No.76441

真・恋姫†無双~江東の花嫁~(六)

minazukiさん

今回のお話は反董卓連合です。かなり足早く話を進めていますがご了承ください。

2009-05-30 22:43:20 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:30555   閲覧ユーザー数:21314

(六)

 

 天下を揺るがす黄巾の乱はその本隊が曹操によって討伐されたことで収束していった。

 

 その一方でまったく進展しないどころか悪化しているのではないかと思われることがあった。

 

 一刀と蓮華の関係だった。

 

「こればかりは本人次第ね」

 

 炊きつけておきながら傍観者を決め込んでいる雪蓮。

 

「一刀~遊ぼう~♪」

 

 初めて会って以来、何かと遊びに来る小蓮。

 

「……ふんっ」

 

 姿を見るたびに避ける蓮華。

 

 一刀は軍師としての仕事の合間にそれとなく穏や亞莎に相談したがこれといって解決案が出るわけでもなかった。

 

 そういった悩み事を抱えつつも冥琳の元、幾度かの戦などによって軍師としての才覚を発揮していく一刀に周りも信頼を寄せていた。

 

 乱後、雪蓮は呉独立の準備を袁術には秘密裏に進めていく。

 

 そんな中で漢帝が崩御するという事態が起こり、朝廷は混乱状態に陥った。

 

「これからますます乱れるわ」

 

 冥琳の指摘通り、混乱状態の都を西涼の董卓が押さえ、さらにそこから暴政を敷いているという噂が流れた。

 

 瞬く間に袁紹を盟主とした反董卓連合を結成し、董卓に対して大規模な攻撃を始めようとしていた。

 袁術の一軍として参加した雪蓮達はそこで初めて曹操と劉備に出会った。

 

 前者は小さいながら他者を圧倒する覇気を感じた。

 

 後者はどちらかといえば慈悲に溢れ誰とでも仲良くできる温かさを感じさせていた。

 

「あれが曹操と劉備か」

 

 雪蓮達だけでも驚いていたが本当にこの世界の武将はみんな女の子になっているのだと改めて思った一刀だった。

 

「あなたが噂の天の御遣いかしら?」

 

「一応、そう呼ばれているかな」

 

「そう」

 

 曹操は一刀を観察する。

 

 フランチェスカのポリエステル百パーセントの白い制服が物珍しいく、曹操は近くで見ては一刀を見上げる。

 

「私のところに来る気ない?」

 

「えっ?」

 

 公然と引き抜きをしようとする曹操。

 

 優れた人物がいれば自分の家臣に加えたがるのが曹操の癖であり、天の御遣いはもってこいの逸材だった。

 

「悪いようにはしないわ。そうね、私の直属の部下にしてあげる」

 

 一刀が初めに曹操と出会っていればそれでもいいと思っていたが、今は冥琳に次ぐ軍師としているため誘いに乗るわけにはいかなかった。

 

「孫策が飽きたらいつでもいらっしゃい。歓迎してあげるわ」

 

 それだけを言い残して自陣に戻っていく曹操。

 

 それと入れ違いに今度は劉備が一刀に近づいてきた。

 

「あ、あの、天の御遣い様ですか?」

 

「そう呼ばれているみたいだけどね」

 

 曹操と同じように対応する一刀。

 

 だが曹操とは違いどこか憧れの表情で一刀を見つめる劉備。

 

「あ、あの……劉備さん?」

 

「え?あ、ご、ごめんなさい」

 

 なぜか顔を紅くする劉備。

「あら~一刀、他所の女の子も手を出すのかしら?」

 

「し、雪蓮!」

 

 振り向くとそこには雪蓮と冥琳が立っていた。

 

「みんな、あなたのことが気になるみたいだから様子を見ていたけど、さすがは天の御遣い様かしら?」

 

 意地の悪い笑みを浮かべ状況を楽しんでいる雪蓮。

 

「劉備っていったかしら」

 

「は、はい」

 

「可愛いわね。もしよかったら私達と仲良くしない?」

 

「え?」

 

「曹操もそうだけど貴女もなかなかいい物を持っているわ。だから仲良くしましょう」

 

「えっと……」

 

 雪連のいきなりの提案に困る劉備。

 

(うわ……可愛いかも)

 

 オロオロとしている劉備の姿を見てそんなことを思っていると一刀は背筋がゾクッとした。

 

 前からは黒髪の少女が、後ろを振り向けば孫権と甘寧がこれでもかといわんばかりに鋭い視線を一刀に突き刺していた。

 

「ふんっ」

 

 視線を合わそうとする前に陣に戻っていく孫権と甘寧。

 

 すでに拒絶というよりか完全に嫌っているように一刀には感じられた。

 

「あら、一刀、どうかしたの?」

 

 雪蓮達の方を見ると、劉備も不思議そうに一刀を見ていた。

 

「な、なんでもないよ」

 

「そう」

 

 絶対に分かっているといった感じの笑みを浮かべ雪蓮は劉備と話を再会する。

 

 時折話を振られては意見を言い、それから少しして話が終わったが、その間ずっといつまで孫権とこんな感じなのかと頭を悩ます一刀だった。

 汜水関の先陣を劉備軍と孫策軍になり散々、挑発をした挙句、出てきた董卓軍将軍、華雄、張遼との激突。

 

 二人の戦いぶりを見て自ら出て行こうとする雪蓮を一刀があることを言った。

 

「生け捕り?」

 

 何をバカな事を言っているのだという表情で一刀を見る雪蓮。

 

「どちらかでも一人捕虜にして配下に加えたほうが独立に有利じゃあないかなって思ったんだ」

 

「なるほどね」

 

 自分達の事を考えての策だと思うと面白いものだった。

 

「いいわ。生け捕りにすればいいのね」

 

 それだけを言い残して単騎で華雄の元に走っていく。

 

「冥琳、出来るだけ捕虜にできるように劉備さんに伝えてもらえるかな?」

 

「そうね。明命」

 

 そう呼ぶとまるで忍者のごとく現れた黒髪の少女、周泰。

 

「劉備軍に今のことを伝えなさい」

 

「分かりました」

 

 本当に忍者のようにすばやく姿を消した。

 

「それにしてもまともに戦っているといえるのは私達と曹操軍、それに劉備軍ぐらいなものね」

 

 あとの軍は戦ってもすぐ敗走、それぐらいならまだましで戦わない軍の方が圧倒的に多かった。

 

「それに暴政を引いていると呼びかけにはあったが、実際に調べてみたらそんなものはどこにもなかった」

 

「つまり嘘を流したってこと?」

 

「そうなるな」

 

 つまり董卓という獲物を使って自分の力を高めようとするだけの茶番。

 

 そういうことならば一刀の言った華雄か張遼の捕獲、そして配下にすることは孫軍の力を増すことになる。

 

「これも天の知恵というものか」

 

 一刀には聞こえない独り言をつぶやく冥琳。

 

 そして冥琳の指示が劉備軍に伝わってしばらくしてから雪蓮が余裕の笑みを浮かべて華雄を捕獲して戻ってきた。

 華雄の捕獲によって残された張遼は退却を余儀なくされあっさりと汜水関は陥落した。

 

 さらに進撃をして虎牢関につくと、今度はあの天下無双の呂布が出てきた。

 

 圧倒的な強さで連合軍を蹴散らしていく。

 

「雪蓮」

 

「まさかまた捕虜にしなさいって言うのかしら?」

 

「俺の知っている呂布ならばきっと役に立つと思うよ」

 

「でもあれは一人ではきついわね」

 

 武人だからこそ知ることの出来る圧倒的な武。

 

「北郷殿、さすがにアレは無理だ」

 

「う~ん……そうだ劉備さんと協力したらどうかな?彼女には関羽や張飛っていう猛将がいるから協力すれば何とか成ると思う」

 

「そしてそれをきっかけにさらに仲良くなるわけね。いいわ。その策」

 

 それを早速、さっきの忍者の女の子、周泰が伝えに行く。

 

「それじゃあ私は劉備のところにいってくるから後の指揮はお願いね」

 

「心得た」

 

 単騎で劉備軍に向かう雪蓮を見送り、一刀と冥琳は戦況を眺めた。

 

「時に、北郷殿、蓮華様……孫権様とはどうなのだ?」

 

「戦いが始まる前に物凄く睨まれた。嫌われているみたいだよ」

 

「そうか。でもそうやって睨みつけるということはまだ脈があるということだ」

 

「どういう意味だよ?」

 

 冥琳は視線を逸らすことなく前を見据えたままその問いに答えた。

「雪蓮も言ったとおり、孫権様は真面目過ぎる。ゆえに北郷殿が孫呉にとって災いになるかもしれないとでも思っているのだろう」

 

「災いねぇ……」

 

 天の御遣いとしての声望は黄巾の乱以降、各地に広がっていた。

 

 それだけに利用する者も出てくる。

 

 結果的にそれが呉をしいては自分達を裏切るかもしれないと孫権は思っていた。

 

「しかし一度、信に足る相手だとわかればどこまでも信用する。そういう方なのよ」

 

 その一度がどれほど遠いか身をもって知る北郷一刀。

 

「この戦いが終わったら少しは自分から行ってみればどうかしら、天の御遣い殿」

 

 一瞬、笑みを浮かべた冥琳に対して「努力してるよ」とそれしか答えられない一刀も前を見た。

 

 その前方では呂布と戦う雪蓮、関羽、張飛。

 

 三人がかりでもまったく怯まない呂布だったが虎牢関が落ちたことによって敗走。

 

 連合軍はそのまま漢の都に雪崩れ込み、董卓軍は敗走。

 

 先陣の孫策軍、劉備軍が董卓を討ち取ったと報告がされた。

 

 だがそれは嘘だった。

 

 董卓を初めて見た雪蓮達は手にかける気にはならなかった。

 

 だが見逃しても誰かに見つかれば本当に討ち取られてしまう。

 

 そこで雪蓮はある提案をした。

 

 それは董卓とその軍師賈駆を一刀の侍女にする。

 

 多少の文句は出たものの、それ以外に方法がなかった。

 

「・・・・・・ご主人様・・・・・・」

 

 さっそく月は侍女になった気分になり一刀のことをそう呼んだ。

 

 詠は半ば納得できなかったが、「月がするならば・・・・・」と承諾。

 

 そして呂布と陳宮も孫策に降った。

 

 張遼は曹操に降ったと報告を受けたがそれほど衝撃はなかった。

 

 そして一刀の侍女として董卓とその軍師、賈駆、それに呂布に陳宮はそれぞれ「月」「詠」「恋」「音々音」と一刀と雪蓮に真名を授けることになった。

 

 華雄も説得に応じたために孫呉の独立を早めることになった。

 月達のことが一段楽した後、都の中を見て歩いた。

 

 その最中に雪蓮と一刀はある古井戸の前で何かを感じた。

 

 周泰が井戸の中に入り調べてみるとそこにあったのは帝の印である玉璽だった。

 

「凄いわね」

 

 まさかこんなものが手に入るとは誰も予想していなかっただけに驚きもまた凄かった。

 

「これがあれば帝位につくこともできるわ」

 

 だがこの時、一刀は嫌な事を思い出した。

 

 この玉璽は孫策が袁術から兵を借りるための質にしてその後、幾多の騒乱の中で曹操の元に転がり込んでいくことになる。

 

 そしてそれは遠からず曹操と戦うことになる。

 

 そこまで考えると頭痛を覚えた。

 

「一刀?」

 

「北郷殿?」

 

 雪蓮と冥琳は一刀の様子がおかしいことに気づいたが、一刀はなんでもないと言った。

 

「それで雪蓮はどうするんだ?」

 

「そうね。捨てるのももったいないからしばらくはうちで保護かしら」

 

 今ここで捨てても誰かに拾われてしまう。

 

 それならば自分達が持っていても変わらないということになった。

 

「さて、袁紹に挨拶して帰るわよ。帰ったらやることがたくさんあるんだから」

 

 それは孫軍の誰もが思うことだった。

(座談)

水無月:というわけで本日第二作目。駆け足で反董卓連合をお送りいたしました。

 

雪蓮 :早すぎないかしら?

 

水無月:ごもっともですが、重要ポイントが先にあるのでご了承ください。

 

一刀 :月達が呉に降ったのって完璧に原作とは違うよな?

 

水無月:だから言ったじゃあないですか~。これはSSですって。

 

一刀 :でもさ、あんまり変えすぎると読んでくれている人達が「なんだこれ?」って思わないか?

 

水無月:・・・・・・。だって書きたい事をするには多少の無理をしないと!

 

詠  :知らないわよ、どうなっても。

 

月  :え、詠ちゃん・・・・・・・可哀想だよ、そんなこと言ったら・・・・・・」

 

水無月:と、とにかく、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします(号泣)

 

雪蓮 :まぁ頑張りなさい。

 

冥琳 :次はいよいよ孫呉の独立ね。

 

水無月:はい!これは前編・中篇・後編の三部となっています!そしていよいよ蓮華がようやくメインキャスト入りします!ので今回はこれにて!

 

蓮華 :「え?」

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
191
31

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択