No.759630

恋姫英雄譚 鎮魂の修羅18

Seigouさん

邁進の修羅

2015-02-20 17:18:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7794   閲覧ユーザー数:5399

そして、黄巾党の乱から一夜明け、朝日が窓から差し込んでくる

 

軍を駐屯させた各諸侯の幾人かが洛陽の都に入りそれぞれ思い通りの時間を過ごしていた

 

 

 

一刀「しっ!ふっ!」

 

洛陽の中庭では、朝早くから一刀が朝稽古に励んでいた

 

凪「はあっ!!ぜあっ!!」

 

その後ろでは、凪が一刀の型を吸収しようとその動きを真似ていた

 

別に一刀は凪に北郷流を教えている訳ではない、凪が教えてくれと懇願しているが、それを悉く蹴っている

 

ただし後ろに付いて動きを真似たり、稽古に付き合うまでは許しているだけだ

 

沙和「わぁ~~~、一刀さん速いの~~~」

 

真桜「これはウチらじゃ真似できへんわ、凪も付いていくだけでやっとな感じやしな~」

 

朝稽古といっても一刀の型を確認するスピードに二人は目で付いていくだけでやっとである

 

後ろで動きを真似ている凪など、当然ながら息が上がってしまう

 

一刀「こおおおおおお・・・・・一身、これ刀なり・・・・・肌は、刃紋 骨は、芯金 背骨は、棟金 背中は、庵 頭は、柄頭 首は、目釘 鎖骨は、切羽 胸は、刃金 脇は、鎬 腹は、柄 腰は、縁 膝は、峰 踵は、横手 足先は、帽子 肩は、鍔 肘は、刃 拳は、刃先 指は、切先・・・・・」

 

凪「はぁはぁ・・・・・何ですか、それは?」

 

一刀「ああ、人の体を刀に例えた、北郷流の鍛錬する時の精神論だ」

 

凪「そんなものがあるんですか!?」

 

一刀「俺からすれば、物騒この上ない論理だけどな・・・・・」

 

一刀の中では武術の存在そのものが、単なる暴力の象徴なのだ

 

人の体をそんな人殺しの道具に例えるなど、冗談ではない

 

人は、殺し合いの駒でも道具でも無いのだから

 

しかし、武術を通じて鍛錬するだけなら、一刀も何も言わない、体を鍛えているだけで犯罪者扱いなどするわけもないし、人には肉体的にも精神的にも強さが必要な時があるからだ

 

武術は、心身を鍛えるのに一番適しているのは否めない、健康維持や精神修養の為に存在しているのだ

 

戦争や闘争など、そういった暴力沙汰に利用されるという歴史があるから一刀もそういった悲観的な見方をしてしまうのだ

 

それさえなければ、一刀もここまで武術を憎んではいなかっただろう

 

しかし、武術の起源が合戦などの殺し合いから来ている以上それもあり得ない事だが

 

一刀は、祖父から北郷流という流派を受け継いでいるがこの世で最も北郷流の存在を認めていない、それと同時にこの世の誰よりも北郷流を愛している

 

なにせ、自分をここまで鍛え上げてくれた流派なのだ、いかに平和主義者の一刀でも多少の愛着はある

 

こうした朝稽古も、日々の習慣で体に染みついているからやっているのだ

 

そういった武術に対する葛藤を抱えつつも今まで何とかやって来たのである

 

一刀「ふぅ・・・・・よし、ここまでにしておこう」

 

凪「はぁはぁ・・・・・はい!ありがとうございます!」

 

一刀「動きが荒いな、無駄な動きがあるからすぐに息が乱れるんだぞ」

 

凪「はい!精進します!」

 

沙和「あれだけ動いていたのに、全然息を乱してないの~」

 

真桜「ああ、それだけでも怪物やで・・・・・」

 

一刀「人聞き悪いな、俺は天の御遣いなんて呼ばれているけど、れっきとした一介の人間だぜ」

 

もちろん一刀も最初からここまでの体力があった訳ではない

 

元の世界にいた時から体力大魔王と呼ばれていたが、朝稽古でここまで速く動いて息を乱さないだけの体力は無かった

 

ここまでの身体を手に入れられたのは、この世界に来てから今日までの実戦によるものが大きい

 

しかも、その実戦の中で人を一人も殺さずに生き延びる為に精神を張り詰めてきただけあって精神的強さも常人の域を超えている

 

凪「・・・・・一刀様!」

 

一刀「ん?なんだ?」

 

凪「私達を一刀様の陣営に入れてもらえないでしょうか!?」

 

一刀「・・・・・いきなりどうしたんだ?」

 

凪「はい、私達は義勇軍を立ち上げてここまでやってきました、しかし黄巾党という敵が消えてしまった以上それも解散しなければなりません、私達も身の振り方を考えなければならないのです」

 

一刀「故郷に帰ればいいだろう」

 

凪「それも考えたんですが、私達もいずれは仕官しなければなりませんので、それなら一刀様が仕える幽州が一番いいと思ったんです」

 

沙和「うん、沙和達も三人で話し合って決めたの~」

 

真桜「せや、一刀はんっておもろいし、一刀はんの所やったらいろんな発明が出来そうやしな」

 

凪「お願いします、一刀様!!ぜひ我々を貴方様の陣営に入れて下さい!!」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀としても凪達の提案は嬉しいものだ

 

今後の乱世を未然に防ぐ為にも、彼女達を他の陣営に渡さず自分の陣営に留まらせ、戦力を拡大させないという手もある

 

味方が多い事に越したことはないし、北郷隊による治安維持活動も効率よくなるかもしれない

 

しかし

 

一刀「・・・・・すまないな、三人の気持ちはありがたいんだけど、断らせてもらう」

 

沙和「え~~~~~!なんでなんで~~~~!?」

 

真桜「なんでなんや!?一刀はん!?」

 

凪「・・・・・理由を、お聞かせ願えませんか?」

 

一刀「理由は簡単だ、内の陣営はもう戦力は十分でこれ以上必要ない、俺の部隊、北郷隊による治安維持も手が行き届いているし、三人の入る席は残っていないんだ」

 

実を言うと、これは一割は嘘である

 

例え北郷隊といえども、幽州全土の治安を完全に守り切れているわけではない

 

国交を接している為、異民族の烏丸との貿易でトラブルも起こり、その全てに対処出来ている訳ではない

 

しかし、一刀には三人の申し出をどうしても蹴らなければならない理由があった

 

楽進、于禁、李典といえば曹操に付き従った武将達である

 

空丹と白湯と瑞姫を見ても分かるように、只でさえ訳の分からない歴史であるのに、これ以上訳が分からなくなると収拾がつかない

 

ここは史実通り、三人には曹操の陣営に行ってもらった方が一刀としても分かり易いのだ

 

一刀「それに、俺は今後来る乱世を未然に防ごうと思っている」

 

凪「な、何ですって!!?」

 

いきなり信じられない事を言い出す一刀に凪は戸惑う

 

一刀「黄巾党という暴徒を生み出してしまった漢王朝を内側から改善して、今後二度とそういった事が起きないようにしたいんだ・・・・・だから、俺の陣営に入って乱世で活躍しようと思っているなら的外れだ、俺がそんな野蛮で殺伐とした時代なんて来させないからな」

 

真桜「一刀はん、それ本気なん!?」

 

沙和「乱世を防ぐなんて出来るの~!?」

 

一刀「確かに前例なんてないだろうな、だったら俺がその前例第一号になればいいだけの話だ、だから三人の出番なんてないんだよ」

 

凪「・・・・・・・・・・」(しょぼ~~~~~ん)

 

一刀「そんな悲しそうな顔をしない、俺の所は無理だけど、代わりに華琳の所に入れてもらえ」

 

凪「曹操様、ですか?」

 

一刀「ああ、華琳は優秀な人材は重宝するし、陳留は人手が足りてなくて忙しいみたいだからな、三人だったら華琳も文句は言わないだろし、きっと三人も退屈しないぞ」

 

凪「・・・・・分かりました、曹操様の所へ行きます」

 

一刀「華琳には言っておいてやるから、後で「その必要はないわ」・・・・・」

 

どうやら会話に気を取られ過ぎていたようだ

 

話を聞かれる所まで接近を許してしまったのは流石に落度である

 

宮殿の廊下から華琳を筆頭に、綾香、風、稟が中庭に入って来た

 

華琳「話は聞かせてもらったわ、楽進・于禁・李典、貴方達を私の陣営に迎え入れましょう」

 

凪「あ、はい、よろしくお願いします」

 

真桜「なんやとんとん拍子に話が進んでいくな~」

 

沙和「うん、なんだか流されっぱなしなの~」

 

華琳「一刀の推薦でもあるし、私も貴方達には目を付けていたから何も問題ないわ・・・・・ただし、一つ気にくわない部分があるわね、一刀」

 

一刀「ん?何がだ?」

 

華琳「孫堅の時もそうだったけど・・・・・貴方、さっきなんて言ったのかしら?乱世を未然に防ぐですって?」

 

稟「一刀殿、本気ですか?」

 

風「いくらお兄さんでも、そのような事が出来るとは到底思えませんよ~」

 

華琳「そのような事は人の技とは思えないわ、貴方は何か人の域を超えた超常の力でも備えているの?」

 

一刀「そんなものは無い、俺が持っているのは、この野蛮な北郷流無刀術と華琳達が天と呼んでいる世界の知識くらいだ」

 

華琳「天の知識・・・・・それを使えば乱世を止められるの?」

 

一刀「止められるかどうかじゃない、止めるか、止めないかだ」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺は必ず今の漢王朝を改善してみせる・・・・・華琳、君が覇道なんて人殺しの道を歩む事は無い」

 

そして、一刀はその場を去って行った

 

華琳「・・・・・風、稟、一刀はいつもあのように堅物なの?」

 

風「そうですね~、お兄さんの頭の中には太平という文字しか存在していませんからね~」

 

稟「はい、彼は常に世の為人の為に行動しています、自分の為という思考は皆無に等しいです」

 

華琳「一刀の持っている天の知識とやらを使って、今後の乱世を止められると思う?」

 

稟「確かに、一刀殿の持っている知識は、私達が見た事も聞いた事も無いものが殆どです、私達も一刀殿と旅をしていた時間は短かったので、一刀殿から全ての知識を得る事が出来た訳ではありません、他にも数えきれないほどの未知の知識が存在するでしょう・・・・・それでも、たとえどんな知識を使ったとしても、乱世を止めるなどといった非現実的な事が可能とは思えません」

 

風「風も同意見ですね~、どんな知識を使ったところで、乱世を防ぐなんて荒唐無稽な事が出来るとは到底思えません~、しかしお兄さんは常に弱い人達の立場に立って行動しています~、今までの行動を見てもそれは明らかです~、漢王朝に苦しめられている人々を旅している間に何度も幾人も見て来ましたからね~」

 

綾香「あれが一刀君の優しさなんでしょうね、彼は戦によって苦しむ人々を一人でも多く減らしたいのでしょう、だからたとえ戦場でも決して人を殺さないのでしょう」

 

華琳「彼の優しさは、今の時代では悪意と変わらないわ、一刀は運命というものを受け入れられない、それはこの時代では罪よ」

 

かつては天の御遣いを欲しがっていた華琳であったが、一刀の本質を目の当たりにしてしまっては、とても勧誘する気にはなれなかった

 

一刀の武や智が目を見張るものであるのは否定しないが、その使い道が時代や状況に合っていないのであれば話は別である

 

乱世という運命を全否定し、ただひたすらに平和を追い求める事しかしない一刀を華琳は嘆いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、洛陽の東屋

 

ここでは二人の異母姉と異母妹がお茶を片手に話をしていた

 

 

 

 

 

傾「ほぉ~~~、お前が真名を預けるとはな」

 

瑞姫「ええ、あの子は信頼に値すると思ったから」

 

傾「う~~~ん、余も預けるつもりでいたが、先を越されてしまったか・・・・・」

 

瑞姫「うふふ♪先手必勝よ♪・・・・・その様子だと、姉様も一刀君に何か感じるところがあったようでね」

 

傾「ああ、あ奴は敵に回さない方がいい、下手に手を出せば痛い目を見るのは明らかだ」

 

瑞姫「同感ね、なかなか面白い子である事は確かね、これまで出会った男の中でも一枚も二枚も上手なのは否めないもの・・・・・長い時間をかけて骨抜きにしていくわ♥ふふふ♥」

 

傾「(・・・・・帝を籠絡する為に捧げたつもりだったが、天の御遣いにまで狙いを定めるか・・・・・瑞姫、我が妹ながら恐ろしい娘だ)」

 

一刀「何の話をしているんですか?」

 

傾「うおおおおおおおお!!!??」

 

瑞姫「きゃあああああああ!!!??」

 

一刀「ど、どうしたんんですか!?」

 

傾「い、いきなり現れるでない、馬鹿者が!!」

 

瑞姫「そうよ、心の臓に悪いわ!」

 

一刀「そんな事を言われましても、自分は階段を使って真っ直ぐに上がって来ただけですよ」

 

傾「それでも気配を殺して近付いてくるな!!」

 

一刀「申し訳ありません、以後気を付けます」

 

傾「分かればいい・・・・・それはそうと、余の妹、瑞姫、そして帝や劉協様からも真名を授かったようだな」

 

一刀「はい、何太后様と天子様の格別の信頼を得られて恐悦至極に存じます」

 

傾「うむ、帝や瑞姫が預けたのであれば余も預けない訳にはいかないな・・・・・余の真名は傾だ、以後呼ぶことを許す」

 

一刀「自分は北郷一刀です、真名がありませんので、北郷か一刀と呼んで下さい」

 

傾「ふむ、瑞姫からも聞いているが天の世界には真名の習慣はないらしいな、まことに不思議な世界よ、では余は一刀と呼んでおこう」

 

一刀「構いません、傾様」

 

お互いに名で呼び合う仲になった所で新たな来客が来た

 

鶸「あ、一刀さん、こんな所にいたんですか」

 

蒼「ああ!!何進大将軍と何太后様!!おはようございます!!」

 

瑞姫「?・・・・・あなた達は?」

 

傾「葵の次女と三女だ」

 

瑞姫「まあ、あの葵さんの・・・・・確かに似ているわね」

 

鶸「はい、次女の馬休です!」

 

蒼「三女の馬鉄です!」

 

瑞姫「ふふ♪元気がよろしいですこと♪・・・・・それはそうと、私と傾お姉様は一刀さんに真名を預けましたので、よろしくお願いしますね♪」

 

鶸「え!!?一刀さん、何太后様と何進大将軍様から真名を預けられたんですか!!?」

 

傾「ああ、ちなみに帝と劉協様も預けなされたぞ」

 

蒼「凄いですよ一刀さん♪天子様と同時に劉協様までだなんて、羨ましいです♪」

 

一刀「ああ、真名を預けられたからには、俺も何としてでも漢王朝を変えていかないとな」

 

傾「ん?漢王朝を変えるとな?いったい何を変えるというのだ?」

 

瑞姫「ええ、別に変えるべき所なんて何もないはずよね」

 

一刀「具体的に言えば、意識ですね」

 

傾「?・・・・・意識とな?」

 

傾と瑞姫は一刀の言動が理解出来なかった

 

一刀「瑞姫様も傾様も、今の王朝の宦官や官僚の行いは目に余ると思いませんか?」

 

傾「・・・・・まぁな、特に張譲の老いぼれめは悪ふざけが過ぎる」

 

瑞姫「・・・・・・・・・・」

 

一刀「張譲だけじゃありません、黄さんを除いたほぼ全ての宦官や官僚達が汚職に手を染めています、自分はこれらの仕官の意識を変えて、より健全な政が出来る王朝を再築したいんです」

 

傾「確かに、国庫が空になったのも殆どそ奴らの賄賂や娯楽のせいであるからな」

 

一刀「おまけに洛陽の都は犯罪者達が平然と闊歩出来る、犯罪都市になってしまっています、自分は、この荒んだ洛陽を一から掃除し立て直したいんです」

 

傾「ああ、酷いものだな、昔の洛陽の面影は何処にもないな」

 

一刀「そこまで知っているなら何故何の手も打たないんですか!!?」

 

言い回しはまるで嘆いているようであるが、完全な棒読みでまるで他人事である

 

一刀「治安が悪くて、民達は寄り付かず、商人達も遠ざかってしまい税収も落ちる一方です!!おまけにこれ見よがしに貴族と庶民とを差別する様な壁を作って、あれでは民達の不満は嫌でも溜まります!!だから黄巾党という暴徒が出て来てしまったんです!!」

 

瑞姫「一刀君、それは大きな誤りよ」

 

一刀「な、なにを・・・・・」

 

瑞姫「金銭も民達から徴収すればいいだけの話よ」

 

一刀「民達に税金を払えるだけの収入があると思っているんですか!?」

 

瑞姫「払えなければその身の肉と血を持って払うのよ、それにあれは差別ではなく区別よ、下民と貴族の違いを明確にする為の見せしめ、そうしなければ朝廷はその威光を示せはしないのよ」

 

傾「その通り、身を粉にして働き王朝に忠誠を尽くすのは民の義務である、その義務を放棄し、漢の威光に立てつくような輩はとんでもない愚か者であり反逆者だ、黄巾党も自らの行いが愚かしいものだと悟ったから消えたのであろう、そこは賢明だな」

 

一刀「民達にも限界というものがあります!実際に疫病や飢饉という災害が起き、それによって田畑の不作が起きれば収入だって嫌でも減ってしまいます!それに追い打ちをかけるように重税を敷けば民達は爆発するのは目に見えています!それに気を配り配慮するのも上に立つ者の責務、政の基本です!」

 

傾「そのような事は関係ない、漢王朝あっての民だという事を忘れてはならぬ」

 

一刀「しかしこのままでは拙いと思いませんか!!?このままいけば漢王朝はこれまでの王朝と同じ運命を辿ります!!大将軍としてそんな事を看過していいと思っているんですか!!?」

 

傾「・・・・・何か勘違いをしているみたいだな、北郷一刀」

 

一刀「え?」

 

傾「いかに帝に気に入られ、余の真名を預かったからといって、余とお主は同格の立場になった訳ではない、お主は公孫賛の部下で余は漢王朝の大将軍なるぞ、そこにはれっきとした身分、立場の違いというものがある」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

傾「本来ならお主がそうやって余に意見を申す事自体があってはならないのじゃ、帝のお気に入りだから大目に見てやるが、あまり度が過ぎると余にも限界というものがあるぞ・・・・・それに、お主が心配せずとも漢王朝の未来は安泰だ」

 

一刀「・・・・・そんな事、何の根拠があって言っているんですか?」

 

傾「根拠など関係ない、漢王朝だから大丈夫、漢王朝だから滅ぶ事は無いのだ、よってお主が危惧する事は何一つない」

 

瑞姫「その通りよ、漢王朝が滅ぶなんて、いくら一刀君でも滅多に口にして良いものではないわ、そのようなことはありえないもの♪」

 

一刀「~~~~~~~っ!!」

 

無茶苦茶な理屈である、これが中華思想の根源なんだと改めて思い知らされる

 

事の重大性を何一つ理解していない高級仕官達の脳味噌に、一刀も流石にこの時ばかりは憤りを通り越し寒気を感じていた

 

鶸「(一刀さん、諦めた方がいいです・・・・・)」

 

蒼「(この人達には、何を言っても無駄ですよ・・・・・)」

 

この二人も、大将軍という絶対的地位を持った傾の思考は理解していたので、一刀に憐れみを感じていた

 

しかし

 

傾「・・・・・だが、確かにお前の言っている事も一理ある」

 

一刀「え?・・・・・」

 

鶸「・・・・・え?」

 

蒼「・・・・・うそ」

 

この三人、特に鶸と蒼は信じられない顔をしていた

 

傾「漢王朝が滅ぶ事などありえないが、その土台を磐石にする事も大将軍の務めであろうし、帝から真名を授けられたお主の意見を聞き入れる事も、決して悪いものではないはずだからな」

 

一刀「それでは、今後は・・・・・」

 

傾「ああ、一刀の言はなるだけ聞き入れよう、お主が漢王朝に対して悪い影響を及ぼす事は、今までの言動を見ても・・・・・まぁまず無いであろうしな」

 

瑞姫「姉様にそこまで言わせるなんて・・・・・分かったわ、私も出来る限りのお力添えをさせてもらうわ♪」

 

一刀「あ、ありがとうございます!!」

 

鶸「す、凄いです、一刀さん・・・・・」

 

蒼「うん、大将軍様と太后様を動かしちゃうなんて・・・・・」

 

一刀「では、今後の事は後ほどお話ししましょう、自分もまたこの洛陽を訪れるつもりですので」

 

傾「分かった、その時は茶菓子を用意しておこう、ゆっくり話を聞きたいしな」

 

一刀「はい、よろしくお願いします、失礼します!」

 

鶸「あ、失礼させていただきます!」

 

蒼「失礼しました!」

 

そして、一刀は鶸と蒼と共に東屋を後にした

 

瑞姫「・・・・・随分とあの男を警戒しているようね」

 

傾「そうだな、余の勘が告げているのじゃ、あの男を敵に回すなと」

 

瑞姫「そこまで言わせるなんて、やはり只者ではないようね・・・・・でも、あの男に依存するのは危険じゃないの?」

 

傾「な~~~に、あ奴の漢王朝に対する思いはこれまでの言動を見ても確かであろうし、なによりあの張譲を放っておいては、いずれ余等に牙を向いてくるのは明らかだ」

 

瑞姫「・・・・・そうね、前々から張譲の行いは目に余るものがあったし、ここで宦官の一斉清掃を行ってもいいかもしれないわね」

 

傾「あの腐りきった老いぼれめを亡き者にする為には、一刀と協力した方が確実だろう・・・・・それに、あ奴は我が夫に迎えようと思う♪」

 

瑞姫「まぁ♪とうとう姉様も身を固める決心をしたのね♪」

 

傾「ああ、あ奴は余がこれまで会ってきた男とは一味も二味も違うからな、あれほどの男なら余を満足させるものを持っているかもしれん♥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「ううううう~~~~!!やはり納得がいきませんわ~~~~~!!!」

 

斗詩「麗羽様~~、もう諦めて下さいよ~~・・・・・」

 

猪々子「そうだぜ姫~、姫がどんなに叫んだって、大将軍が言うんじゃどうしようもないって」

 

麗羽「それでも納得いかないものはいきませんわ~~~~!!!」

 

真直「はぁ、少しは大人しくしてて下さいよぉ・・・・・」

 

悠「あたしは面白いけどな♪」

 

星「まったくだ♪」

 

菖蒲「真直さん、お気の毒です・・・・・」

 

黄巾の乱による功を何も貰えず不貞腐れている麗羽とそれを必死に宥めている一同が中庭にいた

 

一刀「(なんだか声を掛け辛いな)」

 

気配を殺して廊下の柱の陰から中庭を覗き見ると自身の陣営と袁紹陣営が親睦を深めていた

 

しかし、麗羽が異様に殺気立っている、どうやら報酬を得られなかった事をまだ根に持っているようだ

 

一刀「(星や菖蒲が話しているし、冀州は幽州の目と鼻の先だから、いいか)」

 

いつでも訪ねる事は出来ると踏んで、一刀はその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

麗春「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

雛里「うう~~~、どうしちゃったの~~~、朱里ちゃ~~~ん」

 

桂花「ちょっとどうしたのよ、麗春!!?」

 

冥琳「私の認識が誤りなのか?ここは戦場なのか?」

 

穏「そんなはず無いですよ~!」

 

別の中庭では、設置されたテーブルの上で将棋に勤しむ各国の軍師達がいた

 

今は、朱里と麗春が指している最中なのだが、二人の殺気が尋常でないのだ

 

朱里「(おのれ仲達~~~!!私の策をどれも間一髪で回避して、憎たらしいです~~~!!)

 

麗春「(おのれ孔明~~~!!いい加減沈め~~~~!!)」

 

将棋台の上は、一進一退の膠着状態だった

 

両者の駒が隊列を組んで睨み合っている

 

お互いがお互いの咽に刃を突きつけ合っているような状態で、少しでも均衡が崩れればあっという間に乱戦に突入してしまう状況だった

 

そこに

 

一刀「おいおい、なんか殺伐とした雰囲気だな・・・・・」

 

麗春「ん?・・・・・おお、一刀ではないか♪」

 

朱里「え!?」

 

雛里「あ!?」

 

冥琳「なに!?」

 

穏「御遣いさん~?」

 

桂花「げっ!!?全身精液男!!」

 

無刀術の戦闘装束を着た一刀が現れ一同は振り向く

 

一刀「麗春、一体何があったんだ?」

 

麗春「丁度良かった一刀、この勝負をどう見る?」

 

一刀「ん?・・・・・」

 

盤上の駒の配置を見ていく

 

この世界の将棋は、一刀もこれまで幽州での他の文官との付き合いで指してきたので大体分かっていた

 

一刀「・・・・・勝負は中盤だな、見たところ一定の所から動いていないみたいだな」

 

麗春「おお分かるか、流石だな♪」

 

桂花「それくらい分かるわよ!!そういう事を聞いているんじゃないのよ、この全身精液男!!」

 

一刀「なんでそんな汚名を着せられないといけないんだよ!!?俺は今まで一度もそういった事はしていないのに!!」

 

麗春「なに!!?という事はお前は童貞なのか!!?ならば話は早い♪お前の初物、私が貰ってやろう♪私の初物も貰ってくれて構わんぞ♥」

 

一刀「なんでそんな話に発展するんだ!!?将棋の話は何処に行ったんだ!!?」

 

麗春「おお、そうであった・・・・・この勝負、どちらに分があると思う?」

 

一刀「・・・・・完全に互角といったところだな、この後の展開次第では均衡が一気に傾いて、一瞬で勝負が決まってしまう事もあり得る」

 

冥琳「随分と分かっているな、争い事が嫌いな御遣いの言葉とは思えないぞ」

 

穏「そうですね~、これは合戦を模しているものでもあるんですし~」

 

一刀「俺は血生臭い戦争が嫌いというだけで、こういった純粋にお互いの智を競い合うものを否定している訳じゃない」

 

麗春「なぁ一刀♪この局、これからどうなると思う♪」

 

一刀「え?それは・・・・・」

 

麗春「そんなもの決まっているだろぉ♥この後は、私が戦局を圧倒して、孔明を見事に敗走させるに決まっている♥//////」

 

一刀「ちょ、ちょっと!!?そんなものやってもいないのに分かる訳ないだろう!!/////////」

 

胸の谷間を一刀に押し付け、熱い吐息を吐きながら迫ってくる麗春

 

朱里「・・・・・ふん、噂に聞く司馬八達も大したことないですね、いざという時の頼みが色仕掛けだなんて」

 

麗春「・・・・・なに?」

 

一刀「え?・・・・・」

 

いきなり場の空気が絶対零度にまで下がったような感覚に襲われた

 

麗春「人聞きが悪いな、女の武器を使うべき時に使うのも戦略のうちだ」

 

朱里「事実を申し上げただけです、そのような都合付けや正当化をしている時点で、貴方はそこまでの人です」

 

麗春「ふん、自分の体ではそういった事が出来ないから嫉妬しているんだろう?幼児体型の孔明よ♪」

 

朱里「はわわ!!?無駄におっぱいが大きいだけの阿婆擦れに言われたくありましぇん!!」

 

麗春「なにぃ~~~~!!?私をそんな軽い女と見るか、孔明!!」

 

一刀「ちょっと待て、なんでそんな喧嘩腰なんだ!!?一体どうしたっていうんだ!!?」

 

麗春&朱里「「(一刀、御遣い様)は黙って(いろ、いて下さい)!!!!」」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

仲が悪いくせにどうしてここだけは息がぴったりなのか

 

意見を聞いてきたくせに黙れは無いだろうに

 

一刀「・・・・・なぁ龐統、諸葛亮は普段あんなに好戦的なのか?」

 

雛里「いいえ、こんな朱里ちゃんは今まで見た事がありましぇん・・・・・え、あれ?私、自己紹介しましたっけ?」

 

一刀「いや、かつて幽州で桃香と合流して一緒に旅立ったろう」

 

雛里「あわわ!?なんで知っているんでしゅか!?天の力なんでしゅか!?」

 

一刀「そんなものじゃない、君達が桃香に自己紹介をしている所を城に戻る時に見ただけだ」

 

雛里「そうなんですか・・・・・改めて龐士元と申します」

 

一刀「俺は、北郷一刀だ」

 

朱里「この阿婆擦れ!!!」

 

麗春「黙れ幼児体型!!!」

 

一刀「・・・・・なぁ、桂花」

 

桂花「近寄らないで、妊娠しちゃうわ」

 

一刀「随分だな・・・・・麗春は、普段あんな感じなのか?」

 

桂花「そんな訳ないじゃない、諸葛亮とは今日初めて会ったはずなのに麗春はおかしいわ・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

どうやら史実や演義と同じようにこの二人は犬猿の仲のようだ

 

一刀「なぁ麗春、諸葛亮、どうして二人はそんなに仲が悪いんだ?」

 

朱里「そんなの、この人が無駄に突っかかって来るからです!!」

 

麗春「なにぃ~~~!!?先に突っかかって来たのはそっちであろう!!」

 

一刀「まあまあまあまあ!!二人は人の悪い所しか見ないのか?良い所は完全に無視するのか?」

 

朱里「そ、そんな事は・・・・・」

 

麗春「むぅ・・・・・」

 

一刀「だったらお互いに非があるんだし、お互いに謝ってしまえばいいだけの事だ、二人とも無駄な争いなんて避けたいだろう?」

 

朱里「・・・・・ごめんなさいでしゅ」

 

麗春「すまなかったな・・・・・」

 

こうして、なんとか二人を和解させることに成功した

 

冥琳「・・・・・なかなかのものだが、最も相手の悪い所しか見ていないお前が言ったところで説得力は無いぞ」

 

穏「そうですよ~、貴方が一番人の良い所を見ていないくせに~」

 

一刀「俺だって、この大陸の軍師や将の事を何も見ていない訳じゃない、悪い所だけしか見ていなかったら、ここにいる人間には話しかけもしないし、こうして仲介もしない、ただ戦争という関係の無い人達を巻き込んだ大迷惑行為が許せないだけだよ」

 

冥琳「・・・・・・・・・・」

 

穏「・・・・・・・・・・」

 

麗春「それで一刀ぉ♥この局の今後の予想を聞かせてくれぇ♥」

 

一刀「ちょちょっと!!?だから押し付けてこないでくれって!!//////////」

 

桂花「この強姦魔、変態、ケダモノ、全身精液男ーーーー!!!!」

 

一刀「なんでそうなるんだーーーーー!!!??」

 

朱里「・・・・・やっぱり、阿婆擦れみたいですね」

 

麗春「やはり貴様に言われると無性に腹が立つ、孔明!!!」

 

朱里「それはこちらの台詞でしゅ、仲達!!!」

 

麗春「やはり白黒付けてやるぞ!!!」

 

朱里「望むところでしゅ!!!」

 

一刀「だからどうしてそうなるんだーーーー!!!??」

 

せっかく仲介したのにまた争い出す二人に一刀は頭を痛めていた

 

冥琳「ふふふふ♪なかなかに面白い男のようだな♪」

 

穏「そうですね~♪反応が見ていて楽しいです~♪」

 

雛里「あわわ~~、御遣い様が、御遣い様が~~~/////////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「はぁ・・・・・どうしてあの二人は、ちょっとした事であそこまで頭に血が上るんだ・・・・・」

 

例え性別が逆転していても諸葛亮孔明と司馬懿仲達は争う運命なのか

 

将棋の方も結局決着が付かず、両者はいがみ合ったまま終わってしまった

 

後にあの二人のエゴとエゴのぶつかり合いで数えきれない程の死人が出るかと思うと末恐ろしくなる

 

そんな最悪な未来を来させない為にもあの二人を争わせる訳にはいかないと、一刀は改めて思った

 

一刀「また忙しくなりそうだ・・・・・ん?あれは・・・・・」

 

廊下から中庭を覗くと見知った顔がいた

 

白湯「それでなの~、月~、一刀の話すお話が凄く面白いもん~♪」

 

月「まあまあ、それはどのようなお話なんですか♪」

 

白湯「それはね、かくかくしかじかなんだもん~♪」

 

月「まぁ、面白いですね♪」

 

詠「ふむ、聞いてみる価値はありそうね」

 

白湯「それによしよししてくれたもん~♪」

 

月「まぁ~、それは良かったですね♪」

 

別の中庭では、白湯と昨日空丹の隣で助手的な事をし諸侯達に報酬を与えていた少女がいた

 

それに付き従うように護衛がいて、中には一刀の見知った人もいた

 

一刀「(あの子は、黄さんと同じ十常侍か?だけど黄さんは、十常侍は自分以外は男だと言っていたし、それは無いか・・・・・それに、あの子は呂布と会っていたし、一体誰なんだ?)」

 

正体不明の少女の正体について思考を巡らせていた一刀だったが

 

氷環「・・・・・あ、一刀さん!」

 

炉青「そんなところで何をしているんですか?」

 

華雄「おお、北郷ではないか」

 

この三人は、以前戦場で会いこの中で一刀を一番知っていたので廊下に佇む一刀を見てすぐさま反応した

 

詠「なんですって!!?」

 

霞「なんやて!!?」

 

月「み、御遣い様!!?へぅ~~~・・・・・」

 

白湯「ああ~~~一刀~~~♪またいっぱいお話してだもん~~~♪」

 

一刀「ああ、みんなおはよう」

 

見つかってしまった以上立ち去る訳にはいかない

 

一刀「おはようございます、白湯様」

 

白湯「おはようだもん、一刀~」

 

月「おはようございます、御遣い様♪」

 

一刀「え~と、貴方は昨日天子様の傍に居らっしゃましたね、どちら様でしょうか?」

 

月「へぅ~~、そんな恭しくしなくても構いませんよ~/////////」

 

詠「ちょっと月!!月は天水の太守なんだよ!!それくらいの態度を取って当たり前だよ!!」

 

月「そんな事ないよ詠ちゃ~ん、太守っていっても詠ちゃん達がいないと何もできないんだから~」

 

一刀「天水の太守って・・・・・まさか!?」

 

各地域の太守や刺史の情報は幽州にも入って来ているので、一刀もピンときた

 

月「はい、天水太守の董卓仲頴と申します♪」

 

一刀「(なんじゃそりゃ~~~~~~~!!!!!)」

 

この世界に来て内心で一番の驚きを見せる一刀

 

董卓といえば、一刀が三国志の中でもっとも忌み嫌う人物の一人である

 

なにせ、絵に描いた様な地獄絵図の乱世の引き金を引いた人物といわれているのだ

 

その見解は一刀も同じである、なにせ各地で暴政に次ぐ暴政を敷き洛陽の都でも政治的混乱に乗じて実権をほしいままにしたのだから

 

あの張譲でさえも子悪党に見えてきてしまうほどの欲望の魔王が董卓という人物だ

 

生まれつき武芸に秀で、腕力が非常に強く、馬上で左手と右手を両方使って弓を引くことができたというが、目の前の董卓はそんな史実や演義の董卓とは似ても似つかない、とても気弱そうで御淑やかな美少女だ

 

月「?・・・・・どうかなされました?御遣い様」

 

一刀「い、いや・・・・・なんでもない・・・・・」

 

自分の持っている知識なんてもうクソの役にも立たないと思い知る一刀であった

 

白湯「そういえば一刀~、その服はなんだもん~~~」

 

今の一刀は昨日の文官の服ではなく、北郷流無刀術の戦闘装束を着ていたので白湯は気になったようだ

 

一刀「これですか?これは自分の家に伝わる戦装束です」

 

白湯「それが戦装束なの~?」

 

月「ええ、防具も何もつけていませんけど・・・・・」

 

それは他の武将達にも言える事ではないのか?皆防具を付けず、急所を露出した格好で戦場に出ているのに

 

よくあれで死なずに生き残っているものだ、そこだけは感心してしまいそうである

 

一刀「北郷流にとって防具というのはかえって邪魔なんだ、動きにくくなるだけだし、そのかわり氣が防具の役目を果たしてくれるからな」

 

月「え!?御遣い様は氣の使い手なんですか!?」

 

白湯「凄いんだもん~~~♪見せて欲しいんだもん~~~♪」

 

一刀「ええ、喜んで・・・・・っ!」

 

ブオオオオオオオオオオ!!

 

次の瞬間一刀の全身から青白い炎の様な氣が放出される

 

霞「うお!!?こりゃたまげたで!!」

 

華雄「っ!!??これは凄いな・・・・・」

 

月「へぅ~~~、凄いです~~///////」

 

詠「僕、氣の使い手なんて初めて見るよ・・・・・」

 

白湯「綺麗だもん~~♪///////」

 

一刀「・・・・・こんなところです」

 

白湯「凄いもん凄いもん~~♪他にも何かないの~~♪」

 

月「ええ、もっと見たいです♪」

 

氷環「はい、演武などはありませんか♪」

 

一刀「あると言えばあるけど・・・・・」

 

炉青「ぜひ見せて下さい♪」

 

霞「興味あるな♪」

 

華雄「ああ、天の演武、ぜひとも拝見したいものだ♪」

 

一刀「・・・・・そこまで言うならやりますけど」

 

一同から五歩ほど離れ横を向き眼前で腕を交差させ息吹を吐く

 

一刀「こおおおおおおおお・・・・・ふっ!」

 

シュババババ!!  バシッ!!  シュバッ!!  シュビビビ!!

 

そして、その構えから正拳突き、前蹴り、後ろ回し蹴り、空中蹴り当て、裏拳、またはバク天からの回し蹴り

 

時に台風の如く力強く、時に隼の如く俊敏に、時に水の如く流麗に、動きにメリハリをつけ無刀術を構成する空手、忍術、柔術の動きを強調していく

 

そして、その動きのところどころで氣を解放し演武にさらなる彩を加える

 

氷環「す、凄いです、一刀さん////////」

 

炉青「これが、天の演武////////」

 

霞「ほわぁ~~~、こりゃこの国でも最上級の演武やで~」

 

華雄「ああ、なかなかお目にかかれんぞ♪」

 

武を志している人間が見れば、一刀の演武が最高クラスの域に達しているのが分かる

 

武術の素人が見ても、思わず見とれてしまう魅力が間違いなくそこにあった

 

一刀「はあっ!!!」

 

バシュンッ!!

 

そして、最後に拳を突出し氣を放出し演武は終わった

 

一刀「ふぅ・・・・・こんな所です」

 

白湯「凄いんだもん~~♪♪こんな演武見た事ないもん~~♪♪」

 

月「とても綺麗でした~~♪へぅ~~~/////////」

 

霞「なあなあ御遣いのあんちゃん、ウチと試合して~な~♪」

 

一刀「な!?ええ!!?」

 

華雄「狡いぞ張遼!!私が先だ!!」

 

一刀「っ!?・・・・・(なるほど、彼女が張遼か)」

 

後の曹操軍将軍が目の前に居る事に一刀は少なくとも戸惑った

 

一刀「すまないけど、この後他に話さないといけない人が沢山いるから、試合までしている時間は無いんだ」

 

霞「え~~~~、つれないで~~~!!」

 

華雄「あんなものを見てしまうと、武人の魂に火がついてしまうぞ!!」

 

一刀「いつか機会は来ますから、その時にたっぷり付き合いますよ」

 

霞「・・・・・分かった、その時は逃がさへんで~~♪」

 

華雄「こっちが満足するまで付き合ってもらうぞ♪」

 

一刀「おいおい、お手柔らかに頼むよ・・・・・ところで、そっちの人は・・・・・」

 

詠「僕は賈詡、字は文和よ」

 

一刀「君が賈詡・・・・・という事は、君が董卓軍の筆頭軍師か?」

 

詠「ええ、良く知っているわね♪」

 

一刀「今回の黄巾の乱で各諸侯の戦果を調べ上げたのは君だな」

 

詠「っ!!??なんで・・・・・」

 

一刀「それ以外に考えられないからな、董卓が的確に諸侯の功績を認識していたという事は、裏で恐ろしく優秀な参謀が動いていたという事だし」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

月「流石は御遣い様です、そうなんです、詠ちゃんは凄く優秀なんですよ♪」

 

詠「ちょっと月!!余計な事言わない!!/////////」

 

月「だって本当の事だもん♪この人は詠ちゃんの能力を正しく評価してくれるんだし、喜ばなくちゃ♪」

 

詠「う・・・・・それはそうかもしれないけど//////////」

 

月「御遣い様、私の真名は月と申します、以後呼んで下さいませ♪」

 

詠「・・・・・月が許すんなら僕が許さない訳にはいかないよ、僕は詠だよ」

 

霞「ならウチだけ預けんのも変な話やからな、ウチは張遼文遠、真名は霞や、呼んでーな♪」

 

一刀「俺は真名が無いから北郷か一刀って呼んでくれ、月、詠、霞」

 

月「はい、一刀様♪」

 

詠「僕は一応一刀って呼んでおくわ/////////」

 

霞「よろしゅ~な♪か~~ずと♪」

 

白湯「ねえねえ、一刀~」

 

一刀「なんですか、白湯様」

 

白湯「一刀は、いつまでここにいるの~?」

 

一刀「そうですね・・・・・今日中にここを発ちます」

 

白湯「え~~~!!?そんなのないもん~~~~!!一刀のお話もっと聞きたいもん~~~!!」

 

一刀「申し訳ありません、しかしいつまでも幽州を留守にするわけにもいきませんので、ご理解ください」

 

白湯「嫌だもん嫌だもん!!!一刀ともっと一緒に居たいもん!!!」

 

自分の事を好いてくれるのは嬉しいが、これでは完全に駄々っ子である

 

一刀「・・・・・それでは、白湯様が寂しくならないように、お守りをあげましょう」

 

白湯「?・・・・・お守り?」

 

懐から財布をだし五百円玉を取り出す一刀

 

月「それはなんですか?」

 

一刀「これは、俺が前に暮らしていたところの通貨だよ」

 

詠「まさか、天のお金なの!!?」

 

一刀「まぁ、そんなところかな」

 

白湯「それが、お守りなの?」

 

一刀「ええ、ですけど、これに一工夫加えます・・・・・はああああああ!!」

 

一気に波動のメーターを振り切らせる

 

華雄「な、なに!!!??」

 

霞「なんやて!!!??」

 

炉青「うそ!!!??」

 

氷環「ここまで強力な気、今まで見た事がありません・・・・・」

 

波動を極薄にまで絞り込み白銀の羽が舞い落ちる

 

そして、右手に握り込んだ五百円玉に回天丹田の力を集中させる

 

その放出されては地面に落ち消えていく羽に一同は魅入っていた

 

一刀「ふぅ・・・・・これがお守りです」

 

そして、一刀は五百円玉を白湯に渡す

 

白湯「・・・・・暖かいの~~////////」

 

五百円玉は淡い光を放ち、時よりさっきの一刀の様に白銀の羽を放出していた

 

持っていると、体の内側からポカポカと体が温まっていく感じがした

 

月「へぅ~~~、綺麗ですぅ~~~////////」

 

一刀「そのお金に、自分の氣を注ぎ込みました、それを持っていればあらゆる魔が白湯様を避けていくでしょう」

 

白湯「本当なの!!?」

 

一刀「ええ、ですからそれを自分だと思って大切にしてください」

 

白湯「分かったもん♪だれにも渡さないもん~♪」

 

五百円玉を懐にしまい、白湯ははしゃぎながら中庭を後にした

 

月「うふふふ♪良かったですね、白湯様♪」

 

氷環「・・・・・ところで一刀さん、さっきの強力な氣はなんですか?」

 

炉青「うん、綺麗な羽が舞っていたし、凄く綺麗でしたよ」

 

一刀「あれは、北郷流禁忌の奥義、回天丹田だ」

 

華雄「禁忌だと?」

 

一刀「ああ、使い過ぎると寿命が縮まってしまう氣の荒業だ」

 

霞「そんなもん使ったんか!!?」

 

一刀「一日に一回が限界だけど、直ぐに止めたからどうって事は無いよ・・・・・ところで、呂布は居ないのか?」

 

氷環「恋さんですか?」

 

炉青「そういえば、ねねも朝から見かけませんね・・・・・」

 

霞「なんや?呂布に用があるんかいな?」

 

一刀「いや、この前の事を改めて謝りたかったんだけどな」

 

詠「きっと街ね、屋台やら店やらを梯子しているんでしょ」

 

氷環「きっと、ねねさんも一緒なんでしょうね」

 

炉青「ええ、ねねはいつも呂布さんにべったりですし」

 

一刀「?・・・・・それは誰だい?」

 

詠「陳宮公台、自称呂布の専属軍師よ」

 

一刀「・・・・・もしかして、呂布の隣にいたあの小さい奴がか!?」

 

どうしてあんな物心付くか付かないかの子供が軍師になれるのか不思議でしょうがない一刀であった

 

氷環「なんでしたら探しに行きましょうか?」

 

一刀「・・・・・いや、また会う機会もあるだろうし、その時にしておくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、貴族街

 

音々音「へーーーくしゅっ!!!」

 

恋「?・・・・・ちんきゅ、かぜ?」

 

音々音「違うのです・・・・・きっと誰かがねねの噂をしているのです、音にも聞いた飛将軍呂布殿が専属軍師でありますからな♪」

 

恋「ふ~~~ん・・・・・次、こっちのお店・・・・・」

 

音々音「あ、呂布殿~~、まだ食べるのですか~~!?もう軍資金が~~~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「よし、これで白湯様の不安も多少は薄れるだろう・・・・・しかし、まさかあの子が董卓だとはな」

 

史実とかけ離れた董卓の姿に一刀は歴史の大いなるギャップを感じていた

 

一刀「ん?あれは・・・・・」

 

その時、正面の廊下から愚痴を零す三人が歩いてくるのが見えた

 

美羽「あうぅ~~~、恐いのじゃ~~~、孫堅が恐ろしいのじゃ~~~・・・・・」

 

七乃「夢の中にまで出てくる始末ですからねぇ~~~・・・・・」

 

巴「まったくです、こっちの精神がまいってしまいそうです・・・・・」

 

何とも情けない問答をしている三人だったが、このままにもしておけないので声をかける

 

一刀「ちょっとすみません」

 

美羽「ぴい!!!??」

 

七乃「きゃあああ!!!??」

 

巴「なあああ!!!??」

 

いきなりビビる三人

 

一刀「え?な、なに?」

 

美羽「な、何じゃお主は!!?脅かすでない!!」

 

七乃「そうですよ~~!!孫堅さんかと思ったじゃないですか~~~!!」

 

巴「美羽様を驚かすなど不届き千万!!」

 

一刀「それはすまない事をしてしまいましたけど、こっちも話があるので声をかけたんですから」

 

巴「あ、貴方は・・・・・」

 

一刀「ええ、北郷一刀です」

 

美羽「?・・・・・本能?誰なのじゃ?」

 

巴「美羽様、本能ではなく北郷です、天の御遣いの」

 

美羽「おお!お主が天の御遣いなのか!妾を助けてたもう!孫堅が恐いのじゃ~~~~!!」

 

一刀「そうだよ、俺はその為に話しかけたんだ」

 

美羽「おお~~~♪天の助けとはまさにこの事なのじゃ~~~♪「お待ちください、美羽様!!」・・・・・ど、どうしたのじゃ?巴」

 

巴「貴様、何を企んでいるんですか!!?」

 

七乃「そうですね~、タダで私達を助けてくれるなんて都合のいい事は考えられませんし~、裏があるのがみえみえですね~」

 

一刀「う~~~~ん・・・・・確かに裏はあるな」

 

巴「やはりですか!美羽様、この者は信用なりません!」

 

美羽「そ、そうなのかえ?・・・・・」

 

一刀「まあまあ、信用するかしないかは俺の話を聞いてからにしてくれ」

 

巴「・・・・・聞きましょう」

 

一刀「ああ・・・・・袁術、君の所で客将をしている孫堅の事なんだけど」

 

美羽「う、うむ・・・・・」

 

一刀「単刀直入に言う・・・・・孫堅達の独立を認めてくれ」

 

七乃「な、何を言っているんですか~!!?」

 

巴「そのような事が出来る訳がありません!!独立を承認してしまえば、あ奴らはその勢いでこちらを飲み込みにかかります!!」

 

一刀「それについては心配ない、俺も孫堅といろいろ話をしているからな、好きにはさせない」

 

巴「そんな事、信用できません!!貴方が密告するなんて事は充分に想像できます!!」

 

一刀「それじゃあ聞くけど、このまま孫堅達を抱え込み続けて君達に何か良い事があるのか?言っちゃ悪いけど、君達にあの猛獣のような孫堅を何時までも抑えていられるとは思えない」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「見たところ孫堅が原因でかなり疲れているみたいだけど・・・・・なら、最初から独立する事を承認し、噛み付かれる前に噛み付く理由を無くしてしまえば傷付かずに済むんじゃないか?」

 

七乃「・・・・・言っている事に筋は通っていますが~」

 

一刀「俺の事を信用できないか?」

 

巴「当たり前です!!たとえ天の御遣いといえども、無償で信じろという方が無理な相談です!!」

 

一刀「なら、こうしようか」

 

そう言いながら、一刀は懐から財布を取出しその中から百円玉を取り出した

 

美羽「おお~~~♪見た事の無いお金なのじゃ~~~♪」

 

一刀「これは、俺の国の通貨だ」

 

七乃「これが天のお金ですか~」

 

巴「・・・・・なかなか見事なものですが、これをどうするのですか?」

 

一刀「これを一枚袁術にあげるよ」

 

美羽「妾にくれるのか!?やったのじゃ~~~~♪」

 

巴「待って下さい、美羽様!!これを渡してどうしようというのですか!!?」

 

一刀「もちろん、ただ渡すだけじゃない・・・・・ふっ!!」

 

そして、一刀は再び回天丹田を発動する

 

美羽「おお~~~~♪綺麗なのじゃ~~~~♪」

 

七乃「うわぁお!なんですか、この羽は!?」

 

巴「・・・・・なんと強力な氣なんでしょうか」

 

薄皮一枚まで絞り込まれた氣により舞い落ちる白銀の羽に三人は魅入った

 

そして百円玉に回天丹田の力を送り込み、羽は消えていった

 

一刀「・・・・・俺の氣をこの貨幣に込めた、これを肌身離さず持っていれば、これは君をあらゆる厄災から守ってくれるだろう」

 

美羽「本当かえ!!?ありがとうなのじゃ~~~♪・・・・・綺麗なのじゃ~~~♪暖かいのじゃ~~~♪////////」

 

百円玉は、一刀の氣を溜めこみ、淡い光を放ち、時より白銀の羽を放出させる

 

七乃「確かに暖かいですね~・・・・・お嬢様~~~♪それを貸して下さい~~~♪」

 

美羽「嫌なのじゃ~~~♪妾のものなのじゃ~~~♪」

 

七乃「そんな事言わないで下さいよ~~~、ちょっとだけ~~~♪」

 

巴「・・・・・確かに、この硬貨から強力な氣を感じますね、貴方の言う通りこれを身に着けていれば、美羽様はご病気にもならないでしょうね」

 

一刀「ただし慢心はしないように、あらゆる厄災といっても、文字通り全てという訳にはいきませんから」

 

巴「分かっています、美羽様は私がお守りします」

 

一刀「それでいいです・・・・・それで、これで俺の事を信用してくれましたか?」

 

巴「うっ・・・・・それは・・・・・」

 

美羽「妾は信用するのじゃ~~~♪妾の真名は美羽なのじゃ~~~♪呼んでたも~~~♪」

 

巴「み、美羽様!?」

 

七乃「いいじゃないですか巴さん~、私もこの人は信用できると思いますよ~、そうは思わないんですか~?」

 

巴「・・・・・それは」

 

七乃「それでは御遣いさん~、私は張勲と申します~、真名は七乃です~、よろしくお願いします~♪」

 

一刀「俺は北郷一刀、真名が無いから北郷か一刀と呼んでくれ、美羽、七乃さん」

 

美羽「分かったのじゃ~~♪一刀~~~♪」

 

七乃「はい~~♪一刀さん~~♪」

 

巴「・・・・・美羽様と七乃が預けたのであれば是非もありません、私は袁術軍将軍、紀霊、真名を巴と申します」

 

一刀「分かりました、巴さん」

 

巴「巴と呼び捨てにしていただいて構いません、私も一刀と呼ばせて頂きます」

 

一刀「分かった、巴・・・・・それと美羽、孫堅達の独立なんだけど、直ぐには独立を承認しないでくれ」

 

美羽「何故なのじゃ?」

 

一刀「いきなり独立を承認してしまうと、美羽が味方に付けている豪族達が美羽に反感を持ってしまうからだ」

 

巴「そうです、美羽様、彼らは孫堅軍の力を頼りにしていると同時に恐れてもいるのです、くれぐれも軽はずみな事はしないで下さい!」

 

美羽「むぅ・・・・・」

 

一刀「大丈夫、俺も近い内に美羽の陣営を訪ねるから、その時にまた話し合おう」

 

美羽「本当かえ!!?分かったのじゃ、待っているのじゃ~~~♪」

 

今まで沈んでいた美羽は何処へ行ったのか

 

一刀からもらった百円玉を大事そうに握り締め、美羽は七乃と巴と共に廊下を楽しそうに歩いて行ったのだった

 

一刀「ふぅ、あれが袁術か・・・・・なんであんな小さい子供が袁術なんだ・・・・・」

 

袁術といえば、董卓による動乱の中で群雄の1人として名乗りを上げ、反董卓連合の崩壊後は孫堅らの支持を受けて一族の袁紹と抗争を繰り広げた

 

一時は曹操に破れ揚州に追いやられたが、孫策らの力により揚州を実効支配し勢力圏を再構築、やがて自らを、帝舜の末裔と称した

 

帝を自称し仲王朝を創設したが、孫策らの離反や曹操の攻撃により数年で瓦解し、失意の内に没した

 

一刀「(あんな小さい子がそんな悲惨な最期を遂げるのかよ)」

 

南陽の情報は幽州にも入って来ている、かなりの暴政を敷いていると聞いているが、あんな幼く小さく学の無い子に政が出来るとは思えない

 

という事は、あの子の周りにいる政治家が原因という事だろう

 

彼女自身も欲望に忠実な部分があるようだが、自分の言葉を信じて、真名まで預けてくれたのだから根は良い子なのだろう

 

ならば、あとは然るべき助手や補佐が隣にいればいいのだ

 

七乃や巴がその役を担っているようだが、どうやら二人とも武官のようで政に関しては下手のようだ

 

一刀「(という事は、やっぱり俺が出向かないといけないという事か)」

 

このままいけば時期は違うが、史実通り袁術こと美羽は孫堅、あるいは孫策の手によって悲惨な最期を遂げてしまうであろう

 

一刀「・・・・・と、いう事です、話を聞いていたんでしょ?孫堅さん」

 

向かって左側にある扉に話しかける

 

すると、一拍遅れて扉が開き一刀の言う通り炎蓮が部下数人を引き連れて出て来た

 

炎蓮「わざとこっちに聞こえるように喋ってやがったな」

 

一刀「ええ、こういう事は隠してもしょうがないんで」

 

炎蓮「こっちが拳を振り上げる前に、振り上げる対象を無くしちまおうって腹か、なかなかに子狡い事をするじゃないか、ええ?」

 

明命「一刀様、一体何を考えておいでなのですか?・・・・・」

 

思春「ああ、どう考えても、お前のしている事はおかしいぞ」

 

鴎「ええ、一体何がしたいのよ?」

 

一刀「最初に言っただろう?武力ではなく話し合いで解決するって」

 

炎蓮「甘いこった、そんなに人が死ぬのを見たくないってか?」

 

一刀「甘い事は認めますが、そっちにとっても悪い話ではないでしょう」

 

粋怜「まぁね、何の損害も無くタダで、しかも時間を掛けずに領地を奪い返せるならそれに越したことはないわ・・・・・ただ、君のこの策は私達の気分次第でいくらでも破綻するわよ」

 

梨晏「そうだよ~、私達が袁術を打つ気満々だったら意味の無い策だよ~」

 

雪蓮「そうね、完全に相手頼りの、穴だらけの策よ」

 

一刀「確かにそうかもしれない・・・・・ですけど孫堅さんは、まだ俺を勧誘する気なんですか?」

 

炎蓮「ああ、今でもお前を欲しいと思っているぞ♪」

 

一刀「なら、この案を受け入れてもらえば自分は部下とまではいきませんが、孫呉の発展に生きている限り未来永劫協力する事を約束しましょう、自分の持っている天の知識も惜しみなく提供します」

 

雪蓮「なんですって!!?」

 

炎蓮「んじゃあ、もし受け入れなければ・・・・・」

 

一刀「ええ、自分は貴方方にはその後一切協力しません」

 

炎蓮「なるほどな、お前を取るか、戦を取るか、好きな方を選べ、か」

 

一刀「それに孫堅さんは、劉表との戦の不運もありますが、自分から美羽の客将になったんでしょ?だったら美羽を恨むのは道理に合わないと思いますけど」

 

炎蓮「確かに、あのクソ餓鬼を恨む理由は無いな、向こうもそれなりの実と利があって俺達を匿ってるんだろうが、俺達の面倒を見てくれている事には変わりないからな・・・・・だがな、それでも俺はあのクソ餓鬼が気に入らないんだよ」

 

一刀「気に入らない人間が居たら、貴方は片っ端から殺しにかかるんですか!?そんなもの山賊と何の違いがあるっていうんですか!?」

 

炎蓮「何か勘違いしているみたいだな、俺は孫呉の総大将だぜ、力を見せつけなければやっていけない、それはこの大陸のあらゆる太守、将達に言えることだ・・・・・それに独立を承認してもらうだ?そんなもの俺達が袁術に屈したみたいじゃねえか、実力で奪い返さなきゃ意味がないんだよ」

 

一刀「そんなものは蛇頭の理屈だ!相手を陥れ、脅して金銭を巻き上げる下種のやり口だ!そんなやり方よりも俺が示した案の方がはるかに効率的だって分かっているでしょう!?」

 

炎蓮「確かにお前の言っている事も正しい、下手に袁術の配下を裏切らせるよりも、はるかに危険は少なく得るものは大きいからな・・・・・だがな、こっちにも孫呉の誇りというものがあるんだよ」

 

一刀「誇りだって!?そんな意味の無い精神論を追い求めて、目の前の確かな実と利を捨てていては本末転倒でしょう!」

 

炎蓮「これは理屈じゃないんだよ、俺達の沽券に係わる事だからな」

 

一刀「・・・・・という事は、俺の知識はいらないという事でいいですね」

 

炎蓮「いんや、お前の持っている知識、そしてお前自身も欲しい」

 

一刀「・・・・・こういう言葉を知っていますか?二兎追う者は一兎も得ず」

 

炎蓮「その言葉、そっくりそのまま返すぜ、戦を起こさずに乱世を鎮圧しようとしている奴に言われたかないぜ」

 

一刀「・・・・・どうやら、話しても無駄みたいですね、孫堅さんは美羽を殺す気満々みたいですし」

 

炎蓮「いんや、お前の案受け入れる事にするぜ♪」

 

一刀「はあ!!!?」

 

この人は何を考えているのか理解不能である

 

一刀「誇りだのなんだのと散々文句を言っといて何なんですか貴方は!!?」

 

炎蓮「誇りも確かに大事だが、お前はしっかりとこっちの将来を考え、その未来図を示してくれたからな、孫呉を利用するだけ利用して独立はさせてやったんだから満足しろ、なんていう人間では決してない♪」

 

一刀「だったらなんでこんな回りくどい言い回しをするんですか!!?」

 

炎蓮「お前の反応が面白くてついつい試しちまった♪なかなかに楽しませてもらったぜ♪」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

どうやら見た目通りの超ドSのようだ

 

一刀はこういう人間は苦手である

 

炎蓮「お前は信じるに値する奴だ・・・・・だが真名に関しては保留にさせてもらうぞ、こっちも王の身なんでね、真名の重みというものは一般の感覚とはまた違うんだ、まずは北郷と呼ばせてもらうぞ」

 

一刀「それでもいいです、こっちも孫堅さんと呼ばせてもらいます、こちらの案を受け入れて頂いてありがとうございます」

 

炎蓮「それじゃ、交渉成立だな♪」

 

一刀「ええ、これからよろしくお願いします」

 

ようやく話を終えることができ、安堵する一刀だったが、次に炎蓮が発した話までは予測できなかった

 

炎蓮「ところで北郷、さっき生きている限り、未来永劫江東の発展に協力すると言っていたな♪」

 

一刀「え?・・・・・ええ、言いましたけど・・・・・」

 

恐ろしく嫌な予感が背筋を駆け巡る

 

炎蓮「お前、今付き合っている女は居るか?」

 

一刀「い、いえ・・・・・居ませんけど・・・・・」

 

炎蓮「そりゃ良かった♪それじゃあ独立した暁には、俺の所に婿に来てくれや♪」

 

雪蓮「ちょっ!!?母様!!?」

 

蓮華「なななな、何を考えておいでですかお母様!!!??////////////」

 

思春「いきなり何を言うのですか、大殿!!!??//////////」

 

明命「はうあ!!!??一刀様がお婿様にですか!!!??/////////////」

 

鴎「おおおおお大殿様、本気ですか!!!??////////////」

 

梨晏「そんな勝手に決めないで下さいよ~~~!!!/////////////」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

予想通りというかなんというか、一刀は眉間を抑え、寄った皺を伸ばしていた

 

孫呉の戦士達は、この時ばかりは炎蓮の言葉に猛抗議していた

 

粋怜「大殿の考えは分かりました、この子の血を孫呉に入れて尊敬と畏怖を集めようという魂胆ですね」

 

炎蓮「おうよ♪天の畏怖なんて得られた日にゃあ江東は文字通り未来永劫繁栄するぜ♪」

 

一刀「・・・・・一つ確認しますが、それを断ればさっきの交渉も無かった事になるとか、そんなオチですか?」

 

炎蓮「いんや、それはそれ、これはこれだ、そっちの都合や立場もある事だし、結論を急がせるつもりはないぜ♪・・・・・なんだったら、まずは俺の体から味わってみるか♥」

 

前屈みになり、そのはち切れんばかりの肉体を強調する炎蓮

 

余りに悩ましい媚肉に、一刀は顔を赤くしながら後ずさる

 

一刀「気が早過ぎます!!・・・・・良かったです、こっちも幽州の事がありますし、いきなりこっちに来いとか言われなくて/////」

 

炎蓮「で、どうだ?婿に来る気はあるか?」

 

一刀「・・・・・保留にさせて下さい、今後そちらを訪ねますので、その時にでも話し合いましょう」

 

炎蓮「よっしゃ、脈ありだぜ♪孫の顔を見るのが楽しみだ~~~♪」

 

一刀「ですから気が早いですってば!!!////////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粋怜「大殿、さっきの言葉は本気なのですか?」

 

炎蓮「おおよ♪あいつの子種が手に入れば孫呉の未来は磐石だぜ♪」

 

梨晏「理屈は分かりますけど、こっちの意見も聞き入れてくださいよ・・・・・」

 

炎蓮「聞き入れる訳ないだろうが、んな事言い出したらお前ら反対するだろうが」

 

思春「当たり前です、いくら大殿でも横暴が過ぎます」

 

雪蓮「あたしは、別に反対はしないわよ」

 

鴎「雪蓮様!?」

 

雪蓮「まぁ、あたしも最初に聞いた時は驚いたけど、理に適ってると言えば適ってるしね、天の血が孫呉に入ればその後の統治も圧倒的にしやすくなるでしょうし」

 

炎蓮「もちろん双方合意での話だ、どうしても嫌だというなら俺も強制はしねぇ、あいつもいずれこっちを訪ねるらしいし、その時にでもゆっくり語り合ってみろ、お互いの事を何も知らないでガキを授かったところで、お前らの負担にしかならないだろうしな」

 

蓮華「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「それでね空丹様、私が暮らしていた桃花村ではですね~♪」

 

空丹「ほぉ~~~♪桃香の村には、そんなに綺麗な桃園があるの~~~♪」

 

黄「うふふふ~♪楽しそうですね、天子様~♪」

 

後宮近くの庭園にて桃香と空丹がお茶を片手に話し合っていた

 

愛紗「まさか、私まで招いていただけるとは光栄の至りです♪」

 

鈴々「凄いのだ~~、綺麗なお菓子なのだ~~♪はぐはぐはぐ♪」

 

白蓮「天子様に招かれるなんて、私にもとうとう長年の苦労が・・・・・ううっ・・・・・ひっぐ・・・・・」

 

風鈴「あらあら、白蓮ちゃん感動の余り泣き出しちゃって、可愛いんだから♪」

 

楼杏「ええ~~と、確か幽州の人よね、ということは天の御遣いさんの上司さんってことね」

 

親戚という事もあり既に真名を預け合った桃香と空丹は楽しそうに会話に花を咲かせていた

 

他にも招かれた客が同じテーブルに座り団欒の一時を楽しんでいた

 

空丹「あははは♪面白いの~♪・・・・・ゆうに公孫賛、貴方に話があるの」

 

白蓮「え!?は、はい!!なんでございましょうか!!?」

 

いきなり声を掛けられた白蓮は、緊張のあまり直立不動になる

 

空丹「うむ、話というのは、一刀のことなの」

 

白蓮「え!!?あ、あの・・・・・一刀が何か失礼な事を?・・・・・」

 

空丹「?・・・・・失礼な事なんてしてないの、天の話をいっぱい聞かせてくれて楽しかったの♪」

 

白蓮「ほっ、よかったぁ~~~~・・・・・」

 

一瞬咎められると思っていた白蓮は肩の荷が下り、少しだけ項垂れたのだった

 

そして、再び背筋を伸ばし空丹と向き合うが、次に空丹の口から出て来た言葉は白蓮を戸惑わせるには充分な威力を持っていた

 

白蓮「それで、一刀がどうしたんですか?」

 

空丹「うむ、一刀を朕に譲って欲しいの♪」

 

白蓮「・・・・・え?」

 

愛紗「て、天子様、今なんと・・・・・」

 

空丹「朕は、一刀が気に入ったの♪是非一刀を後宮に招きたいの♪」

 

白蓮「し、しかし、それは・・・・・」

 

返答に困る白蓮、一刀は自身に次ぐ幽州ナンバー2であり、いきなり消えられると幽州国内は混乱状態に陥ってしまう

 

現在の幽州は一刀に依存している部分が多いので、後任が育つ前に一刀に居なくなられると非常に困るのだ

 

しかし、帝である空丹の頼みを断る事などあってはならないので、白蓮にとってはいきなり究極の選択を迫られたも同然である

 

その時、まさに天の助けが来た

 

一刀「空丹様、白蓮を困らせてはいけませんよ」

 

桃香「あ、一刀さん!」

 

愛紗「あ、一刀様!」

 

鈴々「にゃにゃっ!?お兄ちゃん!?」

 

白蓮「(一刀ぉ~~~!!今回ほどお前の事を神様だと思った事は無いぞ~~~!!)」

 

一刀「空丹様、昨日も言った筈ですよ、後任が出来るまで幽州を離れる訳にはいかないと、空丹様も納得していたではないですか」

 

空丹「うぅ~~~~ん、それでも待ちきれないの!朕は一刀の話をもっともっと聞きたいの!」

 

一刀「そんな何十年も先の話ではないのですから、焦らなくとも大丈夫ですよ、それに漢王朝を変える為にも近い内にまたこの洛陽を訪ねるでしょうし」

 

空丹「?・・・・・変える?変えるとは何をなの?」

 

一刀「空丹様は、後宮に籠りっ放しですので気付いていないかもしれませんが、このまま何の手も打たず不遜な時を過ごしていれば漢王朝は近い内に必ず滅びます」

 

桃香「か、一刀さん!!?」

 

鈴々「お、お兄ちゃん!!?」

 

愛紗「いくら一刀様でも、それだけは言ってはなりませんよ!!」

 

白蓮「なんてことを言うんだ、一刀!!」

 

帝の前で一番言ってはならない言葉を言った一刀に度肝を抜く一同

 

風鈴「(ふぅ~~~ん、やっぱり一刀君は大物ね♪)」

 

楼杏「(なるほど、何太后様が真名を預けた理由が何となく分かったわ♪)」

 

黄「・・・・・・・・・・」

 

しかし、この3人は違うようだ

 

空丹「漢王朝が滅ぶ?何を言っているの?」

 

一刀「空丹様は、今の洛陽がどのような状況に陥っているか知っていますか?」

 

空丹「それなら心配ないの、宦官の皆が言ってるの、洛陽の都は昔から相も変わらず発展していて、民の皆は笑っているって♪」

 

一刀「無理もありません、空丹様はこの洛陽の都を直にご覧になっていませんからね・・・・・」

 

空丹「・・・・・何が、言いたいの?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

現状を知っている者達は、渋い顔をしていた

 

一刀「空丹様・・・・・黄さんはともかく、他の宦官達の言葉は全てでたらめです!」

 

空丹「え・・・・・」

 

一刀「洛陽の都は、これ以上ないほどに荒んでいます、宮廷内も賄賂や汚職が蔓延り、過去の繁栄していた漢王朝の面影は何処にもありません!」

 

空丹「・・・・・・・・・・」

 

一刀「漢王朝の財産は、全て宦官、官僚、貴族達の欲望を満たす事だけに使われています!しかし彼らはそれでも足りないと言い放ち、重税に次ぐ重税で民達からなけなしの金銭までも絞り上げています!」

 

空丹「・・・・・黄・・・・・本当なの?」

 

黄「・・・・・はい、一刀さんの言う通りです」

 

空丹「ど、どうして言ってくれなかったの!?」

 

黄「空丹様をあらゆる政争から守る為です、空丹様がそれを知ってしまえば、それを望まない高級仕官の方々が一斉に決起するでしょう、それこそ空丹様のお命が危険に晒されてしまいます」

 

空丹「・・・・・そんな、そんな」

 

いきなり突きつけられた漢王朝の現実に空丹は頭の中が真っ白になった

 

一刀「特に、十常侍の長である張譲の行いは酷いものです、漢王朝の財源のほとんどは、奴一人に独占されています」

 

空丹「・・・・・張譲が」

 

一刀「漢王朝の国庫は、空も同然なんです!このままでは権力を独占した仕官達による決起が起こり、皇室は滅んでしまいます!」

 

空丹「・・・・・朕は、どうすればいいの?朕は政なんてしたことないの」

 

一刀「分かっています、空丹様の置かれている状況は分かっているつもりです、ですから、自分に任せてください!自分がきっと漢王朝に昔の華やかな活気を取り戻させてみせます!空丹様の身の回りに危険が及ばないようにきっとしてみせます!この北郷一刀を信じて下さい!」

 

空丹「・・・・・一刀」

 

何時になく真剣な一刀の目を見て、空丹は息を飲んだ

 

そして、その目を見ているうちに空丹の中にも何かが芽生えてきたのだった

 

空丹「・・・・・分かったの、朕は一刀を信じるの!」

 

一刀「ありがとうございます、ありがとうございます、空丹様!!」

 

一番聞きたかった言葉を聞いた一刀は、その場に跪き何度も何度も感謝の言葉を投げたのだった

 

楼杏「うふふ、天子様の信をここまで受け取ることが出来るなんて、本当に凄い人ですね♪」

 

一刀「貴方は?」

 

楼杏「私は皇甫嵩、字を義真と申します♪」

 

一刀「っ!?・・・・・あなたが」

 

楼杏「天子様がここまでの信を置いているのでしたら、私も真名を預けますね、私は楼杏と申します、よろしくおねがいします♪」

 

一刀「こちらこそ、北郷か一刀と呼んで下さい、楼杏さん」

 

楼杏「はい、一刀さん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日付は変わり各諸侯は帰途に付いていた

 

華琳「(・・・・・・・・・・)」

 

諸侯の一人、華琳は今回集まった英傑達の批評をしていた

 

まずは孫堅

 

従えている配下達は皆、武官文官共に知勇優れた一騎当千の将ばかり

 

今は、劉表との戦の不運も相俟って袁術の客将をしているようだが、近い内に内側から食い破るだろう

 

英雄としての格でいえば向こうの方が上であろう

 

雌雄を決するのであれば、それ相応の下準備と覚悟を持って臨まねばあっという間に蹂躙されてしまうのは目に見えている

 

華琳「(それまでは力を蓄えなければならないわね)」

 

次に袁紹

 

華琳「(・・・・・これは、考えるまでもないわね)」

 

あのような自己顕示欲だけが取り柄の輩に負ける要素など一つもない

 

財力と兵の数は目を見張るものがあるが、それを生かせていない、完全なザルである

 

唯一警戒しなければならないのが、桂花が認めている田豊くらいだが、一人だけ優れていたところでその人物さえ押さえてしまえばどうとでもなる

 

戦争は、個人ではなく組織の力がものを言うのだから

 

そして

 

華琳「(一刀・・・・・あれははっきり言って病気よ)」

 

一刀の頭の中にあるのは、平和を維持する事と人に迷惑を掛けない、これだけである

 

確かにそれは正しい事である、突き詰めれば人と人とが付き合っていく上でこれ以上に大切な事は無い

 

しかし、それは平時の理であって、乱世の世では紙屑でしかない

 

戦場での一刀の戦いぶりは華琳も一目置いているが、一刀がその手で人を殺したという報告は一つも入ってこない

 

彼は、乱世に飛び込む気が無い、逆に言えば乱世そのものを防ごうとしている

 

偽りの平和にしがみ付き、その偽りの平和を磐石な平和にしようと努力している

 

ここまでは華琳も読んでいた

 

華琳「(一刀・・・・・まず間違いなく、貴方の努力は徒労に終わるわ)」

 

自身が刺史ということもあり、漢王朝の腐敗ぶりを間近で見て来た華琳にとって、一刀の行動はとても理解できるものではなかった

 

凪「(なんだか、一刀様の氣を二つ感じる)」

 

華琳の後に続き、陳留へと向かう凪は二つの氣を感じていた

 

遠ざかっていくにつれ感じる事は出来なくなってしまうが、洛陽に一つ、袁術の陣営に一つ小さくも確かな氣があった

 

そして、各諸侯はそれぞれの思惑を胸に帰途に就くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

北郷伝の頃からそうなんですが、自分の書く戯曲はキャラが多過ぎですね

 

どうにも自分は気に入ったキャラがいれば片っ端から入れていく傾向があるみたいです

 

その結果、その場面によって登場させられるキャラが限られてしまい、入れたはいいが、どうしても出番が少なくなってしまうキャラが出て来てしまうのです

 

北郷伝の紀霊こと彩がそのいい例でしょう、史実の紀霊も三国志の初期にいきなり行方不明になってしまい、その痕跡も資料もほとんど残っていない有様ですから仕方ないと言えば仕方ないんですけど

 

今回の紀霊である巴にはそうはなって欲しくありません、もちろん彩もこれで終わらせる訳にはいきません、阿修羅伝では・・・・・(ここだけ文章が破れている)

 

という訳で、阿修羅伝を楽しみにしている皆さんには大変申し訳ありませんが・・・・・次回も、鎮魂の修羅!!!


 
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