No.765255

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第583話

2015-03-18 00:01:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1557   閲覧ユーザー数:1396

 

~エルベ離宮~

 

「それは後半の会議のお主達エレボニアの主張次第じゃ。その主張が余達メンフィルが納得できる主張ならメンフィル領となる予定のエレボニアの領地の一部をエレボニアに返還するつもりじゃ。」

「”メンフィルが納得できる主張”と言う事は最悪クロスベルが情状酌量を認めなくても、メンフィルが認めた場合はメンフィル領と化する予定のエレボニアの領地の一部は返還して頂けるのでしょうか?」

リィンの質問に答えたリフィアの説明を聞き、ある事が気になったクレア大尉は問いかけた。

 

「うむ。ちなみにメンフィル領と化する予定の領地はお主達も存じている通り内戦の最中に既に制圧を終えたクロイツェン州全土に加えてサザーランド州とヘイムダル、そして”ジュライ特区”だ。」

「という事はメンフィルのみが情状酌量を認めた場合は帝都は返還される可能性があるのか……!」

(”ジュライ特区”……クロウの故郷か。)

「問題はどれほどの領地を返還してくれるかだな……」

「……”戦争回避条約”やリィンの将来の件を考えると恐らくクロイツェン州全土の返還はして頂けないと思うのですが。」

リフィアの答えを聞いたラウラは明るい表情をし、リィンは複雑そうな表情で考え込み、ガイウスの疑問を聞いたユーシスは複雑そうな表情で尋ねた。

 

「その通りじゃ。返還をするとすればヘイムダルとサザーランド州、後は”ジュライ特区”じゃな。」

「加えてクロイツェン州と違い、統治に手間がかかると思われる今回の戦争で制圧したサザーランド州は正直な所不要……―――それがメンフィル帝国の本音です。」

「サザーランド州の統治には手間がかかるから不要……それは一体どういう事でしょうか。」

リフィアとエリゼの説明を聞いたリィンは考え込んだ後尋ねた。

「それはユーシス・アルバレア。お主の存在じゃ。」

「え…………」

「……そこに何故ユーシスが関係して来るのでしょうか?」

リフィアに視線を向けられたユーシスは呆け、ラウラは真剣な表情で尋ね

「…………―――!クロイツェン州の統括領主であったアルバレア公爵家の唯一の生き残りであるユーシスさんには恩情を与え、またユーシスさんがメンフィルに忠誠を誓う事でクロイツェン州の貴族達も反発する事なく従い、クロイツェン州の民達も納得するとのお考えなのでしょうか?」

「あ…………」

その場で考えてある結論に到ったクレア大尉の推測を聞いたリィンは呆けた声を出した。

 

「その通りだ。対するサザーランド州の統括領主であるハイアームズ侯は形勢が不利と判断するとすぐに降伏し、貴族連合に加担してメンフィルに逆らった事を反省し、以後メンフィル帝国に忠誠を誓う所存で忠誠の証として三男をメンフィル帝国で働かせてもらいたいと言ってきたくらいだ。」

「なっ!?ハイアームズ家の三男って、パトリックの事ですか!?」

「………それのどこか悪いの?自分のやった事を反省して家族まで差し出すって申し出ているのに。」

「それに確かハイアームズ侯爵は”四大名門”の唯一の穏健派で、戦火を逃れた難民達を手厚く保護したという話もありますが……」

リフィアの話を聞いたリィンは驚き、ゲルドの質問に続くようにガイウスは不思議そうな表情で指摘した。

 

「確かに奴は穏健派だが結局は内戦に加担している。難民達を保護したのも万が一貴族連合が正規軍に敗北した場合、ユーゲント三世を始めとしたエレボニア皇族達や”革新派”の者達に情状酌量の余地ありと判断してもらう為だと余は睨んでいる。」

「それは…………」

「……確かにもし正規軍が勝利した際、貴族連合の中枢部分であった”四大名門”は他の貴族達よりも厳しい罰則を科せられた可能性もあるな。」

「そうだな。最悪爵位剥奪の可能性もありえただろうな。」

リフィアの言いたい事を理解したリィンは真剣な表情をし、ラウラとユーシスはそれぞれ重々しい様子を纏って推測した。

 

「つまり背信の可能性が高いハイアームズ侯や彼に従うサザーランド州の貴族達を正直受け入れたくないという事でしょうか?」

「まあそうじゃな。表面上はユーゲント三世に従っておきながら、勝率が高いと思われるカイエン公を始めとした貴族連合に加担し、その上内戦で負けた時の対策をしているハイアームズ侯の行動は世渡り上手と言うべきじゃが、裏を返せば自身の保身の為に平気で”主”を裏切る事ができる恩知らずじゃ。しかも性質の悪い事に領民達からの評判も悪くない。」

「加えてハイアームズ侯は内戦に巻き込まれ難民と化した民達を手厚く保護しました。恐らくハイアームズ侯爵家に対して厳しい罰則を科せば、民達も黙っていないと思われます。」

「「………………」」

クレア大尉の問いかけに答えたリフィアのハイアームズ侯爵に対する厳しい意見とリフィアの意見を捕捉したエリゼの説明を聞いたユーシスとラウラはそれぞれ複雑そうな表情をし

「その………リフィア殿下。保身の為に平気で国を裏切る行為は”百日戦役”で無血開城した俺達シュバルツァー家も同じと思われるのですが……」

「リィン…………」

辛そうな表情でリフィアに問いかけるリィンをゲルドは心配そうな表情で見つめていた。

 

「お主達はハイアームズ侯爵家とは違う。お主達シュバルツァー家は忠誠の証として幼いお主とエリゼをミルスに留学させるという命令に反論する事なく従い、我らメンフィルが信頼するに値する行為をお主とエリゼ自身が示したではないか。」

「リフィア殿下の専属侍女長になったエリゼや多くの異種族達と友好を結んだリィンの事ですか……」

「……勿体ないお言葉です。」

リフィアの指摘に心当たりがあったガイウスは静かな表情で呟き、リィンは静かな表情で会釈をした。

「リフィア殿下。これを機会に一つ聞きたいのですが……何故内戦に巻き込まれない為にプリネ達を休学させて学院から離れさせたのに、ツーヤ達と同じ護衛のリィンは学院を離れさせなかったのでしょうか?」

「その件か。あれはメンフィルとエレボニアの関係を修復しようとしていた事やプリネ達に貴重な学院生活を送らせたオリヴァルト皇子に対する”義理”だ。エレボニアに内戦が起きてしまった場合その時の為に備えていた”Ⅶ組”も”重心”であるリィンを失えば、オリヴァルト皇子やⅦ組にとっても相当な痛手と判断し、リィンには学院に残らせたのじゃ。」

「それが俺をトールズ士官学院に……内戦勃発が近い状態であったエレボニア帝国に残らせた”真の理由”だったんですか……」

「……確かにあの時リィンがいなければ下手をすればクロウ達に捕えられて軟禁の身となって何もできず、例え脱出できたとしても全員合流して”第三の風”として行動する事はできなかったかもしれないな。」

ラウラの質問に答えたリフィアの説明を聞いたリィンは驚き、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「……まあ、お主を学院に残らせた事でまだ成人もしていないお主を他国の内戦に巻き込み、多くの苦難を経験させたことに関してはリウイや余達もお主やシュバルツァー家の者達に対して申し訳ないと思っている。」

「俺の事はどうかお気になさらず。むしろ俺はあの時の学院に残らせ、内戦に関わらせてくれた事に今でも感謝しているくらいです。もしあの時俺もプリネさん達と共に学院から離れ、内戦の最中に仲間達の身に何かあれば絶対後悔していたと思います。」

「リィン……」

「フッ、他国の内戦に関わる事ができた事に感謝している酔狂な者等お前くらいだろうな。」

「フフッ、リィンらしい答えね。」

重々しい様子を纏って答えたリフィアの話を聞いたリィンは静かな表情で答え、リィンの答えを聞いたガイウスとユーシスは静かな笑みを浮かべ、ゲルドは微笑んでいた。

 

 

 


 
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