No.766948 九番目の熾天使・外伝 ~vsショッカー残党編~竜神丸さん 2015-03-26 01:35:19 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1525 閲覧ユーザー数:799 |
-ポォーッ!!-
汽笛が鳴り響くと共に、時空を超えてショッカーワールドへと到着したオーライナー。線路が地上に降りると共にオーライナーもその上を走って地上に降り立ち、ブレーキをかけて停止する。
「―――うし、到着」
王騎は変身を解除して支配人の姿に戻り、オーライナーから地面に降り立つ。それに続く形でokaka、刃、ディアーリーズ、ハルカ、ハルトも同じように地面に足を付ける。
「ふぅん、空が随分と真っ暗な世界ね」
「月も星も見えないな……次元世界同士が融合した影響か…?」
ハルカとokakaが見上げるその上空は、月や星が全く見えない紫色の空だった。おまけに彼等の周囲では何やら瘴気のような物が蔓延しており、ディアーリーズはその瘴気を見て思わず不快そうな表情を見せる。
「嫌な空気ですね……おまけに、そこら中から禍々しい気配を感じます…」
「これだと、気配だけで敵の居場所を察知するのは難しそうだな……異界の時と違って、幽霊が出没してるって訳ではなさそうなのが幸いか」
「幸いの一言で済ませちまうのもどうかと思うけどな。さて、どうだ? 何か景色は見えるか?」
「山の向こうに街が見えるぞ。にしてもデッカい風車だねぇ~」
「「デッカい風……ブフゥーッ!?」」
ハルトが眺めている方向を見て、ペットボトルのお茶を飲んでいたokakaと支配人は思わず口に含んでいたお茶を盛大に噴いてしまった。何故ならその視線の先には、巨大な風車が存在する街が見えていたのだから。
「ん、どしたの?」
「…okaka」
「あぁ、間違いねぇ。ありゃ風都タワーだ」
「「風都タワー?」」
「!? 風都タワーですって…!!」
風都タワーを見た瞬間、ハルカの顔色が変わる。
「と言っても、俺達の知ってる風都と同じかどうかは限らんがな。同じような世界でも、全く違う世界だっていくつも存在してる」
「ッ……そ、そうよね……よく考えたらそうだわ…」
「…?」
支配人の説明を聞いて、ハルカはすぐに冷静さを取り戻す。そんな彼女の反応を不審に思う刃だったが、こういう事はいくら自分が追及しても無駄だろうと思い、敢えて彼は何も聞かない。
「さて、早いところこの世界の状況を確認したいが…」
-ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!!-
「…早速事件のようだな」
「そのようだ」
直後、風都の街中から大きな爆発音が響き渡って来た。okakaはプロトディケイドライバーを装着し、一枚のカードを装填。支配人は手に持っていたロックシードを開錠して宙に放り上げ、タンポポ型のロックビークル―――ダンデライナーを起動する。
≪アタックライド・ジェットスライガー!≫
「そんじゃ、俺達は先に行くぜ」
「お前等も早く来いよ」
「え、あ、ちょっと!?」
okakaは召喚したジェットスライガーに、支配人は起動したダンデライナーに乗り、ディアーリーズ達を置いて風都の街へと猛スピードで飛んで行ってしまった。
「んじゃま、俺等も早いところ向かうとするかね……という訳でウル、俺の分も出してね?」
「私はウルの後ろに座らせて貰うわ」
「ちょ、アンタ等って人は……まぁ分かってましたけどね」
ディアーリーズはハルトとハルカに対して呆れたような反応を見せつつ、移動手段をコネクト魔法で召喚しようとしたその時…
-ドガァァァァンッ!!-
「「「!?」」」
突如、彼等のいる場所から少し離れた位置で別の爆発音が響き渡った。
「何かしら…?」
「分かりません……とにかく、行ってみましょう!」
「よぉし……あ、そうだ。ユイちゃん、お馬ちゃん、留守番よろしくぅ!」
「ん…」
「分かった、気を付けるのだぞ。それからハルト殿、私の名前はジンバだぞ? 私をその名で呼んで良いのはルイ殿だけ―――」
「ジンバ、もう行っちゃった」
「む? そうか」
ユイとジンバはオーライナーに待機する事になり、ディアーリーズ達三人は爆発音が聞こえた方向へと走り出す。
「デヤァ!! ウェイ、ウェアッ!!」
一方、ミノタウロス率いるグール軍団と戦っていた青い怪人。ミノタウロスは応戦する為に更に多くのグールを召喚したのだが、青い怪人は手に持っていた剣“オールオーバー”を振るってグールを一体ずつ撃破していき、どんどんその数を減らしていく。その戦い方はまるで、集団戦などとっくに手慣れているかのような動きだ。
「お、おのれジョーカー!! 貴様、怪人の癖に人間の味方をするのかぁっ!?」
「…ウェイッ!!」
「ごは!?」
青い怪人―――ブレイドジョーカーは何も答えないまま、残りのグールを一気に撃破してから今度はミノタウロスへと斬りかかる。ミノタウロスも負けじと専用の斧“ブルアックス”で応戦するが、ブレイドジョーカーはミノタウロスの振るう斧を冷静に回避し、ミノタウロスの腹部をオールオーバーで斬りつけて怯ませる。更にミノタウロスが怯んだ隙にブレイドジョーカーは大きくジャンプしてミノタウロスの後方に回り、頑丈である筈のミノタウロスのボディを容赦なく斬りつけ、いくつもの傷を付けていく。
(馬鹿な……俺は怪力が自慢のミノタウロスだぞ!? それが何故、俺より力の弱い奴なんかにぃ…!!)
ミノタウロスは焦っていた。自分の方が相手よりもパワーで勝っているにも関わらず、相手は洗練された戦闘スタイルで自分をどんどん追い詰めて行く。何か勝てる手段は無いかと思った彼は、先程まで狙っていた少女の事を思い出す。
(くそ、こうなったらゲートを人質に―――)
ゲートを人質にしてしまえばこっちの物だ。そう思ったミノタウロスは少女の方へ駆け出そうとする……が、そんな事は既にバレバレだった。
「ウェアァ!!」
「な……ぐわぁっ!?」
ブレイドジョーカーの突き立てたオールオーバーが、ミノタウロスの片方の角を粉々に粉砕。そのままミノタウロスを蹴り飛ばし、人質にしようとした少女から更に遠ざかる羽目になる。
「し、しまった…!!」
ミノタウロスが立ち上がろうとした瞬間、既に跳び上がっていたブレイドジョーカーがオールオーバーを高く振り上げ、そして思いきり振り下ろす。
「ウェェェェェェェェェェェェイッ!!」
「や、やめ…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
オールオーバーの鋭利な刃が、ミノタウロスの傷だらけのボディを一刀両断。ミノタウロスは真っ二つに斬られたミノタウロスは断末魔を上げながら爆散して跡形も無く消滅し、地面に着地したブレイドジョーカーは少しの間だけ呼吸を整えた後、岩壁に背を付けたまま震えている少女の方へと歩み寄って行く。
「……」
ブレイドジョーカーはその場にしゃがみ込み、その右手をゆっくりと突き出す。少女は未だ恐怖でビクビク震えており、何かされるんじゃないかと思い、再びその両目を瞑り…
「…え?」
数秒後、頭を撫でられるのを感じ取る。予想外の事をされた少女は思わず呆けるが、ブレイドジョーカーはそんなのをお構いなしに少女の頭をゆっくりと撫で続ける。撫でられている内に少女の目からは恐怖が少しずつ消え失せて行き、無意識の内にブレイドジョーカーの方に頭を摺り寄せていた。
「ん、ぅ…………あり、が……と―――」
「!」
少女はゆっくり目を閉じて行き、そのまま眠りについてしまった。彼女の着ている服装が泥などでかなり汚れている事から、ミノタウロス逹に追われていた事でその疲れが溜まっていたのだろう。彼女が眠った原因が疲れによる物だと理解したブレイドジョーカーは、何処か安心したような表情で眠る少女を抱き上げようとして…
≪コネクト・ナウ≫
「―――ッ!?」
飛来した銀の銃弾を複数、その身に受けてしまう。突然の攻撃にブレイドジョーカーはすぐさま振り向き、振り向いた先からはウィザーソードガン・ガンモードを構えたウィザードが飛びかかって来た。
「おぉっと、そこまでだぜ昆虫野郎!!」
「ッ…!!」
ウィザーソードガンをソードモードに変形させ、ウィザードは素早い身のこなしでブレイドジョーカーを翻弄する。その隙にディアーリーズとハルカが眠っている少女を保護する。
「…大丈夫、眠ってるだけみたいよ」
「そうですか、良かった」
「どぉあっ!?」
「「!?」」
少女が無事である事が分かりホッとするディアーリーズの横に、攻撃を受けて吹き飛ばされたウィザードが転がって来た。
「く、なかなか手強いじゃないの…!!」
「グゥゥゥゥ…」
起き上がったウィザードがウィザーソードガンを構え、ブレイドジョーカーは姿勢を低くして構えながらウィザードを威嚇する。そこにディアーリーズも加勢する。
「ハルトさん、僕も加勢します!! 罪の無い子供を見捨てる訳には行きませんから!!」
「おぅ、助かるぜウル!!」
「…!」
ディアーリーズがウォーロックリングを嵌めて変身しようとする中、威嚇していたブレイドジョーカーはある事に気付く。
(まさか、仮面ライダー…?)
「…グゥッ!」
「ん? あ、おい!? 何処行くんだ!!」
「へ?」
ブレイドジョーカーはオールオーバーを放り捨てた後、素早くトンネルの中の闇へと姿を紛れさせる。突然の行動に驚いたディアーリーズ達が後を追いかけるも、ブレイドジョーカーはあっという間に姿を眩ませてしまった。
「消えた…」
「何だったんだ? 一体…」
完全に姿を消してしまった以上、深追いは禁物。ウィザードは変身を解除してハルトの姿に戻り、ディアーリーズと共にハルカが保護した少女の下へと駆け寄って行く。
「ウル。この子、体内に魔力を持ち合わせてるみたいよ」
「! という事は、この子もゲートって事ですか」
「ん~でもさっきの怪人、何か変なんだよなぁ……見た感じじゃ、ファントムでもなさそうだし」
「とにかく、早くこの子をオーライナーまで運んで、それから先に向かったokakaさん達と合流しましょう。流石にこんなところに放置するなんて出来ませんし」
そう言って、ディアーリーズは少女を抱きかかえるべくしゃがみ込む……その時だった。
とある光の球体が、その真後ろから迫って来ていたのは。
-バシュウッ!!-
「うぁ…!?」
「「ウル!?」」
光の球体はそのまま、ディアーリーズの体内へと侵入。それと同時にディアーリーズはその場にしゃがみ込んだまま俯き、その全身から大量の砂が零れ落ちる。
「ウル、ねぇどうしたの!?」
「おい、返事しろウル!!」
ハルカとハルトが必死に呼びかける中、俯いていたディアーリーズは突然バッと顔を上げ、二人はホッと安堵する。しかし…
「…ん?」
ディアーリーズの姿は、明らかにさっきまでと違っていた。細かく編み込まれた髪に白い羽のようなメッシュ、その首元には羽毛のような白く長いマフラーらしき首飾りが巻かれている。そしてディアーリーズは優雅に立ち上がり、直後に言い放った。
「降臨、満を持して…!」
一方、風都の街中では…
「「「「「イィーッ!?」」」」」
たくさんいる筈のショッカー戦闘員達が、スカルによって劣性に追い込まれていた。路地裏まで移動したスカルは迫って来る戦闘員を一体ずつ殴りつけ、階段の上に上がっては下から上がって来る戦闘員を蹴り倒し、その下にいた戦闘員達を巻き添えにする。
「動きがワンパターンだな…」
「おらぁっ!!」
「む…!」
地上にいたアームズ・ドーパントが機関銃を乱射し、スカルはすかさず身を屈めて射撃を回避。何処からか取り出した銃“スカルマグナム”を構え、上手く隙を突いてアームズ・ドーパントに数発の銃撃を浴びせる。
「この野郎がぁ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!! テメェはこの俺が始末してやる!!」
「ほう……ならその言葉、そっくりそのまま返してやる」
≪スカル・マキシマムドライブ!≫
「あぁ!? んだとゴラァッ!!」
スカルマグナムにスカルメモリが装填され、スカルは階段の手摺を踏み台に大きく跳び上がる。アームズ・ドーパントはそんなスカルを機関銃で撃ち落とそうとする。
「ギャハハハハ!! 馬鹿め、撃ち落としてやる!!」
「フ…!」
アームズ・ドーパントが機関銃を放つのを見て、スカルはスカルマグナムから数発の銃撃を放つ。放たれたそれらの銃撃は、アームズ・ドーパントが乱射した銃弾の何発かを正確に撃ち落とし、そして最後に残った二発の銃撃がそのままアームズ・ドーパントの顔面へと飛んでいき、その両目に命中する。
「な…ぐぁぁぁぁぁっ!? め、目が、目がぁぁぁ…!!」
「…!!」
≪スカル・マキシマムドライブ!≫
そこからの行動は早かった。アームズ・ドーパントが目潰しで怯んだ隙に、地面に着地したスカルが素早く駆け出し、スカルマグナムから抜き取ったスカルメモリを今度は左腰に装着されているスロットに装填。音声が鳴ると同時に、スカルはエネルギーの込められた右手拳をアームズ・ドーパントの顔面へと叩き込む。
「が、ぁ…!?」
「お前の負けだ…」
断末魔すら上がらないままアームズ・ドーパントは爆散。爆風が晴れた後、その場にはチンピラ染みた風貌の男が倒れ伏し、排出されたアームズメモリが砕け散った状態で地面に落ちる。
「…さて」
「ば、馬鹿…な……ぐぇ!?」
煙が噴いている中でスカルは帽子を取り、変身を解いて荘吉の姿へと戻る。帽子を深く被り直してから、荘吉は倒れているチンピラ風の男の胸倉を掴み、無理やりその場から立たせる。チンピラ風の男は急に弱腰になり、荘吉に命乞いをする。
「ま、待ってくれ、俺が悪かった…!! だから命だけは…」
「ムショに入って貰う前に、お前にはいくつか聞きたい事がある」
「な、何だ…!!」
「お前が連れていた、あの悪趣味な恰好の黒い集団……お前は一体、何の組織と絡んでいる?」
「し、知らねぇ…」
「…もう一発喰らっておくか?」
「ひぃ!? ほ、本当に何も知らねぇんだよ!! 俺はただ、変な奴からメモリを渡されて、さっきの連中も連れて暴れるよう命令されただけだ!! 信じてくれ!!」
「変な奴だと? どんな奴だ」
「それは―――」
その時だ。
「ズゥーカァーッ!!!」
「!? く…!!」
「な、何だ……ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
何処からか飛んで来た一発の砲撃により、荘吉とチンピラ風の男は分断される。そのまま二発目、三発目の砲撃でチンピラ風の男は無惨に消し飛ばされてしまい、荘吉は砲撃が飛んで来た方向を見据える。
「!? 何だアイツは…」
「ズゥ~カァ~…」
黒い特殊強化服。甲羅を模した防弾チョッキのようなプロテクター。亀の頭を模したスリムな顔。背中の甲羅に装備された大型のバズーカ砲。ショッカーのエンブレムが付いた腹部のベルト。
亀型の怪人“タートルバズーカ”は猫背の状態でゆっくりと荘吉に迫り、荘吉は再びロストドライバーを装着しようとする。
「ドーパントじゃないな…!!」
「ズカァーッ!!」
「ぐ―――」
≪アタックライド・バリア!≫
「―――!?」
「危ないところだったな、ハードボイルドな探偵さん」
荘吉に向かって飛んで来た砲撃を、バリア状のエネルギーが防ぎ切る。自身の目の前に張られたバリアに驚く荘吉だったが、そんな彼の後ろから二人の人物が姿を見せる。
「お前達は…」
「安心しな。ある意味では、アンタの同業者と言える人間さ」
「助太刀するぜ、鳴海荘吉さんよ」
現れた人物―――okakaと支配人は、不敵な笑みを浮かべてタートルバズーカと対峙するのだった。
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