

 

(くそ、これじゃ上手く反撃出来ない…!!)

 

「ウェイ!!」

 

「く!?」

 

そこにブレイドジョーカーが飛び蹴りを繰り出し、メイジを蹴り飛ばしてウォーロックを助け出す。

 

「青いジョーカーさん…!」

 

「彼女を助ける方法は分かっている……俺と君で、彼女を助けたい!! 手を貸してくれ!!」

 

「…助かります!! ところでジョーカーさん、お名前は?」

 

「…剣崎一真だ。君は?」

 

「僕はウルティムス、ウルで構いません」

 

「ッ……はぁ、はぁ…!!」

 

≪サンダー・ナウ≫

 

「「ッ!?」」

 

二人が互いに自己紹介する中、フラフラしながらも立ち上がったメイジがサンダーリングを翳し、出現した魔法陣から強力な雷撃を放ち、それが二人に襲い掛かる。ウォーロックはすかさず身構えるも、ブレイドジョーカーが彼の前に立ち…

 

「ッ…ウェアァ!!」

 

「!? うぁ!?」

 

飛んで来た雷撃をオールオーバーの刃先に纏わせ、そのままメイジの方へと跳ね返す。想定外の行動に驚いたメイジはそのまま跳ね返された雷撃を受け、蓄積されたダメージの影響でその場に膝を突く。その隙をウォーロックは逃がさない。

 

≪ブリザード・ナウ≫

 

「!? く、ぁ―――」

 

「一真さん!!」

 

「…!!」

 

ウォーロックの放つ冷気がメイジを襲い、彼女の全身を凍りつかせる。その間にブレイドジョーカーはオールオーバーに再び電流を纏わせ、大きく跳び上がる。

 

「ッ…ウェェェェェェェェェェェェイ!!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ブレイドジョーカーの振り下ろしたオールオーバーが、凍っているメイジの身体を一閃。斬られたダメージと電流によるダメージが同時に襲い掛かり、メイジは成す術も無く吹き飛ばされ、床を転がり続けた後にようやくメイジの変身が解け、少女は床に倒れたまま意識を失った。

 

「よし、後は…」

 

-グシャッバキバキバキ!!-

 

ブレイドジョーカーは少女の下に駆け寄り、少女の首元に付いていた首輪を握って粉砕。そのまま強引に取り外した事で、少女の身体から完全に瘴気が取り払われた。

 

「一真さん! 彼女は…」

 

「あぁ、もう大丈夫だ」

 

「! 良かった…!」

 

ウォーロックが安堵する一方で、それを見ていたケプリと蜂女はかなり動揺していた。

 

「そんな、強制洗脳リングが…!?」

 

「くそ!! 俺様は大首領様の下に戻る、この場は任せるぞ蜂女!!」

 

ケプリがその場から撤退した後、蜂女は怪人達と戦っている仮面ライダー達を忌々しげに睨みつけ、一番近くにいたヒートに狙いを定める。

 

「こうなればせめて、一人だけでもライダーを…!!」

 

「! おっと」

 

蜂女の突き立てたワスプフルーレも、ヒートには簡単に回避される。ヒートは蜂女の右手を蹴りつけてワスプフルーレを弾き上げ、蜂女の首元と右腕を掴む。

 

「ぐ、この…」

 

「あら、昆虫が火に近付いて良いのかしら?」

 

「!? グァァァァァァァァァッ!!!」

 

ヒートの両手に熱エネルギーが集まり、それが蜂女の全身を激しく炎上させる。蜂女が悲鳴を上げながら床を転がり回る中、ヒートは「考える人」のようなポーズをしながら蜂女を見下ろす。

 

「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「へぇ、まだ動けるのね」

 

苦し紛れに蜂女が掴みかかって来るのをヒートはヒラリと避け、ロストドライバーから抜き取ったヒートメモリを腰のスロットに挿し込む。その近くではウォーロックもトドメ用のリングを翳し、カリスもまた一枚のラウズカードを抜いてカリスラウザーに通す。

 

「さぁ、そろそろ終幕といきましょうか!!」

 

≪イエス・キックストライク! アンダースタンド?≫

 

「それが良いわね。ここに長くいても、あまり良い気分はしないもの」

 

≪ヒート・マキシマムドライブ!≫

 

「…決めるぞ!!」

 

≪CHOP≫

 

「「グガァァァァァァァァッ!?」」

 

カリスは手に持っていたカリスアローを放り捨て、左右から飛びかかって来る毒トカゲ男とシオマネキングにそれぞれヘッドチョップを炸裂させ、毒トカゲ男とシオマネキングが爆発する。

 

「ライダーキック……たぁっ!!」

 

「ば、馬鹿な…ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!?」

 

ヒートのライダーキックは蜂女に、ウォーロックのストライクウォーロックはカーバンクルに命中。同じタイミングで爆発が起こる。

 

「ウェェェェェェェェェェェェイ!!」

 

「「「ガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」

 

最後はブレイドジョーカーが残るモグラロイド、ガルドミラージュ、バケネコを順番に斬り裂いて行き、三体も同時に爆散。先程撤退したケプリを除く怪人達は一体残らず全滅し、彼等はそれぞれの変身を解除する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…フゥー…フゥー……ッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ただ一人、ブレイドジョーカーを除いて。

 

「! 剣崎、お前…」

 

「……」

 

怪人達が殲滅された後、ブレイドジョーカーは手に持っていたオールオーバーを床に落とし、僅かに震えている右手を左手で掴む事で押さえつける。その様子に気付いた始が呼びかけるも、ブレイドジョーカーがそれに返事を返す事は無く…

 

「!? 剣崎ッ!!」

 

ブレイドジョーカーはその場から跳躍し、研究所の天井を突き破る形で外へと飛び出して行ってしまう。三人は飛び出した彼を追いかけるも、研究所から出て来た頃には、ブレイドジョーカーは既にその姿を眩ましてしまっていた後だった。

 

「一真さん、一体何処へ…?」

 

「彼の後は、追わない方が良いわ」

 

剣崎を探そうとするディアーリーズを、ハルカが制止する。

 

「ジョーカーは元々、本能のままに他のアンデッドを封印していく存在。恐らくだけど、彼は自分の中で暴れているジョーカーの本能を必死に抑えようとしてるのよ。人としての理性を失う事で…………相川始、同じジョーカーであるあなたを攻撃しないように」

 

「ッ……剣崎…」

 

「…まずは装置を破壊しましょう。ウル、装置の場所は何処かしら?」

 

「あ、はい! 場所はこっちです」

 

始の表情を見て彼の心情を察したハルカは、先に結界維持装置を破壊するべく研究所内へと戻って行き、ディアーリーズも彼女を案内するべくそれに付いて行く。始はただ一人、その場に立ち尽くしたまま空を高く見上げる。

 

「何故だ……何故お前は、そこまでして…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に不思議。我、全く想像出来なかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!」

 

ふいに横からかけられた声。始は声のした方向を振り向いて即座に身構え、そんな彼の前にはゴスロリ風の服を着た少女が姿を現す。

 

「貴様……アンデッドか」

 

「我、カテゴリーK……枯葉。そう呼んで欲しい」

 

 

 

 

 

 

ハートスートのカテゴリーK、パラドキサアンデッド。

 

 

 

 

 

 

少女の姿に化身し、彼女は相川始―――ジョーカーに接触を図るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、炭鉱では…

 

 

 

 

 

 

-ズドンッズドンッズドォンッ!!-

 

「「「「「イィーッ!?」」」」」

 

テレポートの魔法を使ったハルト、そして刃と幸太郎の三人がやって来ていた。しかし現時点で既に多くの怪人や戦闘員達が炭鉱の警備に集まっていた為、刃は自身のデバイス“ハーディス”を使ってショッカー戦闘員達に銃撃を浴びせ続けている。

 

「…やれやれ、こうも数が多いと厄介極まりないですね」

 

「はは、それは確かに…っと!」

 

「グゥ!?」

 

「よいしょお!!」

 

「ガァッ!?」

 

「「「イィー!?」」」

 

刃は敵の数の多さに愚痴を零し、幸太郎は殴りかかって来たカブトヤミーを殴りつけ、ハルトはスロースオルフェノクの鉤爪をかわしつつ下からスロースオルフェノクを持ち上げ、近くにいたショッカー戦闘員達のいる方向へ投げつける。

 

「さぁて、そろそろ来る頃だと思うけど…」

 

「グギャ!?」

 

「ふっ!」

 

そんな時、突然青鬼のようなイマジンが現れてメ・ギノガ・デを殴り倒した。その青鬼のイマジンを見た幸太郎は「おっ来た来た」と言うかのように笑みを浮かべ、青鬼のイマジンも幸太郎の下まで駆け寄った。

 

「遅くなってすまない、幸太郎」

 

「いや、ナイスタイミングだ。行くぞテディ」

 

青鬼のイマジン“テディ”が到着した為、幸太郎は出現したNEWデンオウベルトを腰に装着。一定のメロディが流れ始め、ライダーパスを手に持って構える。

 

「よぉし、ちゃっちゃとアイツ等ぶっ潰しちゃおうか。コウタちゃん、執事ちゃん!」

 

≪ドライバー・オン≫

 

「何故にちゃん付けですか? まぁ良いですけど」

 

≪トリガー!≫

 

ハルトに「執事ちゃん」呼ばわりされた事に疑問を抱きつつも、刃は腹部にロストドライバーを装着し、拳銃のような形をした『T』と描かれた“トリガーメモリ”のスイッチを押し、メモリスロットに装填。ハルトは出現させたウィザードライバーのハンドオーサーを操作し、フレイムウィザードリングを嵌める。

 

≪シャバドゥビタッチ・ヘンシーン…≫

 

「「「変身!」」」

 

≪トリガー!≫

 

≪フレイム・プリーズ! ヒーヒー・ヒーヒーヒー!≫

 

≪Strike Form≫

 

刃はトリガーメモリの装填されたメモリスロットを横に倒し、ハルトはフレイムリングをウィザードライバーに翳し、幸太郎はライダーパスをNEWデンオウベルトに翳し、変身を開始する。

 

「「「「「イィィィィィッ!?」」」」」

 

変身中の彼等を攻撃しようとするショッカー戦闘員達だったが、変身中も刃のハーディスに銃撃されてそれは叶わない。その間にも刃は全身が青色のエネルギーに包まれ、仮面ライダートリガーに変身。ハルトは赤い魔法陣を通過してウィザード・フレイムスタイルに変身。そして幸太郎は全身がフリーエネルギーに包まれ、更にデンレールやターンテーブルを模したオーラアーマーを装備し、仮面ライダーNEW電王・ストライクフォームへの変身を完了する。

 

「テディ」

 

「あぁ……フッ!」

 

「「ガァッ!?」」

 

NEW電王が二回指を鳴らし、テディはジャンプすると同時に大剣“マテェーテディ”に変化。マチェーテディは空中に浮遊してからイカジャガーヤミーとリザードマンを攻撃し、そしてNEW電王の右手に収まる。

 

「テディ、カウントは15秒だ」

 

『分かった』

 

「ヌゥ!? 何を……ガァアッ!?」

 

『15……13……12……』

 

マチェーテディがカウントを開始し、NEW電王はまず最初に目の前にいたイカジャガーヤミーを斬り裂き、次にスロースオルフェノク、その次にリザードマン、その次にシャークファンガイアと、迫って来る怪人達を一体ずつ順番にマチェーテディで斬りつけていく。

 

≪キャモナスラッシュ・シェイクハンズ…≫

 

「おっしゃあ!! ならこっちも…」

 

≪フレイム・スラッシュストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!≫

 

「どぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「「「「「イィーッ!!?」」」」」

 

『11……10……9……』

 

ウィザードも負けじとウィザーソードガンから炎の斬撃を放ち、炭鉱の洞窟前で待ち構えていたショッカー戦闘員達を纏めて一閃。一気に大量の戦闘員を撃破する。

 

「おやおや。二人だけであの活躍じゃ、私も出番は無いかもですね…っと」

 

『8……7……6……』

 

トリガーはやれやれと言った様子で溜め息をつき、ウィザードが撃破し損ねたショッカー戦闘員やチャップ、マスカレイド・ドーパント逹にトリガーマグナムで銃撃を浴びせていく。その間にも、マチェーテディのカウントは終わりに近付いていた。

 

「さぁて…」

 

≪Full Charge≫

 

『5……4……』

 

「お、おのれぇ―――」

 

「はぁ!!」

 

「グギャアッ!?」

 

NEW電王はライダーパスをベルトに翳し、マチェーテディにフリーエネルギーをチャージ。そこへギルガラスが飛びかかるも、NEW電王は焦らずに飛んで来たギルガラスの身体を蹴りつけ、地面に降りたところを右斜めに斬る形でまず一撃。そして…

 

『3……2……1……』

 

「でやぁ!!」

 

「ギャァァァァァァァァァッ!!?」

 

『…0!』

 

トドメにもう一撃、ギルガラスを楯に斬り裂く。ギルガラスを含めNEW電王に斬られた怪人達は爆散し、同時にマチェーテディのカウントも終了した。

 

『お見事』

 

「ふぅ……ま、ひとまずはこんなところか」

 

「さぁて、さっさと進んじゃおうぜ」

 

洞窟前の怪人達は一掃された為、三人は洞窟内へと進み始める。洞窟内には怪人や戦闘員の姿は無く、三人はある程度進んだ先で少し広めの空間に辿り着く。そこには長く敷かれた線路、その線路の上に乗ったトロッコ、発掘されたと思われる鉱石の積まれた木箱などがあった。

 

「さっさと装置を見つけようじゃないの。俺は早く帰って、カンドロイドちゃん達の整備をしたい」

 

「せっかちですねぇ……まぁ私も、こんな薄暗い場所に長々と留まるつもりはありませんが」

 

「分かってるって二人共。装置の場所はこの一番奥で間違いない、このまま進んで行けば…」

 

-ズドドドドォンッ!!-

 

「問だ…がぁあっ!?」

 

『幸太郎!?』

 

「コウタちゃん!?」

 

「野上さ…ッ!? チィッ!!」

 

直後、NEW電王のボディに何発もの銃弾が命中した。それを見たウィザードがNEW電王に駆け寄り、トリガーは飛んで来る銃弾を察知して素早くトリガーマグナムで撃ち落とす。すると物陰に隠れていたゼクトルーパー逹が一斉に姿を現し、三人を取り囲む形で一斉にマシンガンブレードを構える。

 

「く、何だコイツ等…!?」

 

「ゼクトルーパーか……あれ? アイツ等、黄色いラインなんてあったっけ…?」

 

ハルトの言葉通り、現れたゼクトルーパー逹はヘルメットとボディスーツに黄色のラインが入っていた。見覚えの無いゼクトルーパーのデザインにハルトが首を傾げたその時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々シャドウが、戦いに置いて最も重視している物…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!」」」

 

三人の前に、黒スーツにネクタイを着用した一人の男が姿を現した。

 

「それはパーフェクトハーモニー、つまり完全調和だ。その調和を乱す仮面ライダーは、ショッカーにとっては不協和音でしかない」

 

「…ふぅん。おたく等、一体何者だ?」

 

「我等はショッカー直属の精鋭部隊、シャドウ。このショッカーワールドにおける不協和音は、我々シャドウが全て取り除く」

 

「おいおい、いきなり何を言って……どわっ!?」

 

「!? 今のは…ぐっ!!」

 

突如、何処からかザビーゼクターがブンブン音を立てて飛来。ウィザードとトリガーの仮面に攻撃してから高速で飛んでいき、男の右手に収まる。

 

「貴様等の相手は、この矢車率いるシャドウが引き受けよう……変身」

 

≪HENSHIN≫

 

シャドウの隊長―――矢車想は、ザビーゼクターをライダーブレスにセット。その全身がアーマーに包まれ、仮面ライダーザビー・マスクドフォームへの変身を完了する。

 

「な、仮面ライダー…!?」

 

「あれは、支配人さんが団長に貸していたのと同じタイプ…!?」

 

「…おいおい、マジかよ」

 

幸太郎と刃はザビーを見て驚愕し、ただ一人ザビーの能力を知っているハルトだけは、その表情に焦りが浮かび上がる。

 

「マスクドライダーシステム第2号、ザビー……お前達の内の一人は、この俺が相手を務めよう」

 

「ッ……コウタちゃん、執事ちゃん、アイツを仕留めるぞ!! 奴に脱皮をさせるな!!」

 

「!? ハルトさん、どういう事で…」

 

「良いから早くしろ!! アイツはガチで厄介だ!!」

 

「させると思うか? 全小隊、撃て!!」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

「ッ…マズい!!」

 

ザビーの指示で、ゼクトルーパー逹は一斉に射撃開始。三人は岩壁の陰へと隠れ、ゼクトルーパー逹の銃撃を上手く回避する。

 

「あのライダーは俺がやる、二人は他の連中をよろしく!!」

 

「な、おい!? 本気かよ!!」

 

『勝てる算段はあるのか?』

 

「何、この俺に任せときなって!!」

 

≪インフィニティー・プリーズ! ヒースィーフードー・ボーザバビュードゴーン!≫

 

ウィザードは迷わずインフィニティースタイルに変化。ドラゴンが変化した武器―――アックスカリバーを手に取ってからゼクトルーパー逹の方へと突撃する。

 

「撃て!!」

 

「そーんーなーもーんーはー…効かねぇぞぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「「「ぐわぁっ!?」」」

 

ゼクトルーパー逹の一斉射撃を受けても、ウィザードの装甲には一切の傷が付かなかった。ウィザードはそのままアックスカリバーで二、三人のゼクトルーパーを一閃し、そのままザビーの方へと突撃していく。

 

「ふん…」

 

ザビーは焦る事なく左腕のザビーゼクターに手をかけ、ゼクターウイングを裏返す。するとザビーの上半身の装甲が展開準備に入り…

 

「キャストオフ!」

 

≪CAST OFF≫

 

「!? うぉ、く…!!」

 

≪CHANGE WASP≫

 

ザビーゼクターを180°回転させ、ザビーの装甲が一斉に弾け飛ぶ。弾け飛んだ装甲が命中してウィザードが一瞬だけ怯み、その間にザビーはよりスマートな姿“ライダーフォーム”への二段変身を完了する。

 

「クロックアップ」

 

≪CLOCK UP≫

 

「あ、ヤバ……どぁ!?」

 

クロックアップを発動した瞬間、ザビーはその場から一瞬で姿を消す。直後にウィザードのボディに何度もザビー攻撃が命中し、そこまでダメージは無くともウィザードをある程度は怯ませる。

 

「この……やってくれるじゃねぇか!!」

 

≪インフィニティー!≫

 

ウィザードもすかさずインフィニティーリングを翳し、時間干渉による高速移動を発動。クロックアップの時間の中にいるザビーに追いつき、彼と激しい戦闘を繰り広げる。そんな二人の戦闘は、トリガーやNEW電王達には速過ぎて目で見ても分からないくらいだった。

 

『あの二人、高速移動が出来るのか!』

 

「へぇ、ならアイツはハルトに任せりゃ大丈夫かな?」

 

「そのようですね。ならば私達は……そこらの雑魚を片付けるとしましょうか!!」

 

「「「ぐぁあっ!?」」」

 

トリガーは上手く隙を突いて、岩壁からゼクトルーパー逹を狙撃。NEW電王もすかさず岩壁から飛び出し、マシンガンブレードから仕込みナイフを出したゼクトルーパー逹をマチェーテディで薙ぎ払っていく。

 

「ぐふっ!?」

 

その内、NEW電王に蹴り飛ばされた一人のゼクトルーパーが地面を転がる。するとゼクトルーパーの身体に変化が起こり、ワーム・サナギ体としての正体を現す。

 

「!? コイツ等、やっぱり人間じゃないみたいだな…!!」

 

「なるほど、ならば遠慮はいりませんねぇ!!」

 

≪トリガー・マキシマムドライブ!≫

 

「ライダーシューティング!!」

 

「「「な…グワァァァァァァァァッ!?」」」

 

トリガーマグナムから放たれた一発の球状エネルギー弾が、数人のゼクトルーパー逹に命中し爆発。すると直撃を免れた二体のサナギ体が、突如全身が赤くなって脱皮を開始する。

 

「ギギギギギギギギ…!!」

 

「!? アイツ、成長するのか…うわっ!?」

 

「何…がぁっ!?」

 

脱皮したサナギ体はそれぞれセクティオワーム、タランテスワームに成長。セクティオワームはクロックアップの中にいるザビーとウィザードの方に向かい、タランテスワームはNEW電王に襲い掛かる。

 

「くそ、厄介だなコイツ等…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉらぁっ!!」

 

「ふ…!!」

 

一方で、クロックアップ発動中の二人も、壁や天井を蹴る形で素早く移動しては互いに攻撃し合っていた。ウィザードの繰り出すキックをザビーが両腕でガードし、ザビーの繰り出すパンチをウィザードが華麗かつ豪胆に受け流し、二人の繰り出したキックが相殺されるなど、互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げている。

 

「ちょいと聞くけどさぁ、おたくも仮面ライダーだろ!? 何でショッカーに従っている!!」

 

「ショッカーの掲げる正義こそが、この世に秩序を保ち平穏を齎す。それを邪魔する者は、誰であろうと我々は存在を許さない」

 

「許さないって……ん?」

 

ザビーと掴み合いになったその時、ザビーのボディから一瞬だけ紫色の瘴気のような物が噴き出た。それに気付いたウィザードは、ショッカーワールドにやって来た直後の事を思い出す。

 

(そういや、ハルカちゃんが瘴気のような物について色々言ってたな。今の瘴気……まさか、洗脳か?)

 

「ギギギッ!!」

 

「おっと危なぁい!!」

 

「ギィ!?」

 

そこにセクティオワームも参戦し、ウィザードの足を引っ掛けて彼を転ばせようとする。しかしウィザードはそれを利用して回転し、セクティオワームの脳天に蹴りを喰らわせる。その間もウィザードは、何度も攻撃して来るザビーを応戦しながら観察する。

 

「(ショッカーは改造技術に秀でている。だとすれば薬物か、機械による洗脳か)…何にせよ、まずは変身を解除させねぇとなぁ!!」

 

「ギギッ!?」

 

セクティオワームをアックスカリバーで斬りつけてから、ウィザードはザビーに向かって斬りかかる。ザビーはそれを前転して回避し、起き上がると同時にマスクドライダー共通の武器“ゼクトマイザー”を何処からか取り出して構える。

 

「無駄だ。貴様に攻撃などさせん」

 

「ん……え、ちょおっそれはズルくねぇ!?」

 

≪コネクト・プリーズ≫

 

ゼクトマイザーからは蜂型のメカ“マイザーボマー”が何機も放出され、それらが一斉にウィザードに向かって襲い掛かる。ウィザードはコネクトで取り出したウィザーソードガンでマイザーボマーを撃ち落としていくが、反応が間に合わず何機かはウィザードのボディに命中して爆発する。

 

「貴様のその姿、インフィニティーだったか? その固い装甲は斬撃や打撃は受けつけないが、爆発などによる衝撃を防ぎ切れない。大首領様から聞いていた通りだな」

 

「何、大首領だと……うぉ!?」

 

「貴様では、我々に勝つ事は出来ない!!」

 

「ギシャアッ!!」

 

「あ、ちょ……が、ぐ、どぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

隙を突いてザビーがウィザードを蹴りつけた後、セクティオワームが腕の鎌を使ってウィザーソードガンを地面に叩き落とし、残っていたマイザーボマーがウィザードに総攻撃を仕掛ける。単体では威力の低いマイザーボマーも大量に集まれば破壊力は大きく、流石のウィザードも吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまう。

 

「さぁ、諦めて降伏しろ」

 

「あ~らら、もしかしなくてもピンチかこりゃあ?(くそ、こうなりゃ一か八か…!!)」

 

無駄の無い戦闘スタイルを見せつけ、反撃の隙を与えようとしないザビー。ウィザードも今のままでは勝ち目が薄いと判断し、黄金の台座に赤、青、黄、緑、そして水色の宝石が埋め込まれたリングを取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシシシシシッ!!」

 

「うぁっ!?」

 

「チィ、このぉ!!」

 

一方で、NEW電王とトリガーの二人もタランテスワームやゼクトルーパー逹を相手に苦戦していた。タランテスワームはクロックアップでNEW電王を何度も攻撃し、トリガーがタランテスワームを狙い撃とうとするも上手く銃撃が当たらない。おまけにタランテスワームを狙っている最中も他のゼクトルーパー逹に攻撃される為、なかなか勝ち目が見えて来ない。

 

「はぁ、はぁ、くそ……刃!! 何でも良い、何かこの状況を打破出来る方法は無いか?」

 

「ッ……一応、あると言えばあります! ですがこれは、下手をするとあなたとハルトさんも巻き込みかねない物ですが…?」

 

「何でも良い、やれるならよろしく…っと!!」

 

「…仕方ありませんね」

 

トリガーは構えていたトリガーマグナムをその場に放り捨て、トリガーメモリを抜き取ってから代わりに一本のガイアメモリを取り出す。それは黒い文字で『D』と描かれたメモリだった。

 

「では、行きますよ…!」

 

≪デスティニー!≫

 

トリガーはデスティニーメモリをメモリスロットに装填し、そのままメモリスロットを横に倒す。

 

≪デスティニー!≫

 

「…ぐっ!? うがぁ、あ…ぁ……あぁっ!! が、ぁ…ぐぅ…!!」

 

「!? おい、刃…!?」

 

その瞬間、トリガーの全身に黒い電流が流れ始める。NEW電王が不安そうに呼びかけるが、トリガーは電流に苦しみながらも決して倒れない。

 

そして、トリガーの全身が黒い瘴気状のオーラに包まれていき…

 

「ぁが、ぅ…うぅぅゥゥゥゥォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

黒いオーラが全て、衝撃波と共に一瞬で払われた。その衝撃波は周囲にいたNEW電王、タレンテスワームやゼクトルーパー逹、そしてクロックアップの時間の中にいたウィザードやザビー逹にも大きく影響した。

 

「な、うぉっ!?」

 

「「「「「うわぁあっ!?」」」」」

 

「「ギシャッ!?」」

 

「ぐ、何だ…!?」

 

「うぉっと!? ん……あれは、執事ちゃん…?」

 

ウィザードの視線の先には、ある一人の戦士が立っていた。上半身はトリガーと同じ青。しかし下半身はトリガーの時とは違い白。背中には赤い翼のような装飾が、左右でそれぞれ三枚ずつ。仮面には黄色のアンテナらしき触角と、緑色の複眼が二つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーデスティニー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが“運命”の記憶を司る、新たな戦士の名称だった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択