『どいてどいてーー!!!』
『どかなかったそっちだって、悪いんじゃないの!!?』
『小さいくせに偉そうに言ってんじゃないわよ!!』
『ちょっと追いかけられてて・・・』
『ほんとに曹操なんだ。』
『・・・・・・・・・ありがとう。』
【華琳】「出会って2日でここまで私の中に入ってくるなんて、一刀でもなかったわよ。薫」
14話『少女の役目、覇王の願い』
私達が出会ったために薫はその役目を思い出した。
私が失ったらしい記憶。
それを返すために。
・・・・・。
記憶を失っているのは一刀ではなかったの?
なぜ私が・・・・
いや、私だけではない・・・
ここにいる皆が忘れている記憶。
それを返すために薫は来たのだ。
―――ズキッ
頭が痛む。
ずっと頭痛には悩んできたけど、今日は特にひどい。
私は、どうすればいいの・・・・?
どうして、こんなに・・・・・
【華琳】「・・・・・・・・・」
一刀・・・・・・貴方はどこまで知っていたの・・・?
このことを知っていて、それで薫を連れてきたの?
貴方もずいぶんひどい人間ね・・・・。
・・・・・それは私も同じ、か・・・。
私は・・・・誰なのか。
簡単だ。
曹操。字は孟徳。
大陸の覇王。
答えがすぐにでてくる。
でも、あの子は・・・・・
記憶を与えられることで記憶を奪われたあの子は・・・・
答えがでない問いに、どう答えるのだろう。
助けてはあげられないのだろうか。
救ってはやれないのだろうか。
私には答えがあるのに、
彼女を救えないのか?
もう一度、問う。
私はだれだ。
曹孟徳・・・・魏の・・・大陸の覇王・・・・。
ならば、
天下を制覇したお前は少女ひとりすくえないのか?
助けたい。
あの子は、私に仕えると言ったのだ。
家臣ひとり守れない君主が国なんて守れるはずが無い。
【華琳】「・・・・・・それが・・・私の・・・役目、よね」
そして、立ち上がる。
まずは知らなければいけない。
受け入れる。
今の状況を。
もう、どんなに現実的でなくても
なにがあったとしても。
【一刀】「・・・すぅ・・・・すぅ・・・・」
【薫】「・・・・ん・・・・・」
月の明かりで目が覚めた。
隣で寝息を立てている男をみて、少し和む。
まったく信じられない。
生徒に手を出すか、普通。
・・・・・・受け入れた私も私か。
でも、すこし感謝してる。
今はすごく落ち着いた。
これは少なくとも、この人のおかげ。
体を起こす。
【薫】「・・・あ」
布団についていた赤いシミをみて、少し、恥ずかしくなる。
なんで、こんなの好きになるか。
皆の記憶をみたから?
・・・・。
いや、たぶんずっと前から好きだったんだろう。
それを皆の記憶と感情を通すことで自覚した。
【薫】「先生・・・・ありがとう・・・・」
その愛しい人の頬をなでる。
もう少しだけ・・・・甘えさせてほしい・・・・。
せめて、ちゃんと自分から自分を見つめられるように。
そしてまた、やさしい眠りへと落ちていく・・・・。
【貂蝉】「・・・・いいのねん?」
【華琳】「ええ、もう全て受け入れると、誓ったわ」
【貂蝉】「そう・・・・・なら、話しましょう。この外史について。」
【華琳】「外史・・・・・・・」
夜も更けて、普段ならとっくに寝静まる時刻。
それでも、私は眠るわけにはいかない。
決めたのだから。
あの話が終わり、解散した後、この男には客室に泊まってもらった。
だから、私は、今その男と向き合っている。
一刀もこの男と行動を共にし、現在に至っていた。
共にすることはありえないけど、私が知らないことは聞かなければならない。
そして、男の話は続いた。
この世界。ここは外史。
本来は正史と呼ばれる世界より生まれた世界だという。
聞きなれない言葉に困惑しながらも、大体の想像はついた。
つまりここは一刀のいた世界から生まれた世界だと。
そして、一刀はこの外史を守るために、自分と私達の記憶を失うようにしたのだと。
しかし、その記憶は完全に失われることはなく、薫という形で残った。
やはり・・・・納得はしがたい。
しかし、認めなければいけない。
【華琳】「それで、あの子はこの先どうなるの?」
【貂蝉】「そうねん、役目を終えればそのまま終端へと向かう・・・・つまり以前のご主人様のようになるわけだけど・・・」
一刀は一度、この世界から消えている。
その記憶すらなくなっているが、今はそうなんだと覚えておく。
【華琳】「でも・・・・今は、もう正史に繋がることはないのでしょう?」
【貂蝉】「ええ。だから、単純なことよん。移る外史がないのだから、当然その結末は・・・・」
存在の消滅。
ただ、消え去るということ。
一刀の場合は正史に帰るという選択があった。
だが、薫の場合は――
【華琳】「回避する方法は?」
【貂蝉】「終端から逃れ続けても、いずれその記憶の量に仲達ちゃん自身が耐えられなくなるわねん・・・」
【華琳】「・・・・・なら、その終端とやらを回避しつつ、記憶をどうにかする方法はないの?」
都合がいい。とは思った。
でも、それが一番の望みだ。
それができるなら――
【貂蝉】「ない・・・・ことも、ないわ」
【華琳】「―――っ!」
叫びそうになるのを必死に抑える。
【華琳】「どうすれば・・・・いいの・・・?」
【貂蝉】「・・・・・・・・」
【華琳】「答えなさい!」
かなり荒い言い方になったが、それだけ今はそれを求めていた。
【貂蝉】「貴女達二人のつながりを断ち切る・・・・つまり、貴女から仲達ちゃんに関する記憶を消せばいいわねん」
・・・・・なんと言った?
【華琳】「・・・・・」
私に、薫を忘れろといった。
今まさに助けようとしている少女を忘れろと。
【貂蝉】「そしてその後で、今度は仲達ちゃんから、貴女に関する記憶を消す・・・・そうすれば、この外史の記憶の大半は失われ、星詠としての力もほぼなくなるでしょうね」
そして、薫にも私のことを忘れさせる。
【華琳】「・・・・・・・・・・その後で・・・・また薫のような者が現れることは?」
あの嫌いでしょうがない奴を忘れろと。
【貂蝉】「この場合はご主人様が関わっていないから、それはないわねん。ご主人様自身の記憶はそのままでも大丈夫でしょうし」
【華琳】「そう・・・・なら、その後で私達が関わりあわなければ、・・・・いいのね」
関わりあわない。
それは、また薫をここから追い出せといってるものだ。
ここにいる限り、私と関わらないことなどない。
だから、そのためには薫は魏を出なければならない。
蜀か呉に協力を求めれば、解決はするだろう
【貂蝉】「そうねん」
・・・・・。
でも――
本当に、納得したくない。
認めたくも無い。
信じたくない
たった1日の想い出
それもとても楽しいと思えるものではない。
それでも、今は想い出なのだ。
本当に、ようやく、認められそうだったのに・・・・
やっと、貴女と話せそうだったのに。
ほんと・・・・・・好きにもならせてくれないなんて、
やっぱり、大嫌いよ・・・薫。
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真恋姫(魏ED)AS。
ということで、14話です!
そして、華琳sideでございます!
なんか、雰囲気が薫ヒロインで華琳が主人公みたいになってきた。
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