No.765404

艦隊 真・恋姫無双 42話目

いたさん

少しずつ……物語が重なります。

2015-03-18 20:13:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1506   閲覧ユーザー数:1300

 

【 宦官相伝の術 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 にて 〗

 

一刀たちが劉宏に集まっている頃……

 

とある部屋にて、妙に甲高い老人達の話し声が聞こえる。

 

ーーー

 

張譲「おのれぇ───えええッ! 天の御遣い『北郷一刀』め! 忌々しい真似を! 後少しで、邪魔な何進を除く事が出来たものを!!」

 

趙忠「なぁに! この洛陽から離れて、他の軍閥に取り入れば良い事。 我々の権威、財産、血族の力は健在! その者を誑し込めば……のぉ?」

 

張譲「ふむ……それもそうか。 全員……付いて来ておるか?」

 

孫璋「大事ない……何のこれしきの事! ホーッホホホホッ!!」

 

畢嵐「郭勝が捕まったようじゃなぁ……馬鹿な奴よぉ……クククッ!」

 

段珪「さて……張譲殿、この後どうするかえ~?」

 

ーーー

 

高望「…………………」

 

宋典「…………………」

 

夏惲「お二方……気に病む事もあらじ。 張譲殿は、些か気持ちが高ぶっているでだけじゃよ。 まだまだ、お二方の使い道があるわいの!」

 

栗嵩「────然り、然りッ!!」

 

張恭「されど……儂等の足を……引っ張る真似だけは……控えなされよ……」

 

ーーー

 

韓悝「しかし、段珪殿の仰る通り……何処へ向かえば? 何進との権力闘争に敗れた我らを……必要とする軍閥が……あるかの!?」

 

張譲「ノーッホホホッ! 儂等が集団で移動すれば、見付かるが道理。 ならば、皆で別れて向かおうでないか? 儂と段珪殿は『○○』じゃ!」

 

段珪「うむッ! 悪くは無かろうて!」

 

ーーー

 

趙忠「ホホホッ! ならば……儂は北の★★を目指す! 他に来ぬかや?」

 

高望「な、ならば、私が付き添って参ろうか……の?」

 

韓悝「面白い! 私も行くぞぉ!」

 

ーーー

 

孫璋「『●●』は意気盛ん、賑わいも華やかだと聞く! 我のような者に相応しい!! この地へ入ろうかの!?」

 

宋典「今度は………のぅ! ノーッホホホッ!!」

 

夏惲「儂は、賑やかな方か良い! 金も入るじゃろうしぃ!」

 

ーーー

 

畢嵐「南は未だに未開拓が多数ぅ。 されど……まだ見ぬ宝物も然りぃ!」

 

栗嵩「寒いのは苦手じゃ! 南へ参ろうかの!」

 

張恭「女も……また……南の方がな! クククッ!!」

 

ーーーーーードタドタドタドタッ!!

 

張譲「───ムッ! 皆、声を潜めよッ!!」

 

★☆☆

 

──────バンッ!!

 

洛陽兵長「この部屋かッ! 複数の人数の声が聞こえると言うのはッ!?」

 

洛陽兵1「はっ! この部屋で間違いありません!」

 

─────!? 

 

……………! 

 

───────クルッ!

 

洛陽兵長「どこを見ても誰も居ないぞ! 本当に、この部屋より聞こえたのだろうな?」

 

洛陽兵1「間違いありません! 複数の女官より『声が聞こえて気味が悪い』と、報告がありました!」

 

洛陽兵長「幾ら見ても、『箱』が多数整理して置かれている、物置場にしか見えん! 別に異常は無さそうだ!!」

 

洛陽兵「しかし!」

 

洛陽兵長「………私だけの判断では……断定が出来ん。 相手は、あの十常侍……念のため、将軍方にも部屋を見ていただこう。 油断せず、虱潰しに捜さなくては行かんからな! ────報告に行くぞ!」

 

洛陽兵1「了解です!」ダッ!

 

洛陽兵長「…………………」──ボトッ!

 

ドタドタドタドタ─────ッ!

 

張譲「…………行ったか。 ───ほぅ?」──スッ ゴソゴソ!

 

趙忠「どうされた……? 張譲殿!?」

 

張譲「ホホホッ! ───各々(おのおの)それぞれの場所に向かえなされ! 逃走用の馬車が既に、都城の外に用意してあるそうだ。 『あの方』が手を回してくれてある! 直ぐにも………移動するぞ!」

 

ーーーーー

 

この後、四つの編隊に別れた『箱』たちは、通路を堂々と進む。

 

勿論、その通路を女官、兵士、十常侍を捜索する者も通る。 

 

しかし……何故か素通りが多く、たまに不審(ふしん)に思い睨みつける者も居るが、ほんの少し動くのを止めると、首を傾げながら移動する。

 

張恭「いつも思うが……不思議な物よの? 何故、このような児戯のような真似事で気付かれないのか。 のう……張譲殿よ?」

 

張譲「宦官に……古きから伝わる『隠密術』よ。 伝えによれば……『蛇』の異名を持つ男より伝授されたと云いよるわ! 先代の曹節様も、首を傾げておったが……。 しかし、実用の高さは……この通りじゃわい」

 

★ーー★ーー★ーー★ーー★

 

十常侍たちは、竹で編んだ籠(かご)を被り進んでいる。

 

厳密に言えば、高価な紙を茶色に染めて、膠(にかわ)で惜しげもなく貼り付けて、中が見えないように工夫した、長方形状の『箱』みたいな物。

 

先代の桓帝に仕え、宦官の地位を著しく上げた『曹節』の話では、秦の時代から伝わる宦官秘伝の『隠密術』と云う。 

 

伝説によれば、始皇帝に仕えし趙高が、倒れていた男を救い、その礼に伝授されたそうである。 ……趙高の悪名高き行いを考えれば、ありえそうだが。

 

『《だんぼーる》は、戦士の必需品だ!』

 

ちなみに……男が去り際に呟いた言葉も……術と共に伝わっている。

 

★ーー★ーー★ーー★ーー★

 

十常侍達は、この隠密術を利用して……まんまと洛陽の脱出を果たした!

 

無論……背後にいる『あの方』の力もあったのだが………

 

 

◆◇◆

 

【 アノ方の正体 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 にて 〗

 

洛陽兵長「────失礼致しますッ!!」

 

??「許可する! 入れや!」

 

洛陽兵長「─────はっ!!」

 

★ーー★ーー★ーー★

 

都城の一角に、??の部屋がある。

 

皇帝の部屋と……この部屋を見比べて……どちらが皇帝の部屋に相応しいかと……考えてしまうほどの……煌びやかな室内であるのだが。

 

これも……全部、民達からの血税から賄われていると聞いたら、皇帝の部屋を指差す者が多いだろう。

 

ーーーーー

 

近衛兵の数百年以上の給金に値する……豪華な家具類。

 

丁寧な彫刻、見事な飾り付けされた天井!

 

そして………その部屋にそぐわない『多くの動物の剥製』が、所狭しと飾られている! 虎、鷲は勿論の事、水牛、大熊猫のような大型草食系動物も置かれ、一種の博物館を思わせる。

 

主は、三十代前半なのだが……まるで二十代の娘に見えるような美女である。

 

★ーー★ーー★ーー★

 

そんな中を、洛陽兵長が……しっかりとした足取りで、この部屋の主へと向かう。 そして───張譲の云う『アノ方』へ、報告に向かったのだ。

 

洛陽兵長は、上役の将軍に連絡して、部屋を更に捜索! 居ない事を確認してから、休憩と称して持ち場を離れて、この部屋を訪れていた!!

 

ーーー

 

??「ほうかえ! ほうかえ! 十常侍どもは無事に逃げたとな?」

 

洛陽兵長「────はっ! ??様の命じらました『紙』を落とし、誘導致しましたので………」

 

??「オーッホッホッホッ! 妾の為に力添えされた功おます臣。 まやまや、妾ん力になって貰わねば……困るんやえ~? しいやぇ……かなおなご、何進は……なんをしいやおるんやろか?」

 

洛陽兵長「陛下の様態が……」

 

??「早よ……死んでくれへんかや? ほんにぃ待たせる……お人やでぇ。 早う我が娘『劉辯』に、皇帝の座を渡しいやくれればええモンを………」

 

洛陽兵長「────! どうか、お声を控えて下さい! 誰かに聞こえられては……!」

 

??「───ふんっ! なんぼ、どないあいや掻こうとも……我が娘の即位は決定や! 王美人の娘如きに………皇帝の座は渡しまへんえ!!」

 

洛陽兵長「そ、それは……勿論!」

 

??「あんたはんは、何進と御遣い達を……見てお行き! かなおなごが、なんを陛下に強請るんか……確認しいや来はるんや! えぇなぁああ!?」

 

洛陽兵長「は、はいっ!!」──スッ!

 

………

………

………

 

洛陽兵長が立ち去った後、??は先程まで行っていた日課を行う。

 

部屋にある大きな鏡台の前に座り、髪を整え、紅を差して化粧を施し、銅鏡を綺麗に磨きて、映りを良くした。

 

??「………鏡よ、鏡よ、鏡はん! 洛陽で一番、華やかで美しおなごは……どなたはんどすえ?」

 

『………都城にて華々しい衣服を纏う……《何皇后》です……』

 

何皇后「そない、ほしてええん! そないほななきゃいけまへん! どなたはんよりも華やかにしいや、美し容貌を持つおなご! そら───皇后ん『妾』でおますと!! オーッホッホッホッ! オーッホッホッホッ!!」

 

ーーー

 

当然だが、銅鏡が応える訳が無い。 

 

銅鏡に向かい虚ろな目で、何皇后が……独り言を呟くだけであった。

 

 

◆◇◆

 

【 時代の流れ の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 にて 〗

 

劉宏「劉辯、劉協………無事……だったか?」

 

劉辯「心配不要!」

 

劉協「姉上も……私も……大丈夫です!」

 

劉宏「……………良かった…………」 

 

ーーー

 

劉宏の身体は………誰が見ても……既に余命が……幾許も無い事が分かるほど……衰弱していた。 寧ろ、あの騒ぎの中で、良く命が保てれた方だと、思わずにはいられない。 

 

いわば……皇女たちの行き末が……それだけ心配だったワケである。

 

ーーー

 

劉宏「北方……礼を述べさせて欲しい。 よく、皇女を救ってくれた……感謝する……!」

 

北方棲姫「劉宏トノ……約束……果タシタ。 劉宏……ホッポノ約束……」

 

劉宏「す……すまぬな。 病が治れば……『飛行機ごっこ』とやらを……一緒に行う約束だったな。 朕が零……北方が烈風……か?」

 

北方棲姫「烈風……貸ス! 劉宏ニ貸スッ!! ダカラ……ダカラァ……元気ニナレェ!! 劉宏ゥウウウッ!!」ウワァーン!

 

劉宏「朕が亡き後……劉辯、劉協! 朕の代わりに……北方の相手……頼むぞ!」

 

劉辯「…………御意」グスグスッ

 

劉協「……………!」コクコクッ!

 

ーーー

 

劉宏「か、何進………!」

 

何進「陛下……面目御座いません! 十常侍をのさばらせてしまっため、このような結果になり……何とお詫びすれば……!!」

 

劉宏「良い……! 主は……功績を挙げたのだぞ……! しかも……二つもだ! 何故……謝罪を受けなくては……ならぬのだ?」

 

何進「しかし───ッ!」

 

劉宏「ひ、一つは……天の御遣い『北郷一刀』殿を……朕に引き合わせた! そして……もう一つ! 十常侍らを宮中から……追い出した事!」

 

『────────!』

 

何進「し、しかしながら……私の行いの為に……陛下の寿命が!!」

 

劉宏「元々……死ぬ定めの者……それが早くなっただけ。 寧ろ、次代の皇帝へ苦衷の種が……消えた。 これを評価せず……何と言おうか!?」

 

何進「陛下………」

 

劉宏「北郷殿………そして……御遣い様に尽くす方々!」

 

一刀「───陛下!」

 

『────────!』

 

劉宏「……後の事は、何進と皇女たちに……伝えてあります! 朕が申し上げる事など……ありますまいが……この国の民を……どうか……お救い下さい。 お情けに……縋れるのなら……何卒……皇女の事も……お頼み……を!」

 

一刀「────!!」

 

──────ガクッ!

 

ーーーーー!

────!

ーーーーーー!

 

何進「────陛下!」

 

劉辯「御父様!!」

 

劉協「ち、父上!!」

 

北方棲姫「劉宏ゥ──ッ!!」

 

ーーー

ーーー

 

一刀「陛下! 『漢中鎮守府 提督 北郷一刀』! その御命令、謹んで拝命致します! 一同! 漢王朝皇帝 劉宏陛下に───敬礼!!」

 

『──────!』バッ!

 

 

◆◇◆

 

【 十常侍の行き先 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 にて 〗

 

張譲「クククッ! 段珪殿よ! これから『涼州』に向かうが、どうであろう?」

 

段珪「悪くはなかろう! 涼州兵は騎馬に長じて、勇猛果敢! 逆に考えれば……戦馬鹿の集まり。 しかも、権威に弱く……漢王朝の忠誠心厚き者共。 儂らの権威があれば……直ぐに味方が付きますぞ?」

 

張譲「そうじゃろ! そうじゃろ! ホーッホッホッ『ガタンッ!』──な、何じゃ!? 急に止まりおって!!」

 

馭者「も、申し訳ありません! 先方に軍勢から停止の命令を出されため、やむを得なく───!」

 

段珪「どこぞの愚か者か、牙門旗を確認して参れぇ!!」

 

馭者「は、はいっ! 『馬』と『董』の牙門旗が見えますッ!!」

 

ーーー

 

趙忠「今……『幽州』ではのぉ? 『公孫』なる者が、異民族である鳥丸と懐柔策を行っておると、報告を受けた事があるのじゃ! かなりの成果を挙げておるらしいの!?」

 

高望「なら……官位を与えて、我々の金蔓にすれば、やれば宜しいのでは?」

 

韓悝「じゃがな……公孫は堅物でな? 我々の名を出しても、逆に拒絶するのじゃよ? まるで害虫のように───おぉっ! 噂をすれば!」

 

趙忠「『公孫』の牙門旗か! 丁度良い! 我々の味方に付くよう、説得しようかの! 天の御遣いなる者に、漢王朝を占拠されたと云えば……断りはしまい──ッ! ノホホホホホッ!!!」

 

ーーー

 

孫璋「『陳留』の曹孟徳……先代大長秋『曹季興』様の孫と聞くでないか? これを利用しない術は……あるまい!!」

 

宋典「しかしぃ……かの曹孟徳は、『宦官を嫌う事、蛇蝎の如し』と聞いておる! 果たして信用して……良いものか?」

 

夏惲「宦官と云えど……我らは大長秋の一つ下位を持つ中常侍! 幾ら曹孟徳とは故、位は雲泥の差よ! 切れ者で鳴るアヤツだからこそ、我々の力が理解出来るもの! 余計な心配などせず、早よう向かうぞ!!」

 

ーーー

 

畢嵐「儂らは、袁術を頼ろうと思っておるぅ! 寿春に居を持つ袁家よぉ! 名家だけあり、当主は、高価な蜂蜜水を毎日飲み放題と聞いておるなぁ! そこに行けば、我々も贅沢な暮らしが出来るのだよぉ!?」

 

栗嵩「袁家と申せば……袁紹の本家! 裏で繋がっておれば、儂らは一網打尽……そこは大丈夫でござろうな?」

 

張恭「ホッホッホッホッ! 気弱な御仁ばかりじゃ! 袁紹と当主袁術は、犬猿の仲で有名な話! 向こうが『左』と云えば、袁術は『右』と答える程の悪さよ! 袁紹が襲えば……袁術が匿ってくれるのは道理!!」

 

栗嵩「ほぅほぅ……要らぬ心配であったか! すまぬ、すまぬ! ホッホッホッホッホッホッ!!」

 

 

◆◇◆

 

【 張譲達の末路 の件 】

 

〖 司隷 新安付近 にて 〗

 

董兵「お嬢様! 前方から豪華な装飾を付けた馬車が一台、此方に向かい疾走して参ります! 如何なさいましょうか!?」

 

月「───えっ!?」

 

詠「───とりあえず、至急止めなさい! 事情を尋ねるから、そのまま停止させるのよ! 良いわね!?」

 

董兵「───はっ!」

 

月「ありがとう! 詠ちゃん!!」

 

詠「………おかしいわね……」

 

月「どうかしたの?」

 

詠「月……考えてみなさい。 豪華な馬車が一台、しかも護衛も付けずに街道を通るなんて、賊を呼び込もうとしているようなモノよ? それも、かなりの速さで抜けようとする。 これらを合わせると…………」

 

月「じゃあッ! 誰か助けを求めて、どこからか逃走して来た!? た、大変! すぐに───助けなきゃ!!」

 

詠「ま、待ってッ! 月、落ち付いて!! まだ、あるから!!」

 

月「───ふぇっ!?」

 

詠「もう一つの考えは……………」

 

★☆☆

 

馬車より貴人が降りたった。

 

『急いでいるのに関わらず──何故止めるのか?』と、迷惑な顔をする段珪、

何時ものように威圧的な態度で、月に向く張譲!

 

月と翠が、地面に片膝を付き……顔を下げる!

 

詠や蒲公英達が、後ろに同じ姿で跪いた。

 

張譲「そちが………天水太守の董仲穎か! 私は洛陽で劉宏陛下にお仕えする中常侍張譲じゃ! こちらは、同じく中常侍『段珪』!」

 

段珪「……………ふんッ!」

 

月、翠「「はっ!」」

 

張譲「率直に申す! 洛陽にて……『大将軍何進』並びに『天の御遣い 北郷一刀』が……陛下を弑逆し、皇女を人質に取り洛陽を占拠した!」

 

段珪「よって……涼州兵で洛陽を攻め寄せ、謀反人共を誅殺し、陛下の無念を晴らせッ! そして、我々を保護せよ!」

 

月「………………」グッ!

 

翠「………」ギロッ!

 

張譲「─────どうしたぁ!? 返答は!」

 

月「…………ボソボソ」

 

翠「……………!」

 

段珪「ハッキリせい! 一刻を争っているのだ! 早くしなければ、北郷一刀が皇女様に何をされる『───止めて下さいッ!!』──な、なんだと!?」

 

月「ご、ご主人様は……そんな悪い人なんかじゃ……ありませんッ!!」

 

翠「ふざけんなぁ! あの、ご主人様が───そんな悪い事する訳ねぇじゃねぇか!! ─────馬鹿も大概に言いやがれ!!!」

 

張譲「な、何を言い出すのだ! 私は、漢王朝、皇帝陛下に仕えし十常侍だぞ! お前たちのような田舎役人より、遥かに上位の位置するのだぞ!?」

 

段珪「それに──今の言いぐさはなんだ! お前も反逆者『北郷一刀』の配下の者『ザッシュッ!』────ヒィッ!!」

 

段珪の眼前に、矛がどこからもなく落ちて、地面に突き刺さるッ!

 

恋「ご主人様の悪口……許さない!」

 

蒲公英「たんぽぽも────ここに居るぞぉ!!」

 

張譲「お、おのれぇ───漢王朝に反旗を翻す愚か者共が! やはり、お前たちの服従は表面的な物だったか!」

 

それを見て、怒れる張譲に───詠が声を掛ける! 

 

無論、月の援護のためでもあるが、最大の理由は───張譲と段珪を!!

 

詠「────まだ、自分を忠臣と偽るつもりなの? 叛臣共ッ!」

 

─────糾弾するため!!

 

段珪「な、何を言い出す! 儂ら正式な十常侍──張譲と段珪であるぞ!」

 

詠「確かに……アンタ達の醜い顔は……何回か見ているから分かるわ。 だけど、分からないのは……アンタ達の行動よ!」

 

『─────────!』

 

詠「アンタ達は、皇帝陛下の傍仕えである栄職! それが……皇帝陛下を弑逆され、皇女様を人質にされるのを、黙って指を咥えて見てたわけ!? 自分達は、のこのこ陛下達を見捨て……此処まで逃走したの!?」

 

張譲「ぶ、無礼者め! 儂らのような宦官が、陛下達の傍に居て何の役に立つ! 急いで退室し、洛陽から抜け出し……力ある軍閥に援助を願う! これが最適な役目なのだ!!」

 

─────ザッ!

 

ねねも立ち上がり、詠の代わりに反論し援護する!

 

ねね「……ほぅ………立派な態度ですな。 では、洛陽の民たちは、見捨て参ったのですか!? 陛下が危害に遭われるほどの禍なら、洛陽の民を安全な場所に誘導するのも、官の役目だと…ねねは思うのですよ!?」

 

段珪「馬鹿な! 洛陽の民より……儂ら十常侍の命が遥に重い! 儂らが居なければ、政(まつりごと)は動かないのじゃぞ!? それに、援軍を送らねば事態の収集はならんのだ! 元凶を何とかしなければ───!!」

 

ねね「つまり……洛陽の民を見捨てて此処に……と?」

 

張譲「違うッ! 儂らの役目は……救援要請! 然るべき位の人物が行かねば要請は出来まい! 洛陽の民の誘導は、執金吾の役割! 役割分担を明確にしたまでの事! これでどうだ! 疑念が解けたのなら───早ようッ!!」

 

詠「あっそう! じゃあぁ、後一つ聞かせて貰うわ! その禍を逃れようと、避難して来る民が、一人も……こっちに来ないのは?」

 

段珪「儂らは、馬車を飛ばしてきたのだ! 徒歩の民より速く此処に居ても、おかしくなかろう!!」

 

詠「洛陽の民は数十万……中には馬車とか個人で持つ富豪も居るわ。 それなのに来たのが……アンタ達だけって? ────あっ! 戻って来たわね? どうだった? 霞!?」

 

─────ザザザッ!

 

霞が愛馬を置いて、詠たちの傍へと駆け寄る。 

 

張譲たちへ接触する前に、詠から頼まれて、先の街道の様子を見に行って貰ったのだ。 豪華な馬車が一台だけ……もしかすると、何かしら伏兵でもいるかも知れないとの考えで。 

 

しかし、予想外の想定が……思わぬ結果を齎した。

 

霞「ゼェッ! ゼェゼェ──ッ! 詠! す、数里先までぇ見に行ったが、誰も……誰もおらんかったわぁ! 伏兵どころか、猫の子一匹も………!!」

 

勿論、霞も……そんな事知らずに、話すのだが……段珪と張譲にとって、致命的な墓穴を掘った事になった。

 

段珪「ぐぅ─────!」

 

張譲「それは、儂らが出た後に……城門が閉ざされて………」

 

ねね「皇帝陛下のいらっしゃる宮殿から門まで、どれくらい掛かると思っていやがるのですか? どう考えても、馬車を用意して脱出するまで、半刻(約一時間)は掛かるはず! その間に門に避難民が殺到するのですよ!?」 

 

張譲「────────!」

 

ねね「しかも、豪華な馬車で街道を疾走する奴を、素直に脱出させてやる謀反人が! 馬車だけ堂々通して、その後、直ぐに城門を閉め直し、民を閉じ込めるなんて………無理な話ですな~?」

 

張譲「──────ガクッ!」

 

段珪「────お、おのれぇ! ウグッ!!」

 

──────!

───────!

 

段珪が、詠やねねに掴み掛かろうとするが、二人の前に武人が現れ、段珪に得物の刃を向けた!!

 

恋「………動けば……殺すッ!! ───お前もッ!!」

 

張譲「───────ッ!」ドスン!

 

張譲が逃げだそうと動くが、恋と霞の目を誤魔化せる訳が無い。 殺気が張譲の足を引き止め……膝から倒れた!

 

霞「大人しくしゅうのが、利口って……ちゃうか!?」

 

段珪「───────!」ガクッ!

 

翠「お前ら、コイツらを縛って馬車に乗せとけッ! 洛陽に向かうぞぉ!」

 

涼州兵「は───っ!!」 

 

ーーー

 

詠「やっぱり……! アンタ達の悪行は、西涼や天水まで響き渡ってるの! 幾ら田舎者のボクたちでも、ハッキリと把握してるのよッ!!」

 

月「……………………ご主人様」

 

★★☆

 

翠「へへへ──っ! ご主人様に顔合わす前に、手柄を立てれて良かったな、月ぇ ───んッ? どうかしたかぁ!?」

 

月「翠さん、蒲公英ちゃん、恋さん、ねねちゃん! ご主人様……本当に、本当に……悪い事……してないよね? 絶対───してないよねッ!?」

 

恋「(コクッ!) ───大丈夫、ご主人様……暖かい。 お日さまみたいな人。 皆を……幸せにしてくれる……不思議な人。 ……だから……」

 

ねね「ふふん! 悪い事をする前に、ねねの『超必殺ちんきゅうらいだーきっく』を放ち、へぼ主人をコテンパンにぶちのめして、改心させてやるのです!」

 

翠「心配してもさぁ……しょうがないだろう? そん時は、皆で止めればいいさ! 他にも、記憶を持っている奴が……必ず居るだろうしな!」

 

月「────はい! はいっ!!」

 

蒲公英「あぁ───ッ! お姉様が、珍しく良いこと言ってる! 何かなければいいんだけど…………」

 

翠「どういう意味だ! 蒲公英────ッ!!!」

 

蒲公英「ごめんなさぁ───い!!」

 

ーーー

 

詠「一応───月の顔を立てて言ってみたけど。 報告だけの人物だから、ボクも……心配でね。 実際に会ってみないと…………」

 

霞「華雄がひとまず先に、洛陽の様子を確認しに行ったでぇ!!」

 

詠「えぇ──ッ! あの猪はッ!! いいわ……ボクたちも行く! 洛陽がどうなっているのか? 月たちが慕う……天の御遣い『北郷一刀』の真の姿を確認するためにもッ!! このまま、洛陽に向かうわよ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

秦の時代の降りた人は……この話だけで終わりです。 別に出てきて、暴れる事は、ありませんからね。 

 

潜入方法が有名だった事、作者の友人が大好きなゲームでしたので、使ってみました。 

 

今度の更新も、来週越えてになりそうです。 

 

義輝記を待っていらっしゃるも、申し訳ありませんが……今しばらくお待ち下さい。 進め易い方を選んで、きりの良いところで、入れたいと思います。

 

また、よろしければ……読んで下さい。

 

 


 
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