No.759521

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

始まる進撃

2015-02-19 23:09:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4385   閲覧ユーザー数:1161

「うっひゃあ、すげぇ数だ」

 

「チッ。モンスターめ、数だけは無駄に多い」

 

『『『『『グガァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

ハルト、アスナ、響の三人は、頼忠に案内される形で廃屋から廃屋を辿り、少しずつだがレジスタンスのアジトに戻ろうとしていた。夜を迎えた影響からか、彼等が通っている廃屋の外部では活発化したモンスター達が目を赤く光らせながら咆哮を上げている。

 

「見つからないように動くぞ。モンスター共は夜になるたびに活発化し、戦闘力も大幅に向上する。下手に相手すればこちらの体力を消費するだけだ」

 

「血気盛んなモンスター達ね…」

 

『ゴォォォォォォォォォォォォ…!!』

 

怪獣の如き巨体を誇るゴーレムが歩くたびにズシンズシンと鳴り響き、その地響きは四人のいる廃屋にまでビリビリ響く。

 

「それにしてもあのモンスター達、一体何処に向かってるんだろうね? さっきから何度もあのモンスター達が視界から消えないんだけど」

 

「妙だな。ここまで俺達と同じ方向に進むなど……いや、そんなまさかな…」

 

「ん、どした?」

 

「…お前達、急いでアジトに向かうぞ。少しした後、面倒な事態が発生しそうだ」

 

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、レジスタンスのアジト…

 

 

 

 

 

 

 

「ふっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!」

 

「ちょ、凛…うわっぷ!?」

 

食事にありつけた事で無事に復活した凛が、愛しの存在であるディアーリーズに思いきり抱き着いていた。突然抱き着かれた為に、ディアーリーズは危うくバランスを崩しかけたが。

 

「うわぉ、大胆に抱き着くねぇ~」

 

「まぁ、それがディアラヴァーズの通常運転だ」

 

「ひ、人前で恥ずかしくないのでしょうか…?」

 

「うわぁ~良いなぁ~…ねぇティア、あれ凄く良いシチュエーションじゃない?」

 

「スバル、何でそれをアタシに聞くのよ」

 

「あはは、りんちゃん大胆ー!」

 

「…あの人が」

 

離れた位置で見ていた楓や蒼崎がそれぞれの反応を見せる中で、ディアーリーズは自身に抱き着いて来た凛を何とか引き剥がす事に成功する。

 

「ぷはぁ! ちょっと凛、いきなり飛びついて来ないでよ。びっくりしたじゃないか」

 

「だって、今までずっとウルと離れ離れだったんだよ!? そんな状況でお腹は空いちゃうし、ZEROには色々と振り回されるし、もうずっと駄目かと思ってたんだから!!」

 

「「あぁうん、それは本当にお疲れ様」」

 

「それで、やっと会えたもんだから私…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! 会えで良がっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ZEROの名前が出て来た途端にディアーリーズと蒼崎の二人が労いの言葉をかけ、凛は再会出来た嬉しさのあまりディアーリーズに泣きついた。ディアーリーズが「よしよし」と言いながら彼女の頭を撫でる。

 

「まぁ、俺達も俺達で調理のし甲斐があったもんよ」

 

「あははは、凛ちゃんったら凄い食べっぷりだったよ」

 

「まぁ無理も無い。空腹というのは、人が思っている以上にキツいものだ」

 

「おかげで、サラマンダーの肉が底をついちゃいましたけどね…」

 

凛の為に料理を振る舞ったティーダ、フィアレス、キーラは満足そうに告げるが、琥珀は肉の在庫がなくなった件について、未だに苦笑いを隠せずにいたのは言うまでもない。

 

そんな時、一同の下にダニーがやって来た。

 

「ん? お前等、まだこんな所にいたのか」

 

「あ、ダニーさん!」

 

「もう時間帯は夜だ。いつまでもここにいないで、早くアジトの中に戻っとけよ。それから、さっきから上で飛んでるお前もだ。早く降りて来い」

 

「…了解」

 

上空を飛び回っていたサイガも、ダニーの呼びかけに応じて地上に降り立ち、変身を解除してユイの姿に戻る。事情を知らない蒼崎はダニーに問いかける。

 

「? 夜になったら、一体何が起こるんだ?」

 

「あぁ、お前達はまだ知らないんだったな……地上にいるモンスター達は、夜になると凶暴化するんだよ。おまけに戦闘力も上がるからな、下手に相手取るとかなり危ない」

 

「うげ、あのモンスター達パワーアップすんの…!?」

 

「それは流石に困りますね……分かりました、すぐに戻ります。ほら凛、そろそろ泣き止んで。これからは一緒にいるからさ」

 

「りんちゃん、泣き止んでね。よしよし」

 

「ひっぐ、ぐす……うん」

 

((((オカンか))))

 

凛を必死に慰めようとしているディアーリーズを見て、蒼崎、楓、愛華、ダニーは思わずそんな事を考える。ディアーリーズと一緒になって頑張って凛を慰めようとしている咲良も、旅団メンバーにとっては相変わらず癒しの存在である。

 

「……」

 

おかげで、凛を慰めている最中のディアーリーズは気付けなかった。佳弥が羨ましそうな目で、デャアーリーズに泣きついている凛を見ていた事に。

 

「…しかし、まだアイツ等が戻って来てないか。少し不安だな」

 

「奴って?」

 

「あぁ、まだ生存者の捜索から戻って来てないメンバーがいてな。名前はシグナム、ヴィータ、そして南頼忠の三人だ。この三人もレジスタンスに属する戦闘員なんだが…」

 

「うぇ、あのド変態の変人まだ戻って来てないのかい?」

 

「? 楓さん、ド変態というのは一体…?」

 

シグナムやヴィータの名前が出た事に蒼崎が驚く中、ディアーリーズは楓やダニー達に尋ねる。

 

「南頼忠って名前の男なんだけどさ……葵さんとはまた違った意味での変人なんだよねぇ。自分の部屋には何やら訳の分からんカルト染みた文字や絵を描きまくるわ「痛みは最大の教訓だ」とか言ってわざと敵の攻撃を受けたりする事もあるわで、見るからに変態だって分かるような奴なんだよ。ありゃ完全にマゾヒストの気があるね、うん」

 

「「えぇ~…」」

 

楓の説明に、ディアーリーズと蒼崎は思わずドン引きする。

 

「ま、まぁ、ディラックの馬鹿野郎とは違って、自分から周りに横暴を働かない分まだマシな方だ。ちょいと不気味な野郎ではあるが、奴の使う超能力は俺達にとって、非常に強力な戦力にもなるからな」

 

「!」

 

ダニーが告げた“超能力”という単語に、キーラがピクリと反応する。

 

(超能力だと……まさか、奴がここに…?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、トレーニングルームでは…

 

 

 

 

 

 

 

「うぉらっ!!」

 

「ッ!!」

 

ロキとアレクシーの二人が、再び模擬戦を行っている真っ最中だった。ロキの突き出した槍をアレクシーの斧型デバイスが真上に弾き上げ、その隙にロキが蹴りを放つも、アレクシーは身体を逸らしてその蹴りを回避。これらの動作がほんの一瞬の内に繰り広げられており、傍から見れば速過ぎて何をしているのかがまるで分からないような戦いである。

 

「なるほどな、やっぱ強ぇじゃねぇかアレクシーさんよぉ…!!」

 

「伊達に、魔導師はやっていません…よ!!」

 

「うぉっと!?」

 

アレクシーが振るった斧型デバイスを、ロキは後ろに倒れ込む形で回避。そのまま後方に後転してから素早く立ち上がり、ロキはアレクシーとの距離を離す。

 

「ふぅん、また二人で楽しんでる訳ね」

 

「!」

 

「葵さん…」

 

そんな二人の下に、葵が退屈そうに歩いて来た。彼女が一歩ずつ先へ進むたびに、その豊満過ぎる胸がたゆんと揺れており、ロキは思わず視線を逸らす。

 

「せっかく夜の戦いを始めるのに、この私を入れないなんて酷いわね!? 傷付いた、傷付いたわよ!!」

 

「その台詞は誤解を招くからやめろ!!」

 

「ハ、ハレンチです葵さん…!!」

 

「あら、知ってるわよアレクシー? あなた、仕事を終えて暇な時、一人部屋に篭ってオ―――」

 

「ガルブロッサ!!!」

 

≪Yes,Ma'am≫

 

葵が言い切る前に、アレクシーの振るった斧型デバイス―――ガルブロッサから巨大な刃状エネルギー弾が放たれる。しかし葵はそんな攻撃をヒラリと簡単に回避する。

 

「んもう、最後まで言わせないつもりね? まぁ良いわ。こっちもこっちで暇だったから、あなた達の模擬戦をお姉さんはゆっくり観戦させて貰うわよ」

 

「はぁ……まぁ、別に良いけどな。今のこの勝負が終わったら、今度はアンタとも模擬戦をやらせて貰うからな」

 

「もう、せっかちな男ね。焦りは禁物よ? そんな疲れ切った状態でこの私の舞いに付き合おうだなんて、自殺行為にも等しいんじゃないかしら?」

 

「ッ…まだ俺は…」

 

「あなたって本当、器用だけど貧乏じゃないわよね。器用裕福って言うのかしら? 何それ羨ましい!! でも自分の優先順位が低いのは頂けないわ。あなた、何か頼み事をされたら断れないタイプでしょう?」

 

「ぐ……否定し切れんな」

 

「自分で何でも出来るほど、人間という生き物は完成されちゃいないわ。時には、周りの人達に頼る事も大事よ。私? 私を頼るなら大いに大歓迎よ!! 私はそういうの大好き!!」

 

「…まぁ、確かに人間ってのはそういう生き物なんだろうさ……だけどさ。そうも言ってられないんだよ、俺達の場合は。何時、何が起こるか分からない以上、たまに頼る事すら出来そうにない状況だから…」

 

「タカナシさん…?」

 

「…いや、何でもない。アレクシーさん、続けようぜ」

 

「え…あ、はい」

 

ロキはアレクシーを連れて、再び模擬戦を再開。二人が激しい戦いを繰り広げる中、葵は豊満な胸を支えるように両腕を組む。

 

「考え物よねぇ……背負ってる物が大きいのも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな三人から、少し離れた位置では…

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだ行くぞ、腕立て伏せ50回だ!!」

 

「は、はい!!」

 

「そこ、誰が休めと言った!! また回数増やして欲しいのか!!」

 

「す、すいません!!」

 

miriのスパルタ指導の下で、テレンスとイザベルの二人が必死にトレーニングをしていた。二人が必死に汗を流している中、支配人と刃は調理場を借りて作ったミックスジュース入りのペットボトルを用意していた。

 

「それにしても、あの二人もよくやるものですね。何が彼等を突き動かしているのやら…」

 

「ユーリちゃんが鍛えたいって言い出したんだ、あの二人も負けてられないって感じなんだろうよ。まぁあの二人は元々体力はそれなりにあるから、途中でバテるような事は無いだろうさ」

 

「まぁそれは別に良いのですが……そこの二人は何をしてるんです?」

 

刃が顔を向けた方向には…

 

「「75……76……77……78…!!」」

 

Blazと二百式も、同じようにトレーニングを始めていた。両者共に同じペースで腕立て伏せを行っており、二百式に至っては片腕だけで行っている始末である。

 

「…本当、お前等もようやるわ」

 

「はん!! そりゃ、こっちだってなぁ……何だかんだ言って、負けてらんねぇって気持ちくらいは……人並みにはあるんだよ……85……86…!!」

 

「俺はただ、誰が相手でも勝てるように…やってるだけ、だ……93……94…!!」

 

「相変わらずだねぇ……ま、程々にしとけよ?」

 

「良いんですか? 支配人さん」

 

「アイツ等はいつもあんな感じだ。止めるのも無粋ってもんだろうよ。それに、別に今からモンスターと戦う羽目になるって訳でもないんだし」

 

「はぁ、そんな物ですか…(ようやるぜ、この体力馬鹿共は)」

 

彼等の性格を知っている以上、支配人も下手に彼等を止めはしない。そんな彼の気持ちを知って知らずか、刃は心の中ではそんな事を考える訳なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし数時間後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支配人の発言は、最悪の形で的中してしまう事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、アジト内に戻ったディアーリーズ達は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ダニーおじさんだー!」

 

「「「「「ダニーおじさーん!」」」」」

 

「ぬぉっと!? おいおい、どいつもこいつも元気だなぁ全く。大したもんだよ」

 

このアジトで暮らしていると思われる複数の子供達が、ダニーの下に集まっていた。子供達全員が楽しそうにはしゃぐ中、最初は面倒臭そうな表情をしていたダニーも、子供を一人ずつ「高い高~い」してあげるなどしっかり面倒を見てあげている。

 

「ダニーさん、子供達からかなり慕われてるみたいですね」

 

「ダニーさんも子供好きだからねぇ~。傍から見たら完全にお父さんだよ、お父さん」

 

「おいコラそこ、下手な冗談はやめろ。俺はもう独身の51歳だぞ」

 

「あちゃ、聞こえてたか」

 

地獄耳だったか、楓の発言はダニーにもしっかり届いていた。まぁ楽しそうに笑っている子供を肩車してあげている辺り、説得力はまるで皆無である。

 

「ふぅん、結構子供達も楽しそうじゃん」

 

「子供達の前で、私達が暗い顔をしてる訳にもいきません。中にはヴァリアントの所為で、親を亡くした子供もいますから…」

 

「! …そうなんですか」

 

「なるほどねぇ。それで時々、ああして構ってあげてる訳だ」

 

「まぁね。だから私達は、何としてでもヴァリアントの奴等を殲滅しなくちゃならない。だからアンタ逹もさ、力を貸してくれよ」

 

「力なら、いくらでも貸しますよ。疲れたところに寝床を貸してくれたお礼も、返さなければいけませんしね」

 

「うん、本当にありがとな!」

 

「頼りにしてます」

 

楓や愛華の笑顔に、ディアーリーズや蒼崎もしっかり笑みを返してみせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジト内に存在する、とある監視室…

 

「…よし、ディラックは手筈通りに動いたな」

 

監視カメラの映像が複数映っているこの部屋で、とある人物が映像を見て回っていた。男性の足元には、彼によって殺害されたであろう警備員達の死体が転がっている。

 

「これで良い。人類にはもう、勝ち目など無いのだからな…」

 

映像に映っているディラックの行動の一部始終を見て、男性は醜悪な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後…

 

 

 

 

 

 

 

 

-ボゴッ-

 

「ん?」

 

地下6階。監視室にいる警備員達と交代するべく通路を歩いていた一人の警備員が、謎の音を聞いてその場に立ち止まる。

 

「何の音だ…?」

 

音の原因を探るべく、警備員は音が聞こえて来た方向へと歩き、真っ暗な倉庫内へと入る。地下6階は基本的に警備員以外で人の出入りは無い為、使われていない倉庫からは物音なんて聞こえない筈なのだが…

 

「おい、誰かいるのか?」

 

警備員が呼びかけるも、倉庫内から返事は無い。警備員は警戒しつつも歩を進め、倉庫内に入ってから懐中電灯で照らす。彼が足元を見ると、何やら床に大きいサイズの穴が出来ていた。

 

「!? 何だこりゃ…」

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警備員の背後から、一体のオークが無音で襲い掛かったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-グシャアッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして警備員が気付くよりも前に、肉の噛み千切られる音が倉庫内に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!」

 

その瞬間を、キーラはほんの僅かにだが察知していた。

 

「? キーラさん、どうかしたんですか?」

 

「…今、人が一人死んだ」

 

「「「「「!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、アジト全体に巨大な地震が襲い掛かった。突然の事態にアジト中の人間達が悲鳴を上げ、待機していた魔導師逹は一斉にバリアジャケットを展開する。

 

「な、何だ!?」

 

「地上で何かあったのか!?」

 

巨大な轟音を聞きつけた魔導師逹が、地上の入り口付近まで駆け付け……そして戦慄する。

 

「お、おいおい…マジかよ…!!」

 

入り口は、無惨にも破壊されてしまっていた。そして、その破壊された入り口から…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数のモンスター達が、アジト内に侵攻して来たのだ。

 

「け、警報を鳴らせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「は、はいぃ!!」

 

 

 

-ビーッビーッビーッビーッ!!-

 

 

 

アジト全体に警報が鳴り響き、魔導師はレイモンズに通信を繋げる。

 

『こちらレイモンズ!! 何があった、応答しろ!!』

 

「き、緊急事態です!! モンスター達が一斉に、このアジトに侵入して来ました!!」

 

『何だと!? どういう事だ!! まさか、結界が破壊されたのか!?』

 

「分かりません!! とにかく至急、民間人の避難を―――」

 

言いかけた直後、魔導師の首が刎ねられた。魔導師の首を刎ねた張本人であるボラティリアが、楽しそうに笑い声を上げる。

 

『キャハハハハハハハ♪ 凄いよここ、玩具になる人間がいっぱいだぁ~!』

 

『待てティリア! いきなり人間を殺してどうするのだ! まずは人間達と交渉を…』

 

『知らないよそんなの! ほらほら、皆で行っけー!』

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

「に、逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

シーハッグがボラティリアに注意するも、彼女は聞き入れない。彼女の合図と共にモンスター達が一斉にアジト内へと侵攻していき、戦おうとした魔導師や逃げ遅れた警備員が次々と殺害されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、やられた!!」

 

突然過ぎるモンスターの襲撃に、レイモンズは机を思いきり殴りつける。そこに再び通信が入る。

 

『こちらシュナイズ!! レイモンズさん、至急指示をお願いします!!』

 

「シュナイズは至急、民間人を非常用シェルターまで避難させろ!! 戦える者達は部隊ごとに分かれ、モンスターの侵攻を食い止めるんだ!!」

 

『了解!!』

 

「ッ……何という事だ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……おいおいマジかよ…!!」

 

時を同じくして、旅団メンバー達も最悪の事態が発生した事を察知していた。

 

「支配人さん、今のって…!!」

 

「あぁ、俺達も戦うしかないな」

 

「くそ、よりによってこんな時に…!!」

 

「こうなりゃもう、行くしかねぇだろ!!」

 

「……」

 

支配人や刃、miriやBlaz、そして二百式も戦闘態勢に入り、モンスターが侵入した地上1階へと移動する。

 

「葵さん!!」

 

「ふぅん、無粋なのがいっぱい来たわね…」

 

「ッ……俺は先に行くぞ!!」

 

「あ、タカナシさん!! 私も行きます!!」

 

ロキとアレクシー、葵も同じく移動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダニーさん、今のって…!!」

 

「ッ……楓、愛華、スバル、ティアナ!! お前等は至急、子供達を非常用シェルターまで避難させろ!! ティーダと琥珀は戦闘態勢に入り、モンスターの侵攻を食い止めろ!!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

「佳弥さん、あなたも一緒に!!」

 

「は、はい…!!」

 

ダニーの指示により、楓達は佳弥と子供達を非常用シェルターまで導くべく移動を開始し、ティーダと琥珀、ダニーはすかさずバリアジャケットを纏って戦闘態勢に入る。

 

「ダニーさん、僕達も手伝います!!」

 

「あぁ、すまない……一緒にモンスターの侵攻を食い止めるぞ!!」

 

「はい!!」

 

「よし、任せろ!!」

 

「どぉれ、やったろうじゃないの!!」

 

「私達も力を貸すよ」

 

「フィア、私達も…!!」

 

「うん、早くレイと合流しなくちゃ…!!」

 

ディアーリーズ達もまた、同じように戦闘態勢へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジト外部、遥か上空では…

 

 

 

 

 

 

『良いな。これはまた、面白くなってきた』

 

蝙蝠のような翼で羽ばたきながら、攻撃されているアジトを見下ろしていた。

 

『さぁ、試させて貰うぞ人間共よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦争が、始まろうとしていた。

 


 
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