No.762348

ハイスクール・DM プロローグ

龍牙さん

「あいつを傷付ける奴は、悪だ!」

これは無法の力を手にした少年とその仲間達の物語である。

この作品はハイスクールD×Dとデュエルマスターズのクロスです。カードゲームはしません。

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2015-03-05 00:23:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1482   閲覧ユーザー数:1431

 遥か昔、此方とは違う世界に二つの一対となる種族が有った。

 一つは、『神の使徒』を名乗りゼロの神の力を利用し、世界に停滞と圧倒的な破壊よって支配した種族『オラクル』

 一つは、自らの信念と衝動に従って支配からの開放を目指し反逆の道を歩み続ける者達。

 

 

 

 長きに渡る戦いの末、彼等は一対となる二冊の書へとその身を封印され、この世界へと流れ着く。

 

 そして、敗れたオラクルは二冊の書へと封印された際、その力の多くを奪われ長きに渡る眠りを強要されながらも、復活を目指し他者の欲望を操り自らの復活の為に行動を開始した。

 だが、勝者たる者達もまた再びのオラクルの支配による退屈を許さぬ為だけでなく、ただ信念と衝動に従い自由に動き出すのだった。

 

 その衝動のままに彼らが辿り着いたのは一つの戦場。天使、堕天使、悪魔の三つ巴の戦場の中に降り立った赤と白のドラゴン。彼等は衝動に動かされるままその戦場に居る全ての戦う者達と戦った。

 

 戦争は彼等にとって何だったのかは分からない。だが、彼等の王達は戦いの末に新たな形へと封印され、彼等の封印された書へと返って行った。

 

 

 

無法なる正義の反逆者たち、その名を『アウトレイジ』。そして、アウトレイジの封印された書の名を『アウトレイジの書』と言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってのが表向きの真実らしいけどな……」

 

 そう言って彼『五峰 四季』は己の手の中にあるアウトレイジの書へと視線を落とす。はっきり言ってこの書に封印されているはずのアウトレイジ達は封印から自由に抜け出して結構自由に行動している。

 え、聖書の神による封印? そんな物、神を超えし神『ゴッド・ノヴァ』と戦ってきた彼らにとって神の封印など解けない方が不思議だ。

 

 ……そもそも、二天龍を倒した事も偶然アウトレイジの書が二体の龍の間に落ちたのが原因で……アウトレイジの王の一角『武闘将軍 カツキング』が食べていたカレーパンがダメになった事に怒ったためで、……残る三大勢力を叩き潰したのもアウトレイジの皆で食べようとしていた高級カレーパンをダメにされた為らしい。

 ……つまり、三大勢力の致命傷も、二天龍の封印も……カレーパンが原因と言う事だ。

 

 ……話によれば特に聖書の神が一番酷く叩きのめされたらしい。ダメにした挙げ句に『そんな物』扱いした為である。

 

「……カレーパンが原因で潰された天使と悪魔とドラゴンって一体なんだろうな……」

 

 序でに某堕天使の総統はカレーパンをご馳走するといったら生き延びたらしい。それが原因で最近は神器(セイクリッド・ギア)の研究の側、料理好きな部下に美味しいカレーパンの研究をさせていると言う話しだ。再びアウトレイジが現れた時のために。

 

(なんか、カレーパンに釣られて堕天使に味方するキングが想像出来るんですけど!?)

 

 何故かカレーパン好きの多いアウトレイジ達である。……その信実が知れ渡ったら美味しいカレーパンを作りあげた勢力が裏の世界を制するかもしれない。

 

 一応アウトレイジの書と共に神器(セイクリッド・ギア)として力を貸してくれている最強のアウトレイジの一角に頭を抱える四季だった。

 

(まあ、キングの事は良いとして……。今日こそは、詩乃をデートに誘う!!!)

 

 何故か美味いカレーパンに釣られそうなカツキングの事は良いとして、決意を込めて昼休みの校舎裏で拳を突き上げている姿ははっきり言ってシュールな絵だった。

 幼馴染の少女を未だにデートに誘えないのが四季の悩みだが……相談に乗ってくれたパルサーには悪いが、あんまり参考にもなっていない。

 

 

『待ちなさーい!!!』

 

 

「ん?」

 

 そんな事を考えていると女子の叫び声が聞こえてきた。ふと、其方を見てみると『兵藤 一誠』『松田』『元浜』と言う通称“変態三人組”と呼ばれる三人組が女子から逃げていた。

 

(教室で大声で計画立ててたから冗談だと思ってたけど、まさか本当に実行するなんて……)

 

 当然ながら、大声で離していた三人の計画は女子の間で知れ渡る事となり、待ち伏せされたわけである。大体実行するにしてもその計画は囮で本命は別に有ると思っていたのだが……。

 

「あいつらバカだろう」

 

 少なくとも大声で話してバレバレの計画を実行するあたりそう思ってしまう。実際どちらにも味方する気はないので袋叩きにされている三人を放置して立ち去って行く。

 

 ……はっきり言ってこの学園に於ける四季の評判は悪い。制服を着崩している姿やそれなりに整った容姿(イメージは高校生くらいの年齢にした髪を下ろしたデュエマのテスタ・ロッサの黒髪ver)に反してだ。『クラスメイト』と言う程度の他人の評価などどうでも良いので気にしていないし、努力して好かれようとも思わないが。

 

「ったく。本当に、この世は不条理だよな」

 

 思考が妙な方向に向こうとした事を修正する。背後から聞こえる変態三人の悲鳴をBGMにその場を後にしていった。

 

(先ずは一緒に帰る事から……幼馴染で家も隣なんだから問題なし!)

 

 決意の割りに結構小さすぎる一歩な気がしないでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、五峰くん。部長が君に話があるそうなんだ。部室まで来てくれないかな?」

 

「はぁ?」

 

 放課後四季が帰ろうとした時、同じ学園のイケメン王子と呼ばれている……三年の『リアス・グレモリー』の眷属の騎士である『木場 祐斗』が態々教室の中まで来て正面に向かってそう言われた。

 女子がキャーキャーと黄色い声を上げて、一部男子が『イケメン、死ね』等と言っているが、彼の顔を見た瞬間不機嫌になった四季にはまったく聞こえていない。

 

「おいおい、色男。あの話なら断ったはずだろ……。オカ研に入るのも、両方ともな」

 

「そう言われて『はい、分かりました』と言える程君の存在が軽く無い事は、他でもない君がよく分かってるはずじゃないのかい?」

 

「それがどうした? って所だけどな」

 

 自覚はしていても、何一つ気にしていない。己の力の使い道など、過去に既に二度も決意している。それを他人に指図される筋合いなど無い。他人に己の力の使い道を指図されるのは四季にとって最も嫌いな事の一つだ。

 

「悪いけど、君は……」

 

「はっ! だったら、あの女に言っとけ。悪いが、オレのアウトレイジ流を曲げる気は何一つ無いんでな。それに、オレより弱い奴が俺を管理する……笑える冗談だな。……何より」

 

 それでも説得し様とする木場を睨みつけながら……

 

「オレは、あの女の事が……大ッ嫌いなんだよ」

 

 ……はっきり言おう。彼女が四季や彼の周囲の者に対して何か危害を加えた訳ではない。己の力が彼女にとっても無視できず、その為になるべく近くで監視したいと思うのも理解できる。……だが、それ以上に彼女を嫌う要因は二つある。

 

 それは彼女が貴族であり上級悪魔で有る事と、現魔王の『サーゼクス・ルシファー』の妹である事だ。

 

 彼女自身にはどうする事も出来ない二つの事実が、四季にとってのリアスを嫌う最大の理由だ。

 

 周囲に気付かれない様に木場にだけ向ける意思は『殺気』。

 

「部長自身には何も……」

 

「はっ! 少なくとも、それで僅かでも利益受けてんなら、不利益を被る覚悟もしとけって事だよ」

 

 そう、四季にとって『悪魔の駒』等と言う物を作った現魔王の一人も、禄に『悪魔の繁栄のため』と言う理由で貴族を裁けないサーゼクスも、それを良い事に行動する悪魔の貴族も、神器(セイクリッド・ギア)も、神器(セイクリッド・ギア)を作った聖書の神も……全て、

 

 かつて、SAOと言うゲームが存在した世界の平行世界上の同一人物には起こらなかった、彼の幼馴染である、この世界の『朝田 詩乃』に起こった、この世界ゆえの悲劇の原因となった奴等を、憎み続けている。

 

 彼女の中に宿っていた神器(セイクリッド・ギア)と、それを持つ彼女を無理矢理眷属にしようとした上級悪魔……。初めての発動にも関わらずそれを撃退する事はで来たが……実の母親から『化け物』と拒絶された時の彼女の姿は、

 

(……なんで間に合わなかった……)

 

 ほんの僅かでも急いでいれば、既に使えるようになっていた力で、自分が撃退できていたはずだと、今でも後悔している。

 

「それで、用件がそれだけなら、そろそろ帰らせてもらう?」

 

「悪いけど、部長からどうしても連れてくる様に頼まれてい……っ!?」

 

 言葉を続けようとした木場の視界が一回転し、視界に天井を移したまま背中に激痛が走る。一瞬何が起こったのか分からなかったが、立ち去って行く四季の背中を見送りながら何が起こったのかを理解した。

 投げ飛ばされた。……四季を連れてくる様に言われてから何時もの事だが、何度も『鬱陶しい』と思われてこうして投げ飛ばされていると言うのに未だに反応できない。

 

「……いい加減自覚しろよ、色男。テメェの実力って奴をな」

 

 女子から悲鳴が上がる中、四季は床に倒れる木場に対してそう言い捨てて教室を出て行った。

 

「くっ」

 

 何度目のなるか分からない失敗に対して表情を歪める木場。一部の上級悪魔の行動が原因であるそれは悪魔にとって致命的だ。二天龍や聖書の神、前魔王を打ち倒したアウトレイジの力を持つ者を敵に回している現状は、一刻も早く改善したい。

 当初、四季がアウトレイジの書の所持者だと言う事に気が付いた時には、彼女のテリトリーであるオカルト研究部の部室に連れて行く事に成功したが、その時はむき出しの敵意と兄への『紛い物の王』と言う暴言をぶつけられる結果に終ったのだ。

 滅神具(ロンギヌス)の域を超えて、ゴッドスレイヤーの域に達しているアウトレイジの力を持つ者が敵意を持っていると言うのは……悪魔側に何時どれだけの犠牲者が出ても可笑しくないのだ。

 

 女子生徒に……木場に対して敵意を向けていた男子生徒たちも心配して集まる中、木場は肩に触れる。彼の主も当然ながらその言葉には怒り、彼の力の危険性も考えた上で己の眷属に対して四季を拘束する事を命じた。結果、彼の持つ『悪魔の駒』である『騎士』の特性ゆえに真っ先に四季へと切り込んだ結果、グレモリー眷族の中で半殺しにされ血の海に沈められたのだ。

 彼の持つ神器(セイクリッド・ギア)『魔剣創造(ソードバース)』で作り出した魔剣も、『ガタラク』と言い捨てられ、木の枝の様に容易く砕かれ、最後には全身を焼かれながら切り刻まれる激痛しか認識できなかった。

 

(警告であれか。本気だったらぼくは……)

 

 単純に警告ゆえに生きていられたが……これが本気での敵対ならばどうなっていた事だろうと思う。

 神器でも無い純粋なアウトレイジ特有の『能力』。年齢は同じはずなのに、力の次元が違うという事実は彼に無力さを感じさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木場が己の無力さを感じて、一誠が『天野 夕麻』と言う少女に告白された日、折角の決意が無駄になったと落ち込む四季の姿が有ったそうな。

 


 
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