No.759161

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第554話

2015-02-18 00:21:52 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2242   閲覧ユーザー数:1924

~ウルスラ病院~

 

「あ……」

「奴もクロウ同様”列車砲”でメンフィル帝国のVIP達の命を狙ったという罪があったな。」

「そ、そんな……兄様が決死の想いで救ったのに……」

「―――問題ない。クロウ達の”減刑”を申し出る時に彼女の減刑も申し出ればいいだけだ。」

サラ教官の問いかけを聞いたアリサは不安そうな表情をし、重々しい様子を纏って呟いたユーシスの話を聞いたエリスは悲痛そうな表情をしていたが、リィンは静かな表情で答えた。

 

「彼女に関しましては”処刑”やその身に直接危害を加える判決が出ない事が決定していますので、彼女の身を心配する必要はありませんよ。」

「何?」

「クロウ達を助けるつもりはないのに、どうしてあの女は助けるのよ。」

リアンヌの答えを聞いたトヴァルは眉を顰め、サラ教官は戸惑いの表情で問いかけた。

 

「彼女はメンフィルの客将の一人――――ベルフェゴールの”使徒”になったとの事です。よって、メンフィルはテロリスト一人の命だけの為に客将でもある”七大罪”の一柱の機嫌を損ねたくないと判断したのか、彼女自身に危害は加えない判決を降す事にしたそうです。」

「ええっ!?”S”がベルフェゴールの!?リィン、もしかしてその事を知ってたの!?」

「いや、初耳だ!(ベルフェゴール、今の話は本当か!?)」

リアンヌの話を聞いて驚いたアリサに尋ねられたリィンはベルフェゴールに尋ねた。

(ええ。あの女は本気で”生きたい”って思っていたようだから、”使徒”にしてあげたわ。メンフィルの客将の私の”使徒”なら少なくても処刑は免れる事ができると思っていたけど、目論見通りに行って幸いね。)

(そ、それじゃあクロウとクロチルダさんも同じ方法で……!)

(それは無理よ。”使徒”の契約は本人が心の奥底から主である私達の”使徒”になる事を受け入れない限り無理だし、バンダナ男に関しては彼が”男”だから”使徒”にできる力を持っている私もそうだけどアイドスも最初から”使徒”にするつもりはないわよ。)

(な――――どうしてだ!?)

ベルフェゴールの非情な答えを聞いたリィンは信じられない様子で念話を送った。

 

(あのね、リィン……性別が異なる場合の”使徒契約”をする場合は”性魔術”でないとダメなの。)

(せ、”性魔術”って事は……)

しかしアイドスの答えを聞いたリィンは表情を引き攣らせ

(そ。ご主人様はあのバンダナ男の命を救う為だけに私達の意志を無視して私達にあの男に抱かれろって言うつもり?先に言っておくけど私とアイドスはあのバンダナ男に抱かれるなんて絶対嫌よ。)

(う”…………)

ベルフェゴールの問いかけを聞くと唸り声を上げて黙り込んだ。

 

「兄様?ベルフェゴール様は何と仰っていたのですか?」

「あ、ああ。確かに”S”を”使徒”にしたって言っていた。……ただ、クロウ達をその方法で助けるのは無理だって言われた。」

「ええっ!?ど、どうしてよ!?」

エリスの質問に疲れた表情で答えたリィンの答えを聞いたアリサは驚きの表情で尋ねた。

 

「何でも”使徒”にする契約の際、”使徒”になる本人が心の奥底からベルフェゴール達の”使徒”になる事を受け入れない限り無理だそうだ。」

「という事は”S”はベルフェゴールの”使徒”になる事を心の奥底から受け入れたって事になるよな……」

「エオリアといい、”使徒”になった連中の考えは全然理解できないわ……」

「フン、だが”S”については心配無用とわかっただけ僥倖だな。――――それよりも”槍の聖女”。貴様自身に聞きたい事が一つある。」

リィンの説明を聞いたトヴァルは目を丸くし、サラ教官は疲れた表情をし、ユーシスは鼻を鳴らした後真剣な表情でリアンヌを見つめた。

 

「何でしょうか。」

「貴様は現メンフィル皇帝の母君の生まれ変わりとの事だが、”槍の聖女”として仕えていたかのドライケルス帝の祖国の存亡の危機やドライケルス帝の子孫であるユーゲント陛下達の窮地について何も思わないのか。」

「ちょっと、ユーシス。そんな言い方をしなくても……」

目を細めてリアンヌを睨むユーシスの問いかけにアリサは焦った表情で指摘し

「……そう言えば最後のゼムリアストーンの結晶を手に入れる為に向かった”精霊窟”で”蒼の深淵”に見せられた”記憶”とやらではあんたは自身が死ぬまでドライケルス帝に仕えるみたいな事を言っていたわね。」

「あ……」

サラ教官の言葉を聞いたエリスは最後の精霊窟での出来事を思い出した。

 

「――――私の事は今朝初めてお会いした時にも伝えたように、私にかつての過去を話してもよい人物であると認める”力”を示したのならば話しても構いません。最も、万全の状態ではない今の貴方達が私に挑んでも私の兜すら砕けないでしょうが。」

「貴様……俺達を侮辱しているのか?」

「私は事実を言ったまでです。――――それと言い忘れていましたが、ラマール州全土の制圧も本日の昼頃に完了しました。なお、カイエン公爵夫人に関しましてはユーディット嬢の交渉に応じたヴァイスハイト陛下からの要請により処刑はせず、またカイエン公爵家はクロスベル帝国に仕える為、貴族として存続できるとの事です。」

「ええっ!?」

「絶望的な状況であったカイエン公爵家を救ったユーディットという方は一体何者なのでしょう……?」

リアンヌの話を聞いたアリサは驚き、エリスは不思議そうな表情で尋ねた。

 

「ユーディット嬢というのはカイエン公のご息女にしてカイエン公爵家の長女に当たる方だ。確か”才媛”として社交界でも有名な存在で、カイエン公爵自身も自慢していた方だ。」

「ユーディット・カイエン嬢の情報なら俺が西部で活動していた時も耳にした事がある……何でも彼女は妹のキュア嬢と共に元々内戦を引き起こす事に反対して、内戦後は自らの私財をなげうってまで民達に支援物資を送っていたそうだぜ?」

「そんな方があのカイエン公のご息女なのですか……」

「とてもあのカイエン公の娘とは思えないわね。ちなみに一体どんな条件を”黄金の戦王”に提示して、”黄金の戦王”はそれに応じたのかしら?」

ユーシスとトヴァルの説明を聞いたリィンは驚き、サラ教官は眉を顰めた。

 

「私も詳しい経緯はまだ聞いていませんが、何でも彼女自身がヴァイスハイト陛下の側室として嫁ぐ為、メンフィル帝国はヴァイスハイト陛下の要請に応じ、カイエン公爵家が貴族として存続する事とカイエン公爵夫人の命を奪わない事にしたとの事です。」

「なっ!?」

「ええっ!?カイエン公爵家の長女が自分達の領土を制圧した国の皇に嫁ぐんですか!?」

「しょ、正直信じられません……」

リアンヌの説明を聞いたリィンとアリサはそれぞれ驚き、エリスは信じられない表情をし

「なるほどね……”黄金の戦王”は好色家として有名だから、それを彼女は利用してカイエン公爵家とカイエン公爵夫人を守ったみたいね……」

「そういや、ユーディット・カイエンは相当な美人だって話も聞いた事があるな……」

「ユーディット嬢は社交界に参加する度に多くの貴族達が求婚する程見目麗しい方だ。大方相当な好色家であるあの男の目に止まり、ユーディット嬢を側室にする事を引き換えにあの男がユーディット嬢の嘆願に応えたのであろうな。」

(ううっ、お父様なら本当にありえそうですから否定できません……)

サラ教官は呆れた表情で呟き、トヴァルは苦笑し、呆れた表情をしているユーシスの推測を聞いたメサイアは冷や汗をかいて疲れた表情をしていた。

 

「フフ……伝えるべき事は伝えましたので、私はこれで失礼します。」

「今のが”槍の聖女”にして結社の”蛇の使徒”の”第七柱”―――”鋼の聖女”か……”特務支援課”はよくあの化物に膝をつかせる事ができたものだな……」

「……ま、あの女の事は置いといて……”英雄王”がわざわざ使いを寄越してリィンにエレボニアに味方をしてもいいって事の伝言したって事は、メンフィルはリィンとエリスがエレボニアの為にメンフィルに逆らうと予想して、リィン達――――シュバルツァー家にその件についての罪を問わない事を伝える為でもあったようね……ま、その理由の一つにはエリゼも関係しているでしょうね。」

リアンヌが転移術で去った後に呟いたトヴァルの後に続くように呟いたサラ教官は真剣な表情で考え込みながらリィンとエリスに視線を向けた。

 

「はい……”戦争回避条約”の”救済条約”を提案したのも姉様だとの事ですし……」

「もしかしたらエリゼは戦争が避けられないとわかった後、エレボニアの被害をできるだけ抑える為に”救済条約”を提案したのかもしれないな……」

「”戦争回避条約”の猶予期間が伸びたのもエリゼのお蔭だって話だし。よく考えてみたら私達、エリゼに陰で支えられていたのね……」

「………………」

エリスやリィン、アリサがそれぞれ静かな表情で推測している中、ユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「……あの娘には大きな借りがあるから、今回の件が落ち着いたらあたし達も改めてお礼を言うべきね。」

「ええ。それじゃあベルフェゴール達に頼んでガレリア要塞跡に転移魔術で移動しましょう――――」

その後リィン達はベルフェゴールの転移魔術によってガレリア要塞跡に転移し、既に迎えに来ていたカレイジャスに乗り込み、トリスタに帰還し、今後の事について話し合い……ロイドの言葉を信じ、メンフィルとクロスベルに意見できる人物に協力を仰ぐ為にトリスタにユーゲント三世達を残し、ユミルへと向かった。

 

 

 

 

次回はリィン達の話ではなく、連合軍によるラマール州制圧の話です。その時に今回の話に出て来たオリジナルキャラも登場します。なお、そのオリジナルキャラはある人物が転生した人物という設定です。その人物はオリジナルキャラの名前通りのキャラなのですがぶっちゃけ、相当昔の作品かつわりとマイナーなキャラですから知っている人がいるかどうか怪しいくらいですねww


 
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