青年と歯車の国(後編)
レジスタンスに渡された銃の引き金を引き、機械王が止まった。
俺はそれを知らせるために皆の元へ翔けていった。その都度廊下でロボットを見たが、石像の様に止まっていた。
動く気配もないのでそのまま通り過ぎる……これは裏を返せば、皆も無事なのかもしれないという希望が浮かんだ。
そして、皆が戦っている広間に着いた時、奇妙な光景を目にした。
ロボットどころかレジスタンスの皆も止まっていた。人間である皆も止まっていた。
「どういう事なんだ……」
訳が分からない……機械王はこの国の機械たちは自分の命、心で動いているとか言ってた。
その通りに
「この国の存在そのものが、機械で動いているのなら……」
突然声がきこえたので驚いて振り向くと、黒いボロコートを羽織った全身包帯だらけの長身男がそこにいた。
「誰だよアンタ……どういう事だよ今の言葉」
国の存在そのもの?それと人間たちがどう関係するってんだよ!訳が分からなかった
「この国は舞台装置……解を求める為に、私が創った」
「創った……?」
「そう……
男は勝手に機械王の亡骸のある王室に向かった。ユウザはなんとなく付いて来た
王座の後ろの壁を男が手をかざすと、自動式の隠し扉が開いた。
その先を進んでいると……
「そしてここが……私の部屋、私の居場所だ」
暗く、広いドーム状の部屋だった。壁や床に電子回路らしきものが光っているので、辛うじて見える程度だった。
そしてその中心には、天井から繋がっている柱、チューブ、そして繋がれている椅子があった。
「私は
「何なんだよ……一体全体何なんだよ!!」
俺ははっきり言って混乱していた、いきなりの展開、ロボットどころか人間まで止まってて、ボロコートの男がいきなり機械皇と名乗って来て……
「君は……この世界がどう出来たかを聞いたよね……?」
思わずうなづいた。何でこの男が知ってるのかは謎だが……
「その後は……上手くいっていたんだ」
機械皇は語り出した、女神側を打ち倒したその後を……
我々が勝利した後、人々は私を称賛した。生みの親である開発者も誇りに思っていた。
人も機械も手を取り合って、共存していた。
人と機械の共同犯罪、それに対する人と機械の共同確保、人と機械の共同裁判、共同投獄……
何事も二人三脚でやって来た。互いに支え合い、補い合い、助け合う……
そんな日が、そんな時が、いつまでも続いてくれると思っていた、信じていた……
だが、何事も食い違いとは起きるものだな……度重なるエネルギー議論、新しいエンジンの交換規則、食糧問題……
事あるごとに我々と彼らはぶつかり合い、すれ違い、言い争った。
互いの弱みや欠点を突き合い晒しあい……ついに人と機械は争い合う事になったのだ。
ただ一つ……たった一つのズレだったんだ……それさえかみ合えば、こんなことは無かっただろうに
そうして我々は争い合った。何とかしてまた共存を目指す者達もいたが、戦の渦にあっけなく飲まれていった。
私もまた、再度共存をめざして奮闘していた……だがそれも虚しく争いは止まらなかった。
更に私は産みの母を……シアンという人を失った。彼女のお陰で機械の私にも心が宿った、魂が生まれた……生きる事が出来た。
だがその母を亡くした時、私は人にも機械にも……争い合うすべてに怒り、母から『護る為』と渡された武器で八つ裂きにした。
そうしている内に……私はたった一人になってしまった。私は護るべきものを、怒りに身を任せて壊してしまったのだ。
そして何を護れば良いのかと考え、失ったら作り直せばいいという答えに至った。
そうしてこの国を創り、同じ轍は踏まぬと今までなかった在り方を創った……人間が機械に統べられる世界を。
機械は豊かに人間は貧しく、機械は強者で人間は弱者、不満に思う人間たちもいるも機械たちがそれを制していく世界……
だが……何かが違うと思った。心が……心が無い気がした。だから人を……偶然そこにいた君を連れて行ったのだ。
この国で過ごしていく中で、君はこの国を否定した「こんな国があってたまるか」と「たった一人のお芝居に付き合わせるな」と……
もしかしたら私は、誰かに間違ってると、可笑しいと、言って欲しかったのかもしれない。
滅んだという現実を、受け入れさせて欲しかったのかもしれない……
勝手なのは分かってる、だが私にはどうしようもなかった、私はもう、自分が何を求めてるのかすら分からなくなっていた。
だから……私は君に打ち消して欲しかったのかもしれない……その過ちを、偽りを。
どうやら機械皇は、護る事を護る為に、この国を創った……否、造ったことが分かった。
何もかもが偽者で、何もかもがでっち上げで、何もかもが嘘っぱちなのに現実味があったのは、恐らく機械皇に心があったからかもしれない。
俺が会った住民も、機械も、機械王も、この国の全ては機械皇の一面であり、あのメチャクチャな在り方は、ある意味機械皇の葛藤と暴走の証なのかもしれない
そう考えると、機械皇はずっとずっと助けを求めていたのかもしれない、国と言う鳥かごの中で、誰にも見つけられる事もなく
「さて、この国は約目を全うした以上、もうすぐ終わるだろう……その前に、君に言って置きたいことが在る。」
言って置きたい事?何だ?俺は首をかしげる。
「この世界を……否定してほしい」
「へ?」
思わず声に出したが……『この世界を否定?』何故に?
「こことは違う国々の在り方も、神が神を辞めた時から歪んで狂ってしまった……多国との交易をする中、私は知ってしまった」
どうやらこの国以外にも、色々と可笑しな国があるらしい。機械皇は「これを」と言って、刃の付いた銃とも銃身の付いた拳銃とも見える武器を、俺に手渡した。
「これはエッジマグナム……私の母が最期に作って私にくれたものだ……これで君は、君自身を護れ」
その後、俺は機械皇に頭を掴まれ、放り投げられた。
「あだっ!」
何かにぶつかったと思ったら、俺は馬車の中に入っていた。窓の向こうには、機械皇が見えた。
「さらばだ……有りえないかもしれないが、願わくばいつか、友として巡り合える事を」
機械皇がそう言った直後、馬車が走り出した。
機械王の城の窓を突き破り、門を抜け、役目を終えて止まった機械たちがいる街中を駆け抜け、国を抜けた。
俺は後ろの窓から国を覗く、そこにあるのは活気も何もない、ただの大きなジオラマだった。
国は人が在ってこそ成り立つもの。それ故にあれは、只の小さな箱庭でしか……否、初めからあそこは、国ですらなかった。
たった
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