第46話 水晶の献策
「いえ、冬に攻めるべきです。」
下邳城をどうするかという話になり、皆が“棚上げ”に傾くなか、一人、水晶が冬攻めを提案した。そうか、その手があった。“水攻め”だ。呂布が下邳城にたてこもったとき、
「水攻め?」
「さすがは一刀さんですね。その通りです。水没させて包囲すれば士気は一気に下がり、降伏する者も多く出るでしょう。」
「泗水と沂水!」
朱里が驚きの声をあげた。
「なるほど……。」
「早期決着が望ましいとなれば、それもありでしょうね。」
軍師たちはなるほどと頷いたり驚いたりだった。武官で理解しているのは……まあいいか。
「やろう。水晶、作戦の説明をお願い。」
「かしこまりました。」
すると、珍しく桃香から想定通りの疑問が出た。
「ねえご主人様、水没させちゃったら作物とかに問題が起きると思うんだけど……。」
「“水”だから大丈夫だと思うよ。“海水”だと大変だけど。」
「泗水は悠煌と桔梗。沂水は星と焔耶。失敗は許されない。確実にやってくれ。」
「は!」
それから数時間後、無事?下邳城は水没した。
「さて、あとは“山” のんびり包囲しましょう。」
数日後、敵は全面降伏した。よくこの水の中で数日、抗戦しようと思ったものだなあ……。
陶謙老人は既に自決していた。陶商と陶応は処断した。
「問題は……。」
「下邳の住民の調略ですか?」
俺の呟きに応じたのは福莱だった。そう、いくら俺たちの評判が良くても、彼らからすれば、税を上げ、何より住むところを水浸しにして暮らしに多大な損害を与えた“敵”なのだ。
「ああ。何か案があるの?」
「暮らしの損害をこちらで補填してあげれば大丈夫だと思います。ただ、今度はこちらが水攻めをされる可能性を頭に置いておかなければなりませんがね。」
「なるほど……。」
そうだ。曹操の両親。何としても秘密裏に探し出さなければ。両親を殺害されたことに怒った曹操は徐州で凄まじい殺戮行為を行う。“徐州大虐殺”だ。これの芽は摘んでおかなくてはいけない。おいおいでいいか。やるべきことは山ほどある。とりあえず下邳城で会議だな。
後書き
孫家編でやった(やってしまった)ものを長々やってもつまらないでしょうし、短めですがご容赦下さい。
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第5章 “貞観の治”
これは唐の内政充実期の別名を使っております。