No.76279

真・恋姫無双~魏・外史伝8

明日は、試験の日。
とりあえず、今日のウチに投稿しようと急ぎ書き上げたので、後で書きなおすかもしれません。※ちなみに、第三章・後編での一刀君のおじいちゃんの最後のセリフを少し直しました。

さて、魏・外史伝、第四章・後編。
前回、一刀の意外な活躍であの大男を倒すことができました。一方で、成都に華琳さん達は・・・?

続きを表示

2009-05-30 00:02:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10660   閲覧ユーザー数:8994

第四章~『心』と『強さ』・後編~

 

 

  ―――・・・あれ?俺、どうなったんだ?

 

  ―――・・・ああ、そうか。胸が急に苦しくなって気を失ったんだっけ?

 

  ―――・・・じゃあ、ここはどこだ?夢?にして何も無い・・・真っ暗だな。

  

  『一刀・・・!一刀!しっかりしなさいってば!』

 

  ―――・・・あれ?誰かの声が聞こえる。この声、尚香ちゃん・・・?

 

  ―――・・・そうか、俺を起こそうと・・・。でも、駄目だ。体が動かないんだ。

 

  『ぐわあぁあっ・・・!!』

 

  ―――・・・え、何だ?あ、あの人は確か俺を背負っていた?今、あの怪物に

    襲われているのか?

 

  『だ、駄目・・・や、止めて・・・!』

 

  ―――・・・あの化け物、とどめを刺す気か?だ、駄目だ。そんなの・・・や、止めろ。

 

  『いや・・・、いやあああぁぁぁぁぁああああっ!!!!』

 

  ―――やめろ・・・、やめろ・・、やめろ・、やめろ、やめろやめろやめろやめろ

   やめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロヤメロヤメロヤメッ―――!!!

 

  ザシュッ・・・・・・!!!!

 

  「・・・・・・え?」

  「な、・・・・!?」

  二人の驚く声が一瞬だけ聞こえた。気付くと俺は剣を右手に持ち、怪物の大男の

 右手首を斬っていた。

  一方、大男は自分の身に何かが起きた事に気付く。振り上げた右腕を自分の顔の前に

 持ってくる。すると、手首から先が無くなっていた・・・。自分の右手が何処に行ったのか

 と辺りを探す。

  その右手は、俺が着地する位置の手前に落ちた・・・。

 

  ドサッ!!!

 

  「ぐおぉ・・・、おおおお・・・。」

  痛みを感じているのか?大男の口から、声が漏れる。

 その様子を首を回して見て、奴に向かって剣道の中段の構えをとる。

 不思議だ・・・、さっきから体に何かで満たされているようだ・・・。

  大男が俺に向かって、左拳で殴りかかってきた。

 でも、神経が研ぎ澄まされたかのように、その動きはとても遅く映る。

 そして、拳は地面を叩き割り、砂煙が舞い上がる。

  「一刀!!」

  

  俺の名を叫ぶ尚香ちゃんの声が聞こえた。

  

  俺は地面にめり込んだ大男の左腕の上を駆け上る。

  

  大男は捕まえようと右腕を俺に伸ばすが、右腕の先に手は無かった。

  

  何故ならば、さっき俺が斬ってしまったのだから・・・。

  

  だが、そんな事に構わず俺を捕まえようとする。

  

  俺は左肩まで上ると、そこから上に高く・・・飛び上がった。

  

  そしてそこから奴の姿捉える。

  

  太陽の光に大男は目をつぶっていた。

  

  このチャンスを逃すわけにはいかない。

 

  俺は重力によって下に落ちる体を一回転させ、剣に力を込める様に、

 高く振りかざした。

  

  「うおおおおおおおああああああああッッッ!!!!」

 

 

  

 

 

 

  

 

  力一杯に振り下ろしたその剣で、大男の左肩から左太腿へと斬り落とす。

 その一撃に、大男から大量の血が噴き出しながら、尻餅を着く。そして、

 手足、首が痙攣を起こすが、次第にそれを消失し、上半身は後ろに勢いよく倒れた。

 ドサアアァッ!!という音を上げながら。

 折れた剣を握りしめ、俺はその大男を見下ろしていた・・・。今になって気付く。

 俺は・・・初めてこの手で命を奪った事を。そして興奮が冷めず、何か衝動の

 様なモノが全身を駆け巡っていることも・・・。

 

  

  「な・る・ほ・ど・・・、つまり、

  

  ①、廊下で、侍女の娘と鉢合せをした。

        ↓

  ②、洗濯物を拾うのを手伝う。

        ↓

  ③、洗濯物の中に変わった繊維で出来た服があった。

        ↓

  ④、それは、天の御遣い事『北郷一刀』が来ていた

   という天の国の服だった。

        ↓

  ⑤、それが何故、ここにあるのか?それを確かめるべく

   桃香を問い詰めていた。

 

  って、事ね?」

 

  この状況を整理する雪蓮。

  「ええ、そう言う事よ。」

  不満そうな顔で、雪蓮を見る華琳。そしてすぐさま桃香を睨みつける。

  「さあ、桃香!答えなさい!一体どうして一刀の服がここにあるの!?」

  「ちょっと落ち着きなさいって・・・。そんながっついて聞かれたんじゃ

  桃香だって答えられないでしょ?」

  「・・・。そうね、あなたの言うとおりよ雪蓮。ごめんなさい、桃香。」

  「そ、そんな!?私こそ、こんな大事な事黙ってて・・・!?」

  ようやく落ち着きを取り戻し、いつもの華琳になって安著する雪蓮と桃香。

  (でも、あの華琳がここまで感情を露わにするなんて・・・、それほどの

  人物って事なのかしらねぇ?)

  心の中でそうつぶやく雪蓮。

  「じゃあ桃香・・・、教えてくれるかしら?でないと、華琳にまたどやされるわよ?」

  「・・・・・・。」

  雪蓮の言葉に何も言えない華琳であった。

  「分かりました。本当なら、もう少ししてから話すつもりでしたけど・・・。」

  そう言って、事の顛末を告げる。

  一刀がここ成都にやって来た事・・・、そして一刀が華琳達が来る前に行方不明になって

 しまった事・・・、彼の服だけが見つかった事を始終話した。

  「そう・・・そんな事があったのね。」

  「北郷さんの服、汚れていたから月ちゃんに頼んで洗ってもらっていたんです。」

  「それを幸か不幸か・・・華琳にって事か。」

  「北郷さんの捜索は続けているんだけど、まだ見つかったって報告が無いんです。」

  「そう・・・。」

  どこか不安気な表情をする華琳。

  「華琳・・・。」

  華琳の頭をぽんぽんと叩く雪蓮。

  「・・・ちょっと雪蓮?」

  その行為に少しムッとする華琳であった。

 

  そんな時であった。

 

  「桃香様、北郷殿が!!」

  宮殿の扉を思い切り開け、入ってきたのは愛紗であった。

  「「「・・・・・・。」」」

  そんな彼女を見る、華琳、雪蓮、桃香。

  「・・・・・・あ。」

  一瞬、状況が分からずにいたが、すぐに理解出来た愛紗は慌て始めた。

  「ああ・・・、いや、華琳殿!?ち、ち、違います違います!今言ったのは

  北郷ではなくてでして・・・!?」

  軍神・関羽ともあろう人物が慌てふためくその姿はあまりにも滑稽に見えた。

  「愛紗ちゃん・・・。」

  「・・・・・・。」

  「・・・あ、あの・・・桃香様?」

  二人の反応に、『?』を頭の上に浮かべる愛紗。

  「愛紗・・・、華琳はすでに知っているわ。『北郷一刀』の事。」

  「な、何と・・・?!」

  「ごめん・・・愛紗ちゃん。ばれちゃった・・・。」

  謝る桃香に本当の意味で現状を理解した愛紗であった。

  「それで・・・愛紗。一刀がどうかしたの?」

  「は、はい・・・。先程、呉の遣いの者が。どうやら北郷殿は今、小蓮殿に

  保護され呉の建業にいると・・・。」

  「何ですって?!」

  「愛紗、それは確か?」

  呉が話に上がったため、愛紗を確かめる雪蓮。

  「はい。間違いありません。」

  「そっ。」

  「どうしますか、華琳さん?」

  「・・・・・・。」

  少し考え込み、すぐに決断する。

  「一刀を引き取りに、呉に向かうわ。雪蓮、いいわね?」

  「私は別に構わないけど・・・。春蘭達はどうするの?」

  「あの子達には私から話しておくわ。」

  「そ。なら私達も行くわ。」

  「?」

  「うちの妹が関わっているのなら、姉の私も行かない訳にはいかにでしょ?」

  (それに早く天の御遣い君に会ってみたいしね・・・。)

  「何か言ったかしら?」

  「別に・・・♪」

  何の事と言わんばかりのその表情・・・。

  「・・・・・・。まあ、いいわ。なら、先に出立の準備をしておいて頂戴。」

  華琳は、深く追求する事を止めた。

  「はいはい♪」

  「それと・・・桃香。」

  「はい?」

  「ありがとう・・・。」

  「え?何の事ですか?」

  「あなたは一刀を保護してくれていたのでしょ?なら、私はそれに対して礼を

  示さなくていけないわ。」

  「華琳さん・・・。」

  「じゃあ、私は春蘭達に話してくるわ。」

  そう言い終えると、魏の王は王宮を後にした・・・。

 

  呉・建業で謎の大男が暴れていた時の出来事であった。

 

  魏から連れて来た自分の部下達を自分の部屋に集めた華琳は、彼女達

 に要点だけを言った。

  「・・・華琳様、今何と?」

  華琳が言った事がいま一つ理解できずにいる夏侯惇こと、『春蘭』。

  「北郷が・・・呉に?」

  華琳の言った事がにわかに信じ難いという顔をする荀彧こと、『桂花』。

  「ええ。先程、呉の遣いが来てそう言っていたらしいわ。」

  「そうですか・・・。」

  華琳の言った事を、冷静に受け止めようとする夏侯淵こと、『秋蘭』。

  「兄ちゃんが・・・帰って来た!流琉、兄ちゃんが帰って来たって。」

  「うん、兄様が帰って来たんだね・・・!」

  喜びを露わにして、親友に話しかける許緒こと、『季衣』。

  そして、喜びの余り少し涙ぐむ典韋こと、『流琉』。

  「ああー・・・。」

  「・・・・・・。」

  ばれちゃいましたかと言いたげな顔をする程昱こと、『風』と

  深くため息をつく郭嘉こと、『稟』。

  「それで、私はこれから呉赴き、一刀を引き取りに行くのだけれど・・・。

  誰か同伴したい子はいるかしら?」

  「はっ!」

  「ボクも行きます!」

  「私も」

  「風もですー。」

  「自分も行きます。」

  「姉者達が行くのなら私も行った方がよろしいでしょう。」

  「私も付いて行きます。」

  「何だ、桂花も来るのか?」

  「何よ、何か問題でもある?」

  「桂花も兄ちゃんに会いたいんですよ、春蘭様♪」

  「なっ!?だ、誰があの全身精液男なんかに会いたいっていうのよ!

  私はただ、挨拶もなしに居なくなった無礼者を・・・!」

  「何だ。やはりお前も北郷がいなくて寂しかったんじゃないか。」

  「まぁ、そういってやるな姉者。」

  「ちょっとーー!人の話を聞きなさいってば!!!」

  「ふふっ、なら皆。急いで出立の準備をしなさい。雪蓮達が先に待っているわ。」

  「「「「「御意」」」」」

  すぐさま準備すべく、部屋を急ぎ出ていく四人。そこには華琳と、風と稟が

 残った。

  「・・・さて、風、稟。」

  「はい~。」

  「はっ。」

  「あなた達は知っていたのでしょう?一刀がこの成都に居た事を?」

  「まぁ・・・、成都に向かう途中でお兄さんを拾ってきましたからね~。」

  「申し訳ありません。いち早く華琳様に伝えるべきだったのですが・・・。」

  「その件については、桃香から聞いているわ。私達を気遣っての事でしょう?

  ならば、それ以上は追及しないわ。」

  「はっ。」

  「それで・・・、あなた達から見て、どうだったかしら?」

  「そうですね~。あの頃に比べると少し大人っぽくなった感じがしましたね。」

  「それに加えて強かさもついていました。」

  「でも・・・相変わらず種馬でしたね~。」

  「そう・・・。種馬なのは、相変わらずなのね。」

  「はい~♪」

  「まぁ・・・、それが一刀殿なのでしょう。」

  「ふふ、そうね。・・・私の話はこれで全部よ。あなた達も早く行きなさい。」

  「では、失礼します~。」

  そう言って、二人も部屋から出ていく。そして華琳だけが、その部屋に残った。

  「一刀・・・、あなたはどうして・・・私の物にならないの?」

  だが、その問いに答える者はいなかった・・・。

 

  それから、六日後・・・呉の首都・建業。

 

  「・・・・・・。」

  雪蓮は言葉を失った。

 その無残にも瓦礫と化した自分達の街の姿を見て・・・。

  「何だ、これは!一体何があったのだ。」

  その変わり果てた街を見て、思った事を口にする春蘭。

  「・・・うむ。天災の類では無さそうだが、そうなると賊の仕業か?」

  「だとしてもこの有り様は賊にしてはいきすぎよ。」

  秋蘭の考えに、反論する桂花。

  「・・・雪蓮。」

  呆然とする雪蓮に、言葉を掛ける華琳。

  「・・・御免なさい、華琳。」

  謝る雪蓮。

  「謝る事は無いわ。変わり果ててしまった自分の街を見て、平然と

  いられる王なんていないわ。」

  「・・・・・・。」

  再び街の姿を見て、沈黙する雪蓮。

  「雪蓮様!」

  その声の主の方を見た雪蓮。

  「明命、あなたどうしたのその姿。」

  そこには、全身包帯で、右腕を石膏で固定されていた明命の姿があった。

 そんな彼女の傍に寄る雪蓮は、

  「明命、一体・・・何があったの?」

  本当なら、焦り狂ってしまう所を、王の威厳で何とか抑え込み、この惨状の

 原因を聞く。

 

  「これが・・・そうなの?」

  雪蓮は明命に確認する。

  「はい、間違いありません。」

  明命は雪蓮の問いにハキハキと答えた。そして、雪蓮は再びそれを見る。

 明命から事情を聞き、事の原因を見に、季衣、流琉、風、稟を街の復興の

 手伝いに向かわせ、雪蓮、華琳、春蘭、秋蘭、桂花はそれが保存されている

 現場に赴いた。

 今、それを確認しているのだが・・・。

  「な、なんだこれは・・・?人間・・・なのか?」

  それを見て、頭に浮かんだ疑問を言う春蘭。

 数日前、この建業を暴れまわり、民達を恐怖の底に陥れたその大男の体は、

 その肥大化していた筋肉は完全に萎み、今や骨と皮だけの餓死した人間の

 ような死体と化していた。そしてその胸には大きな切傷があった。

  「人間だったのでしょう、きっと。でも、先程の話とは大分異なっている

  ようだけど・・・。」

  「本当にこんな骨と皮だけの人間のしわざなのですか?」

  街の姿を見ながら、春蘭は言葉を続けた。

  「街で暴れていたのは、家を見下ろす程の大男との話だったはず・・・。」

  姉の言葉に続く秋蘭。

  「いえ、最初はこんな姿では無かったのですが、三日前に急にこのような

  姿に・・・。」

  「お姉様!」

  明命が言い終える前に、向こうから小蓮がやって来た。

 そしてそのまま、雪蓮の腰に抱きついた。

  「小蓮!無事だったのね。」

  「うん、明命と兵の皆・・・あと、一刀が助けてくれたから。」

  「一刀が?」

  「ええ、一刀がね。そいつをやっつけたんだよ♪」

  「はぁ、北郷がか?」

  信じられないという顔をして春蘭は言った。

  「そうよ、たった一人で。」

  「・・・ふうむ。当事者の小蓮殿が言うのですだから、恐らく間違いは

  無いでしょうが・・・。」

  「だが、秋蘭。北郷は私や凪にも勝てんような奴なのだぞ!」

  「あら?あなた、一度負けているじゃない?あんな古典的な引っかけに・・・。」

  「何だと、桂花!」

  「止めなさい二人とも。そうだわ、小蓮。一刀は今、どこにいるのかしら?ここには

  来ていないようだけど」

  思い出した様に、華琳は小蓮に一刀の事を聞く。

  「・・・・・・。」

  すると、小蓮はいきなり黙ってしまった。

  「どうしたの、小蓮?天の御遣い君がいるからって遣いを出したの、あなたなのでしょ?」

  小蓮を自分の腰から少し離し、話しかける。

  「・・・・・・分かんない。」

  「え・・・?」

  「何?」

  「何だと??」

  「どういう事かしら、分からないって?」

  「あの時、シャオ達の前から・・・」

  小蓮が言葉を紡ごうとしたその時、

  「華琳さまーーーーーー!!!!」

  妨げるかのように、季衣が大声を出しながら、向こうから走って来た。

  「何だ、季衣。お前確か流琉達と一緒に街の復興の手伝いをしていたのでは無いのか!?」

  「はい、そうなんですけど・・・。実はさっき、霞ちゃんから遣いの人が来て・・・。」

  「霞から?一体何かしらね?」

  「で、これを華琳様に渡してほしいって!」

  そう言って、手に持っていた書状を華琳に渡す。

 華琳はすぐさま、その書状の内容を確認する。

  「・・・・・・何ですって!?」

  「華琳様?」

  華琳は広げたその書状を乱暴に閉じ、右手に握りしめて言い放つ。

  「春蘭、秋蘭、桂花!あなた達は急ぎ、国に戻る準備をしなさい!」

  「は?」

  「あの華琳様・・・?」

  「季衣、あなたは流琉、風、稟達に国に戻る準備をするように伝えなさい!それと、

  霞の遣いの者に至急、蜀の成都に向かわせ、そこに残してきた者達に国に帰還する

  ように伝える様言って頂戴!」

  「わ、わ、分かりました!!」

  言われた内容を忘れないうちに、と季衣は急いで、その場を立ち去る。

  「華琳様、一体書状には、何が書かれていたのでしょうか?」

  

  秋蘭は、華琳に尋ねる。

  

  そして、華琳の口が開く。

 

  書状には・・・まさにこの大陸全土を舞台に巻き起こるであろう、

 

 新たな争乱の序章が・・・書かれていた。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
79
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択